<<抗生物質、感染症関連用語集>>
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抗生物質関連用語
備考 |
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a | AUC / AUD | |
AUIC:area under the inhibitory time curve | ||
b | βラクタム環 | やさしい薬理学 |
Breakpoint MIC | 毒舌薬理学 | |
Breakpoint MICの臨床応用 | 1998.12.15 | |
d | De-escalation | |
DNAトポイソメラーゼ | 1994.5.15 | |
e | Empiric therapy | 耐性菌の治療手順 |
g | Get Smartキャンペーン | 2006.10.15 |
h | Herxheimer反応 | |
m | MIC / MBC | |
MPC:mutant prevention consentration | ||
MSW(mutant selection window)理論 | ||
o | OPAT | |
p | PAE | 1992.8.15 |
Phagocyte delivery | ||
PA SME | 1998.315 | |
r | Respiratory quinolone | |
s | Sub−MIC | 1996.3.15 |
t | time above MIC | PAEと同内容 |
あ | アミノグリコシド系抗生物質の副作用 | やさしい薬理学 |
え | エリスロマイシン小量長期療法 | |
エンピリックセラピー | ||
か | 感冒に対する抗生物質 | |
け | ケトライド系抗生物質 | |
こ | 抗生物質の使い方(腎障害時、肝障害時) | |
抗生物質の髄液への移行(一覧) | ||
抗生物質選択のポイント | ||
さ | サルファ剤 | 無駄口薬理学 |
し | ジスルフィラム様作用 | |
食中毒の抗生物質療法 | 1998.615 | |
術創感染予防の抗生物質選択 | ||
初日強化療法(アミノ配糖体による) | ||
た | 耐性機構(アミノ配糖体系/キノロン系) | |
耐性(抗生物質の)のメカニズム | ||
耐性菌の治療手順 | ||
たんぱく合成阻害 | やさしい薬理学 | |
て | テスト液(皮内反応)の無いときは | s62.7.1 |
と | トポイソメラーゼ(ニューキノロン系抗菌剤) | |
に | ニューキノロン系抗菌剤 | |
の | ノイラミニダーゼ阻害作用 | |
脳・脊髄膜炎と抗生物質 | s63.12.15 | |
は | ハベカシン注がMRSAに耐性化しない訳 | |
ひ | 皮内テストは指定の液 | s62.6.15 |
皮内反応(抗生物質の)は必要か? | 2004.2.15 | |
ふ | フォーカス不明時の発熱児に対する抗生物質の使用 | |
プリックテスト | ||
へ | ヘルクスハイマー反応 | |
ま | マクロライドの新たな薬理作用 | |
マクロライドの耐性機構 | ||
マクロライド系抗生物質とDPB | ||
レスピラトリーキノロン |
感染症関連用語集
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Get
Smartキャンペーン
〜〜抗菌薬を賢く使おう〜〜
2006年10月15日号
No.439
2003年9月、米国ではCDC(疾病予防管理センター)とともにFDA(食品医薬品局)、米国医師会、米国小児医師会など多くの団体が共同で抗菌薬を適切に使用するためのGet
Smartキャンペーン(抗菌薬を賢く使おうキャンペーン)を開始しました。
このキャンペーンでは、抗菌薬耐性を緊急の問題として医療従事者のみならず、消費者に対しても抗菌薬を正しく理解し、適切に使用することを求めています。
抗菌薬耐性化の主な要因は、1)免疫の低下した患者の増加、2)侵襲性の高い医療機器や手技の増加、3)、抗菌薬使用の増加、4)院内感染の増加、5)市中や施設での耐性菌の増加と病院への流入、6)臨床感染症学や院内感染対策に関する不十分な教育 と考えられます。
<キャンペーンの目的>
1.不適当な抗菌薬使用を減らす。2.抗菌薬耐性菌の拡散を防止する。
<目標を達成させるためのアプローチ>
・抗菌薬の使用を適正化に導くために、様々なツールと戦略を発展させる。
・キャンペーンに参加する団体やグループに対して、資源の提供を行う。
・キャンペーン参加者が、共同組織として資源を有効活用するためにパートナーシップを構築する。
・抗菌薬使用、抗菌薬耐性、患者・医療従事者の満足度などについての影響を評価する。
<抗菌薬使用の原則>
1)抗菌薬が必要な状況か? 〜ウイルス感染症には使用しない。
2)標的臓器によく移行するか?
3)抗菌薬が最も効果を発揮するための使い方は(PK/PDを考慮した使用)
<患者向けの啓蒙>
・抗菌薬を風邪、咳、インフルエンザのようなウイルス感染症のために使用してはいけません。
・医師が指示したとおり正確に使用しましょう。
・抗菌薬を処方された場合は服薬を自己判断でスキップしてはいけません。もし、体調が良くなっても処方されたとおりすべて完全に服用してください。
・次に病気になったときのために、抗菌薬をとっておいてはいけません。
・他の人に処方された抗菌薬を使用してはいけません。間違った薬を服用すると、正しい治療を遅らせ、細菌増加を招く可能性があります。
*のどが痛い→多くの原因はウイルスです。唯一、連鎖球菌では抗菌薬が必要です。
*耳の感染症→いくつかのタイプがあり、多くは抗菌薬抗菌薬を必要とします。しかし必要としない場合もあります。
*鼻の感染症→粘性あるいは緑色の鼻汁がみられる場合はほとんど抗菌薬を必要としません。ただし、症状が長期にわたる場合は抗菌薬が必要です。
<基本原則> 抗菌薬は、細菌は殺すが、ウイルスには効果がない。ベネフィットがある場合のみ抗菌薬を使用する。
{参考文献}薬事 2006.9
<NST関連用語解説> ナイトロジェンデスはこちらです。
抗菌薬選択のポイント
出典:薬事 2003.3
* 殺菌的か、静菌的か
濃度依存性か(アミノグリコシド系、ニューキノロン系)→PAEの有無
時間依存性か(βラクタム系、グリコペプチド系)
*アミノグリコシド系〜1日1回が安全で効果的、敗血症ショック患者や発熱性好中球減少患者などの免疫機能が著しく低下している患者ではPAEは期待できません。
*抗菌スペクトル
病原微生物の同定や抗生物質感受性の結果が出るまでは、臨床経験から、起因菌を推定してスペクトルの広い薬剤を選択し、結果が分かっている場合は、耐性菌や日和見感染を防ぐために感受性の狭い(狭域)スペクトルの抗菌薬に変更します。
* 協力作用と拮抗作用〜一般的に殺菌作用を示す薬剤同士は協力作用を示します。
βラクタム+テトラサイクリンなどの殺菌性の薬剤と静菌性の薬剤の併用は作用が減弱します。:殺菌性の抗菌薬は増殖期の細菌に効果が大きく、静菌性の抗生物質の作用により静止期にある細菌には効果が出にくいため)
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*血中濃度と効果の関係
アミノグリコシド系→Cmax
キノロン系 →AUC
βラクタム →time above
MIC(MIC以上の濃度を保った時間)
グリコペプチド系
と効果が相関します。
βラクタム系はある程度まで濃度の増加と平行して殺菌力は増加しますが、ある濃度以上では効果はそれほど増強しません。t1/2の短いフルマリンなどを腎機能正常者に1日2〜3回の点滴を行っても十分な効果は得られません。
*吸収〜水溶性のため消化管吸収されないバンコマイシンやカナマイシンは腸内殺菌に有効
*組織移行性〜血中濃度がMIC以上であっても病巣組織内濃度がMIC以下なら効果は期待できません。
*蛋白結合率
遊離型濃度が抗菌活性と相関しており、総濃度がMIC以上あっても蛋白結合率が高ければ組織内濃度はMIC以下になることがあります。蛋白結合率の高いロセフィン注やタゴシッド注では要注意
*消失半減期
t1/2の短いペニシリンやセフェムを腎機能正常者に用いる場合、時間依存性であるため、1日2回程度では十分な効果を発揮できません。腎不全では半減期が延長すします。しかし1回量減量法では治療濃度に達するまで数日をかかりますので、初回投与量は減量すべきではありません。蛋白結合率が高いほどt1/2は延長する傾向にあります。
*排泄経路〜尿路感染症には腎排泄型抗菌薬を、胆道感染症には胆汁排泄型の抗菌薬を選択します。
*薬物動態学的相互作用
エリスロマイシンやクラリスロマイシンはCYP3A4だけでなく、P糖蛋白質も阻害するため様々な相互作用が生じます。
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*分子量
MW700以上で脂溶性の高いマクロライド系はグラム陰性菌のは弱く、MW1400〜1900のグリコペプチド系はグラム陰性菌には全く効果がありません。
*水溶性か 脂溶性か
物性によって細胞膜透過性、組織移行性が変化します。
クロラムフェニコールやリファンピシンは脂溶性が高いため髄液中への移行性も高くなっていますが、アミノグリコシド系やβラクタム系では細胞外液中に留まったままです。
マクロライドやクロラムフェニコール、テトラサイクリンは脂溶性が高いため好中球やマクロファージなどにも移行しやすいため、偏性細胞内寄生菌にも有効です。
*物理化学的相互作用
アミノグリコシド系はある種のペニシリンによりインビトロで分解されます。
腎不全患者ではピペラシリンによりインビボでもゲンタマイシンが分解されます。
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シナジー効果〜相乗効果
シナジー効果(相乗効果)とは、複数の抗菌薬を併用した場合に足し算での効果以上の効果を得ることをいいます。
例えば、レンサ球菌に対して効果が期待できないゲンタマイシンをペニシリン系抗菌薬を併用すると、ペニシリン系単剤使用時よりも高い効果が得られることがあります。
また腸球菌感染症にはアミノグリコシド系抗菌薬とβラクタム系抗菌薬の相乗効果を利用した治療が重要で、特に心内膜炎に対してはアンピシリンとゲンタマイシンを長期間にわたり併用することがよくあります。
同様に重症緑膿菌感染症に対してもアミノグリコシド系抗菌薬がよく併用されます。
眼化学療法字に起こることがある発熱性好中球減少症では、緑膿菌が原因菌であることが多く、、年齢、基礎疾患などからハイリスク患者と判定されれば必ずアミノグリコシド系抗菌薬+抗緑膿菌活性を持つ抗菌薬の併用となります。ただし、緑膿菌により尿路感染なのどの通常の緑膿菌感染症で、免疫力の低下や重大な基礎疾患などもない患者であれば併用する必要はなく、単座の使用でじゅうぶんな効果を得ることが出来ます。
グラム陽性菌・陰性菌
グラム陰性菌は脂質外膜を持っているため抗菌薬の透過性は悪い。
外膜にはポーリン孔があり、脂溶性薬剤は透過しにくい。アミノグリコシド系のような水溶性薬物の効果が高い。
カルバペネム系もポーリン孔を透過し安いため緑膿菌などの陰性菌に効果が高い。
ポーリン孔はMW700以上のものは透過できないため、グリコペプチド系は陰性菌には全く効果がありません。(マクロライドも同様)
グラム陰性菌の一番外側にあるリポ多糖にはエンドトキシンがあり、静脈内に多量に入ると敗血症などの重症感染症が引き起こされ血行動態に異常を来し、ショック状態となることがしばしばみられます。
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ポーリン
ポーリン孔
Polin:孔形成蛋白質
出典:日本病院薬剤師会雑誌 2003.5
グラム陰性菌とグラム陽性菌の構造上の大きな違いは細胞の外膜です。
グラム陰性菌は細胞膜の外側に3層(ペリプラズム層、ペプチドグリカン層、疎水性に富んだ脂質二重層)からなる外膜を有しています。
この外膜は親水性の抗菌薬や各種の栄養素が菌体内を透過するのを制限する役割を担っています、しかし、外膜には親水性の物質を通す孔も局在していて、この孔を形成している蛋白をポーリンと言い、孔をポーリン孔といいます。
現在までポーリンは多くの筋腫で多様な種類が存在することが確認されていて、その種類によって透過できる物質の大きさや物性が異なっています。しかし、多くのポーリン光はほとんど非特異的に親水性物質を透過させます。(大腸菌に存在する多種のポーリン孔は分子量600までの物質が透過できます。)
今社会問題となっている各種の耐性菌が増加する理由としては、βラクタマーゼ等の不活化酵素の存在が大きく関与していることは言うまでもありませんが、その他にも外膜透過性の変化による場合が考えられています。つまりポーリンが変異または減少することなどにより抗菌薬の透過率が減少し、耐性化を示します。
この外膜透過性による耐性化は、有る特定の抗菌薬だけに制限されないことから一般的に多剤耐性を示します。
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ペプチドグリカン
ペプチドグリカンとはペプチド(縦糸)とグリカン(横糸:多糖類)から成る化合物で細胞壁の主要構成成分です。
βラクタム薬が細菌の細胞膜に存在するPBPに結合するとグリカン鎖とグリカン鎖を繋ぐ架橋構造が阻害され、細胞壁は穴あき状態になり、高い細胞内圧(グラム陽性菌で約20気圧、陰性菌で約5気圧)により、細胞はパンクし死滅します。
グラム陽性菌はペプチドグリカンが何層にもなっていて、細胞壁は厚くその60〜90%をペプチドグリカンが占めています。
グラム陰性菌はペプチドグリカンは薄く、細胞壁の10〜20%を占めるに過ぎません。
出典:薬事 2003.3