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AG
JJSHP 1.1996 P43
本来の意味は通常検査で測定されない陰イオンと陽イオンの差のことです。
AG=Na+−(Cl+HCO3−)
正常値は10〜14mEq/L、これ以上ではアシドーシスが疑われます。とくに代謝性アシドーシスの鑑別、乳酸アシドーシスの診断に有用。
AGの臨床的意義は大きいと思われます。
アニオン:陰イオン
カチオン:陽イオン
燃え尽き症候群の症状
前期:疲労感や焦燥感の増加、熱意の減少、身体各部の痛み、胃の不調感、頭痛、過食あるいは拒食、無能感や不全感の漸増
中期:離人症的傾向、成功可能性への疑問、長期の風邪、呼吸困難、疲労こんぱい、体重の増加あるいは減少
後期:皮肉な離人症的傾向が一層顕著、定常的な逃避傾向、課題に向けてのエネルギーの完全な喪失、既存の価値や信念の劇的な変換
ダンピング症候群
dumping syndrome
2002年12月1日号 No.350
胃切除後,摂取した食物が小腸内に急速に墜落するために起こる症候群
幽門機能が廃絶して胃内容の排出が異常に促進している場合にも起こり得ます。
食後20〜30分以内に起こる早期症状と、食後2〜3時間で起こる後期症状とがあります。
早期症状には全身症状(冷汗,動悸,めまいなど)と腹部症状(腸蠕動亢進,腹痛,下痢,悪心,嘔吐など)で、前者を主とします。
胃貯留機能の消失により高張な食物が腸内に入りその結果,循環血漿量が減少し、種々の体液因子が増加し、自律神経機能の不均衡も加わって本症候群が起こるといわれています。
体液因子として、セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、GIP(gastric
inhibitory polypeptide)などが考えられています。
後期症状は、食後2〜3時間の一過性の高血糖に続くインスリン過剰により低血糖をきたすために起こると考えられています。早期と後期症状両者間に特定の関係はないことが明らかにされています。
<治療薬>
・血管作動性物質に対する薬剤(抗セロトニン作用を期待)〜ぺリアクチン
・粘膜刺激に対する薬剤〜ストロカイン
・自律神経系に対する薬剤〜ジアゼパム
・腸管運動亢進に対する薬剤〜ブスコパン
保険適応外ですが、各種消化管ホルモンの分泌や消化管の機能を抑制するソマトスタチンの誘導体で、作用時間の長いサンドスタチンを食前の皮下注が有効な治療法として報告されています。
出典:今日の治療指針 1998等
レボドパ長期間治療中に生じる症状
Wearinng-off(up and down)現象:薬効時間の短縮に伴う日内変動のこと。
ウェアリング・オフ
L−DOPAが効いている時間がそれまでに比べて著しく短くなるために、症状の日内変動が著明になります。
L−DOPAを増量するとさらに症状は悪化します。この場合もL−DOPAを分割して服用するか、ドーパミンアゴニストを与薬します。
On-Off現象:服薬時間に関係の無い、急激かつ不規則な症状日内変動のこと。
服用時間や血中濃度と関係なく、あたかもスイッチを切ったり入れたりしたときのように症状が急激に変動する現象のこと。
<治療>
Lドパの減量、drug holidayや、ドパミンアゴニストを試してみる。
drug holidayは実際1〜2週間かけてゆっくりLドパを減量中止し、休薬後少量から再開します。
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通常、レボドパ製剤で、1日中、症状が著しく改善します。この「ハネムーン状態」と呼ばれる調子の良い期間は2〜5年続きます。
しかし、治療期間が長期化すると薬の効き目が次第に弱まったり、作用時間が短くなって、1日のうち何度も症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すようになります。このようなパターンをとることをウェアリング・オフと呼んでいます。
ウェアリング・オフの症状には運動症状(振え、筋肉の固縮、動作緩慢など)があります。主な予防と対策法は、レボドパ製剤を初めから多量に使い過ぎない、ドパミンアゴニストを併用する、レボドパの血中濃度をできるだけ一定になるように心掛けることなどがあります。
ドパミンアゴニストはレボドパほど切れ味は良くありませんが、ウェアリング・オフの改善に効果があるとの報告があります。
ウェアリング・オフのパターンは一人一人症状が異なりますので対処方法も変わってきます。
薬を飲めば改善するけれど次の服薬の前になるとたびたび現れる症状をはっきりさせるために、質問カードが用いられることがあります。これによって症状の変化を認識し、適切な治療法に変え、症状をより良くコントロールすることが出来ます。
出典:日本病院薬剤師会雑誌 2007.12等
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Drug-resistant off period:L-DOPAを増量したり服用回数を増加しても効果が出ない時間
Complicated end-of-dose effect:固縮や振戦がみられる一方で不随意運動が出没する状態
Resistant flucuations:服薬用量や回数を調整しても他剤を併用しても日内変動の軽減が困難な状態
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Non-on現象:飲んでも効果が出ない現象
Delayed on現象:服用後、効果が出るまでに時間がかかる現象
このような現象は、午後から起こることが多く、L-dopaはアミノ酸トランスポーターにより吸収されるため、食事中のアミノ酸と競合することが大きな原因として考えられています。このような例では、L-dopaを増量したり、食間に服用したり、昼食を低蛋白食とすることで改善することもあります。
関連記事 低蛋白療法
Zollinger-Ellison症候群
ゾリンジャー・エリソン症候群
ガストリン産生腫瘍
高度の胃液分泌増加を伴う急激かつきわめて難治性の消化性潰瘍で、インシュリンを分泌しないラ氏島腫瘍と合併する症候群をいいます。
胃液の過分泌は腺腫から出るホルモンが原因で、これはガストリンではないかという人がいます。
夜間の胃液分泌増加が特徴的。通常、膵の亜全摘出が行われていますが、H2受容体拮抗剤も使用されています。
受攻性因子(不整脈)
vulnerable parameter
関連項目:電気生理学的にみた抗不整脈薬
その不整脈の成立を左右する条件に関与している多くの因子のうち、“修飾を受けることによって最も不整脈停止につながり易い電気生理学的特性”を表すもので、いわば不整脈成立のための弱点。
不整脈の発生機序には様々なものが想定されていますが、それぞれ受攻性因子が特定されており、その受攻性因子を形成するイオンチャンネルが治療の目標となると考えればよいのです。
出典:JJSHP 2 1997
心房細動の発生機序はリエントリで、シシリアン・ガンビット
で指摘されているように、この不整脈の受攻性因子、すなわちアキレス腱は不応期です。(不応期の延長:やさしい薬理学もお読み下さい。)
従って薬理学的に不応期を延長させることによって心房細動の予防、停止が可能となります。不応期を延長させる方法としてはNa+チャネルを遮断する方法とK+チャネルを遮断する方法がありますが、心房細動によく用いられるIa群、Ic群抗不整脈薬はこの両方の作用が組み合わさってその有効性を示します。
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出典:治療 1997.11
受攻性因子とは、各不整脈の成立に不可欠である、薬物の副作用が最小限で、その停止や予防が可能な電気生理学的なパラメーター
生理的自動能の亢進(洞頻脈など)では、第4相脱分極受攻性因子で、その抑制には、遅延外向きK電流(Ik)やアセチルコリン活性化K電流(Ik.ACh)などを活性化したり、Na電流(INa)Ca電流(Ica.L)をブロックする必要があります。
早期脱分極(EAD)から生じる撃発活動では活動電位持続時間(APD)が主な受攻性因子で、Ikを増強させたり、INaやIca.LをブロックしてAPDの短縮させて不整脈を抑制することが期待されます。
遅延後脱分極(DAD)からの撃発活動では細胞内Ca負荷を軽減することが必要となります。
リエントリーでは、興奮間隙(excitabele gap)の長いオーダード・リエントリー(心房粗動など)では興奮性と伝導性を押させるI-Na標的分子で、これの短いランダム・リエントリー(心房細動など)では不応期をののばすKチャンネルのブロックが標的となります。
<薬物選択の例>
機序がNaチャンネル依存性のリエントリーである場合、興奮間隙の長いI型心房粗動では受攻性因子は興奮性と伝導性で、Naチャンネル遮断剤(ただしリドカインは除く)が薬物選択となります。同様の理由で、持続性単形性心室頻脈もNaチャンネル遮断剤が選択されます。
興奮間隙の短いリエントリーである心房細動では、受攻性因子は不応期であり、薬物選択はKチャンネル遮断剤となります。
Caチャンネル依存性のリエントリーである房室結節リエントリー性頻拍では、受攻性因子は同じく興奮性と伝導性ですが、薬物選択はCaチャンネル遮断剤となります。
* 薬物選択の指針を得るためには、各抗不整脈薬の多彩な薬理作用を正確にかつ分かりやすく表示することが望まれます。シシリアンガンビットの分類では、VW分類(Vaughan Williams分類)のように抗不整脈薬をグループ分けするのではなく、それぞれの作用点がすべて網羅されるようにスプレッド・シート(表)方式で表示されています。
関連項目:電気生理学的にみた抗不整脈薬
ヒステレシス(ヒステリシス)
Clockwise hysteresis loop現象
反時計回りのヒステリシス現象
* 血中濃度と薬物の効果との時間的ずれ。 履歴効果
hysteresis loop:履歴曲線
血中濃度(横軸)に対して薬効(縦軸)をプロットし、測定時間の順に点を結ぶことによってできた線がどのような履歴(hysteresis)をしめすかによって、作用部位が血液コンパートメントに含まれるか否かを判断する方法。
プロットが反時計回りのヒステレシスループを描く場合、薬効が血中濃度より遅れて現れるため、作用部位は血液コンパートメント以外にあると考えられ、組織コンパートメントあるいは薬効コンパートメントを想定しなければなりません。
これに対し、薬物血中濃度と薬効が1:1の対応を示し、特にヒステレシスの存在が認められない場合は、薬物の作用部位が血液コンパートメントと速度論的に区別できない部分にあると考えられます。
しかし、薬物に対する急性耐性の誘導や薬理活性代謝物が生じ、見かけ上未変化体濃度と薬効の関係に反時計回りのループが認められる場合も有り得ます。
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作用部位への薬物の移行が遅れる場合や薬効発現に対して血中濃度の上昇が遅れる場合には逆時計回りのヒステリシスを描くため、通常は逆時計回りの様式を示す薬物がほとんどで、血中濃度より遅れて作用が現れます。
これらの原因として、1.薬物の作用部位が脈管系ではなく、血漿濃度推移に比べ分布に遅れがある組織に存在する場合、2.薬効が未変化体ではなく活性代謝物に起因する場合、
などが考えられます。
出典:薬事 2003.5等
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ステロイドは服用後数時間で血中から消失するにもかかわらず、その効果は一日以上持続します。また連続して服用していた薬物を中止すると、血中濃度が低下しても効果(副作用)は多少持続します。この現象を反時計回りのヒステリシス現象と呼びます。
ところが中毒時に服用を中止しても、血中濃度はすぐには低下しません。しかし、副作用の強さは小さくなることがあります。
大阪医大の井尻先生による フェニトインでの例掲載
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出典:漢方調剤研究 2001.June.Vol.9 臨床情報センターKK
ベクター
ウイルスベクター
遺伝子治療の際、病気を治すのに必要な遺伝子を患者の細胞の核まで届ける「運び屋」
現在研究が進んでいるのは、主にウイルスとリポソーム:脂質の微小な袋
ウイルスではDNAをもつアデノウイルスとエイズの仲間でRNAを持つレトロウイルスが中心
レトロウイルスは「逆転写酵素」を使い、自分がRNAの形で運んだ遺伝子を感染した細胞のDNAに紛れ込ませてしまうため、細胞分裂といっしょに治療用の遺伝子も増え、効果が長持ちします。
アデノウイルスには、この能力はありませんが、すでに分裂を止めた細胞にも感染し、細胞核へ遺伝子を導入する効率もレトロウイルスより高い。
ウイルスベクターは、複製能を欠いたウイルスで、ウイルス本来のシークエンス(動作の順序)の一部あるいは全部を治療遺伝子と置き換えることにより作られます。
初期の遺伝子治療は、ほとんどがマウス白血病ウイルス由来の組み換えレトロウイルスベクターを使ったex vivo法で行われていましたが、その後アデノウイルスの開発が進められin
vivo法への応用も一般化しています。
これらのウイルスベクターは、ウイルスの増殖様式の利点を利用して細胞内への進入から蛋白合成までを効率よく進めますが、増殖ウイルスによる発癌の危険性やウイルス中和抗体産生による不活性化などの問題が指摘され、また、大量産生や品質管理にも困難が伴うことから、これらに代わる非ウイルス性の人工ベクターの開発が重要な課題となっています。
非ウイルスベクター(キャリアー)
カチオン性リボソーム(リボプレックス)、膜融合リボソーム(ハイブリッド型ベクター)、カチオン性高分子キャリア(ポリプレックス)など
出典:日本薬剤師会雑誌 2001.3等
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ブリッジベクターと増幅動物
ウエストナイル・ウイルスの感染環で野鳥は宿主となり、野鳥を吸血する蚊がベクターとなります。
蚊は感染環の外に出てヒトや馬にウイルスを橋渡しできるのでブリッジベクターの位置づけにあります。この場合、発病したヒトや馬は感染源にならない最終宿主であるので一方向の橋渡しになります。
また体内でウイルスを急速に増やし、ベクターによる他の動物への感染源となる宿主動物を「増幅動物」いいます。例えば、日本脳炎ウイルスでの増幅動物はブタで、ウエストナイルではある種の野鳥がその役目をになっています。
出典:ファルマシア 2004.8
レトロウイルス
reverse transcriptase containing RNA virus
RNAを持ち、感染細胞(宿主細胞)内で逆転写によってDNAを合成するウイルスの総称。肉腫ウイルス・白血病ウイルス・乳癌ウイルスなど。分子遺伝学や遺伝子工学に利用されています。
逆転写酵素
reverse transcriptase
RNA依存性DNAポリメラーゼRNA dependent DNA polymerase
RNAを鋳型として、相補的なDNAを合成する酵素。
DNAを鋳型としてRNAを合成する転写の逆反応であるためこの名があります。通常、レトロウイルスが持っていて、そのゲノム中にこの酵素の遺伝子があります。逆転写酵素は普通のDNAポリメラーゼと同様、その反応開始にプライマーを必要としますが、鋳型はRNAもDNAも使用できます。レトロウイルスは、この酵素により自身(RNA)のDNAコピーを作り、これが二重鎖となって宿主ゲノムに組み込まれるのが特徴です。逆転写酵素は遺伝子クローニングで、メッセンジャーRNAを鋳型としてcDNAを作るのに繁用されています。
プロウイルス
プロウイルスとは、レトロウイルスの遺伝子が宿主細胞のゲノムに組み込まれた状態を言います。
レトロウイルスは、RNAウイルスですが細胞内で逆転写酵素(上記)によってRNA遺伝子からDNA遺伝子に逆転写されます。
逆転写されたウイルス遺伝子はインテグラーゼ酵素によって宿主のDNA遺伝子に組み込まれてプロウイルスとなります。プロウイルスからレトロウイルスが複製されて増殖を開始します。
ヒトゲノムには内在的にプロウイルスを有していて、これが発現したときには自己免疫疾患となり、1型糖尿病を発生することが知られています。
内在プロウイルス
ヒトゲノムに内在するプロウイルスがあります。内在プロウイルスが人の進化、発生、分化にどの様に寄与しているかは明らかではありません。
このプロウイルスが思春期の性ホルモンの刺激やストレスなどによって実際にウイルス粒子を作るという状況にあることが1型糖尿病の患者で明らかにされています。
1型糖尿病患者のインスリンを産生する膵臓のランゲルハンス島を試験管の中で培養して調べたところレトロウイルスが見つかりました。さらにランゲルハンス島だけでなく、患者のリンパ球でたくさんのレトロウイルスが産生されていることが明らかになっています。このレトロウイルスは、内在プロウイルス由来のもので、内在プロウイルスからの逆転写酵素を持ち、1型糖尿病を発生させるスーパー抗原であることも明らかにされています。
いわゆる自己免疫疾患と呼ばれる様々な病期が内在プロウイルスの発現によって誘導される可能性が示唆されています。
出典:日本内科学会雑誌 2001.12 Vol.90 No.12
プライマリ・ケア
プライマリ・ケアとは、個々の患者の抱える問題の大部分に対処できて、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療にあたることで、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルス・ケア・サービスのことです。
過去40年以上続いた医学と医療の細分化による弊害を補正すべく提唱されたもので、効率的な医療システムを必要とします。 何らかの心身の異常に対して具体的に対処することを"ケア"という言葉で表わすなら、医療を含むケアのレベルを概念的に4つに分類できます。
セルフケアは、ケアを必要とする本人か家族、あるいは知人の知識や手技で解決されるレベルでありプライマリケア、セカンダリケア。ターシャリケは、医療専門職のケアを必要とするレベルです。
・セカンダリケア〜一般病院に入院が必要となる か、あるいは臓器別専門医の外来で提供されるケア
・ターシャリケア〜広い地域から集まってくる少 数の患者についてのみ必要となる、特殊な手技や知識の提供
・プライマリケア〜セルフケアとセカンダリケア の中間にある医療の大部分をしめる最も重要なケア
ANP(atrial natriuretic polypeptide)
心不全の代償機序として、交感神経、レニン・アンジオテンシン系、バゾプレッシンの活性が増加します。このことは、心筋収縮力を増強させますが、同時に腎臓での水・Na貯留を促進し、動脈を収縮させ血圧を上昇、維持させます。これらの圧・容量負荷により、またこれらの神経体液因子の直接的作用により心肥大が生じ、心収縮力が増します。これらの代償機序はいずれも臓器灌流圧を心収縮力を増加させようとするものです。
しかし、重症例では腎臓での水・Na再吸収の亢進結果生じる体液貯留によるうっ血・心前負荷の増加のため、心不全が却って悪化します。
近年、これらの代償機序に加え新たにNa利尿ペプチド系の関与が明らかになりました。1950年代より心房筋を伸展させると尿量が増加することが知られていました。その利尿作用の原因物質であるヒト心房性Na利尿ペプチド(αーhANP)は1984年の我が国で単離、同定された28個のアミノ酸から構成されるペプチドホルモンです。
ANPは生理的には心房筋内に存在し、心房の伸展によって分泌が規定されています。静脈還流に伴う心房の伸展に応じて分泌されますが、心筋肥大を伴う重症心不全では心室筋からも分泌されます。心不全では循環血液量が増えたり、心収縮力が低下したりして心房圧が上昇し、ANPの分泌が増加します。また通常はほとんど存在しない心室筋でもANPが合成され始めます。
ANPの受容体は主として血管壁に存在し、広く生体内に分布します。臓器としては、腎臓、肺、副腎などに多く、ANPが受容体に結合するとこの細胞内cGMPが増加し、これがセカンドメッセンジャーとして血管を拡張させ、ひいては血圧が低下します。また腎臓では糸球体濾過値を増やし、水・Na排泄を著明に増加させます。副腎ではアルドステロンの分泌を抑制します。さらに軽度ですが、交感神経系、レニン・アンギオテンシン系の抑制作用を有します。
急速に食塩水を飲んだり、点滴静注した時におきる尿中ナトリウム排泄の急激な増加はANPの分泌亢進が関与します。また発作的に頻脈がおきると尿量が増加するのもANPの分泌増加によるものです。これらの作用はいずれも心不全の治療に有用です。事実ANP濃度が増加する病態の中で心不全が最も高値を示す事から、ANPを心不全の治療薬として使用することが考えられました。こうした経緯をふまえ、カルペリチド(ハンプ)が遺伝子組換え技術により合成されるようになりました。これがヒトαーhumanANPです。
BNPは最初、脳で発見されたためこの名前ですが、実は心筋で最も多く産生されます。BNPは生理的状態ではANP(上記)と異なりほとんど分泌は変化しませんが、心不全のように心肥大が生じると心室筋で合成が著名に増加し始め、その増加の程度はしばしばANPを上回ります。
サーカディアンリズム
生体の周期的リズム 関連項目:時間薬理学(生体リズムと薬物療法)もご覧下さい。
生体の示す24時間リズムの中で、とくに内因的なものを言う。
概日(がいじつ)リズム
光・温度などの外界の周期的変化を排除した状態で生物にみられる生理活動や行動のほぼ一日周期の変動。
→体内時計
まず、疾患の発症や薬物の作用に時刻差があることが注目されました。その後、時計機構の障害そのものが引き起こす疾患の存在も気づかれてきています。
季節性感情障害や睡眠・覚醒リズム障害などがそれで、また、老人の夜間徘徊や不穏といった行動異常の背景にも、生体リズムの異常が推測されています。
これらの異常を高照度光照射療法をはじめ種々の方法を用いて治療しようという試みも活発化しています。
時刻調節を行っている視交叉上核(SCN)は行動に時間的な秩序を与えている限定された場所として生物時計と呼ぶにふさわしい。
人間が地下室で時間の手掛かりなく暮らしてもらうとその周期は約25時間になることが知られています。外界の環境に24時間の周期性が存在すると内因的なリズムは、環境の周期に同調して正確に24時間になります。このとき周期が24時間になるだけでなく、その位相も外界の位相と特定の関係にそろえられます。例えば、朝活動する動物は固体によって内因的なリズムの周期が少し違っていても、朝、日の出のときに揃って活動するようになります。決して、ある固体は朝、別の固体は昼、また別の固体は夕方活動するといった位相の違いは現れません。
リズムの周期は環境の温度にはほとんど影響されません。
睡眠覚醒リズム障害の治療法には、高照度光療法(光治療)とビタミンB12があります。ビタミンB12(生体内で活性を持つのはメコバラミン:内服)の作用機序はまだ詳細には解明されていません。現在は食後3回が一般的だが、内服後の半減期がかなり短いことが指摘されています。
うつ患者にクロミプラミン;朝と昼と夜の分3、朝のみ、昼のみ、夕のみの4群では、昼のみが抗うつ作用が最も高く、分3は最も治療効果が低い。また抗うつ薬による振戦や口渇は夕のみで最も頻度が高い。
DSPS:delayed sleep phase syndrome
睡眠覚醒リズム障害には急性型として、時差症候群(Jet lag syndome、時差ぼけ)や抗体勤務症候群、また慢性型として、非24時間型睡眠覚醒症候群(non-24)、睡眠相後退症候群(DSPS)や不規則型睡眠覚醒リズムパターンなどに大別できます。
出典:治療 1999.1
DSPSとは、慢性的に入眠時間が遅れ、望ましい時間に起きられず、出眠時間がいつも遅れる状態。大体、朝4時ごろにならないと入眠できず、8時間くらい寝て昼の12時頃起きるパターンを呈します。
メラトニンで概日リズムの位相を前進させる方法が試みられており、メラトニン5mを望ましい入眠時間の4〜6時間前に投与したところ、入眠時間が90分前進したと言う報告があります。
non-24
毎日入眠およ出眠時間、つまり睡眠相が約一時間ほど後退していく睡眠・覚醒リズム障害。いわゆる25時間のフリーランのリズムを呈しています。
メラトニンを毎日夜間の一定時刻に投与することで24時間に適切に同調できた報告があります。
ベンゾジアゼピン系による治療
臨床と薬物治療 1999.12
<薬物療法>
短時間あるいは超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬を、希望する就寝時刻の2〜4時間前に投与し睡眠層を前進させようとする方法。
ハルシオン錠がハムスターの活動周期を前進させるとの報告から行われるようになりました。
有効例の報告もあるが、軽症例のDSPSにしか効果がないといわれています。
一方で、夜間にハルシオン錠を服用し、望ましい起床時間の1時間前に覚醒作用を有する塩酸メチルフェニデートを服用させるという方法が、睡眠を正常な位相で固定するのにかなり有効であるとの報告があります。
ビタミンB12(メチコバール錠)
非24時間睡眠覚醒症候群の症例に有効であったことから、概日リズム睡眠障害に対して広く用いられるようになりました。日本で約3割に奏効
ビタミンB12の睡眠・覚醒リズム障害に対する作用機序としては、ビタミンB12が、体内時計の光感受性を高めることによって、リズム同調作用を増強すること。そして徐波睡眠の増加など睡眠を促進することなどの可能性が考えられています。
<その他の療法>
高照度光療法〜人工照明機を用いる。
関連項目:時間薬理学(生体リズムと薬物療法)