無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学

 

 

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CDS
Core Data Sheet

 全世界国際医学団体協議会に所属する医薬品の製造業者が作成した文書で、とりわけ副作用を含む安全性情報からなり、製造業者が、その医薬品が販売されているすべての国で、できる限り添付文書に反映されることを目的に作成されたものであり、各国の添付文書の安全性情報の共通化を目指しています。


CNS

コアグラーゼ陰性ブドウ糖球菌(coagulase-negative staphylococci)

若い女性の急性膀胱炎の起因菌となります。


CTL

cytotoxic T lymphocyteの略.

癌特異的キラーT細胞

 キラーT細胞は、抗原特異的に標的細胞と結合してこれを破壊するT細胞亜群で,マーカーとしてCD8抗原を持ちます。同系の標的細胞に対するキラーT細胞は細胞表面の非自己抗原と共に自己と同一のクラスI主要組織適合抗原を認識して破壊する(MHC拘束)ので,ウイルス感染細胞の除去などに有効です。同種の標的細胞に対するキラーT細胞は移植片拒絶反応の中心的役割を果たします。 

 癌抗原になりうる候補(candidate)癌細胞での癌遺伝子、癌抑制遺伝子とその変異による産物、癌化に伴う遺伝子変化により新しいエピトープが生じます。ウイルス性腫瘍ではウイルス関連抗原が細胞表面のHTLVtaxはCTLの認識抗原の一つになります。

 B細胞性腫瘍細胞の免疫グロブリンインディオタイプは、単クローン性に増殖したB細胞上にのみ存在するから癌特異抗原とみなし得ます。このインディオタイプに対するモノクローナル抗体をB細胞性リンパ腫の治療に用いた報告があります。同様にT細胞性腫瘍でのクロノタイプも候補となりえます。


DUEプログラム

Drug Use Evaluation Program

 薬剤疫学研究の使用実態調査の1つで、米国で病院薬剤師が行っているものを指します。

 通常、医薬品使用評価と訳されています。

 有効性、安全性、経済性の3つの側面から医薬品使用の至適性を評価し、実施にあたっては書く医薬品の患者の選択、用法・用量、副作用、効果のモニターについて評価基準を作成、これに基づいて評価を行います。その結果、問題点が発見されたらガイドラインを作るなどの改善策を講じます。


HOT Study

Hypertension Optimal Treatment Study
HOT Study:Hypertension Optimal Treatment Study
高血圧に関する世界最大規模の臨床試験

至適拡張期血圧を83mmHgに70mmHgまで降圧しても「Jカーブは現れない」



ハントの分類
grading of patients with subarachnoid hemorrhage after Hunt
Hunt Grade

虚血性脳障害の重症度の評価尺度

GradeT:無症状であるか、あっても最小限の頭痛、軽度の項部硬直
Grade U :中等から重篤な頭痛、項部硬直を認めるが、脳神経麻痺以外の神経症候を欠くもの
GradeV:傾眠、錯乱がみられるもの、又は軽度の巣症状
Grade W:昏迷、中等度から重篤な片麻痺、おそらく初期の除脳硬直、自律神経機能障害のあるもの
Grade X:深昏睡、除脳硬直を示し瀕死の状態にあるもの。

 破裂脳動脈瘤患者の重症度を意識と神経学的徴候から分類(グレード分け)するものである.HuntとHessあるいはHuntとKosnikによってなされました.同様の試みはBotterellによってもさきになされています.患者の治療管理あるいは手術成績の予測,比較に有用です。

別の資料では

0:非破裂動脈瘤,
I:無症状または軽度の頭痛,項部硬直のあるもの,
II:中等度,強度の頭痛,項部硬直はあるが脳神経麻痺以外の神経脱落症状のないもの,
III:傾眠,錯乱または軽度の巣症状のあるもの,
IV:昏迷,中等度‐強度の片麻痺,早期の除脳硬直および植物神経症状のあるもの,
V:昏睡,除脳硬直,瀕死の状態.なお,高血圧,糖尿病などのリスクがあれば1段階さらに重症とする考えかたもある.手術による死亡率はI:0〜5%内外,II:10%強,III:20%前後,IV:50%前後,V:80%以上となっている

(William Edward Huntはアメリカの脳神経外科医,1921生)


医薬部外品

出典:日本薬剤師会雑誌 2000.7

 医薬部外品は、昭和18年の旧旧薬事法制定時にそれまでの「売薬部外品」が改称されたものです。

 昭和23年の旧薬児法制定時には、化粧品や医療用具が薬事法の規制の対象となるとともに医薬部外品制度は廃止され、医薬部外品は医薬品かあるいは化粧品のいずれかで規制されることになり、その後、昭和35年の現行薬事法の制定により医薬部外品の制度が復活しました。

 EUや米国には、医薬部外品という区分は無く、日本で医薬部外品に該当するものの中には、EUでは化粧品に該当し、米国では医薬品(コスメティックドラッグ)か化粧品に該当するものとして規制されているものが存在します。

 医薬部外品は、薬事法により、その使用目的について口臭防止や育毛剤等の特定のものが規定されています。また、人体に対する作用が緩和なものであることも医薬部外品の条件です。ただし、医薬部外品としての使用目的のほかに、医薬品としての用途に使用されることもあわせて目的とされるもの、あるいは器具機械に該当するものは、医薬部外品ではなく、医薬品もしくは医療用具としての規制を受けます。

 医薬部外品は医薬品とは異なり、いわゆる適応症を持つものではありませんが、本質的に医薬品に準じるもので、医薬品同様その有効性、安全性、品質の確保に万全を期すため、医薬部外品の製造・輸入にあたっては厚生大臣の承認と、その製造輸入を業として行うための都道府県知事の許可を予め受けなければなりません。

 その一方で、作用が緩和なものであり、用法、使用目的から見て化粧品と同様に自由に販売しても支障が無い判断されたものに限って認められており、医薬部外品にはいわゆる薬用化粧品、浴用剤、歯磨き、毛染剤、パーマネント・ウェーヴ用剤、ソフトコンタクトレンズ用消毒剤等が含まれます。

 最近、平成11年に医薬品販売規制緩和に伴い新たに医薬部外品の指定が行われました。(新指定医薬部外品)

 従来医薬品のカテゴリーであった、健胃清涼剤、ビタミン含有保険剤、外皮消毒剤等の15の製品群が医薬部外品に移行されました。

1.のど清涼剤(トローチ、ドロップ剤)
2.健胃清涼剤〜胃の不快感を改善することを目的
3.外皮消毒剤〜すり傷等の洗浄・保護
4.きず消毒保護剤〜すり傷等の洗浄・保護に用いられる絆創膏類
5.ひび・あかぎれ用剤〜主にクロルヘキシジン、メントール・カンフル又はビタミンAEを配合とした軟膏剤
6.あせも・ただれ用剤〜酸化亜鉛を主成分とした外用剤
7.うおのめ・たこ用剤〜サリチル酸絆創膏
8.かさつき・あれ用剤〜尿素を主成分とした軟膏剤
9.ビタミンC、E、EC剤〜肉体疲労時のビタミン補給
10.ビタミン含有保険剤〜滋養強壮、虚弱体質
11.カルシウム剤〜妊娠授乳期、発育期などの場合のカルシウム補給


LAK
リンホカイン活性キラー細胞

 癌患者末梢血リンパ球をIL-2添加培養、増殖させ自家癌のみならず広く同種癌に抗腫瘍性を示すリンパ球群すなわちLAK細胞を同一患者へ戻す養子免疫療法

 インターロイキン(IL-2)刺激によるLAK誘導能は加齢の影響を受けず、癌の進展につれて低下します。


MUE
Medication Use Evaluation

 米国では、医療費の高騰が背景となり、医薬品選択の適正や安全性、経済性を評価する医薬品適正使用推進のためのプログラムとして、1970年代よりDUR(Drug Use Review)が、そして1980年代後半より、クライテリアを用いて系統だったプロセスで、医薬品使用の評価・分析を行うDUE:Drug Use Evaluationが推進されきました。

 1990年代には、薬剤師の基本理念としてファーマシューティカルケアが提唱され、薬剤師は患者の薬物療法の結果に対して重大な関心を払い、責任を担うようになりました。このため薬剤のアプローチも変貌し、DUEからMUEへと発展しました。

 MUEは、ファーマシューティカルケアの概念に基づき、個々の患者のOutcome:結果、成果とQOLの改善を目標に、医薬品の使用過程を評価し、改善することに焦点を当てた医薬品適正使用のためのプログラムです。

 DUEとは異なる特徴として、医薬品選択や治療の適切性、安全性、経済性について、医薬品使用のすべてのプロセス(処方、供給管理、投与時、モニタリング)でMUEは推進され、薬剤師のみならず、他の医療従事者もプログラムに参画することが挙げられます。

出典:日病薬 1998.10


Neuroleptanalaesia

 意識の消失なしに鎮痛効果と鎮静効果の得られることで、無痛状態を得ると同時に、安静、周囲の環境に対する無関心、自律神経系の安定、さらに高度の非被刺激性が得られ、精神科領域でいうMineralizationの状態(無生物のように情動表出のなくなった状態)となり、この状態では、患者は手術に伴う苦痛もなく、患者と術者との間に意思の疎通のある状態で手術を行うことができます。

ドロレプタン+フェンタニスト


ドライウェイト

   出典:日本病院薬剤師会雑誌 2001.4

 ドライウェイトとは透析により除水の目安として用いられる言葉で「適正体重」とも呼ばれます。

 透析患者は腎機能の廃絶のため水分の排泄が不十分となり循環血液量が過多になります。過大な体液量は高心拍出量による高血圧や肺水腫、心不全を引き起こします。透析により過大な体液量は除水されますが、次の透析までの間に水分が危険なレベルにならないよう、透析時には除水量の設定が必要となります。つまり、透析終了時には余分な体液がすべて除去され細胞外液量が是正されなければなりません。

 このように、透析患者の体液量が適切で、浮腫・高血圧・心不全等を示さない基準の体重をドライウェイトといい、ドライウェイトを目標として透析による除水が行われます。

 ドライウェイトの決定には算出式はなく、具体的には透析終了時に、
1.顔や手足の浮腫および胸部X線により肺うっ血や胸水の貯留がない。
2.血圧は正常。
3.疹胸比(CTR)は50%以下
4.これ以上除水すると血圧が低下する。

      の4項目を目安に決定されます。


PMI

患者向けの添付文書のこと

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CCDS
Company core data sheet

企業中核データシート

 薬剤の承認を世界で初めて取得した企業が作成する各国の添付文書を作成する際に基準となる製品情報文書で、安全性情報の他、適応症、用法・用量、薬学的情報、製品に関するその他の情報を記載したものです。世界中から集積された安全性情報を評価し、常に最新の情報が盛り込まれるように改訂されています。


敗血症

 従来より、敗血症、菌血症という言葉は曖昧に用いられてきました。

 従来の定義によると、敗血症とは「生体内のある部位に感染巣が存在し、その結果、血液中に菌あるいは菌関連物質の流出を持続的あるいは断続的に生じ、他の部位にあらたな感染巣を作り呼吸不全、循環不全、ショックなど重篤な全身症状を呈する疾患」と考えられ、
 
 菌血症は「本来存在しないはずの流血中に菌が存在する状態」とされてきました。

 発熱、発汗、意識障害などの臨床症状や白血球数、CRPなどの炎症所見、特に血液中の起炎菌検出や抗原、エンドトキシンといった菌関連物質の証明が重要視されていました。しかし、近年は抗菌薬療法の進歩などに伴い、培養法の進歩にも関わらず実際には流血中から起炎菌の証明される患者は少なく、患者の病態と細菌学的検査のズレが生じていました。また、統一化された診断基準がなく、各医師の判断にゆだねられていました。


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2002年5月15日号 No.337

SIRS(サース):新しい敗血症の概念

 

                 {参考文献}医薬品ジャーナル 1998.6

SIRS:systemic inflammatory response syndrome〜炎症性サイトカイン優位
   全身性炎症反応症候群

CARS:compensatory anti-infulammatory response syndrome〜抗炎症性サイトカイン優位

MARS:mixed antagonistic response syndrome

* SIRS

 1990年代以降、敗血症に対するステロイドなどの各種の新しい治療が試みられるようになりました。しかし各種の新しい治療薬を駆使し敗血症の治療を行ってみても、その治療成績は期待したほどには上がりませんでした。

 その原因として、敗血症の診断が遅すぎて治験での対象となる患者が重篤過ぎるのではないか、あるいは統一化された敗血症の定義がないことが影響しているのではないかといったことが指摘されるようになりました。

 1991年の米国集中治療医学界と米国胸部疾患学会の合同会議により、敗血症とその関連病態としてSIRSという新しい概念が提唱されました。

  <SIRSは、体温、脈拍数、呼吸数、白血球数により定義づけられます。>

1.体温 >38℃ または <36℃
2.心拍数 >90/分
3.呼吸数 >20回/分、またはPaCo2<32oHg
4.白血球数 >12,000/μl、あるいは<4,000/μl、または幼若白血球数>10%

 この定義によると、膵炎、熱傷、外傷など様々な疾患が原因でもSIRSと診断されることになり、敗血症は感染症によるSIRSとされています。

 また、この解釈では、敗血症は菌血症や真菌血症を呈する必要はなく、従来の敗血症と比較すると非常に簡単に診断ができ、診断基準がかなり広くなったと言えます。

 このようにSIRSという非常に広範囲に病態を包括する概念が導入された背景には、敗血症をはじめ、膵炎、熱傷、外傷などの様々な原因により引き起こされる病態の本質が明らかになったからでもあります。

 つまり、これらの病態は、「免疫担当細胞あるいは炎症細胞が様々な侵襲により刺激を受け、TNFα、IL1βなどのサイトカインを産生し、それが血中に放出され全身的な炎症反応を引き起こしている状態」、すなわち高サイトカイン血症が本質であることが、明らかになり、SIRSの概念が導入されたのです。

 SIRSという概念は、敗血症に関連した病態を整理し、重症化する可能性の高い症例を最初の段階で識別するのに有用であることが明らかになってきています。しかし、一方でSIRSの診断基準は極めて緩いもので、問題点も残っています。今後重症化する可能性がより高いSIRSを診断し、より積極的な治療が必要かどうかを見極める診断基準あるいは概念の導入が必要と思われます。

* CARS

 侵襲により局所で産生される炎症性サイトカインに退行するため、同じ局所で産生される抗炎症性サイトカイン優位の状態がCARSです。

 このSIRSとCARSのバランスがとれていれば、侵襲が加わっても生体は見かけ上はホメオスタシスが保たれ、SIRSの方が強ければMODS(多臓器不全症候群)となり、CARSが強ければやがてアレルギーや免疫系の抑制が起こり、病態が悪化していきます。

 SIRS、CARSなる2つの相反する病態が存在し、これらのバランスをうまくコントロールするような治療が必要ですが、それには更なる研究を待たなければなりません。

* MARS
mixed antagonistic response syndrome

 SIRSとCARSが混在し病態を形成する場合MARSとしています。

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MODS
multiple organ dysfunction syndrome

多臓器不全症候群

治療なしでは生体恒常状態(ホメオスタシス)を維持できないような臓器機能不全がある状態

MOF:multiple organ faiure
多臓器不全

Septic MOF
敗血症性多臓器不全

 多臓器不全とは、中枢神経、心、肺、肝、腎、消化管、凝固系、免疫系などの重要臓器や系に、同時あるいは短時間のうちに次々と機能不全に陥る病態です。

 MOFは様々な原因によって発症しますが、中でも感染に続発するMOFは最も発生頻度高く、敗血症性多臓器不全(Septic MOF)と呼ばれています。

 MOFを多臓器が動的に徐々に障害されていく1つの症候群として捉え、各臓器障害(organ dysfunction)と定義し、MODSと呼ぶことが提唱されています。

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追加記事

SIRS

 SIRSは感染症のほか外傷、熱傷、膵炎等種々の原因で起こりますが、そのうち感染の結果引き起こされたSIRSをsepsis(敗血症)としました。これにより、感染症の中から敗血症が区別され、敗血症の定義がより明瞭になりました。

 SIRSは、高サイトカイン血症で、侵略時に誘導されるサイトカインにより好中球やマクロファージが活性化された状態です。その際に感染、出血、ショック等であれば、臓器不全が起こる危険度が高まります。つまり、SIRSは臓器不全の準備状態で、その警告兆候とみることができます。そのため、SIRSの概念の導入は、臓器不全を発症しない段階でその可能性のある患者を選別し、厳重な管理をするために極めて有効と考えられています。

日本病院薬剤会雑誌 2002.6


2002年5月15日号 No.337

   運動と癌死亡率 はこちらです。


<薬学・医学用語辞典>

アスパルテーム

 アスパルテームとは甘さが砂糖の20倍あるアミノ酸系のアスパラギン酸とフェニルアラニンより合成されており、低カロリー甘味料として食品、飲料に使用されています。

 この甘味料はフェニルアラニンを含んでいるので、フェニルケトン尿症の患者には注意が必要です。


   出典: 大阪府薬雑誌 2000.1 p111

添付文書で確認して使用することが望まれます。

 アプレース細粒、エレンタール、ガストローム顆粒、バナンDS、ファロムDS、フロモックスDS、メイアクト小児用細粒等に含まれています。


アフェレーシス

 必要な細胞または液性成分を除去したのちに、再び患者の血液を患者自身に輸注すること。

 医学用語として現在用いられているaphersisは血液Naかの構成成分を分離したのち、1つあるいはそれ以上の成分を除去する操作をいいます。この操作は、治療技術として血液中から病因的な役割を演じている細胞や科学的物質を除去するために用いられる他に、健康人供血者から血漿や血球成分を採取する成分採血に用いられます。

 血漿の浄化に限定されて用いられてきた血液浄化法も、リンパ球をはじめ血液中の細胞成分も対象として注目されるようになってきています。


インバース アゴニスト

Inverse Agonist

逆活性薬

 G蛋白質共役型受容体と結合して活性反応を示すアゴニスト(活性薬)は、活性反応を引き起こす力をefficacy(有効性)が大く、言い換えればinstrinsic activity(内活性)が1つであるフルアゴニスト(完全活性薬)とefficacyが小さい内活性1と0の間にあるパーシャルアゴニスト(部分活性薬)と呼ばれるものに分けられます。

 また、受容体と結合しても活性反応を示さないアンタゴニスト(拮抗薬)が存在し、これのefficacy及びinstrinsic activityは0である。

 ところが近年アンタゴニストの一部に、普通の条件では単に競合的拮抗薬として作用しますが、ある条件下でG蛋白質と受容体の共役が亢進した場合には、アゴニストとは逆の(インバース)活性作用を示すものがありことが分かってきました。すなわちインバースアゴニスト(負内活性)を示す薬物の存在が明らかとなりました。

 これらをインバースアゴニストまたは拮抗薬でありながら負の作用を持っているという意味でネガティブアゴニスト(負拮抗薬)ともいいます。

 インバースアゴニストにもフル及びパーシャルインバースアゴニスト(完全及び部分逆活性薬)の存在が知られています。

 ベンゾジアゼピン受容体では早くからインバースアゴニストの存在が論じられていました。この受容体はGABA−A受容体を介して生体に影響を及ぼします。

 ベンゾジアゼピン受容体活性薬は幅広い数値のinstrinsic activityを持っており、それに従ってGABA作動性効果を強めたり逆に弱めたりします。

 一方、フルマゼニルなどベンゾジアゼピン受容体拮抗薬はinstrinsic activityは0であり、受容体活性の効果を抑制します。

 インバースアゴニストが受容体に結合した後、どのような機序によって抑制作用を起こすかは現在のところ不明です。しかし、アンタゴニストはG蛋白質共役型受容体と結合するだけでなく、受容体にG蛋白質への共役には不向きな構造変化を起こすことが報告されており、この性質が何らかの関与をしているとも考えらます。

 またインバースアゴニストの生理的意義についても明確でないので、生体への作用は今後の研究成果が待たれます。G蛋白質共役型受容体の突然変異は病変に関係することがありますので、変異受容体の活性を抑えるインバースアゴニストは、ここでは有益な効果が期待できそうです。

 薬理学的に新しい型の薬物であるインバースアゴニストが、今後の研究の発展によって医療の場へ医薬品として供されることを期待されています。

出典:ファルマシア 1997.6

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 従来、普通の静止状態では、G蛋白質と共役している受容体はinactive conformation(不活性型)Rをとっておりアゴニストが結合すると活性化され、active conformation(活性型)R*へと変わると考えられていました。

 しかし、最近では受容体は不活性型Rだけでなく、アゴニストが存在しなくても受容体が極度に活性化される条件になれば、活性型R*をもとるうるという考え方、すなわちTwo-stateモデルが提唱されています。

 このモデルでは、受容体はRとR*が平衡状態にあり、アゴニストが存在すると、アゴニスとはR*へ高親和性を示すので、平衡関係はR*へ移動し、R*の濃度が増加します。

 もしある薬物がRへ高親和性であるならば、この薬物の存在で平衡関係はR側へ移動し、R*は減少し、Rが増加する。この薬物がインバースアゴニストです。

 一方、競合的拮抗薬(注:ニュートラルアンタゴニスト)はRとR*のいずれに対しても同じ親和性を示すので、アゴニスト、インバースアゴニストのいずれに対しても同様に競合的に拮抗します。

 アゴニストとインバースアゴニストについて論じる時には、アンタゴニストをその中間にあるneutralをつけて呼ぶことが多い。

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リガンド:受容体と結合する能力をもつ物質(元々生体内にあるものを内因性リガンドという。)

G蛋白共役型(GPCR)

 受容体は種類により、それぞれ特異的なアミノ酸配列および空間構造を有しているため、特定のリガンドを選択的に結合する機能を持っています。

 リガンドと受容体との間にはイオン性、水素結合性、疎水性またはファンデルワース等の結合力が作用しています。

 リガンドが受容体と結合すると、アミノ酸の連鎖で形成されている受容体の空間構造が変化し、その歪みが情報として細胞内に伝達され、その情報はG蛋白を介し、セカンドメッセンジャーに伝達され、その結果、生体内物質の活性抑制や遺伝子発現等の生体反応を発現します。

 情報伝達にG蛋白が重要な役割を担っている受容体はG蛋白共役型と称されています。

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オーファン受容体        こちらもご覧下さい。→シリーズレセプターを考える

オーファン受容体とは、リガンドが同定されていない受容体をいいます。

ゲノム情報から、遺伝子産物の構造がG蛋白共役型受容体(GPCR)であることが予想されています。

オーファンGPCR

オーファン(孤児)→対応する内因性リガンドが不明

脱オーファン:リガンドが見出されたGPCR

GPCR:G protein-coupled receptor〜 G蛋白質共役型受容体

 細胞膜を7回貫通する構造の受容体に特定の生理活性物質が結合すると、そのシグナルはG蛋白質と呼ばれる蛋白質を活性化し、効果器を経て他の種々の蛋白質を活性化する小分子”セカンドメッセンジャー”を動員します。このような受容体のことを、GPCRと呼びます。

 そもそもGPCRは、1986年には2つしか知られていませんでした。網膜に存在し、光フォトンを受け取る受容体「ロドプシン」と心臓に存在する「β2アドレナリン受容体」です。
この2つの分子は、局在する組織も機能も全く異なる蛋白質であるにもかかわらず「膜を7回貫通するという構造的に特筆すべき共通点を持っていました。

 この膜貫通部分が良く似ていることを生かして、次々とGPCRが同定されてきています。

    出典:ファルマシア 2008.2 等
 


G蛋白質

G protein
同義語:GTP‐結合蛋白質 GTP‐binding protein

 グアノシン三リン酸(GTP)と結合して活性化される蛋白質

 細胞の情報伝達の鍵を握っている。〜GTP‐結合タンパク質は細胞膜受容体の情報伝達にかかわる三量体Gタンパク質(狭義のGタンパク質)とRasなどの低分子量GTP結合タンパク質の2種類に分類される。


クレオラ体

 好酸球や剥離した気道上皮細胞の塊で、これがあれば気道炎症が強いことを意味しています。


シグナル伝達異常

  出典:現代医療 Vol.31 No.3

 膠原病での細胞内シグナル伝達異常はSLE(全身性エリテマトーデス)で以前より指摘されていました。

 そのメカニズムが分子レベルで研究されるようになり、T細胞のシグナル伝達異常が注目されています。


ソーダライム

 閉鎖式、または半閉鎖式呼吸回路で吸入麻酔を行う場合、呼気中の炭酸ガスを吸収剤として取り除く必要があります。この目的でソーダライムが使われます。消石灰Ca(OH)2;80%、NaOH;5%H2O;15%、SiO2;0.2%を練り固めた、凸凹不整、硬度75、多孔性の4〜8メッシュ(粒子径4mm前後)の白色顆粒である。1モルの炭酸ガスと反応して27500calの熱を発します。

 反応が進んでアルカリ度が低下すると、添加指示薬のメチルバイオレットが紫色に呈色し、硬化します。


アナログ耐性

アナログとは、類似、相似のこと。構造類縁体と訳されています。

 アナログには、通常、フィードバック調節を誤動作させて代謝系を阻害する作用があります。このアナログで代謝系が阻害を受けない性質がアナログ耐性です。

 一般に微生物は、代謝物質が蓄積すると、その物質の生合成経路がフィードバック阻害を受けてしまうために、一定量以上は産生出来ませんが、アナログ耐性を獲得した変異株は、その限界を超えて物質産生を継続することが出来ます。

 この仕組みを利用して、アミノ酸発酵では、アナログ耐性株が生産菌として選抜され、工業的に広く利用されています。
                      出典:ファルマシア 2003.6
・インスリン アナログ製剤

 1976年に、半合成ヒトインスリンが開発されるまで、臨床では牛や豚の膵臓から精製した動物インスリンを用いていた。現在、使用されているインスリンは、ほとんどが大腸菌や酵母を用いて生合成されたヒトインスリンです。

 近年になり、遺伝子組み換え技術を応用したインスリンアナログ製剤が開発され、それまでの製剤的な工夫ではできなかった、速効性と持続性を示す製品が臨床応用可能となりました。

アナログ製剤:より生理的なインスリン分泌動態の再現を目指して、インスリンのアミノ酸を修飾

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ヒルジンアナログ


ヒルジンは、蛭の唾液腺より精製された、最も強力なトロンビン阻害剤

 その構造と機能解析により、各種のアナログが合成されています。なかでも、ヒルログ(現bivalirudin)はヒルジンとは異なり、トロンビンを一過性にのみ阻害し、間接的にプロテインCを活性化するユニークなアナログで、急性心筋梗塞時の血栓溶解療法でその有用性がヘパリンに比して高い有用性があると報告されています。

                     出典:医薬品ジャーナル 1999.4


ヘモジデロージス

鉄の組織への沈着


鉄剤とサロベール(アロプリノール)の相互作用


リグレッション

退縮

動脈硬化に対する退縮(リグレッション)効果(ロレルコ)


RAD-AR

Risk/Benefit Assessment of Drug - Analysis and Response

 医薬品が本質的に持っているリスク(好ましくない作用など)とベネフィト(効能・効果や経済的便益など)を科学的に検証して分析を行ない、その成果をもとにして社会に正しい情報を提供し、医薬品の適性使用を推進するとともに、患者の利益に貢献する一連の活動


 日本RAD-AR協議会は、国内の主要研究開発指向型企業によって1989年5月に設立された団体。

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ファーマコビジランス(ファーマコヴィジランス)
Pharmacovigilance

 Vigilanceとは警戒、用心、不寝番

 ドラッグモニタリングに相当するフランス語として使われていたことがあります。

 ビジランスという表現は語源的にラテン語に由来し、スペイン、イタリア、フランスなどで今日でも日常用語として普通に使われている表現です。

 ファーマコビジランス(PV)という表現は、フランスでは1973年に医薬品安全性関連システムに対して用いられていました。当時、この表現は市販後医薬品の副作用調査を対象とした概念に使われていましたが、その調査・評価対象としてリスク・ベネフィットの評価にまでその概念を拡大すべきとされています。

 ファーマコビジランスの意味するものが、従来のドラッグモニタリングとか市販後調査などの概念から拡大されるようになった背景には医薬品開発、申請が世界的な規模で行われるようになり、従来の市販前・市販後という概念の線引きが不明瞭になってきたこと、安全性問題は、市販前・後も相対的に評価すべきことなどがあげられます。

 したがって、総合的にはこのファーマコビジランスの対象は動物実験データ、全臨床データ、治験データ、市販後データ、薬剤疫学データ、リスク・コストベネフィット評価データなどを総合的に掌握したものを念頭に置いたものになるべきと考えられています。

 つまり、かつてのようにそれぞれの副作用自発個別症例を収集し、対応するといった「点情報処理」から、継続した総合評価のフォーローアップという「免情報処理」に移行し、その延長線上にPSUR:periodic safety update reports(定期的安全性最新報告)があり、薬剤疫学があり、またリスク・ベネフィット評価があると理解することができます。

 このファーマコビジランスが従来のドラッグモニタリングと根本的に異なる点は前臨床段階、治験段階への積極的な関与です。

              出典:レーダーニュース May.2004 (くすりの適正使用協議会)

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GVP
good vigilance practice

 医療用医薬品製造販売業の許可要件となる市販後安全管理の実施基準を定めた省令

 2005年4月に施行された改正薬事法によって、メーカー(製造業)は製造販売業と製造業にとに分かれました。商品の開発、製造承認申請、販売、販売後の安全性などをこの製造販売業が行います。

 一方、製造業は商品を直接卸などに販売できず、作ることに専念します。

 製造販売業の許可要件には、市販後安全管理と製品の品質保障管理の2つの確保が求められています。「安全管理部門」が設置され、安全管理責任者が配置されました。

 品質保障管理には品質保証責任者が配置され、商品の品質、製造管理、出荷、回収などを新しく定められたGQP(品質管理基準)を拠り所として業務を遂行します・

 安全管理責任者と品質管理責任者を総括するものとして、製造販売業には薬剤師の総括製造販売責任者が設置され、製造と販売に重い責任を負います。最終製品を販売できるのはこの製造販売業だけです。

 製造業は製造販売業の指示で製品を作ることと、製造業への原料販売だけを行います。製造業の許可はGMP(製造管理および品質管理に関する基準)が確実に行われていることが条件になります。

  出典:日本病院薬剤師会雑誌 2006.4



 PMS:Post Marketing Surveillance文字通り市販後段階のみに焦点があてられ、副作用個別症例の評価にさいては前臨床段階のデータまでを常時参照・考察するようなことは現実的には軽視される傾向にありました。

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SAMM:safety assessment of marketed medicines
(サム)
市販後医薬品の安全性評価

 SAMMガイドラインは英国医薬品庁の、医薬品安全性委員会、英国製薬工業協会、英国医師会、王立一般医師会の5者の作業班が作成したものです。欧米諸国ではこのガイドラインに基づいてPMS研究が実施公表されています。

 実地診療での市販医薬品の臨床的安全性を評価することを目的として実施される公的な調査のためのガイドライン

 出典:レーダーニュース May.2004 (くすりの適正使用協議会)


リボソーム
ribosome


 細胞質中に含まれる、リン脂質と蛋白質よりなり小胞体で、RNAを多く含みます。

 蛋白質合成作用がある。パラーデ顆粒ともいいます。


リボ核酸
ribonucleic acid

ペントース核酸ともいいます。

 ミクロゾーム(マイクロゾーム)中にリボ核酸として高濃度に含み、蛋白合成に関係します。
生物体では、mRNA(メッセンジャー)、tRNA(転移)、rRNA(リボソーム)の3種類があります。

同義語:RNA

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RNA干渉
RNAiとsiRNA

 RNA干渉(RNA interference:RNAi)とは、二本鎖RNAによって配列特異的にmRNAが分解され、その結果、遺伝子発現が抑制される減少のこと。この時、長鎖の二本鎖RNAから切り出されてガイド役として働く21〜23塩基の二本鎖RNAがsiRNA(short interference RNA , small interfering RNA)です。

 siRNAの配列特異性は非常に高く、長さが21塩基、3’端突出が2塩基のものが最も効果が高いとされています。

 長鎖の二本鎖RNAは、動物細胞中に導入すると非特異的な免疫応答を起こすことが知られています。一方、siRNAでは動物細胞中に直接導入することで免疫応答を抑えてmRNAを破壊することが2001年に明らかにされました。それ以来、siRNAは遺伝子治療など様々な研究分野で注目を浴びています。

       出典:日本病院薬剤師会雑誌 2005.5


ノンコーディングRNA
(コード:調整、調和の取れるものとすること。→コーディネート)


 これまで生物の多様性は、遺伝子の違いによる蛋白質合成に相違に依存すると考えられてきました。しかし、近年のゲノム解析からDNAの中で蛋白質合成に関わる遺伝子は全塩基の2%に過ぎず、さらに蛋白質をコードする遺伝子の数には生物種で大差がないことが分かってきました。残りの98%のDNAから転写される産物の多くは蛋白質をコードしないRNAで、ノンコーディングRNAと呼ばれています。

 ノンコーディングRNAは、DNAの情報を基に出される様々な指令のオン・オフを制御し、生体反応を規律正しく維持する働きをしています。このことより、生物は蛋白質の種類を増やすことで複雑さを生み出しているのではなく、遺伝情報の発現を様々なレベルで修飾するノンコーディングRNAの種類を増やすことで多様性を生み出したと考えられるようになって来ました。

 現在のところ、機能が明らかなノンコーディングRNAは極めて少ないのですが、その機能の解明によって、再生医療、創薬、診断などに関わる新しい技術の開発に繋がると期待されています。例えば、癌細胞は増殖するときにDNAを基に蛋白質を合成しますがm疽のときに出来るメッセンジャーRNAの機能を止めるノンコーディングRNAを働かせることで、蛋白質の合成を阻止し、癌細胞を破壊することが出来ます。

   出典:日本病院薬剤師会雑誌 2010.5

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スモールRNA

ノンコーディングRNAのうち、長さがわずか約20〜30塩基の短いRNA分子で、発生、分化、腫瘍進展、神経発生、トランスポゾンのサイレンシング、あるいはウイルス防御といった種々の生物学的プロセスの調整で重要な役割を果たしています。

従来から知られているmicroRNA(miRNA),short interferingRNA(siRNA),piwi-interactingRNA(piRNA)などに加え、機能未知のスモールRNAが存在します。
これらの研究は歴史が浅く急速に進展しつつある分野で、新規のスモールRNAは現在も探索されていて、完全には解明されていません。

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エクソソーム(exosome)

エクソソームは、細胞外に分泌される直径30〜100nm程度の小胞で、その膜構造は細胞自身や細胞内小器官と同様に脂質二重層からなっています。

 生体では、エクソソームは血液、唾液、尿、乳汁などの体液中に安定して見出され、こららの保存されたサンプル中で分解を免れて存在し得る安定した構造であることの裏付けともなっています。

 エクソソームの生合成の最初の過程は、細胞内小器官である多胞体内への分泌小胞の形成として起こる為、エクソソームは細胞膜と同じ膜トロポジーを持ち、その内容物は細胞質成分に由来します。 

 出典:ファルマシア 2011.2


初回通過効果

 口から飲んだ薬物は消化管から吸収され門脈から肝へ移行します。肝臓での代謝能が大きい場合には、大部分の薬物が初めて肝を通過する間に代謝され、全身循環にいたる薬物の量が少なくなる現象が見られ、これを初回通過効果といいます。

 注射、坐薬、舌下錠、経皮吸収剤は、初回通過効果を受けにくいと思われます。


TDM
therapeutic drug monitoring

薬物血中濃度

 薬物を治療有効濃度の範囲内で至適血中レベルになるようにするために行う薬物濃度測定。

 てんかん薬、強心剤、抗不整脈薬、抗生物質などでは日常的に測定されていて、個人差が顕著な薬物や治療有効濃度域が狭く副作用の出現しやすい薬物では極めて有効です。

 薬物の体内動態を理解し、適切なTDMを行うと患者一人一人に応じた理想的な処方が可能となります。


ハルナック表

小児

新生児:出生〜4週間
乳児:1ヶ月〜1年未満
幼児:満1歳〜6歳未満
学童:満6歳〜15歳

貼付付文書では、

1、小児:15歳未満、2、幼児:7歳未満、3、乳児:1歳未満、4、新生児:出生後4週未満、5、未熟児:WHOで定められている低体重出生児(2500g未満)、

ハルナック表

未熟児、新生児、3ヶ月、6ヶ月、1歳、3歳、7歳半、12歳、成人
1/10    1/8   1/5   1/5   1/4  1/3  1/2    2/3  1

3歳で大人の1/3と覚えておくと便利


低蛋白療法

パーキンソン病

  出典:三省堂Q&A

 低蛋白療法はパーキンソン病治療での特殊療法の一つ

 L−ドーパは、腸管を通して移送される際に、蛋白質の加水分解によって大型中性アミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、チロシン、バリン)と競合するため、吸収が阻害され治療効果が極めて低くなまります。

 さらに血中に大型中性アミノ酸が多く存在すると、血液−脳関門の通過にあたってL−ドーパの脳内移行が低下するとされています。

 一方、L−ドーパを長期に使用している患者では、次第にL−ドーパ服用後の効果持続時間が短縮し次に服用する前に効果が消失するようになります。このような症状の動揺をup-downと呼び、この動揺現象が1日のうち何回か繰り返す状態をWearing offと呼びます。

 この現象の原因は黒質線状体−ドパミン−ニューロンの変成が進行し、L−ドーパを服用してもドパミンのシナプス小胞への貯留が十分にできなくなるためと考えられています。

 低蛋白療法は、主としてL−ドーパの長期服用に伴う副作用のup-downやWearing offなどの動揺現象を起こす患者への特殊療法の一つとして行われます。

 低蛋白療法は、朝・昼食の蛋白質量を7.5gに制限し、夕食は普通食に牛乳と蛋白質(14g)を加えた食事療法を行い、薬物効果を検討した結果では有意な改善が得られたとされています。

 また、外国で、朝・昼食の蛋白質量を7gに制限し、夕食は普通食とする食事療法で60〜100%で日中の動揺現象の改善をみとめています。

 さらに、L−ドーパの脳内移行が促進されるため、ジスキネジアが発現しやすくなるので、L−ドーパの投与量を減量する必要があります。


補体

 ある細胞で免疫した動物から得た新鮮抗血清を免疫に用いた細菌に加えて37℃に保つと、細菌は破壊されます(溶菌)。この溶菌は、抗血清を56℃30分処理する(この処理を「非動化」という)と起こらなくなります。

 非動化により抗体の機能は損なわれません。また非免疫動物から得た新鮮血清を非動化血清に加えると溶菌活性が回復します。

 このように溶菌を生じるためには、抗体に加えて補体が必要です。補体は熱処理に不安定な血清成分です。

 補体は一連の蛋白質群により構成されており、通常補体系と呼ばれます。血清、組織液中の補体は計20種近い蛋白質によって構成されており、抗原抗体複合体や細菌細胞壁など種々の物質で活性化され、細胞溶解作用を表します。

 活性化された補体は、好中球の食作用を助けて、好中球を呼び寄せたり、膜侵襲複合体を形成して、溶菌、細胞破壊をもたらすといった作用を有し微生物から生体を守るために重要な働きをしています。

 一方、補体系産物は、抗体のような厳密な特異性を有していないことから、自己の細胞を攻撃する危険性を有しているか、血清中にも細胞表面にも補体から自己細胞を守る因子が存在し、補体系の制御が行われていることが知られています。


冬虫夏草
FTY−720

出典:ファルマシア 2000.7

 冬虫夏草は冬虫夏草菌の子実体が、コウモリガ科のHepialu armoricanusなどの幼虫に寄生し、寄主を栄養源として生育した菌の子実体と幼虫の死骸との複合体です。

 これまでに成分のコルジセピンに抗真菌作用や抗腫瘍作用が認められることが報告されています。
昨今の健康食品ブームに乗じて、免疫系機能に作用する効果が注目されている生薬です。

 冬虫夏草菌が寄主である昆虫に長期間寄生することから、菌が昆虫の免疫機能を抑制するような物質を生産しているのではないかとの観点から研究が行われたところ、台湾ツクツクボウシに寄生するツクツクボウシタケの不完全世代の培養液から単離されたISP−1がサイクロスポリンやFK506とは異なった免疫抑制作用を有することが見いだされました。

 さらに構造活性相関の検討により、ISP−1の3倍の活性を持つFTY−720が誕生しました。
FTY−720は、サイトカニン産生抑制作用は弱いが、キラー細胞に特異的なアトポーシスの誘導化見いだされました。特に脾臓、リンパ節のDNT細胞の減少が認められること、デキサメタゾンと比較して、より選択的にCD3陽性T細胞に対してアポトーシスを誘導することが明らかになりました。

 FTY−720によるアポトーシスは、細胞膜傷害優位に誘導され、カスパーゼ阻害剤によって核DNA傷害のみが抑制され、細胞膜傷害は抑制されなかったことから、カスパーゼ系を介さない別のアポトーシスの誘導化への関与も示唆されています。

蛇足:昔読んだ、白土三平のマンガに、「イシミツ」にこの冬虫夏草が登場していた。
「イシミツ」は、不老不死の薬を求める忍者たちを描いた傑作でした。
ちなみに「イシミツ」とは「石蜜」でローヤルゼリーのことらしい。

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