【無駄口薬理学】 【やさしい薬理学】 【HLA】 【レセプター】
  


毒 舌 薬 理 学

 

相互リンク 辛口薬事放談《おくすり千一夜》 :(元)鬼の薬剤部長がくすりと医療を切る!!
  トータルヘルス 生活習慣病の予防と治療を考えるための指針に



 [薬を飲んでも病気は治らない]
 

1996年2月15日〜1996年11月15日に連載したものです。

  数字をクリックして下さい。
 
このシリーズは思い付くままに勝手なことを書いてます
薬を飲んでも病気は治らない!!
体質を考えない現代医療
HIV訴訟に思う
薬を使うと病気になる
血液も薬局方に収載されているので薬です
過ぎたるは尚及ばざるがごとし
GCP
クオリティオブライフ
10 ブレイクポイントとは何か
11 抗生物質の通信簿
12 ブレイクポイント3
13 ブレイクポイント4
14 ジェネリック医薬品の台頭
15 名前を変えるとカッコ良く聞こえるから不思議だ
16 自分のことを毒舌すると
17 おじさんたちに
     
                おまけ     :SF「エイズ」
 


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薬を飲んでも病気はなおらない!! 

 毒舌薬理学  

 
(このシリーズは、思いつくままに、勝手なことを書いてますので、ご了承下さい。)

 薬を飲むと病気が治ると思ったらそれは、大変な誤解です。それが、証拠に一度、薬を飲み始めてしまうと、ずーと薬を飲み続けなくてはなりません。
もし一定期間、薬を飲んで病気が治ってしまったのなら、もう2度と薬など飲まなくてもよい筈です。({注}慢性疾患で多くの場合のことです。)
 
 近年、画期的な薬が相次いで登場しています。
H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター、ACE阻害剤、HMG−CoA還元酵素などなど、しかし、これらの薬にしても効いているのは、薬を飲んでいる間だけであって、それらの薬を飲むのをやめると元のもくあみ、またしても症状がぶりかえしてしまいます。 
 つまり、薬を飲むということは、ほとんどの場合、症状をごまかしているだけなのです。現代の薬物治療は、対症療法です。そして、原因療法の代表のように思われている抗生物質にしても、薬だけの力で細菌を殺しているわけではなく、体の中にある防御機構と協力してその作用を発揮しているのです。本来、その患者の持つ体力、気力、抵抗力と大きくかかわっています。

 だったら、薬とは一体何なんだということになります。症状をごまかしているだけでも、それで患者さんが楽になるならそれでいいとおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。むろん、それはそれでいいのです。それがQL(クオリティオブライフ)の発想です。しかし、ここで大切なことが一つあります。

 それは、薬に頼ってしまっては駄目だということです。確かに、薬を飲むと楽になるので薬は素晴しいと思ってしまう。そして薬を飲めばすべてが解決したように思ってしまう。そして、知らず知らずのうちに、他の努力、つまり生活習慣を改める、食事をバランス良く取る、適度な運動をするといった努力をしなくなってしまうことが考えられるのです。

 てんかん、糖尿病(IDDM)、先天性ホルモン分泌異常のある患者などでは、絶対にその薬が必要となりますが、それ以外の疾患では、どの程度薬が必要なのかを考え、また患者にも、どのような作用の薬なのかを指導していくことが必要でしょう。(続く)


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薬を飲んでも病気はなおらない??(2)


 HMG−CoA還元酵素はひさびさの大ヒットでした。薬業界で「ピカ新」と呼ばれ、大変な売り上げを記録しました。なにせコレステロールを下げる薬だからです。コレステロールがたまると、肥満になるし、血管はつまって、血圧は上がり、心臓や脳に障害が起きてしまいます。
 この薬を飲んでいれば大丈夫となれば、患者さんは、多少高くても、文句も言わずせっせと薬を飲み続け、そして安心して、ご馳走を食べ、酒を飲み、タバコをすいまくります。
 風邪薬もそうです。風邪薬を飲むと確かに熱はさがるし、咳、くしゃみ、鼻汁もとまります。「よおし治った」と思って、実際は体の中にウイルスが、うようよしているのに、遅くまで残業したりします
  これでは、薬は病気を治しているのではなく、病気を助けてやっているようなものです。しかし、多くの人々は、そのことに気がつかないで、薬を飲み続け、再び病気になってしまいます。そして別の病気になるたびに更に、新たな薬を飲み始めます。喜ぶのは、薬業界です。
  H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤も画期的な作用を持った薬です。しかしこれらの薬にしたところで、胃潰瘍という病気は治すことはできません。胃潰瘍が治っているように思えるのは、それらの薬を飲んでいる間だけであって薬を飲むのをやめると、何カ月かすると胃潰瘍が再発してきます。
 H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤は、胃酸の分泌を抑制するだけで、決して胃潰瘍という病気を治す薬ではないのです。
 最近、胃潰瘍の原因がヘリコバクタピロリという細菌であることが、判明しました。そして、欧米では抗生物質による治療が推奨されています。この場合、もしうまくいってヘリコバクタピロリを胃から排除することができたなら、薬で病気を治すことができるといえます。しかし、日本ではまだこの療法は認められていないのです。
 ひょっとして、薬業界が手を回しているのかもしれません。H2ブロッカー(市販もされている)が売れなくなると困るから?

[この記事は1996年に書いたものです。2000年11月になってやっと除菌療法が認可されました。]

しかし、胃潰瘍 「顆粒球説」といのもあります。一読下さい。


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体質を考えない現代医学

薬を飲んでも病気はなおらない。(3)

 まずは、下の図を見ていただきたい。これは柴胡剤といわれているものの一覧ですが、重要なことは、それぞれの柴胡剤には、使用する患者の対象が定まっていることです。
つまり柴胡剤が8種類も存在するのは、少なくとも使用する患者のタイプが8種類以上存在するということです。漢方の世界では、体力の強弱、体質のタイプ、 病気になってからの時期に応じて漢方医が選択できるように柴湯剤だけでも8種類の薬剤が用意されているのです。
 つい最近、小柴胡湯の副作用(間質性肺炎)で死亡例が出たとマスコミが大きく取り上げ、大騒ぎになりました。安全と思われていた漢方薬で重篤な副作用が発現したので驚いたのでしょう。”毒舌”の筆者としては、「言わんこっちゃないぜ。」と思ってしまいます。
 以前、このコーナーで
HLAを取り上げ、漢方では、なりよりも「証」(患者の体質を計る上でのものさし)を重視していると書いたことがあります。     

    大柴胡湯        実証 
    柴胡加龍骨牡蠣湯    ↑
    四逆散
乙字湯--小柴胡湯----十味敗毒湯---荊防敗毒散
 ←  柴胡桂枝湯    サブタイプ→
    柴湯桂枝乾姜湯
    加味逍遥散       ↓
    補中益気湯       虚証


 現代医学では、同じ病気になるとどんな人(太った人でも、痩せた人でも、また年齢性別に関わりなく)同じような処方内容となってしまいますが、漢方では、個々の人に合うように同一の症状に対しても、体質、体力によって処方が異なります。
 上図のように小柴胡湯は、中央に位置し(最も標準的な体質の人に適合するということ。)、最も多用される方剤ですが、それとて患者の証(体質)を無視した現代医学的な誰でも彼でも、同じという現代医学的な使用法では、無理が生じるというものです。

2000年追記:以上は1996年に書いたものです。平成12年1月14日またしても、下記のようなに医薬品・医療用具等安全性情報158号が出ました。

 「小柴胡湯の間質性肺炎については、平成3年4月に使用上の注意の「副作用」の項に記載し、平成8年3月「慢性肝炎における肝機能障害の改善の目的で投与された患者で間質性肺炎が起こり、重篤な転帰に至ることがある。」旨の記載の「警告」を新設し、さらに平成9年12月には「警告」の改訂を行うなど、継続的に注意喚起を行ってきたが、平成10年以降も本剤と関連性が否定できない間質性肺炎が50例(うち死亡例8例)報告されている。肝硬変又は肝癌のある患者に使用されて重篤な転帰をたどる例が多いことから、これらの患者への使用を禁忌とするなど、注意を喚起することとした。」

上の図でも分かるように、小柴胡湯というのは、上から4番目の実証(比較的体力のある人)に使う方剤なのです。肝癌とか肝障害の人が実証でしょうか?そのような患者さんには補中益気湯を用いうるべきなのです。


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HIV訴訟に思う

毒舌薬理学4:薬を使うと病気になる。

 HIV訴訟の問題は連日、テレビ、新聞等で大々的に取り上げられ、我々医療に従事するものにとっては、重大なこととして捕えざるを得ません。(注:この文章は、1996年に書いたものです。)
 製薬会社、厚生省の態度はもはや弁解の余地はないのは当然として、マスコミの矛先は、医師、薬剤師にまでも、向けられてきています。本当に血液製剤で、エイズ感染の危険性を知らなかったのか?
 自分の責任を回避するつもりは、毛頭ないのですが、当時、医療の現場では、血液製剤によるエイズ感染の危険性に対する認識は、あまりありませんでした。と言うのも、その頃は、B型感染による汚染事故が頻繁に起こり、マスコミも連日、それを取り上げていたからです。
  
 B型肝炎に対するワクチン、グロブリンが発売され一段落すると今度は、C型肝炎でした。プラズマネート、クリスマシン(抗血友病剤)等が発売中止となり、ヴェノグロブリンにも”I”が付き、血液製剤は徐々に加熱製剤へと変わっていきました。
 当時、我々(筆者)が、血液製剤のウイルス感染にそれほど心配していなかったのは、それよりももっと怖い製剤があったからで、筆者は、そちらの方に気を奪われていました。 その怖い製剤は現在でも、発売されています。その添付文書(現在のもの!!)の一部を記載してみます。

*本剤は、HIV-1、HIV-2(エイズ)及びHTL-Iの抗体検査並びに梅毒血清学的検査を行っているが、感染の危険性を完全には否定できない。またCMV(サイトメガロウイルス)、EBV(エプスタイン、バーウイルス)、ヒトパルボウイルスB19、マラリア原虫、その他の血液を介するウイルス、原虫等に感染する可能性も否定できない。(B型、C型肝炎についても同様の記載あり) 

 もうお気づきでしょうが、その製剤とは、全血製剤(当時、新鮮血、保存血)、濃厚赤血球(現在MAP)、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板等のことです。当時は、ウイルスのスクリーニングさえ行われていませんでした。
 
 血液を使用する場合は、患者又はそれに代わり得る適切な者にその必要性、副作用の可能性について理解しやすい言葉でよく説明し同意を得ることが必要なことが添付文書に記載されています。

 ちなみに、これは血液センターのPL法対策で、もしウイルス感染が生じた場合、責任は使用した医師にあるということになっています。

 


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薬を使うと病気になる

毒舌薬理学(5)(いつのまにかタイトルが変わってしまっている!)  

  薬剤ニュースは今回で197号ですが、本当は198回発行しています。というのは、1回だけ号外を出したことがあるからです。1989年の2月1日号(No.37)を出したその日に、朝日新聞を始めとするマスコミが、H2ブロッカーによる汎血球減少の記事が掲載されたためです。以下、その時の記事を一部転記してみます。(7年前の記事です。)

 ファモチジン(ガスター)投与後、5日後下腿部に出血斑が出現し、汎血球減少が認められたため、直ちに中止したが、白血球、血小板はさらに減少し、ファモチジン中止9日後に呼吸不全にて死亡

 この報道を知った患者さんからの問い合わせが想定されたため、急遽、号外を発行したという訳です。で今回、1996年3月27日にNHK、読売新聞等でタガメット、ザンタック、ガスター、アシノン、アルタット(当院未採用)による血液障害のため死亡が発現したことが報道され、翌日、薬剤部にも、心配した患者さんからの電話が相次ぎました。

 汎血球減少症、血液障害というと、いかにも恐ろしい副作用であるように患者さんは思われるでしょうが(実際に死亡した方がおられるから、恐ろしい副作用であることには間違いはありませんが)、 我々薬剤師にしてみれば、この副作用は実にありふれた副作用なのです。試しに当院にある内服薬で血液障害の副作用の記載のある薬品をパソコンで検索してみると、217(462中)もありました。
 
 この副作用の作用機序は抗原抗体反応の一種と考えられます。薬物が血液内に入ると血液中の蛋白質と結合する場合があります。この蛋白質が、赤血球であり、白血球であり、血小板であったする可能性もあるわけで、その場合、血液が薬物と結合することによりわずかながら変化し、そのため、自分の血液が抗原とみなされ、自分自身の抗体により攻撃を受けることになります。攻撃された血液は死にそして、減少してしまうのです。
(薬剤ニュースNo.61参照)

 そしてまた、この理屈から言えば、あらゆる薬物が体内の蛋白質と結合する可能性があるため、恐ろしいことにすべての薬物が血液障害を起こす可能性を持っているのです。ですからH2ブロッカーが恐ろしいというのではなく、単に確率の問題ではないかと筆者は思っています。今やH2ブロッカーは何百万という人が服用しているのですから、当然、血液と結合する確率も増加するはずです。


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薬を使うと病気になる。(6)

毒舌薬理学 (血液も日本薬局法方に集載されているので薬です。)


 尿、唾液、血液、これに汚いと思われる順に番号を付けなさい。という問題があったとすれば、常識でいうなら、1番汚いのが尿で、一番きれいなのが、血液であるとするでしょう。人から出るものは汚い、人の中にあるものは清いという先入観を大抵の人は持っているからです。

 健康な人であれば、尿は無菌状態ですし、唾液に至っては弱いながらも殺菌作用もあります。さて血液ですが、健康なら問題ないようにも思われますが最近では、どんなウイルスが潜んでいるか分かりません。キャリアーということもあります。

 また問題です。次の中で、輸血に適したのはどっちでしょう。1、他人の血で3日以上たったもの。2、親や兄弟の血で新鮮(3日以内)なもの。一昔前ならドクターでも2、と答える方が多かったのではないでしょうか。筆者が血液の管理をやっていた頃(3〜4年前)は、毎日、新鮮血を注文していました。尚、新鮮血とは、採血してから3日以内の全血のことで、3日をすぎた全血を保存血といっていました。3日(72時間)で区切っているのは、スピロヘータが輸血パックの中で生存できる期間を目安としているからです。即ち、新鮮血には、様々な病原体が生存している確率が高いのです。ちなみに現在は、「新鮮血」も「保存血」も「全血」となって区別されていません。(ヘパリン加新鮮血は残っています。)
 ところで、他人の血と、肉親の血のことですが、これも常識とは反して他人の血の方がより安全なのです。これは、
GVHDの危険性が高まるためです。

 GVHDは、輸血された血液の中のリンパ球が被輸血者の細胞を異物とみなし攻撃を開始するために起こります。これが他人の血であれば被輸血者の方のリンパ球も相手を異物とみなしてこっちからも反撃することができるのですが、なまじっかその輸血が近親者であった場合、自分のものと良く似ているため、輸血されたリンパ球を攻撃することができずやられっぱなしになってしまうことが考えられるのです。

 輸血をしてしかもGVHDを起こさない最もよい方法は、自己輸血です。自分のものなら汚くない。この常識は、この場合、大正解です。


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過ぎたるは、なお及ばざるがごとし

毒舌薬理学(7)(Jカーブ現象、Uカーブ現象、天井効果)

 

 高血圧治療における降圧薬による療法は、ある血圧値以上の血圧を下降させることに主眼がおかれています。血圧を下げることによって、脳血管障害や心血管障害が明らかに減少するからです。しかし、血圧が予想を上回って下降した症例では必ずしも脳血管や心血管障害が減少していないことが疫学的研究や大規模介入試験の結果から報告されています。

このような報告から提唱されてきたものが、
Jカーブ現象といわれる仮説で拡張期血圧値が85mHg付近を中心としてそれ以下に下降させると逆に心血管系の死亡率は減少しないばかりか増加することが示されています。

 では何故Jカーブ現象が起こるのか。この現象の一因として圧受容体反射の異常が考えられています 圧受容体反射は生理的には血圧が下降時には交感神経系を賦活化しそれにより血圧が過度に下がり過ぎるのを防ぐ役割を果たしています。したがって、もしこの圧受容体機構に異常が生じると血圧の調節がうまくいかなくなる可能性があります。事実、高血圧症や虚血性心疾患ではこの圧受容体反射に異常があることがヒトや動物実験で指摘されています。さらに降圧薬はこの圧受容体反射機構に異常をもたらすことも明らかにされています。

 虚血性心疾患のあるなしでJカーブ現象の存在が左右されていることにより、性差、年齢、人種差などについて層別に検討した成績も報告されています。その報告ではJカーブ現象は普遍的に認められています。即ち、年齢や性、人種差は認められていません。

 日本では、現在でも予想された以上には虚血性心疾患は増加せず高血圧による脳血管障害が依然として問題とされています。日本での研究によると、拡張期血圧を過度に下降させると、脳卒中の再発作の出現頻度は増加するとされています。このことは従来いわれてれていたように脳血管障害を認めるような患者では過度の降圧は危険であることを如実に示したといって過言ではありません。

*臓器障害とくに心血管や脳血管障害がある場合には、過度の降圧をできるだけ避けるようにし、緩慢に下降させることに留意すべきと思われます。
 薬理学では、この
Jカーブ現象と似た現象として天井効果というのがあります。効かないからといって用量を増やしても、治療効果が上がるとばかりは限りません。
 
 天井効果とは、与薬量を増やしていったとき、ある量以上で鎮痛効果の増加が見られなくなり、副作用のみが増強していく現象で、部分的アゴニストや拮抗性鎮痛剤などでみられます。

 癌終末期の痛みに漫然とペンタジンの筋注をくり返すと、痛みの緩和が不十分なままに失見当識や幻覚やもうろう状態が出現し、家族や友人の識別もできないまま痛みに呻吟するという悲惨な状況に至ります。         

 コデイン、ペンタジン、レペタンにはそれぞれに鎮痛薬としての有効限界量がありますが、一方、モルヒネには天井効果は見られず、量の増加によりいくらでも鎮痛効果を強めることができます。これを天井知らずと世間では呼んでいるようです。

 しかしこの場合、副作用(呼吸抑制等)も天井知らずとなりますので、ご注意下さい。                

(呼吸抑制についてはそんなに心配する必要はありませんし、またJカーブ現象については異論もあります。下記)

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医学・薬学用語解説(J) 2004年8月1日号 No.388

Jカーブ現象の論点

 1980年代後半、冠動脈疾患を合併した高血圧症例での拡張期血圧の過度の降圧は、心筋梗塞再発の頻度が高くなる結果(Jカーブ現象)が報告されました。

 この報告により従来からの「血圧は低いほど予後が良い」という考え方に一石が投じられ、冠動脈疾患合併高血圧では至適血圧コントロールレベルが存在する可能性が示唆されるとともに、過度の拡張期血圧の低下への注意が喚起されました。

 しかしこの現象は、脈圧の大きい動脈硬化の進展した症例で予後が不良であることを反映しているだけである可能性も否定できません。

1988年HOT Study:Hypertension Optimal Treatment Study(高血圧に関する世界最大規模の臨床試験)では血圧コントロールに至適レベルが存在するかどうかを確認するために実施されました。

 120/70〜140/85mmHgの血圧コントロール領域で有効な心血管系疾患発症予防効果が認められ、Jカーブ現象の存在は確認できませんでした。したがって現時点では、冠動脈疾患合併高血圧の血圧維持レベルは140/80mmHg未満が妥当と考えられています。

 現段階では、Jカーブ現象は完全に否定されてはいません。それでもJカーブ現象とされるものの多くは、病態による血圧低下で、見かけ上のものと考えられ、降圧用法による真のJカーブ現象は無いことが示唆されています。

 Jカーブ現象の論点は、1.過度の降圧は臓器血流障害を招く危険性があるとし、至適降圧レベルが存在するとする立場、2.拡張期血圧が低い高血圧症例は動脈硬化のための進展した症例で、当然予後が悪く、このため拡張期血圧のJカーブ現象が認められるという至適高圧レベルに否定的な立場とに分かれています。

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Uカーブ現象

 心筋梗塞既往例での血圧と予後との関係では冠動脈疾患死あるいは死亡との間にUカーブ現象が認められ、拡張期血圧70mmHg未満で予後の悪化が認められると報告されています。 このようにすでに合併症のある患者では過度の降圧は厳禁であり、また降圧は緩徐に行うことが望ましいと思われます。

   出典:臨床と薬物治療 2002.12  等


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毒舌薬理学(8)   

GCP(Good Clincal Practice)


Practice:とは”いつも行うこと。”、”行うべきこと”

 

GMPという言葉を皆さん方は、多分、ご存じの筈です。国民総生産(GNP)ではありませんよ。
 
 G:グッドは良い。M:マニファクチャーリングは製品、P:プラクティスは規範。良い製品を作るための模範となるマニュアルと訳したら良いのでしょうか。
   
 最近、G(  )Pと言う言葉よく見かけます。
薬剤関係だけの言葉だけでも、下記のようなものがあります。

・GLP:グッド ラボラトリー プラクティス〜ラボラトリーは実験室
・GSP:グッド サプライ プラクティス〜サプライは供給する、つまり薬の問屋さんに関する規範
・GUP:グッド ユーザー プラクティス〜ユーザー;薬を使う人が守らなければならない基準
 
 まだまだ色々ありますが、この位にしておきましょう。で本題のGCPですが、これは、グッド クリニカル プラクティス〜直訳すれば、臨床に関する基準となりますが、これは治験薬についての規範なのです。

 治験薬、つまり、「まだ発売されていない薬を飲んでいただけないでしょうか?」と患者さんに了承を得ることを意味します。平成2年の10月から実施されるようになりました。
 つまり、平成2年の10月以前は、患者さんに黙って飲ませて実験台になっていただいていたということです。これがいわゆるインフォームドコンセントを国(日本)が実施した始めてのケースです。

 患者中心への医療を国がやっと意識しだしたのはつい最近のことなのです。ところでインフォームドコンセントを「説明と同意」と訳したがる人がいますが、それだと「簡単な説明」と「強制的な同意」になりがちです。「医師の十分な説明」と「患者さんの自発的同意」と訳すべきです。患者さんの「理解」と「選択」になるのが理想です

 でもどうしてみんな横文字ばかりなんでしょう。日本の医療制度はすべてアメリカの真似なんですね。

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GCP    クリック→こちらの記事も参考にして下さい。

医薬品臨床試験の実施の基準

ヒトを対象とした臨床試験について、薬事法上の規制だけでなく、科学的に適正でかつ倫理的な試験を実施し、データの信頼性を高めるために定められた基準

GPMSP

Good Post Marketing Surveillance Practice

医薬品の市販後調査の基準

製造業者などが市販後調査を実施する場合の遵守事項と再審査・再評価の申請添付書類の適合性基準を定めたもの。

GSP

JGSP:JGSP:Japanase Good Supplying Practice

医薬品の供給および品質管理に関する実践規範

保管や出庫にあたって、各段階で温度、湿度、日光の影響などにより品質がそこなわれないように、品質の安全性を守るために日本医薬品卸連合会で設けられた業界内の自主規範

PMS

Post Marketing Surveillance
市販後調査

 臨床試験では把握されなかった、有効性、安全性および品質についての情報を収集し、これらを評価・分析し、適切な対応を決定し、必要に応じてその結果を医薬関係者に伝達すること。


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毒舌薬理学(9)     

クオリティオブライフ

最近、
クオリティオブライフ(Quality of Life:以下QL)という言葉が盛んに用いられています。この言葉は1980年代にWHOが癌患者を対象に取り上げたころから脚光を浴びるようになったものです。

 単純に訳せば「生活の質」ですが、クオリティという言葉には「満足感、生きがい、幸福」といった意味も含まれる奥の深い言葉です。

 生きた医療というのは、病気さえ治せばいいというものではありません。「病人を治す」という視点から、患者さんの生活や人生の質的な面に重点を置く医療の考え方が必要です。

 QLのチェック項目としては、日常生活の充足感性機能を含んだ肉体状況、労働意欲、知的機能を含む社会的活動などがあります。

 病人であっても、普通の人と同じ事がしたい。結局、SEXもしたいというのが、この言葉の出発点であるようです。

 この辺りが、いかにもアメリカ人の発想で、日本だと病人は、おとなしくしておれということになります。病人がSEXやスポーツを楽しむなどもっての他です。
 
 糖尿病のガリクソン、エイズのマジックジョンソン、片腕のアボットなどの活躍もアメリカならではのことです。

 日本では、QLと言えば、癌患者の痛みを抑えることだけのように思われているのが現実ではないでしょうか。
 
 前々号でも少し触れましたが、日本の医学はほとんど、アメリカの真似です。がその言葉だけ真似しても、その言葉の奥にある真髄を分かっていなければ何にもなりません。

 
POSGCPインフォームドコンセント、QL、これらの言葉が日本語に訳せないのも、そういう発想が元々日本には無かったからです。言葉ではなく、発想を学ぶ必要があると思われます。


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毒舌薬理学(10)    

ブレイクポイントとは何か

 ブレイクポイントという言葉は数年前から、知っていました。この薬剤ニュース(No.192)でも、すでに紹介しています。ブレイクポイントとは、80%の有効率を示す抗生物質の量(MIC)のことをさします。

 で、はっきり言って、それが何なのか、何の為のものなのかもう一つ良く理解できませんでした。

 それは、どうも筆者に限ったことでなく、どうやら日本の医療関係者(医師、薬剤師、看護婦)でこのブレイクポイントを理解している人は、よほどの専門家ならいざしらず、ほとんどいないのが現状のようです。

 通常、抗生物質の選択の基準とされるのは、その菌に対する
MIC(最小発育阻止濃度)を目安としますが、同じ菌でも耐性菌と感受性が混在しており、また抗生物質の方も薬剤耐性因子を有している細菌にも有効であるという抗菌剤が次々と開発されてきており、従来の考え方では追いつかなくなってきているという背景がまずあります。

 もう一度、このブレイクポイントについて勉強してみることにしました。例によってこの言葉は英語です。問題のポイントは、この辺りにあると筆者はにらみました。そこでアメリカでのブレイクポイントを見てみるとこれが簡単で分かりやすいのです。

 アメリカでのブレイクポイントは3点表記式になっていて、抗生物質を菌種ごとに、有効であるはず、効かないはず、その中間という風に評価するようになっているのです。このことから筆者は、ブレイクポイントというのは、抗生物質の通信簿だなと理解しました。

 アメリカでは、市販後のある時期を経てから専門家が討議し、その経験から割り出しているため実用的で実際の臨床の場で十分に役に立つと容易に推測できます。つまり患者さんの菌が同定できれば、使用すべき抗生物質が選べます。実に明快です。しかし日本でのブレイクポイントは、どうやらそうではないようなのです。(続く)


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毒舌薬理学(11)    

抗生物質の通信簿〜ブレイクポイント2

子供の貰ってきた通信簿は、“あゆみ”といって
できる、がんばろうの2段階評価です。筆者が小学生の頃は、5,4,3,2,1の5段階評価でした。中学校は、テストの点数がそのまま記載されていました。

 前回、述べましたようにアメリカでのブレイクポイントは1.有効(S:susceptible)、2.中間(I:intermediate)、3.無効(R:resistant)の3段階評価です。ところが、日本のブレイクポイントは、筆者の中学時代に近い数値で評価する形式となっているのです。

Breakpoint MIC=Cm×t×Rtr×A      
 Cmとかt、Rtr、Aとかいうのは、いろんな場合に対応する為の定数です。(薬剤ニュース192参照)もうこの式を見ただけで拒絶反応を示す人がおられると思いますので、今回は説明をはぶきます。

 問題は、どうして日本とアメリカではブレイクポイントの設定が異なるかです。アメリカのは菌種別に実に詳細な規定がなされていて、臨床的にも望ましいと思われます。

 日本でアメリカ式のブレイクポイントがそのまま使えない理由はただ一つ、日本では抗生物質、抗菌剤が馬鹿みたいにたくさん発売されているからにすぎません。

 アメリカでは、発売後ある期間をすぎてから専門家が討議し、評価します。先生が生徒の通信簿をつけるやり方と同じです。でも日本ではあまりにも薬物の数が多すぎて、一つ一つ評価できないのです。そこで苦心の末考えられたのが、計算式を用いる日本式のブレイクポイントなのです。
 
 治験段階である程度の症例のデータを用いて、計算式より算出し各抗菌剤のブレイクポイントを決定しようというのが日本式です。偏差値が好きな日本の教育界をつい連想してしまいます。

 日本のブレイクポイントは、菌種については区別せず、80%の臨床的有効率に重点をおいた1点法であるところに特徴があります。本当にこれで抗生物質の評価ができるのでしょうか?
(さらに続く)


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毒舌薬理学(12)    

抗生物質の通信簿(ブレイクポイント3)

オリンピックが終わって1ヵ月たちました。体操水泳はさんざんな結果でしたが、これは期待した方がおかしいと筆者は思います。マスコミがいかにも金メダルをたくさん取れそうに書きまくったのは、自己最高記録をオリンピックの本番でも出せると想定した為です。

 
MICもこれと同じようなものです。試験管内で特定の菌の発育を抑制する最少の濃度、つまり国内予選の最高タイムにあたります。これがそのまま、同じ濃度で人間の体の内(オリンピックの本番)でも、同じ効果を発揮する保障はありません。

 また、呼吸器感染症などでは、病気の原因となった菌を特定するのは簡単ではありません。仮に特定できたとしても、抗菌剤使用後の菌の消長も一様ではありません。

 したがって、日本のブレイクポイントでは、同じ呼吸器感染症でも肺炎と慢性気道感染症を区別して設定しています。

 日本のブレイクポイントは治験段階のデーターを基に計算式でもって理論値を導き出す方法をとっています。
 もう一度、ブレイクポイントの理論値の計算法を書きます。

Breakpoint MIC=Cm×t×Rtr×A          
Cm:最高血中濃度 (Cmax)より規定される定数                
t:作用時間(半減期)より規定される定数 Rtr:組織移行性(最高組織濃度/最高血中濃度比(R)より規定)    
A:抗菌作用特性(PAE、殺菌および静菌作用等の特性を勘案して決定)             
 この理論値は抗菌剤の治療効果を左右する因子を重視して、抗菌剤の病原細菌に対するMICの良否だけでなく、抗菌剤の体内動態(最高血中濃度、作用時間、組織移行性)や薬剤の特性(抗菌剤作用特性)、それに患者の病態も採り上げているそうです。

 やはり、回をかさねて説明しても、難しいという印象には変わりありませんね。筆者は、治験段階のデータを元にしている点に不安を感じます。
オリンピックの選考基準と大差ないようにも思えます。    
      

この記事は1996年9月1日に掲載したものです。

ここでいうオリンピックはアトランタでのことです。


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毒舌薬理学(13)    

ブレイクポイント4

 MICとは最小発育阻止濃度、つまり細菌が発育するのを阻害するに必要な抗生物質の最小量のことです。この量が少ないほど、抗生物質の効き目は強いということになります。
 ここで肝心なのは、この量は決して細菌を死滅させる量ではないということです。言い替えれば、その濃度以下では、細菌が増殖を続けることでMICとは有効量と無効量の境のことです。
 そしてこの数値も前号で述べましたように、あくまでも試験管内での実験によるもので、患者さんの体内でその効力を発揮できるかどうかの保障はありません。その為にブレイクポイントが提唱されているのです。
  日本化学療法学会が設定しているブレイクポイントは、現在のところ呼吸器感染症と敗血症だけで、尿路感染症について現在検討中だそうです。
 
 下に掲載しているのは、同学会の「抗菌薬感受性測定委員会」で検討されたものです。(一部のみ掲載)。1年間の公示期間をおいてさまざまの施設で再度検討し、異論がない場合に確定することにしています。

 呼吸器感染症でのブレイクポイント
(日本化学療法学会が提唱している薬剤の一部)

 薬剤  1回量    肺炎 慢性気道感染症                
 CTX  1.0g :IV   2   0.5
 CZX 1.0g :IV   4   2
 ABPC 1.0g :IV 2 1
 AMPC 250mg : PO 1 0.5
 AZT 1.0g :IV 4 2
 AMK 200mg : IM 4 4
 RKM 200mg :PO 1 1
 FOM 600mg :PO 0.5 0.5
 CPFX 200mg :PO 2 2
             (単位:MIC)

 上記の量以上の抗生物質を使えば、臨床的に80%の確率で効く可能性があるということですが、感受性を持っていても菌自体が消失する可能性は40%以下と推定されています。(その根拠を述べるスペースは無いので省略)

 菌の消失を目標に抗菌剤を使用するよりも、臨床症状の改善を指標にして抗菌剤を使用することがブレイクポイントの目的であるようです。

  ※ 日本化学療法学会では、対象を呼吸器感染症、敗血症、尿路感染症についてそれぞれ独立して設定しています。


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毒舌薬理学(14)

  ブレイクポイント最終回〜ジェネリック医薬品の台頭〜

だらだらとブレイクポイントについて述べてきましたが、結局のところあまりよく分からないままの方が多いと思います。しかし、それはそれでいいと思っています。何故なら、最初に述べたように日本では抗生物質(セフェム系)があまりにも多く発売されすぎているのです。
 ここで筆者が言いたいことは、日本で発売されている抗生物質に関しては、どれも大差がないということです。ブレイクポイントなどを気にしなくても日本で発売されている抗生物質は、どれもそこそこ効きます。つまりドングリの背比べ。もともとこれらの薬剤を比較しても大した意味は無いのです。
 厚生省も次から次へと新薬を認可するのではなくて、無意味な薬をどしどし整理して行ってほしいものです。でないとメーカーとの癒着を疑われてもしかたがありません。

 日本のセフェム系抗生物質はどれも、独創的ではありません。特許のギリギリまでマネした同じような薬(一般名が異なるだけで、ほとんど作用は同じ)を認可するのはどうかと思います。抗生物質、抗癌剤などに値段がやたらに高い薬が多いのもさらに疑惑を深めます。
 で、またアメリカの話題なのですが、アメリカではすでにジェネリック薬が50%近くを占める様になってきているそうです。

 ジェネリック医薬品とは、直訳すれば一般名で処方する医薬品のことで、我々業界ではゾロ品といった方が分かりやすいと思います。かつてがゾロ品と言えば、安いだけがとりえみたいに言われ決して良い印象はありませんでしたが、最近は医療費の削減といった点からも見直されてきています。

 FDAでは、製品の効力を保障する目的の生物学的同等性と安定性に関するデータの提出をガイドラインによって求めています。アメリカでもジェネリック医薬品については様々な論議があったようですが1984年からANDA(簡略化新薬申請書)が施行され、積極的に使用されるようになりました。
 

 毒舌的な言い方をすれば、違うようで同じ薬を開発するよりも、評価が定まった既存の薬を安くした方が患者さんの利益になります。抗生物質の新薬があんなにも多く開発されたのは値段をつり上げるためだけだったようです。

 


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毒舌薬理学(15)   

ジェネリック医薬品の台頭2
 (名前を変えるとカッコ良く聞こえるから不思議だ。)

ゾロ品、パッチ物、me too drug、類似薬品と色々な名前で呼ばれていた薬品が最近注目を集めています。
  先発メーカー(大抵大手で、新薬の開発能力を持っている)が開発した薬品(ブランド物)の製造特許期限が切れると、ゾロゾロと同じ成分の薬品が発売されるようになります。私の会社でも同じ(me too)物がありますよ、値段の方はお安くしときますよ。というふうです。開業医で出される薬品のほとんどが、これらゾロ薬品です。これらの薬品が医療費の軽減という観点からジェネリック医薬品として見直されてきているのです。

 ジェネリック(generic)とは一般名ということで、薬品の成分名のことです。つまり医師は、メーカーの商品名(ブランド名)で処方するのではなく、一般名で処方するのです。院外処方などではこの方式が推奨されています。

 これまでゾロ薬品、つまり後発メーカーによる医薬品が軽視されていたのは、その信頼性によります。かつては飲んだ錠剤がその形のまま排泄されるというひどい物もあったようです。
先発品にはそれだけのうまみ(利益)があるからです。

 現在は生物学的利用度、つまり人間の体内にどれくらい吸収されて活用しているかなどのチェックがなされていてそんなに粗悪な物はありません。
 ブランド品よりも安いという他に、ジェネリック医薬品がそれこそゾロゾロと次から次へと発売されるということは、その元になる成分が優れているということの証明になっているという点もみのがせません。効果のない薬だったら、誰も類似品なんか作りませんからね。

 新薬は巨額の開発費をかけてもまだ相当に儲かるのです。国が製薬会社の新薬開発能力を育てる意味から新薬の薬価を高く設定しているためです。しかし、その為に薬の値段は年々高くなりついには医療費を圧迫するようになってきました。

 そこで、ゾロ品(ジェネリック医薬品)が注目されてきたのです。高度経済成長時代に開発された医薬品の製造特許が、そろそろ期限切れとなってきます。これからは、ジェネリックの時代です
でも、これだけある日本の抗生物質の場合、そのほとんどはゾロ品が発売されないようです。この意味分かりますよね。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(2003年追記)

ジェネリック医薬品に対する5つの不安


1.先発品と本当にに同じなのかという漠然とした不安。
2.本当に安全性が保証されているのか?(造影剤のような注射薬では、副作用発現などでは特に不安)3.安定的な供給体制が得られるのか?
4.いわゆる「ゾロ品」、「パッチもの」、「ばったもの」と呼ばれていた、ジェネリック医薬品を扱うことで、病院のイメージダウンになるのでは?
5.ジェネリック導入で誤薬が増えるのでは?〜まぎらわしい薬品名の商品が多い。

<ジェネリックを使用しない理由>

 1.ジェネリックのメーカーに対する信頼感が薄い。
 2.ジェネリック医薬品の情報不足
 3.MR(医薬品情報担当者)の訪問回数の少なさ。

<使用する理由>
 1.患者負担が減る。
 2.安全性に問題がない。
 3.納入価格が下がる。

 薬価差益が大きかった時代は、薬は病院にとって利益を生む存在でした。
しかし、2003年から始まったDPC(診断群分類別包括支払い)の環境下では、医薬品は一転してコスト(経費)となるので納入価格が安いほど良くなったのです。

 出典:医薬ジャーナル 2003.11


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毒舌薬理学(最終回)  

自分のことを毒舌すると、、

〜A型行動パターンのA型とは血液型ではありませんよ!〜

 先日、職員研修があって参加したのだが、その内容の下らなさにイライラしっぱなしだった。研修を受けている他の人たちが、間が抜けてみえたりもして、こんな研修は時間の無駄だ、私にはこんな研修よりも仕事の方が大切だと思えた。

 しばらくして思い返して見ると、私はその時、典型的なA型行動パターンだったことに気がついた。

A型行動パターン」とは、1958年にフリードマン・ラゼンマンらによって提唱されたもので、心筋梗塞のリスクファクターである。(薬剤ニュース No.138参照)
 フリードマンらと日本の学者らの述べるA型行動パターンの特性を抽出すると3つに分類できる。
1.性急病・時間の切迫感、2.競争心・闘争心、3.日本人特有である「いい子症候群」

 性急病、時間の切迫感は慢性的ストレスとなり、動脈硬化酵素であるコルチローズを低下させ、血中コレステロール除去能力を低下させるため、動脈硬化の悪化を誘発する。これはA型行動パターンの最も顕著な行動特性である。A型行動パターンの傾向が強まる程ストレスに対する効果的対処行動を行えずストレスを慢性化させやすい。  競争心・闘争心は脳下垂体視床下部を刺激し、交感神経を促進させ、カテコールアミンの分泌を過剰にするため心拍出量、血圧の上昇・変動を招く。これは常に他人を意識し、上位に立つことで安定を計ろうとする行動特性である。

 まったく、この文章を書きながら赤面するほどに自分の性格に当たっている。最後の日本人特有の「いい子症候群」なのだが、確かに私は子供の頃はそれはそれは良い子でした。しかし、今の私は決していい子ではありません。

 「いい子症候群」は日本人特有のもので、自分の本音を抑制し、仕事が何より重要と考え、ストレスの発散を行えず、ライフスタイルの悪癖を伴い易い行動特性です。

 私は、ストレスを全くという程ためません、言いたい事は、言いたいだけ言いまくるタイプです。研修最後の日にさんざん悪態をついて帰ってきました。人格という点ではあまり関心できないと思いますが、少なくとも典型的なA型行動パターンからはずれて心筋梗塞発病の確率は減ったと自分の行動を正当化しています。


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毒舌薬理学(最終回2) 

おじさんたちに〜急性心筋梗塞の危険因子2〜

 前回書きました職員研修というのは、実は新任係長の研修だったのです。最初に自己紹介があり、それぞれの趣味も述べるのですが、そこに集まったH市の新任係長の趣味のベスト3は、パチンコ、カラオケ、ゴルフでした。

 部下とのコミニケーションとして、ノミニケーション(部下を飲みに連れていくこと。)が最適だと言い、休憩時間になると、タバコをプカプカふかしていました。そして、講師に発言を指名されないかとビクビクとし、講師に指名され小学生のように教科書を素直に読んでいるのです。

 日本のおじさんたちは職場でも、毎日そうして過ごしているのでしょう。これでは、病気になっても仕方がないと思います。厚生省は「成人病」を「生活習慣病」と言い改めるように提唱していますが、これはあの怠慢な厚生省にしては上出来です。

 前回述べましたように、タバコ、ストレス、A型性格は、心筋梗塞のリスクファクターです。ノミニケーションは、飲み過ぎ、食べ過ぎに直結し糖尿病を誘発します。ゴルフも実は、心筋梗塞を誘発しやすいという報告があり、あぶないのです。(次号に掲載予定) この毒舌シリーズを書こうと思ったのは、現代人が薬に頼りすぎているように感じたからです。薬に頼りきってしまっては、治らない病気もあるのです。筆者はそう思い続けています。

 人間には適度なストレスも必要なのですが、ストレスを溜めることは、様々な病気を誘発します。ストレスは免疫力、修復力を低下させます。
発癌もストレスが大きく関わってきています。

 このシリーズは、抗癌剤の悪口をさんざん書いて最終回にするつもりでしたが、癌の標準療法などまだ筆者の知識が不足しているために、先送りにすることにしました。

 新聞記事にβカロチンが発癌抑制に無効であるだけで無く、喫煙者では発癌作用を増強させることが分かったと掲載されていました。(朝日新聞1996.10. )そしてその記事は、こう結んでいました。「薬で病気を防ごうなど考えるなど、横着だ」「ストレスを溜めないことが重要」

 ところで、筆者もおじさんなのですが、職場でのストレスをその日のうちに発散しています。職場の皆さん、ご免なさい。


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この原稿は冗談がきついのでボツにしました。ちょっと悪趣味です。(1994年の作)

 「SFナンセンスショ−トショ−ト」  エイプリルフ−ル特別企画

                    

20XX年、アメリカにて

 ある高名な生物学者が、老衰のために病床に臥していた。ある日、彼は妻を枕元に呼んで言った。

 「わしももう、これまでらしい。死ぬ前にお前に渡しておきたいものがある」

 老学者は、ベッドの横のから書類らしいものを取り出して妻に手渡した。

  妻が見ると、論文のようで彼女には理解不可能なものだった。

「こんな難しいものを私に渡されても困りますわ。誰か、適当な人はいないのですか」

「誰でもいいという訳にはいかないんだ。これにはエイズを撲滅する方法が書いてあるんだ」

「なんですって、それなら尚の事私なんかより全世界に向けて今すぐにでも発表すべきですわ」

「そうだろうか。私の考えは違うんだ。エイズは確かにある種の人間にとっては脅威だが、普通の人間では別にそれほど恐ろしいものではないんだ。そしある種の人間とは、麻薬の常用者とかセックスを売り買いするモラルの無いやつらだ」

「それは言ってはいけないないことです、エイズに罹っている人を差別することになりますから」

「それを知っているからこそ、お前に託するんじゃないか。最近、皆真面目になったと思わないか」

「それは、私たちが若かった1980年代に比べたら、全然違いますわ」

「そうだろ、フリ−セックス、離婚、麻薬そうそう日本では売春ツア−なんてのもあったそうだ」

「今は、そんなことありませんわね。でも血友病に人はどうなるんです」

「あれはわしも計算外だった。気の毒なことをした製薬会社があそこまで、ひどいとは思わなかったんだ」

「計算外って、まさか、、、、」

「そうさ、エイズウイルスは昔わしが、作り出したものなんだ。血液製剤も今はちゃんと管理されている。新たな感染は無い。皆が真面目にやってればエイズは自然に消滅する。どうだいわしは悪魔かね」

「(*********!)」妻は言った。

この文章は、問題が多いので、(  )内はご自分の好きな言葉を入れて下さい。


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