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アスピリン喘息

昭和63年5月15日号 N0.22

   アスピリン喘息は、アスピリンそのものによって誘発される喘息ですが、その他の数多くの誘発物質のよっても引き起こされる可能性のある特異な喘息です。

 アスピリン喘息は一般に誘発物質を避けることで、軽快させうる喘息ですが、一般外来患者の中に占める割合も10%以上もあるものと考えられるために注意が必要です。

 アスピリン以外の誘発物質としては後述するように人工着色剤や防腐剤として、食品(醤油、清涼飲料水)や医薬品(シロップ剤等)に広く用いられているものがあります。

          {参考文献}医薬ジャーナル 1988.5

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<臨床的特徴>

1.30代にピークがあり、それ以後の中年に発症することが多い。
2.家族歴、既往歴にアレルギー疾患を認めないことが多い。
3.女性の方が男性よりやや多い。(6:4)
4.本症の約半数の患者に解熱鎮痛剤による発作の既往を認める。
5.慢性鼻炎、副鼻腔炎、鼻茸の合併が多い。
6.発作自体は通年性、重症かつ難治性で、大発作を経験しているものも多く、ステロイド依存性となりやす。
7.一般アレルゲン皮内反応、RASTによる特異的IgEは陰性のことが多い。

アスピリン喘息患者の治療は、一般的な喘息と大差はありませんが、最も重要なことは、疑わしい誘発物質や
薬剤をすべて除外することです。しばしば用いられるNSAIDs(解熱鎮痛剤:非ステロイド性抗炎症剤)による
発作の増悪には注意が必要となります。

アスピリン喘息の誘発物質

(1)NSAIDs(解熱鎮痛剤)
a,作用の特に強力なもの〜アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、アミノピリンなど
b,作用がかなり強いもの〜メフェナム酸、フルフェナム酸、フェニルブタゾンなど
c,作用が弱いかほとんど無いもの〜アセトアミノフェン、サリチル酸アミドなど

(2)食品・医薬品添加物
a,誘発物質として確立されているもの〜食用黄色4号(タートラジン)、安息香酸Naなど
b,誘発物質であることが強く疑われるもの〜ベンジルアルコール、パラベン類、食用黄色5号など
(3)その他〜植物などに含まれる自然界のサリチル酸化合物

1999年追記

アスピリン喘息は、その薬理作用であるプロスタグランジンの生合成阻害という点から説明可能である。
アラキドン酸カスケードにおいては、シクロオキシゲナーゼに向かう流れと、ロイコトリエンに向かう流れ(5‐リポキシゲナーゼ経路)がある。

プロスタグランジン生合成阻害によりシクロオキシゲナーゼに向かう流れが阻害されると、ロイコトリエンに向かう流れが増える。このロイコトリエンにより喘息が誘発される。

2007年追記

安全に使用できる鎮痛剤は、モルヒネ、ペンタジン、ステロイド、COX2阻害剤ですが、小児への発熱の適応はありません。
基本的には、冷却が第一です。

アスピリン喘息患者では、コハク酸エステル型ステロイドを静注する発作が悪化することがあります。

*練り歯磨き、香水の匂い、香辛料が多く含まれる食事で発作が悪化することがあります。

*酸性解熱鎮痛剤で誘発される発作の典型的経過は、服用1時間以内に鼻閉、鼻汁が生じ、ついで喘息発作が出現します。発作の多くは激烈でときに致死的ですが、24時間以上持続することはありません。皮膚症状の誘発はあまりありません。


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AIA:解熱鎮痛剤喘息
analgesic-induced asthma
aspirin-induced asthma
ASA:アスピリン誘発性喘息


2000年8月1日号 296

 非アレルギー性喘息のひとつにアスピリン喘息(AIA:aspirin-induced asthma)があります。AIAは、その頻度の高さと難治性から日常診療ではより的確な診断と治療が必要とされます。

 「アスピリン喘息」という名称からアスピリンだけが原因薬剤であると未だに誤解している医療従事者が存在し、その認識不足から医療過誤の原因にもなりやすく、今なお医療事故例が見受けられます。

 アスピリンをはじめとするほとんどすべてのNSAIDsによってAIA発作が誘発される可能性があることが明らかになっています。そこでAIAの原因がアスピリンに限らないことから近年はAIAは「analgesic-induced asthma:解熱鎮痛剤喘息」と呼ぶことが提唱されています。

 成人喘息に占めるAIAの頻度不明は、国際的には5〜30%であることが報告されています。一方、これまでに我が国では成人喘息の約10%がNSAIDsによって誘発されたAIAであると考えられてきました。しかし、最近ではNSAIDsの使用頻度の増加からAIAの頻度も増加しているものと考えられています。

 AIAは、その患者数の多さと頻度からまれな薬物過敏症では無いことを認識し、NSAIDsの使用に際しては常に注意が必要です。

<AIAの発症機序>

 NSAIDsによってPG生合成酵素のシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用が阻害され、その結果PGの産生が抑制されて気道収縮性のロイコトリエン類(LTC4,LTD4,LTE4など)の生合成が高まり、結果的に気道狭窄が起こるという説が一般的です。

 気道拡張性のPG(PGE系)の生合成抑制と気道収縮性のPG(PGD系、PGF系)の産生によるPG類の産生不均衡説や、抗ウイルス剤のアシクロビルが特異的にAIAを抑制することによるウイルス感染説なども唱えられています。

<AIA誘発薬剤>

 これまではCOX抑制作用のない塩基性NSAIDsではAIAは誘発されないと認識されてきましたが、一部のAIA患者で発作が誘発されことが明らかになっています。さらに安全性の高いとされるアセトアミノフェンも高用量で発作を誘発することから注意が必要です。

 NSAIDs以外のAIA発作誘発物質としてはコハク酸エステル型副腎皮質ステロイド剤があります。ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンの静注により発作の誘発や喘息症状が悪化することがあり、できれば静注を避けるなどの注意が必要です。(リン酸エステル型の製剤ではこのような過敏反応は示しません。)

 AIA発作は一部の食品や医薬品添加物によっても誘発されることが知られています。食品や医薬品の着色料、防腐剤、無痛化剤などとして幅広く用いられているタートラジン、安息香酸Na、ベンジルアルコール、パラベン、サンセットイエロー、アマランス、ニューコクシンなどはいずれもAIAの増悪を招く可能性があるので注意が必要です。

 またサリチル酸化合物を含む食品の摂取が誘因になることや、AIA患者は嗅覚障害が強いために揮発性・刺激性物質に対する防御機能が低下しており、このために化粧品や殺虫剤などでも発作が誘発されることなども知られています。

 AIAはアスピリンだけが原因であるという認識を改め、ガイドラインにそった診断と治療が浸透することが求められています。

  <AIAの特徴>

 AIAはNSAIDsの内服、注射、坐薬はもとより貼付剤、塗布剤でさえも使用した直後から2〜3時間以内に鼻閉、鼻汁眼球結膜充血、顔面紅潮などの症状に加えて激しい気道狭窄反応が現れ、喘息発作を起こします。発作はしばしばきわめて重症となり、意識障害を伴うこともまれではなく、死亡例もあります。

{参考文献}臨床と薬物治療 2000.6

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抗ロイコトリエン薬
LT拮抗薬

cysLT:システィニルロイコトリエン1受容体拮抗薬

 喘息では、システィニルロイコトリエンが増加しこれらが喘息の病態生理学的特徴のいくつかを発現させています。

 さらに、これらメディエーターに対する組織反応性もしばしば増加していること、また抗ロイコトリエン薬はアレルゲン、運動、刺激物質、アスピリンを含む気管支収縮を惹起するいくつかの因子を阻害することなどにより、その薬理学的根拠が明らかにされています。

 しかし、臨床試験で抗ロイコトリエン薬はプラセボに比べて有意な有益性を示しましたが、少量の吸入コルチコイドに比べると低く、また吸入コルチコステロイドに対する付加(add-on)療法としても、長時間作用型β2受容体作動薬に比べ有用性は低いとされています。

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 抗ロイコトリエン薬(抗LT薬)は、cysL-1受容体を選択的に拮抗することで、cysLTであるLTC4、LTD4、LTE4の作用に拮抗します。

 cysLTは喘息患者では強力な気管支収縮物質です。LTE4は特にASA患者でより大きな影響を持っています。ASA患者の鼻生検ではcysLT1受容体の発現の増加が報告されていますが、喘息患者の気道中でcysLT1受容体の発現が増加しているかどうかは明らかではありません。

 ASA患者では、cysLTの産生が増加していて、アスピリン非感受性の喘息患者に比べて尿と呼気凝縮液中のLTEは高くなっています。そして少量のアスピリンによるチャレンジテストによりさらに尿中のLTE4値が更に増加することが示されています。

EIA:運動誘発性喘息と抗LT薬

 抗LT薬はEIAにも有効で、その効果は長期間に及び、経時的に減少しないことから臨床的にも有用と思われます。

 一方、長時間作用型吸入β2受容体作動薬による防御作用はより有効ですが、耐性発現のため時間とともに低下します。

 EIAに対する最も有効な治療法は、吸入コルチコステロイドの常用ですが、吸入コルチコステロイドの少量療法後でも、EIAが持続する場合には抗LT薬は有用な付加療法になります。

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ロイコトリエン受容体拮抗薬:オノンカプセル・DS

1.鼻粘膜の容積血管拡張や血管透過性を抑制し、鼻閉を改善
2.鼻閉に対する効果は、第2世代抗ヒスタミン剤よりも優れる。
3.好酸球浸潤や鼻汁分泌を抑制し、くしゃみ、鼻汁を改善
4.効果発現は内服開始後1週で認められ、運用で改善率が上がる。


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NSAIDs(アスピリン)不耐症

2008年2月1日号 No.468

不耐症の用語解説(このページの上のほうもご覧ください)

AIA:解熱鎮痛剤喘息(analgesic-induced asthma,aspirin-induced asthma)

アレルギー:過敏反応〜IgE抗体などの抗体が抗原と結合し過敏反応を生じる病態。

不耐症:非アレルギー学的機序に基づく過敏症状

過敏症:アレルギーと不耐症を含めた概念

 NSAIDs不耐症は、アスピリンだけでなくプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を持つ全てのNSAIDsに対する過敏症状

   気道型と皮膚型の合併はあまり見られず、気道型はNSAIDs誤使用で重症喘息発作を招くため、非常に危険な過敏体質で、単一病態と考えられます。
 一方皮膚型は、単一病態でない可能性が高く、その解明は進んでいませんが、致死的になる危険はありません。
 アスピリン不耐症と言う用語が長年用いられた来たため、現在でも使用されていますが、アスピリンにだけのことではありません。(海外では今でも主なNSAIDsはアスピリンです。)


 NSAIDs不耐症は、過敏症状発現臓器により、気道型と皮膚型の2つに大別できます。

・気道型不耐症は、いわゆるアスピリン喘息(NSAIDs喘息)と鼻症状が誘発されるのが特徴です。
・皮膚型不耐症は、通常は慢性蕁麻疹がベースにあり、蕁麻疹、特に血管浮腫がNSAIDsで誘発されるのを特徴とします。

 NSAIDs過敏症が確実に否定できない場合に、試みとして通常量のNSAIDsを用いてはいけません。NSAIDs不耐症の誘発値は、通常量の約20分の1から10分の1がほとんどで、通常量のNSAIDsで誘発された喘息発作は、激烈なことが多く、迅速な処置でも延命しない場合があります。

 また坐薬、注射薬、内服薬だけでなくNSAIDsを含んだ貼付薬や塗布薬、点眼液も禁忌です。皮膚貼布では症状発現に数時間を要します。

1.非常に危険(禁忌:吸収が早いため致死的反 応になりやすい。絶対禁忌→強いCOX阻害作用を有する坐薬や注射剤)
 ・インドメタシン、ピロキシカム、ジクロフェナク(ボルタレン)
 ・メチロン注(スルピリン)

2.危険(禁忌:強いCOX1阻害作用)
 ・酸性NSAIDs全般(当院のNSAIDsではソランタール以外)
 ・コハク酸エステル型のステロイド(水溶性プレドニン、ソルコーテフ、ソルメドロール)の急速静注(COX1阻害作用は不明)

3.やや危険(禁忌:安定例でも一定の確率で発作が生じる:(弱いCOX1阻害作用)
 ・酸性NSAIDsを含んだ塗布薬、貼付薬、点眼薬
 ・アセトアミノフェン(ピリナジン、カロナール)1回500mg以上
 ・パラベンや安息香酸、亜硫酸塩などの添加物を含んだ医薬品の急速投与(各種吸入剤、静注用リン酸エステル型ステロイド、局所麻酔薬など(COX阻害作用は不明)

4.ほぼ安全(多くのAIAで使用可能。ただし、喘息症状が不安定なケースで発作が生じる。わずかなCOX1阻害)
 ・PL顆粒(アセトアミノフェン含有
 ・アセトアミノフェン300mg以下
 ・ハイペン錠、モービック錠(高用量でCOX1阻害作用あり)
 ・サリチル酸を主成分としたモビラート軟膏(エラダーム軟膏)、MS冷シップ

5.安全(喘息の悪化を認めない。COX1阻害作用なし)
 ・特異的COX2阻害剤(セレコキシブ;ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
 ・塩基性消炎鎮痛剤(ソランタールなど;ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
 ・モルヒネ、ペンタジン
 ・非エステル型ステロイド(内服ステロイド)
 ・漢方薬(葛根湯等)
 ・その他。鎮痙剤、抗菌薬、局所麻酔薬など、
  添加物のない一般薬は使用可能

<NSAIDs喘息を疑うポイント>
1.ミント、練り歯磨き、香辛料で悪化(95%)
2.NSAIDs誘発歴(80〜90%)
3.鼻茸もしくは副鼻腔炎の手術歴(60%以上)
4.強い嗅覚低下(約60%)
5.発作入院を繰り返す(35%以上)
6.成人発症で、内因性、中等症以上(約20%)

 NSAIDs過敏症喘息のでは ほぼ全例で好酸球性副鼻腔炎を合併します。また耳閉を主症状とする好酸球性中耳炎が増加し、約30%に合併します。また好酸球性胃腸炎も10%程度合併します。この増悪症状は、通常の胃腸炎と類似しているため、診断が難しくなっています。

 NSAIDs不耐症では、NSAIDsの持つCOX1阻害作用と副反応の強さはおおむね相関します。しかし、なぜ一部の患者にNSAIDs不耐症が生じるのかわ分かっていません。

  {参考文献}日本薬剤師会雑誌 2008.1


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アルコール誘発喘息

2008年6月15日号 No.477

 日本人の喘息患者では、飲酒後に喘息発作が出現もしくは悪化するとの訴えが多く、喘息患者に対するアンケート調査でも、飲酒が喘息発作を悪化させると答えたものは67.7%と高率でした。

 アルコールで喘息発作が誘発される機序について種々のものが考えられますが、もっとも重要なものは、アルデヒド代謝と関連したアルコール(飲酒)誘発喘息です。

 体内に摂取されたアルコールは、アセトアルデヒドを介して酢酸になり体外へ排出されます。アルコールの分解に係わる酵素は、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ(ALDH)です。

 日本人の約半数でこのアルデヒド・デヒドロゲナーゼの活性が低いALDH2*2型の遺伝子を持っています。この活性の低い遺伝子を持った喘息患者では、エタノールの代謝物であるアセトアルデヒド濃度が上昇します。このことにより、肥満細胞などからヒスタミン遊離が促進され、このヒスタミンにより気道収縮などを引き起こし喘息発作を誘発します。

 アルコールで発作が誘発される患者ではアルコール(飲酒)を避ければよい訳ですが、アルコールはみりんなどの調味料やドリンクその他、日常生活においてアルコール飲料とは認識されていないものにも含まれているため、ALDH2のホモの活性低下遺伝子を持っているALDH2MM喘息患者では、とくに注意深くアルコール含有物を避ける必要があります。

 アルコール誘発喘息患者でのメディエーターは肥満細胞からのヒスタミンが主体ですので、抗ヒスタミン剤や脱顆粒を防ぐインタールなどが有効です。もちろん吸入ステロイド薬を中心とした通常の喘息自体のコントロールも必要です。

 通常は、酒(アルコール)に強くALDH遺伝子も正常の喘息患者でもアルコール誘発喘息が起こることがあります。嫌酒薬やセフェム系抗菌剤使用時、ホテイシメシやヒトヨタケなどのキノコを食べた時などで、これらの持つ作用でALDHの活性が低下しているため、アセトアルデヒデ濃度が上昇するためです。

※ アルコールを含有する吸入薬

 エタノールを含有する吸入ステロイド剤には、キュバールとオルベスコ(当院未採用)があります。キュバールの添付文書には副作用として1%未満で気管支喘息の増悪が記載されています。

 エタノールを含有する吸入薬では咳や喘息を誘発する可能性を否定できません。しかし、これらの薬剤ではエタノールが添加されたため完全溶解液となっており、肺内到達率が高く、乾燥粉末(DPI)製剤をうまく吸入できない患者でも吸入でき、DPIよりもしわがれ声が少ないなどの長所があります。

◎エタノール含有吸入薬の使用の際に考慮すべき点

1)アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)遺伝子のホモの欠損患者(アルコールが1滴も飲めない人)ではエタノール含有吸入薬の使用は第2選択とする。
2)ALDH遺伝子のヘテロの欠損者や正常者でもアルコール誘発喘息と関連する薬剤(嫌酒薬やセフェム系抗菌薬など右ページ参照)の服用時には十分注意するか吸入薬を変更する3)気道過敏性の特に高い喘息患者ではエタノール吸入による気道刺激(cough receptor)による咳嗽や喘息症状の発生に注意する。
4)アルコール臭に敏感な患者には第2選択にする。

<アルコール喘息と関連する薬剤>

嫌酒薬:ノックビン、シアナマイド
抗菌薬       :セフメタゾン、ヤマテタン、トミポラン、メイセリン
(一部のセフェム系):セフォビット、ベストコール、セパトレン、スルペラゾン 抗結核剤:イソニアジド
抗トリコモナス剤:フラジール
抗癌剤:ミフロール、ナツラン
パーキンソン病治療剤:パーロデル
H2受容体拮抗剤:アシノン、ザンタック、タガメット

その他の機序による飲酒と喘息の関係

 1.アルコール飲料中の抗原(真菌・酵母・ホップなど)によるアレルギー
 2.酒類に含有される防腐剤や色素などによるアスピリン喘息類似の機序による発作誘発
 3.含有される高濃度アルコール(ウイスキーなど)や赤ワイン中の亜硫酸ガス(SO2)などによる気道刺激

 これらに対する対応としては当該アルコール飲料を避けるとともに、アレルギー性喘息アスピリン喘息に対する同様の治療が必要。高濃度アルコールやSO2による気道刺激に対してはアトロピン系吸入薬が有効です。

     {参考文献}薬局 2008.5 


   クラッシュ症候群(2)はこちらです。




ヘルシンキ宣言(インフォームド・コンセント)

グローバリゼーション(2)

 インフォームド・コンセントは「説明と同意」ですが、実は「十分に説明された上での自発的同意」なのであって、しばしば「十分な」と「自発的」という部分が省略されてしまっています。つまり、「簡単な説明と半ば強制的な同意」が日本のインフォームド・コンセントであったわけです。

 しかし「十分な説明」の困難さをこの数年間で、思い知らされたのも事実です。十分な説明をすればするほど、患者さんは怖がるばかりです。湿布薬に「人によってはかぶれることがあります。」と印字が入っただけで、「こんな怖いこと書いてある薬なんかいらんわ!」とつっかえされたこともありました。

 説明する方もされる方も、医療のことについて詳しく説明したり、説明されたりすることに慣れていなかったのです。右に掲載してあるヘルシンキ宣言が出されたのは、1964年、実に35年も前のことなのです。もういい加減に日本でも、定着しても良さそうなものなのですが、現状はまだまだです(特に副作用などの説明では!)。

 いくつかある治療法を患者さんに提示し、その中から自分で治療法を選択していただくという、新たな流れが日本でも生まれつつあります。薬も患者さん自身で選んで貰うというのがグローバル・スタンダードになっていくそうです。インフォームド・コンセントというのは、「患者さんの理解と選択」と訳すのが正解なのです。

<ヘルシンキ宣言の基本原則:1964年>

1.治験は、基礎実験および動物実験に基づき、かつ、科学的に実施しなければならない。
2.治験は、治験実施計画書に基づいて実施しなければならない。
3.治験実施計画書は、治験審査委員会で審査を受けなければならない。
 (この委員会はIRB:Institutional Review Boardと略される事が多い)
4.治験では、被験者(患者及び健常人)の利権を他の利益より優先しなければならない。
5.治験では、被験者のプライバシーを尊重しなければならない。
6.治験では、被験者のインフォームドコンセントを取得しなければならない。
7.この同意のためには、次のものを含まなければならない。

 治験の目的、治験の方法、予想される利益、可能性のある危険、治験参加の任意性、同意撤回の任意性
8.この同意は、できるだけ文書として取得しなければならない。
9.被験者が精神障害者または未成年の場合は、法定代理人から許可を得なければならない。
10.被験者が未成年者の場合でも、本人から同意が得られる状況であれば、法定代理人の同意のほかに、本人からも同意を得なければならない。

こちらにも関連記事があります。

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インフォームド・アセント
Informed Assent


「全ての被験者は、理解できる言葉や用語で臨床試験について可能な限り説明を受けるべきで、もし適切と考えられるのであれば、被験者から臨床試験に参加するための、アセント(法的規制を受けない小児被験者からの同意)を取得すべきである。」(小児臨床試験ガイダンス)

 小児治験では、最終的に患者の治験参加に対しての法的な同意を行うのは両親もしくは法的な保護者ですが、実際に被験者となる小児は、親の一部ではなく独立した存在で、個人として尊重され、倫理面でも十分な配慮を受ける権利を持っています。

 インフォームドアセントとは、このような考えをもとに被験者である小児に年齢や理解度に応じた方法で、治験に参加することの説明を行い、その了解(Affirmative Agreement)を得るというものです。

 中学生以上からは本人の署名、署名した年月日を記入してもらいますが、中学生未満の小児からも説明により理解と了解が得られた場合には、できるだけ署名を受けるようにします。

 インフォームドアセントを行い本人から了解を受けても、署名できない場合は、保護者の同意文書にアセントが得られたことを記入すべきです。

   出典:薬事 2004.7


{添付文書改定のお知らせ}

◎ マーロックス(消化潰瘍、胃炎治療剤)

[併用に注意すること]〜下線部追加

ペニシラミン(メタルカプターゼ)の効果減弱:吸収率が低下
ミコフェノール酸モフェチル(未採用)の作用が減弱:吸収が低下
アジシロマイシン水和物(未採用)の最高血中濃度低下:機序不明


*併用薬剤の効果を減弱〜同時に服用させない:消化管内で本剤と吸着することにより,これらの薬剤の吸収が阻害されると考えられている。〜ジギタリス製剤(ジゴキシン等)、ジフルニサル、胆汁酸製剤(ウルソ)、甲状腺ホルモン剤(レボチロキシンナトリウム等)

<従来より記載されていたのマーロックスの相互作用>

*併用薬剤の効果を減弱〜同時に服用:キレートを形成し,これらの薬剤の吸収が阻害される。 〜テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン)、ニューキノロン系抗菌剤、ダイドロネル

*鉄剤(硫酸鉄,フマル酸第一鉄等)の効果を減弱:本剤による胃内pHの上昇及び難溶性塩形成により,これらの薬剤の吸収が阻害されるとの報告がある。

*活性型ビタミンD3製剤(ワンアルファ):高マグネシウム血症:マグネシウムの腸管からの吸収が促進。(特に腎障害のある患者)

*クエン酸製剤(クエン酸カリウム,クエン酸ナトリウム等):血中アルミニウム濃度が上昇:キレート形成し,アルミニウムの吸収が促進

*血清カリウム抑制イオン交換樹脂:アルカローシス:本剤の金属カチオンとイオン交換樹脂が結合することにより,腸管内に分泌された重炭酸塩が中和されずに再吸収される。

*大量の牛乳,カルシウム製剤:milk−alkali syndrome(注)

(注)ミルク-アルカリ症候群
    milk-alkali sydrome

 大量の牛乳,カルシウム製剤とマーロックス、重曹との同時服用で、高カルシウム血症,高窒素血症,アルカローシス等の症状が現れる場合があります。

 機序は不明ですが、代謝性アルカローシスが持続することにより,尿細管でのカルシウム再吸収が増加し、血清カルシウムの上昇すること、血中pHの上昇が関与すると考えられます。

 症状があらわれた場合には中止

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