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GCP

1990年10月1日号 No.73

GCP:good clinical practice

 

 治験薬、即ち、臨床試験のあり方の具体的実施の方法についての基本ルール作りについては、かねてから長年にわたって検討されて来ました。昨年(1989年)の1月に正式な基準として「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」いわゆるGCPが厚生省より発表されました。

 このGCPが大学病院などで1年間の試行期間をおいて平成2年10月から実施される運びとなりました。

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 最近の医薬品は薬理活性の強いものが多く、効果的である半面、副作用等の配慮を必要とするものも多くなってきています。加えて国民が医療へ参加する時代となり、インフォームド コンセント(十分に説明された上での自発的同意)の医療が強く求められるように成って来ました。

 1964年のヘルシンキでの世界医師会総会で「人に生物学的研究を行う医師への勧告」いわゆるヘルシンキ宣言がなされ、臨床試験では被験者の人権を最優先することが強調されています。日本を含む各国のGCPはこのヘルシンキ宣言に基づいて作成されています。

 今回のGCPは、人への臨床試験について論理性を配慮し、より有用性の高い製品開発の一連の推進策であるといえます。また国際化時代を迎え世界的な評価をに耐え得る前臨床、臨床試験の過程とその信頼性の高いデータが整備されて行くことが求められているためでもあります。

 今回のGCPの施行によって、今後は新薬を開発する製薬会社や治験を実施する医療期間の治験担当医、治験薬を管理する薬剤部などの責任がこれまで以上に重いものになります。

治験が科学的かつ倫理的に実施されるため、各担当医それぞれの立場から情報収集整備、患者人権の保護、治験薬管理の徹底などに努めるべきと思われます。


<ヘルシンキ宣言の基本原則>

1 治験は、基礎実験および動物実験に基づき、かつ、科学的に実施しなければならない。

2 治験は、治験実施計画書に基づいて実施しなければならない。

3 治験実施計画書は、治験審査委員会で審査を受けなければならない。
  (この委員会はIRB:Institutional Review Boardと略される事が多い)

4 治験では、被験者(患者及び健常人)の利権を他の利益より優先しなければならない。

5 治験では、被験者のプライバシーを尊重しなければならない。

6 治験では、被験者のインフォームド コンセントを取得しなければならない。

7 この同意のためには、次のものを含まなければならない。

 治験の目的、治験の方法、予想される利益、可能性のある危険、治験参加の任意性、同意撤回の任意性

8 この同意は、できるだけ文書として取得しなければならない。

9 被験者が精神障害者または未成年の場合は、法定代理人から許可を得なければねらない。

10 被験者が未成年者の場合でも、本人から同意が得られる状況であれば、法定代理人の同意の
ほかに、本人からも同意を得なければならない。

2000年追記

新GCP

 新GCPの特徴として役割・責任の明確化、インフォームドコンセントの明確化、管理システムの明確化、治験審査委員会の強化の4点が挙げられる。

 新旧GCPを一言で総括すると、ともに倫理性と化学性を根底においていながら、実は新GCPでは、手続き論が詳細になりすぎた傾向がある。それが現場とのギャップを生み出している可能性が高い。

出典:医薬ジャーナル 2OOO.4

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インフォームドコンセント(IC)
から
コラボレーションへ

出典:日本薬剤師会雑誌 2001.2

ICは、医師の説明義務と、それによる患者の「自己決定」のプロセス
(1)必要な医学情報の開示とその理解
(2)患者の判断能力
(3)自発的同意
          の3つの要素がそろうことが必要

 ICの流れは、医療サービス提供の場であっても一般的なサービス提供の場面(例えば、車を購入する時など)と同じく、消費者は納得した上でサービスを受ける権利を有するという消費者運動の動向とも合致します。
ICの要素(1)は必然的に患者と医療スタッフが医療情報を共有することを要求しています。このことは、患者と医療スタッフによる医療のコラボレーション(共同作業化)の端緒となるものでもあるのです。


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医療倫理の4原則

2009年2月15日号 No.492
 


 臨床場面で倫理的葛藤が生じた際には、行為指針が必要となります。その際使用される倫理原則として、4つの原則があります。

 これは1979年「生物医学・医療倫理の諸原則」のなかで、生物医学や医療の分野で用いられるべき道徳原則として提示された下記の4つです。

             {参考文献} 治療 2009.1

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「無危害」、「善行」、「正義」、「自律尊重」

 1.無危害原則〜「害悪や危害を及ぼすべきではない」ことであると定義されます。

 医療現場では、医師が治療行為を行うに当たって、患者に出来るだけ痛みや苦痛を与えないように配慮することや、合併症や副作用を可能な限り避けるように配慮するなどによって発揮されます。

2.善行原則〜「最も医学的に適切で患者にとって利益が多いと思われる治療行為を行うように勤めるべき」という原則です。

 この原則は、最善の結果をもたらすために、利益と危害を比較考量することを含んでいます。あらゆる問題には、必ず利益(ベネフィット)と危害(リスク)が表裏一体になっているために、実際のケースを検討する際には、善行原則と無危害原則を同時に考える必要があります。

3.正義原則〜「社会的な利益と負担は正義の要求と一致するように配分されなければならない」

   医療現場では、医療資源の公正な分配などと関係します。

4.自律尊重原則〜「患者が自分で考えて判断する自律性を尊重しなければならない」

 また、この原則には、単に患者の決定に自由を与えるだけではなく、必要ならば患者の自己決定を助けるということも含むと考えられます。

 従来の医療では、善行原則が中心でしたが、近年は自律尊重原則を重視するようになっています。現代医療で重要な位置を占めている、インフォームド・コンセントはこの自律尊重原則に基づいています。

 その他には、守秘義務や患者に嘘をつかない、患者の治療方針決定を手助けするなどの形で、実際の医療現場で発揮されます。

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 実際の医療場面では、異なる原則間に対立が生じることがあります。その際の解決方法として、特定化と比較考量が用いられます。
 特定化は、2つ以上の原則が対立しているときに、抽象的な原則にはこだわらずに、特定の状況においてその原則が導き出す合意を特定することによって、対立を避けるものです。

 比較考量は、原則の特定化によって対立を解消できない場合に、原則の相対的な重みと強さについて熟慮し、どちらの原則がその状況においていっそう重要であるかの判断を行うものです。

 判断の際には、直感ではなく判断を支持するもっともな理由が必要となります。


医療倫理とインフォームド・コンセント

〔例〕
 ある糖尿病患者は仕事が忙しく通院も途切れがちで、内服薬を切らすことも時々あった。医師が、コンプライアンスを注意したところ、通院を中断してしまった。1年ぶりに、口渇、倦怠感を訴えて来院、高度な高血糖を認め、入院治療を要する状態であった。患者に入院治療を勧めても、仕事を理由に外来治療を希望。医師は、患者の希望を聞き入れるべきだろうか?

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 インフォームド・コンセントが適法に成立するためには、同意能力がある患者にこれから行おうとしている医療について適切な説明を行い、患者がその説明を理解した上で、自発的意思によりその医療に同意する必要があります。

 インフォームド・コンセントが成立したといえるためには、1.患者の同意能力、2.患者への適切な説明、3.患者による説明の理解、4、患者の自発的同意の4つの条件が満たされなければなりません。

 臨床でのインフォームド・コンセントの歴史は、医療裁判の判例の積み重ねによって形成されてきました。

 裁判所は、説明すべき事項として、一般的には次の5つをあげています。

1)患者の病名・病態
2)これから行おうとしている医療の内容、性格、目的、必要性、有効性
3)その医療に伴う危険性とその発生率
4)代替可能な医療とそれに伴う危険性とその発生率
5)何も医療を施さなかった場合に考えられる結果


 代替可能な医療の説明については、医療水準の範囲内でどの医療を実施するかにつき、説明なしに医師の裁量を認める判例もあります。ただ、代替可能な医療についても説明を受けて初めて、自らの価値観に従って医療の選択が出来るのであり、こうした意味からは、代わりとして考えられる医療とそれに伴う危険性・その発生率についても説明されることが望ましいと思われます。

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1. ICH(すべてはここから始まった)  
2. インフォームドコンセント  
3. コクラン共同計画(アーチーの夢)  
4. MedDRA   
5. MedDRA(2)  
6. ブリッジング試験  
7. 治験〜未来への贈り物  

   

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