HS病院薬剤部発行     

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 薬 剤 ニ ュ ー ス 

  1994年

12月15日号

NO.166

                                                

   ヘリコバクタ−ピロリ

  ・・・・消化性潰瘍は感染症である!!・・・・

 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因は長らく不明でしたが、1983年にヒト胃粘膜からヘリコバクタ−ピロリ(以下H.p)菌の分離・培養がなされて以来、従来の消化性潰瘍に対する考え方は大きく変貌し、現在では消化性潰瘍は感染症のひとつであるというのが一般的となってきました。

   ヘリコバクタ-ピロリ

 通常のHE染色で識別できるが、ギザム染色の方が識別しやすい。微好気性菌でありグラム陰性のら旋菌(スピロヘ-タ) でもある。

  ヘリカル〜螺旋(らせん)状:ヘリコプターのヘリコと同じ意味
(レオナルドダビンチは螺旋の回転翼がついたヘリコプターを描いている。)
  バクタ〜細菌
  ピロルス〜最初に幽門部で発見

’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’

 慢性胃炎のみならず胃潰瘍や十二指腸潰瘍の胃粘膜には高率にH.p感染が認められることが報告されています。十二指腸潰瘍では100%、胃潰瘍でも80% 以上の感染率となっており、H.p感染は消化性潰瘍患者の大多数に認められています。

 胃潰瘍患者がH.pに感染しやすいためという可能性もあるわけですが、除菌をすると再発が極端に見られなくなるという結果から、H.pが消化性潰瘍にお いて重要な役割を担っていることを示しています。

 現在考えられている発生の仮説では、H.p感染による慢性胃炎によって様々な炎症反応が惹起され、それが進行すると固有胃腺の萎縮とともに腸上皮化生が胃粘膜に進行する、あるいは十二指腸に胃上皮化生が発生し胃酸の関与下で潰瘍が発生するとされています。

 胃粘膜の腸上皮化生や十二指腸粘膜の胃上皮化生はH.p除菌により本来の粘膜に復するという報告もあります。

 消化性潰瘍患者、特に十二指腸潰瘍患者では食餌刺激による高ガストリン血症の存在が知られていました

 が、これらの患者のガストリン値は除菌により正常値に復することから、高ガストリン血症の原因もH.p感染によることが明らかになりました。

[ヘリコバクタ−ピロリの除菌法]

 H.p除菌による再発率の低下は劇的であり、胃・十二指腸潰瘍患者においては、H.pの除菌は現在の療法に比較して大きなメリットがあります。米国では胃潰瘍や十二指腸潰瘍では最初から除菌すべきであるという方向に傾いていますが、我が国では、抗生物質による潰瘍治療は現在のところ保険適応はなく医療費の患者負担の増大という問題があり一般的ではありませんが、近い将来その方向に向かうものと思われます。

{海外における除菌の実例}

 最もポピュラ−なのはビスマス製剤+フラジ−ル+ミノマイシン(或いはサワシリン)の3剤併用療法で、服用期間は2週間です。残念ながらコロイドビスマスなどのビスマス製剤は日本では認可されておらず、ビスマスに代わる薬剤が期待されます。

 除菌療法とH2ブロッカ−などの併用は治癒促進と胃内pHによる抗生物質の分解を防ぐという意味から意義があります。最近、プロトンポンプ阻害剤との併用も検討されていますが、通常の2〜3倍量を必要とするといわれています。

{参考文献} 日本薬剤師会雑誌 12 1994 Vol.46

関連項目:ヘリコバクタピロリと消化器疾患


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ヘリコバクターピロリ除菌療法の問題点

2000年7月15日号 295
               

     関連項目 ヘリコバクタピロリ耐性菌  ヘリコバクター・ピロリ除菌後の問題点

 

 本年6月、日本ヘリコバクター学会が「H.pylori(以下H.p)感染の診断と治療のガイドライン」を公表しました。

 1998年から始まったH.p除菌に関する大規模試験の結果により、除菌治療を保険適用とする科学的な根拠が得られたとして現在製薬企業が承認申請を行っています。

 しかし、今回の発表は保険適用の動きと直接連動するものではありません。
(追記:2000年11月より保険適用となりました。除菌療法の処方に当たっては、ピロリ菌の存在確認が前提となり、その検査法が保険適用されていなかったため、厚生省は薬剤と検査をセットで認めることとなりました。 )

  関連項目:ヘリコバクタピロリ感染診断の検査法

 H.p感染と胃疾患との関連が明らかになり、欧米では早くから除菌療法の適応疾患に関するガイドラインが発表されていますが、世界的にコンセンサスが得られているわけではありません。日本においても未だに統一見解が得られておらず、未だに大きな課題となっています。

 H.p除菌療法が、今なお保険適応外となっているため、H.p感染と胃疾患との因果関係が明らかな患者さんに対し除菌療法を行う場合は、事情を説明し「自己負担」に同意してもらう以外に方法はありません。

<<混合診療禁止の問題>>

 さらに問題となっているのが「混合診療禁止」のルールです。これは、保険医療機関に保険診療を希望して来院した患者さんへの一連の診療行為の中で「保険のきく診療行為」と「保険のきかない診療行為」を混合して行ってはいけないというルールです。これは、1984年の健康保険法の改正時に「特定療養費制度」の新設以来かなり明確に浮かび上がってきたルールです。

 近日中に保険適用承認が“噂”される対象も「再発を繰り返す消化性潰瘍及びMALT腫」のみと考えられるため、場合によってはかなり重要と考えられる慢性胃炎に対して除菌療法を試みる場合には、かなり煩雑な作業が必要になるものと思われます。

 <<除菌に関わる問題>>

 日本でクラリスロマイシン耐性菌の頻度は5〜10%とされており、近年増加傾向にあります。耐性菌感染例では、除菌率が低下し、除菌不成功後にはクラリスロマイシン耐性が生じることが報告されており、安易に不十分な除菌治療が行われることは、耐性菌の出現を増加させることが考えられます。除菌後に、逆流性食道炎が新たに発生する症例がわが国で約10%に報告されており、注意が必要です。

 PPI+クラリスロマイシン+アモキシシリンで除菌が不成功に終わった場合、second-line therapyやクラリスロマイシン耐性菌感染例の治療方については、専門施設への紹介が望ましいと考えられます。

 なお、除菌治療だけは活動性潰瘍が治療に至らない場合がありますので、活動性潰瘍では除菌治療期間を含め4〜8週間の酸分泌抑制剤を用い、潰瘍の治癒を確認することが望ましいとされています。

 <除菌後の注意>

 多くの患者では酸分泌が回復してきますので、逆流性食道炎が発生するリスクが増加します。

 肥満、アルコール摂取はさらにリスクを高めます。

    関連項目 ヘリコバクター・ピロリ除菌後の問題点

<<除菌療法の第1選択薬>>

1回量:ランソプラゾール30mg、アモキシシン750mg、クラリスロマイシン200〜400mg

 1日2回を1週間

{参考文献}臨床と薬物治療 2000.7   関連項目 
ヘリコバクタピロリ耐性菌

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ヘリコバクターピロリ除菌療法(OAC療法)

2002年5月1日号 336

3剤併用療法承認内容の違いについて

 胃・十二指腸潰瘍でのヘリコバクターピロリの除菌療法として、オメプラゾール(O)、アモキシシリン(A)、クラリスロマイシン(C)の3剤を併用する、いわゆるOAC3剤併用療法が、この4月に承認となりました。

 PPIとしてタケプロンを用いる従来の3剤併用療法と効能・効果は同じですがアモキシシリン製剤でオメプラゾールとの併用療法では承認されない薬品があります。また、クラリスロマイシンの用量が(1回200mg→400mg)と若干異なっています。

従来の3剤併用療法で使用できる薬剤の製品名(会社名)

<PPI>  *印は当院採用薬品

* タケプロン15,30(武田薬品)

<アモキシシリン:セフェム系抗生物質>

* サワシリン(藤沢)

 アモピシリン(大洋薬品)、アモリン(武田)パセトシン(協和発酵)、ワイドシリン(明治製菓)も使用可


<クラリスロマイシン:マクロライド系>

* クラリシッド錠(ダイナボット-大日本製薬)

[処方(用法用量)]

 タケプロン30mg  2Cp
 サワシリン      6Cp 
 クラリシッド錠    2Cp

    以上1日量 1日2回(分2)  7日分

 クラリスロマイシンは、必要に応じ適宜増量することができるが、1回400mg(2錠)1日2回を上限とする。

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今回承認になったOAC療法で使用できる薬剤の製品名(会社名)


<PPI>

* オメプラール錠10,20(アストラゼネカ)

<アモキシシリン:セフェム系抗生物質>

* サワシリン(藤沢)

 アモピシリン(大洋薬品)、アモリン(武田)は使用できません。パセトシン(協和発酵)は使用可

<クラリスロマイシン:マクロライド系>

   
用量が倍に変わっています。

* クラリシッド錠(ダイナボット-大日本製薬)

[処方(用法用量)]

 オメプラール錠20mg  2錠
 サワシリン        6Cp 
 クラリシッド錠      
4Cp

   以上1日量 1日2回(分2)  7日分
 
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2002年5月1日号 336

  医学・薬学用語辞典(イ) 「インターフェロン療法の落とし穴」 はこちらです。


   2000年7月15日号  No.295  メインページへ

ICH〜すべてはここからはじまった?

グローバリゼーション普遍的な医療とは(1)

 故司馬遼太郎氏が“アメリカ素描”の中で、アメリカでも“にぎりずし”が普及しているのを見て、こう書いていました。『にぎりずしを初めて食べたとき、(何の説明も必要なく)いきなりうまいと思った。そしてこれが「文明」ということなのだ。文明とは普遍性のあるものであるから、人種とかその国特有の文化にかかわらず、受け入れられるものなのだ。』

 これが今の言葉でいうグローバルスタンダードということなのでしょう。グローバリゼーションとは客観性・普遍性という意味で、グローバルスタンダードは世界標準、世界に通用する基準のことです。私たち医療に関連するものにとってまっ先に思い浮かぶのは、ICHです。

 ICH:日米欧3極薬品規制ハーモナイゼーション

 International Conferense on Harmonization of technical registration of pharmaceuticals for human use

 1990年に国際的に医薬品の規制環境の標準化を進めることによって、資源のより効率的な活用を図り、医薬品の品質、有効性、安全性や保健衛生の水準を高く維持しながら、新薬の利用を促進することを目的として開始されたものです。

 1995年からは市販後の安全性データの取扱いも対象とされるようになりました。
 具体的には、まず「臨床安全性の取扱い」として、「副作用症例報告の定義及び基準」、「副作用症例報告のデータ項目」、「安全性定期報告」の各分野に分かれた取り組みが開始、これと同時に「医学用語:
MedDRA」、及び「情報伝達の電子標準」といった市販後の安全性情報の情報伝達に関連する境界領域にも着手されました。

 簡単に言うと、世界的に各国の医学水準を同一レベルにしよう!ということなのですが、これにより日本の医学は様々な問題を抱えることになります。

 インフォームド・コンセント、GCP、クオリティオブライフ、そしてEBMなどなど目新しい言葉が登場する度に、にぎり寿司のようにはすんなりとは理解できず、我々は目を白黒させて、その言葉の意味をつかもうとしてきました。だいたいの概念は理解できたのですが、果たして臨床の場でどの様に活用できているのでしょうか?

 国際化することの重要性は国内の場合でも患者さんは、普遍性を持つ医療が受けられるという利点があるからです。普遍性を持つ医療とは、言い換えれば、最低限は確保されるということです。日本の医療も世界水準に達しているはずなのですが、患者中心の医療という観点からから見れば、必ずしも世界水準とは言えないと思われます。


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医療過誤防止に向けて  

ヒューマンエラーとは

2001年6月15日号 316


 ヒューマンエラーの原因は、人間の情報処理能力が入力量に対して著しく小さいため、ある対象を捉える場合、情報の単純化が行なわれ、単純化された記憶が断片的にネットワーク上に連なっていることに原因しています。

 ヒューマンエラーの基本的考え方として、Rasmussenの3つのパフォーマンスレベルを考えると理解しやすいと思われます。

日常のパフォーマンス(行為)レベル

   スキルベース→ ルールベース→ 知識ベース

       低いレベル  →    高いレベル


 スキルレベルの行為とは、非常に日常的で高度に習慣化された行為のことを言い、何らかの情報が入力されることにより反射的に行為が行なわれるような場合を指します。

 ルールレベルの行為とは、過去の経験、一般的常識、社会的規範などに基づいた判断により行なわれた行為で、スキルレベルで問題が生じた場合に適応されます。

 知識レベルの行為とは、ルールレベルの判断では解決できないような問題に対して発動され、過去の経験、社会的ルールが当てはまらない事前に経験したことの無い、全く新たな事態の発生において行なわれる行為で、過去の記憶、知識を動員し高度な考察と推論により結論を導き出す行為を言います。

 これら3つの行為の過程で起こるエラーがヒューマンエラーです。日常の行動はルールベースで行なわれ、行動の進行に対する注意のチェックによりエラー無しに遂行されますが、チェックにより問題が生じた場合、スキルベースレベルで問題解決がなされます。ここでは過去の経験とか社会の規範などに従い問題解決されるため個人の習慣、経験、慣れなどにより問題を解決する傾向があり、ミステークもこれらにより誘発される傾向があります。

 さらにルールベースで解決できない問題は知識ベースレベルで取り扱われることになりますが、未経験の事象を過去の知識とか経験により解決するために、知識の欠如・不足、論理性の欠落、習慣への固執などによりミステークを犯すことになります。

危険行為の分類

*意図されていない行為(ヒューマンエラー)

 :スリップ〜注意の失敗に原因を発している。  :ラプス〜短期記憶の喪失に起因している。
 :ミステーク Miss(ミステーク):知識&ルールベース

 意識的に不適切な目標を選んでしまう誤り。思いこみなどによる間違い。経験が豊富だと返って、過去の体験から思いこみしやすい、状況認知の時点で、判断ミスが起きます。適切なルールの誤用、多様な変動形式等

 Slip(スリップ):スキルベース

 目標に合わない行為、うっかり間違い体が一連の動作を覚えていてそれが元でエラーが起こる場合。例えば、何かをしていて話しかけられたりして動作が中断してしまうと、今何をしていたかの記憶がなくなるなど。

(注意の失敗、干渉、省略、順序の誤り、タイミングの誤り)

 lapse(ラプス):スキルベース

:記憶の欠如、やり忘れ :注意項目の省略、場所の見失い、意図の喪失

*意図された行為
 違反行為はヒューマンエラーとしては扱いません。過失・怠慢(ネグリジェンス)は、医療事故となり当事者の責任が問われます。

{参考文献}薬局 2001.4


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ヒューマンエラーの起こる原因(1)

エラー

・マスキング=周囲の雑音によって言葉が聞き取りにくくなる。

・「予見」や「期待」が知覚に影響を及ぼす。
・設備や機器の使いにくさはエラーを引き起こす。
・人は形式的に確認すると安心してしまう。
・意識的に着目しなければ、重要な情報でも見逃すおそれがある。

ルール違反

 ・守りにくいルールは違反を生じさせる。
 ・日頃からルール違反が容認される規範(集団の暗黙の決まり)があると違反を犯しやすくなる。

ルールの欠如や不適切

・人員不足によるルール違反、慣れによるルールの軽視
・高すぎるモラル、やる気は違反や危険な選択を引き起こす。
・計画された行為の遂行にとらわれると、行為を起こすための条件の確認を怠りがちになる。
・サブグループ間の情報交換は不足がちになる。(サブグループ内での交換で満足してしまい、他のサブグループとの情報交換が疎かになる。)

 このようにヒューマンエラーは、単に個人の不注意や怠慢だけではなく組織での管理や設計の誤り、不適切な組織運用などがエラーの誘引となっていることも見逃すことが出来ない重要な問題です。

 ヒューマンエラーを考える際に重要なことは、エラーを起こした当事者と切り離して考えるということです。当事者を処罰してそれで終わりにしてしまうとエラーはいつまでたってもなくなりません。

 当事者に責任を押しつけず、エラーを起こした背景、システムを見直すことが管理者に求められます。


知識ベースレベルでのミス

                 スキルベース→ ルールベース→ 知識ベース

ヒューマンエラーの起こる原因(2)

薬局2001、6

 知識レベルでの失敗モードはケースが多種多様で複数原因の組み合わせによることも多く、いずれも明確な意志を持ってなされる思考の過程で下される結論の誤りです。

 その原因としては、知識の不足、過去の経験の過信、問題把握の誤り、問題処理能力の超過など個人の知識、経験、おかれた状況などにより思考が制限され問題の本質を逸脱することにより生じるミステーク

 発現頻度は少ないが、発見されて修正される確率も小さいため大きな事故につながる可能性があります。

<<知識ベースレベルでの失敗モード>>

・情報選択のエラー、注意が誤った特徴に向けられる(強く訴える症状に注意が集中し、他の病態を見落とす)

・作業空間の限界;問題を受け取った順序で想起し結論を出すため、問題入力の順序により問題を取り違える(前後の事情を聞かずに、薬を飲んだら具合が悪くなったといわれ、直ちに副作用を疑う)

・去る者日々にうとし;問題を発見した場合、自分の過去の経験にあてはめるため必要以上に重視し、見えない現状を軽視する(過去に経験した副作用を気にするあまりちょっとした症状でも副作用を疑う)

・確信バイアス;曖昧なことに直面した場合、手近な解釈を選び、それを放棄しようとしない(でもそんなこと信じられない!式の論理展開)

・過信;持っている知識を過大評価し、都合の良い証拠に焦点を合わせ、矛盾を無視し、行動を正当化する(相互作用の処方を説明するのに自分の知っている相互作用だけで説明しようとする)

・ハロー効果;単一の命令を好み、矛盾した命令を嫌うため、矛盾した命令を単一の命令に都合良く減少させる。

・因果関係による問題;過去の経験から危険性を過少評価してしまう、代表性と利用可能性の発見的検索より、過去の経験に引きずられ、目立った因果関係だけに目が行く。

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 組織的安全分化の醸成のためには安全に対する明白な規範を作り、その教育と周知徹底が必要です。しかし、一方で実際のリスクマネージメントでは窮屈すぎる締め付け規範の強制は決して良い結果をもたらさず、適度な組織的緊張と個々の仕事に対するプライドを持たせて自主的に安全規範を守るようにすることでかなりの効果が期待できるとされています。

スキルベース:不注意(注意しすぎ〜知覚の混乱)

 人間が情報処理能力の低下に由来した、脳内で情報のシンボル化とそれらが複雑なネットワークを形成していることにより発生するエラー

ルールベース

 過去の成功例、反復学習された強い習慣、マンネリ化による意識レベルの低下などいずれも一連の作業の流れの中で生じた問題を解決する場合、学習により獲得された太い記憶回路が優先的に作動することにより起こるミステーク
(正しいルールの適用違い)

Rasmussenによるパフォーマンスレベル

 スキルベース→ルールベース→知識ベース 

1.最初の例外:一般的ルールに大きく反する例外に出会った場合
2.カウンターサイン・ノンサイン:より一般的ルールが適用できない、予測
 できないパターン認識システムの中で雑音になる。
3.情報の過付加:多量の情報量のため認知システムの容量を超える
 時、認知可能情報だけが処理される(1処方内に何種類も処方されて
 いる場合など)
4.ルールの強さ:完全な適合でなくても過去に成功したルールが優
 先的に適応される(定型化した処方の組み合わせで、最初に2件を見
 て後が定型でなくても定型化してしまう。
5.一般的ルールは強い:頻度が高いルールが一般的ルールになる
6.冗長:繰り返し遭遇する問題に特定のサインを見出し、それのみにて
  問題を処理しようとする。
7.固執性:習慣が個人を統制する(ベテランによる反射的調剤作業)



誤ったルールの適用

1. コード化での欠陥……問題解決のためのルールを作ることができないために負荷を切り捨てる(混合調剤における配合変化などの予測が立たないため、内容的に検討しないまま混合する)
2. 行動での欠陥……a. 誤ったルール(間違ったルールを正確に使う→アダラートLの粉砕の例)
b.エレガントでないルール(間違ってないが事実上無駄の多いルール→28日分包を分包誤差をなくすため4回で秤量する)
c. 得策でないルール(中間の目的は達成できるがその方法を常用すると事故に繋がる→単純な処方の1人監査)

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 ホーソン効果

  調査を受け、監視されているという心理的要因による影響。自己を見直す行為により自己抑制が働き、過誤減少に一定の効果があります。

 ハインリッヒの法則

 1つの重い傷害(ミス)の前には29の軽い傷害があり、その前に300の傷害があります。

<スイスチーズモデルとは>

 スイスチーズはトムとジェリーなどのアメリカの漫画によく出てくる所々に穴のあいたチーズのことです。
 このチーズをスライスして何枚か重ねて並べたとき、穴が貫通する場合としない場合があります。
 この穴をミスと考えると、穴が一直線に重ならなければ、事故につながりません。一人一人が穴を持っていても、何人かでチェックし合えば重大な事故は防げます。

{参考文献}薬事 1999.10等

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インシデント←→アクシデント

 インシデントとは、一般的には、ある小さな出来事のことを意味します。
医療の現場では、患者に傷害を及ぼすことはなかったが、日常診療でヒヤリしたり、ハットした事象をいいます。例えば、事故が起こりそうな状況に前もって気づいた事例や、誤った措置が実施されそうになる前に気づいた事例、誤った措置が実施されたが何ら影響の無かった事例などです、

 したがって、医療従事者が予想しなかった悪い結果が発生した事象、不可抗力による事例や患者自身による自招行為、極めて微小な擦過傷から死亡(自殺を含む)など、患者にわずかでも何らかの影響が生じたもの全てを対象とするアクシデントとは区別します。

出典:ファルマシア 2004.6 等

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エラープルーフ
フールプルーフ

人は誰でも間違える
To err is human

 人間がちょっとした気のゆるみから犯すミスや過失を防ぐ、あるいはそれによって引き起こされる不具合を低減したり影響を小さくするためのさまざまな工夫をエラープルーフと呼びます。

 本来はフールプルーフ(馬鹿よけ)と呼んでいましたが、差別用語として扱われる傾向が多くなっためこう呼び代えています。

 もともとは安全管理の分野から生まれた言葉で、ベルト、ギヤ、プレス等にうっかり手を挟んで怪我をしないようなフェールセーフ、フェールソフト等の仕組みを指していました。

 フェールセーフ:製品などに故障が起こったとき、その機能は失われても安全性が保持されるように配慮する設計思想

 フールセーフ:アイテムに故障を生じても、安全性が保持されるように配慮してある設計または状態

フェールプルーフは人為的に不適切な行為や過失が起こってもアイテムの信頼性・安全性を保持するような設計または状態のことで、フールセーフとは微妙に違います。

 フェールソフト:製品やその一部の部品などに故障が生じても、システムや製品全体の急激な故障を生じさせないように、部品などの一部分の故障やゆっくりした機能低下でとどめるような設計思想

 人間のミスの発生率を下げるための工夫、ミスを犯したときの影響を小さくするための工夫などはエラープルーフとしています。


<エラープルーフの考え方>

1.ミスが起こらないようにする。

 1.に関する3つの原理
   排除の原理 〜ミスを発生させない最も効果的な方法→作業を行わない。
   代替化の原理〜作業を人間に任せない
   容易化の原理〜作業を人間にとって容易にする。

代替化:設備や器具を工夫することにより、ミスを犯しやすい作業を作業者が行わなくて済むようにする。

一部代替化:作業の主体はあくまで作業者に残しておき、作業上必要となる記憶、近く、判断、動作の機能一部を補助する手段を用いる。


2.発生したミスがトラブルや事故を引き起こさないようにする。

  2.について
   異常検出〜ミスを検出し処置する。
   影響緩和〜ミスの影響を緩和するための作業や緩衝物を組み込む

        出典:薬事 2003.4 等


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PHARM-2E

〜〜医療事故を分析し、防止するツール〜〜

2008年3月15日号 No.471

 医療事故を防止するためには、事故を起こした個人への責任追及ではなく、背景にある要因を多角的に分析し、再発防止に向けた対策を練ることが重要です。

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 医療事故を分析する手法としては、アメリカ航空宇宙局(NASA)が採用している4M-4Eや航空業界の事故に使われるSHELモデルが有名です。

※ 4M-4E

4つのM

  1.Man(人間)、2.Machin(物、機械)、3.Media(環境)、4.Management(管理)

4つのE

 1.Education(教育・訓練) 2.Engineering (技術・工学) 3.Enforcement(強化・訓練) 4.Example(模範・事例)

 を網羅的に整理する手法

※ SHEL
 1.当事者(Liveware)を中心に 2.ソフトウエア(software) 3.ハードウエア(hardware) 4.環境(environmennt) 5.当事者以外の人(Liveware)

 の5つの要因で事故分析を行う方法です。

 PHARM-2E分析法は、厚生労働科学研究の分担研究で、日本薬剤師会が開発したインシデントの個別分析ツールです。

 調剤事故の要因分析を
1.Practice(調剤)〜業務環境の改善、手順や薬理学的管理など
2.Human(人)〜肉体的・精神的要因や知識、経験など
3.Appliance(機器・表示)〜医薬品の特性、表示や記載など
4.Relation(連携)〜疑義照会、服薬指導、人間関係など
5.Managemennt(組織・管理)〜勤務体制や人員配置など

 の5つの視点から検討し、今後の事故防止の対応策を
1.Enforcemennt(教育・訓練)〜教育の徹底など、人への対応
2.Engineering(技術・具体例)〜バックアップシステムなど物への対策

   の2つの視点から立案します。

{参考文献}日本病院薬剤師会雑誌 2005.6
 


2008年3月15日号 No.471

病院職員のメンタルヘルス対策が安全管理につながる

 病院で働く職員はさまざまな精神的ストレスにさらされており、職員に対するメンタルヘルスケアの重要性が高まっています。
 本年(2008年)、札幌市で開かれた第20回日本総合病院精神医学会では、総合病院での職員のメンタルヘルス対策が検討され、病院で働く人々の精神的なケアが、同時に病院の安全管理の向上につながることが明らかにされました。

 学会では、看護師1.790人の分析から、看護師のメンタルヘルスと医療エラー(ニアミス)に関する因果関係を解明し、「ニアミスを起こす背景にメンタルヘルスの問題があり、なぜ、うっかりミスをしたのか根本的な原因を探る必要がある」との問題提起がなされました。

 メンタルヘルスの現状がどのように医療エラーにつながっているかについての因果関係の分析結果から「ニアミスやアクシデントを引き起こす業務中の注意力低下の大きな原因として、抑うつと不眠があげられる。不眠は交代勤務による睡眠覚醒リズムの乱れによるところが大きい。看護師はまじめである意味脅迫的な性格の人が多く、エラー回避のためには確認や声かけが必要といわれるが、もともと強迫傾向のある人が確認を必要以上に協調されると抑うつを増悪させ、かえって事故を起こしやすくなる可能性がある」との認識も示されました。

 {参考文献}メディカルトリビューン2008.2.7


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高信頼組織:HRO

HRO:high reliabilty organization

2012年6月1日号 No.568

 高信頼組織(HRO)とは、エラーが発生しやすい過酷な条件下で常に活動しながらも事故発生件数を標準以下に抑え、高い成果をあげている組織のことです。

 航空管制システム、航空母艦、石油化学プラントなどが該当しますが、救命救急センターもHROの1つとされています。

 {参考文献}薬事 2012.3

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 HROでは、わずかな兆しにもよく気が付き、危機につながりそうな失敗を発見し修正する能力をもつ状態をさす「マインドフル」な状態であることが重要です。

 そのため、スタッフには、1)失敗の重視、2)単純化への抵抗、3)業務に関する感性を磨く、4)復旧能力を高める。5)専門知識の尊重の5つが必要です。

※ TeamSTEPPS

Team Strategies and Tools to Engance Performance and Patient Safety
(医療のパフォーマンスと患者安全を高めるためにチームで取り組む戦略と方法)のことで、2005年に米国の医療研究品質調査機構と米国国防省が共同して作成したHROのエビデンスなどに基づいたチーム戦略です。

 TeamSTEPPSでは 1)リーダーシップ、2)自分を含むスタッフの能力や状況のモニタリング、3)相互支援、 4)コミュニケーションの4つのコンビテンシーが必須で、コミュニケーションを通して医療行為に関する、認識、理解、知識などのスタッフ間での共有を図ることが求められます。

※ 5S活動

 整理:必要なものと不必要なものを分け、不要なものを捨てる。
 整頓:必要なものがすぐに取り出せるように置き場所、置き方を決め、表示を確実に行う。
 清掃:ゴミ、汚れのない綺麗な状態にすると同時に細部まで点検し、ものをきめ細かく管理して、常に状態を維持する。
 清潔:整理、整頓、清掃を徹底して実行し、汚れのない綺麗な状態を維持する
 躾 :決められたことを決められた通りに実行でるよう習慣付ける。

※ 5つのR(Right:正しいこと)

1.正しい患者に、2.正しい薬剤を、3.正しい量で、4.正しい経路で、5.正しい時間に 与薬することです。

<エラー防止と情報共有>

 処方や指示を出した医師やそれを依頼した薬剤師が、正しく処方しても、実際に薬剤を与薬する看護師には十分に理解されていないこともあります。TeamSTEPPSでのコミュニケーションでは、SBARの順に伝達することが推奨されています。

 S:situation(状況)
 B:backgraund(背景)
 A:assessment(評価)
 R:recommendation(提案)

 薬剤師が医師へ処方オーダーや変更を依頼した場合は、処方や処方変更の根拠や意図を看護師にも必ず説明して、さらに内容が正しく理解できているか確認するなど十分な意思疎通を図ることが重要です。

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 医療スタッフ全員が経験豊かであるとは限らず業務に対する感性にも個人差があります。救急医療の現場では、注射剤を中心に、麻薬、向精神薬、筋弛緩薬、毒薬、劇薬などのハイリスク薬が繁用されます。

 スタッフへの麻薬および向精神薬取締法や薬事法、通知などの正しい法的知識を周知するなど管理に対する認識を高めるなど、あたりまえのことをきちんと行うためのスタッフに対する周知、教育の継続が必要とされています。


2012年6月1日号 No.568

PPIへの逆風   〜〜米国で煙害骨折など〜〜

 米国食品医薬品局(FDA)は、本年、PPI(プロトンポンプ-インヒビター)について、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症を発生させる恐れがあるとする情報を発信、患者と医療従事者に対して注意を喚起しました。

 クロストリジウム・ディフィシル(CDAD)はが芽胞を形成する嫌気性菌グラム陽性桿菌で、抗菌薬や抗腫瘍剤の使用等により腸内フローラが撹乱され、毒素を産生し下痢をもたらし、近年、重要な医療関連感染症の病原菌として注目されています。

 CDADは主に抗菌薬によってもたらされる疾患ですが、発祥因子としては制酸剤も含まれることが指摘されており、またハイリスク患者としては、高齢者が挙げられています。

 FDAがPPIによる副作用を重視するのは、日本と異なり、PPIが一般薬(OTC)として広く薬局店頭で販売されているという事情があります。

 日本でも、厚労省の「重篤服疾患別対応マニュアル(H22年3月)でも、「PPIなど一部の薬剤では、顕微鏡的腸炎(collagenous colitis等)を介しての下痢が起こりうる」と警告しています。collagenous colitisはコラーゲン蓄積大腸炎とも呼ばれている疾患です。

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* PPI常用者で大腿骨近位部骨折が増加〜閉経後喫煙女性で顕著

 喫煙がカルシウム吸収を阻害するという従来の研究報告に照らしてみて、PPIにもカルシウム吸収を阻害する働きのあることから、これら2つのリスクが相乗的に大腿骨近位部骨折リスクが促進させるとされています。

{参考文献}医薬ジャーナル 2012.3


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トヨタ生産方式による業務改善

2009年4月15日号 No.496


 自動車メーカのトヨタ生産方式は、無駄と異常を誰の目にも分かるようにし、明確になった問題を改善で徹底的になくし、また、無駄をなくすことにより不良品をなくし、より良い製品の提供、より安価な価格といった顧客満足度の向上につなげています。

 人は「問題が起きないように」と考えがちですが、トヨタ生産方式の考え方は、問題が起きた時こそ改善のチャンスと捉える前向きな姿勢と、単に改善することを目的にしているのではなく、改善実施可能な人材を育成するというものです。

 問題解決には2種類あり、とりあえずの対策(例えば、代替品を使う、注意喚起の紙を貼る)と根本の対策(例えば、問題箇所を見つけ出し問題箇所を交換。修理するなど)です。

 早期に解決するためにとりあえずの対策を実施することは必要ですが、なぜそのような問題が起きたのかを、なぜなぜ分析(原因追求)により新の問題を見つけ出して根本対策をしなければ、問題が解決したことにはなりません。

<とりあえず対策の悪循環>

ミスが起きる→確認作業を増やす。注意喚起のフダを作る(業務行程の増加)→複雑な業務の中から新たな予測していないミスが生まれる。→それに対してもとりあえずの対策をする。

<組織を退化させる価値観>

・問題があってはならない。
・失敗してはならない。
・枠にはめる。
・ルールや制度に従う。
・失敗した人を責める。
・外発的動機付け
・建前で接する。
・情報はみだりに流さない。
    問題がどんどん大きくなり、見て見ぬフリをするようになる。

<組織を進化させる価値観>

・問題があるのはあたりまえ。・失敗しない人はいない。・価値観を共有する。・自分で考えて判断する。・まずはやってみる。・失敗したコト(人ではない)を追及する。・内発的動機付け。・本音で接する。・混乱を許容する。・情報は皆のもの

<現場・現物・現実主義>

 事件・事故が起きた場合、発生現場を保存し、発生状況を詳しく調査することによって原因の手がかりになるものを探します。トヨタ方式も同様で、現場にどんな問題が起きているのか、どういうやり方をしているかを、目で見ず頭の中だけで解決していくととんでもない問題を起こします。 問題の答えは、会議室にはなく、発生現場にあるからです。

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「もっとも強い者が生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残るのは変化できるものである」C.ダーウィン

 {参考文献} 薬事 2009.3 京都桂病院薬剤科
 


<医薬品トピックス> コンパショネート・ユース制度 compassionate use はこちらです。


※ 抗てんかん剤による自殺関連行為

 FDA(米国食品医薬品局)により、抗てんかん剤による自殺関連行為(自殺既遂、自殺企画、自殺準備)および自殺念慮のリスクについて注意喚起する文書が公表されました。

 FDAの発表内容は、11種類の抗てんかん剤で実施された計199のプラセボ比較試験において、自殺関連行為等に係わるデータを解析した結果、抗てんかん薬を服用している患者で自殺行為等のリスクが統計的に高い(抗てんかん剤群0.43%、プラセボ群0.22%)事を示唆する結果が得られたというものです。この傾向は解析された11種類の抗てんかん剤にほぼ一貫して見られたされています。  この結果に基づき、FDAは医療関係者に、抗てんかん剤服用中の患者の自殺念慮、自殺行為、うつ病の発現や悪化を示す行動の変化等の徴候に注意する必要があること、患者やその家族等に対してこれらのリスクについて説明する必要があることを注意喚起しています。

 当該薬品:デパケン、バレリン、テグレトール、エクセグラン、プリミドン、ランドセン、マイスタチン等


<<用語辞典>>

メディカル・ガバナンス

 ガバナンスは日本語に訳しにくい言葉ですが、憲法で言う国会、裁判所、内閣の三権分立のように、壊すことのできない基本システムを作り、そのシステムによって組織がうまく機能する体制をつくることです。

 この言葉が頻繁に使われるようになったのは会社法の分野で、その場合にはコーポレート・ガバナンスです。

 コーポレート・ガバナンスとは鋭利社団法人であり、株式会社の1.コンプライアンス(遵法性)を高めるため、2.経営効率性と競争力の向上のために、牽制機能をどう持たせるべきかという議論です。

 メディカル・ガバナンスとは、1.病院において医療過誤とそれに伴う違法行為の帽子を指し、2.経営効率性と競争力の向上は、医療法人の健全経営に当たります。現在は、なぜメディカルエラーが起こるのか、そして事後処理が混乱するのかを分析し、それを防止する1.が主流となっています。

  出典:レーダーニュース May.2004 (くすりの適正使用協議会)

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