メインページへ

病気と性格

A型行動パターンとB型行動パターン

1993年10月1日号(No.138)

  

   始めにことわっておきますが、血液型の話ではありません。A型行動パターンとは、Friedman & Rosenmanの研究で、行動医学の代表として知られるものです。

 これは冠動脈の硬化である虚血性心疾患のリスクファクターの研究に基づくものです。

{参考文献} 薬局  1993 NO.1

’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’   [A型行動パターン]

 野心的、攻撃的、好争的、精力的、仕事熱心であり、身体的及び精神的活動を絶えず早めようとする習癖や、身体的・精神的に著しい過敏性を示すなどの行動特性を持ちます。

*会話において特別に強調する必要がなくてもある語にアクセントを置いて強調する。文章の最後の方を早口で話す傾向がある。相手の話し方が遅いと、あいずちを入れて速度を速めようとする。

*物事の進行が遅れるとじれったさやいらだちを感じて、列になって順番を待ったり、前をゆっくり走る自動車などに敵意にも似た感情を抱く。

*食事をしながら他の仕事をするなど同時に2つ以上の事を行う。

*何もしないでいることに。罪悪感を感じる。

 このような行動パターンを呈する人は、正反対の行動パターン(B型)を呈する人に比べて、血圧・コレステロール値・喫煙などの他のリスクファクターを除外しても、虚血性心疾患に罹患する率が有意に高く、また極端なA型行動パターンを呈すれば呈するほど冠動脈の硬化が重症であることなどが報告されています。

 ちなみにB型行動パターンを呈する人は消化性潰瘍や過敏症性腸症候群に成り易いとされています。さらに最近ではC型行動パターンが提唱されています。

 外見上はB型行動パターンに似ているものの、B型では憤り、恐怖心、悲しみなどの感情を表すのに対して、そのような陰性感情を抑制して表出しないものをC型行動パターンと名付けています。このC型行動パターンは癌患者に比較的多く共通する行動特徴であると言われています。

 なお、このような性格と病気が関連するのではないかと推察されるようになったきっかけは、ある内科の待合室で、循環器の前のソファーが早くいたむことからであるとのことです。つまり、狭心症の人は診察を待つ間もまだかまだかとイライラして体をゆすったり、立ったり座ったりしているために、消化器などのソファーなどに比べて早く擦り切れてしまうのです。

関連項目 癌と性格

    PS.私の性格は、まさにA型行動パターンそのものです。ああ、心臓が、、、

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

性格とセロトニン、ドパミン&高血圧症

 人の人格形成において、脳内の神経伝達物質が大きな役割を担っていることはよく知られています。特にセロトニン(5HT)神経系はうつや不安との関連が強く、心配性などの性格形成に関わっていると考えられています。

 ドパミン(DA)は主に中枢神経系に存在する神経伝達物質で、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもあります。ドパミンは中枢神経では快感、多幸感や運動調節に関わっており、末梢では血圧の調節、特に昇圧作用を持っています。

 中枢神経疾患ではパーキンソン病や注意欠陥多動障害(ADHD)に関連が深いと考えられています。さらに近年では性格に加えて行動様式や疾患との関連も検討が行われるようになってきています。

 高血圧症は精神症状を伴う症例が多いことが知られています。
高血圧症患者に認められる精神症状や性格的特徴としては、不安・うつなどの気分障害、タイプA性格などがあります。これらの精神症状や性格的特徴を持つことは高血圧症患者に心合併症を誘発させる原因となることでも知られています。

 タイプA性格は、攻撃的、過剰な自己抑制などなどの問題行動とも関連があり、ときにカウンセリングや治療を必要とする場合もあります。

 高血圧症患者ではよく「不安」などの精神症状を呈することがあります。5HT代謝、ドパミン代謝の亢進状態の存在が、不安感の増強に関与している可能性が示唆されています。

               出典:治療 2004.6


<<用語辞典>>

ワーカホリック:workaholic

 仕事中毒の意味で、常に時間に切迫感を持ち、競争心が激しく攻撃的、寛容性がなく、野心的でトップを目指しているような行動パターンをいう。

 心筋梗塞など虚血性心疾患、うつ病や心身症になる率が高い。

 (上記記事参照)


2003年7月15日号  No.364

ボーダーライン
境界例
境界パーソナリティー障害

        出典:治療 2000.6  国立大蔵病院精神科 医長 生田 憲正

 ボーダーラインという言葉は、古くは精神分裂病と神経症の境界という意味で使われていました。しかし、1960年代以降、ボーダーラインの概念は大きく変化しています。精神分裂病とははっきり区別される、ある種のパーソナリティー病理を持つ症候群としてこのボーダーラインが注目されてきています。

<ボーダーライン症例の特徴>

 ボーダーライン症例は種々の症状や精神疾患を示し、汎神経症ともいわれるべき症状を示します。
うつ病などの感情障害、不安性障害、接触障害、解離性障害、薬物常用性障害、あるいは過換気、頭痛、嘔吐、腹痛といった様々な心因性の身体症状など多彩な症状を示す傾向があります。

 経過とともに病状が変化したり、また同時に複数の疾患と診断されることも珍しくありません。逆に言えば、それぞれの疾患で、その一部にボーダーライン病理を合併している場合、難治性となることがあります。

 ボーダーライン症例の特徴として、衝動的・自己破壊的行動を繰り返す傾向があります。また、手首切りや薬物過量服用などは、自殺を目的とするものではなく、周囲の注意を引いたり、ある特定の人物に対する不信感や怒りの表現であったりするなど、対人操作性がその特徴とされています。

 その他、自暴自棄になったり、薬物の影響下でこういった行動をとる場合があります。

 ボーダーライン症例の場合には、周囲との関係は改善せず、むしろ悪循環に陥るケースが多く見受けられます。これはボーダーライン症例自身が持つ対人関係の病理だけでなく、環境側も様々な問題を抱えていることによります。ボーダーラインでは大抵、幼少時に虐待を受けたり、親の離別・死別を経験したりするなど家庭環境に何らかの問題を抱えています。

 ボーダーライン症例は、慢性的な抑うつ、無価値感、空虚感、喜びのなさなどを抱いており、一人でいることに苦痛を覚え、依存できる対象を求め続けるといわれます。しかし実際の関係は、互いに相手の考えや立場を尊重した対等な関係ではなく、喧嘩や別れ話が繰り返されたり、常に相手に不信感を抱いたり、一方的に相手を支配したり、あるいは相手に虐待されたり、相手を虐待したりといった関係に陥りやすく、そこには、見捨てられる不安や強い欲求・不満・怒りの感情が生じやすく、それらを内的に処理できないという問題も絡んでいます。

 あるボーダーラインの患者は、治療を受けて自分が何に対して怒っているのか自分の中で分かるようになったことが一番良かったと語っています。専門的には、このような対人関係の不安定性は、その人が持つ内的な対象関係の病理(対象像の分裂など)を反映したものだと考えられています。このような対象関係の病理は、治療者との間でもすぐに発生するため、いくつもの治療機関を転々とするといったことも起こりやすくなっています。

<ボーダーライン症例の長期(15年前後)追跡調査から、次のような所見が得られています。>

1.心理社会適応や再入院など医療機関の利用状況から見ると、ボーダーライン症例は精神分裂病群に比較して明らかに良好な結果を示し、うつ病などの感情障害群の結果に匹敵していました。また医療機関の利用の仕方としては、危機的状況において短期の再入院を繰り返す傾向が見られました。

2.心理社会適応の中では、仕事をする能力は比較的良く保たれている一方、ボーダーライン症例特有の対人関係病理は不偏傾向にあります。表面的には対人関係が安定していても、親密さを回避するなど慎重に対象との距離を取ることで安定を保つ場合が多いと推定されます。

3.ボーダーライン症例の経過として、時の経過とともに症状(衝動性など)と社会適応の療法に改善の積み重ねが見られています。20歳代よりも30歳代、40歳代のほうがより改善されていました。

4,自殺死亡率は、3〜4%が報告されています。

治療

 ボーダーライン症例の治療は、困難です。薬物療法は有効性が確立したものがなく、過量服用や薬物依存性の問題があり、必要最小限に留め、厳重な管理下で行うことが求められます。

 

メインページへ