無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学

 

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  2005年3月15日号 No.403 & No.404

スポーツと寿命

スポーツは果たして身体に良いか  

<スポーツ有害説>

1、活性酸素障害説

 呼吸の2%が発生率と言われる活性酸素は通常では十分な体内処理能力があり、身体に障害を与えることはありませんが、一定レベルを超えての運動で処理範囲を逸脱する分が障害になると言う説。

 活性酸素については現在論議中であり、実際どの程度生体へ影響しているかについては不明と言わざるを得ません。

2、動物実験

 ネズミ〜過度の運動では寿命が短縮し、若年期に運動させず中高年になってからの運動開始は寿命を短縮させると指摘されています。

 イエバエ〜運動量、酸素消費量の多い運動群で、平均寿命、最大寿命共に短縮
       (大きさの異なるビンに入れての実験)

 ハムスター〜良く冬眠し、結果として運動量の多かった群が、寿命が長い。

 動き続ける動物は一定期間の安静を取るものより短命。

3、欧米のデータ

 激しいスポーツをしている群では運動量に逆相関して生命予後に好影響を与えることが示されている一方、激しくないスポーツ群では死亡率への関連はなかったものの健康増進の面からは有用であると結論付けられています。

 しかし、活動量に相関して死亡危険率が低下するものの、極端なハードスポーツマンはむしろ同危険率が上昇すると報告されています。

4、日本でのデータ

 体育専攻系生は他学部生に比し5〜8年短命。
 長期にわたる運動の継続が寿命に対して抑制的であるとの結論


<考察>

 これまでの諸研究を総合すれば、過度のスポーツ(職業的レベルや過度に偏った種目のみのトレーニング)が必ずしも健康増進に繋がらないことは否定しきれません。しかし、これは慢性的スポーツ障害を含めて、スポーツの「有害説」の一面に過ぎません。一定のコントロールと監督の下に実施されているスポーツは若年、中高年を問わず有用性を唱える研究が多いことは紛れもない事実です。

 極めて適度なトレーニングを続ければ、生理的運動能力の退行を、平均して8〜9年阻止できることは確かです。このようなトレーニングは、死亡率にはわずかな影響しか与えないとしても、老齢の末期を重度廃疾者として過ごさなければならない人の数を、3分の2まで減ずることができるでしょう。

 年齢と状況によって理想的スポーツ像は異なってくると考えられますが、幼少期より特定の種目に偏らず、成人に至るまでコンスタントに運動継続できることが望ましい。そのためには、自ら周囲の環境にスポーツマインドを常に意識することが重要です。要は日頃よりスポーツに親しみ、スポーツ障害などの合併が少なく、メディカルチェックなどの定期的観察下に、無理なく続けられる種目であれば、種目に良否はないと考えられます。

 また、中高年に関して、運動療法的な意味合いから考えれば、発汗する程度、呼吸が少し荒くなる程度(最大心拍数の60〜90%の強度)の運動を少なくとも20分間週3回することが一般的にすすめられており、各種内科疾患における運動療法は全てこの原則に一致しています。

                    出典:治療 1997.6 治療 1996.2

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体力(運動)と癌死亡率

   2002年5月15日号 No.337           出典:治療 2000.3  スポーツと医学
        

 15名の専門家によって、世界の4500におよぶ癌予防に関する研究結果を分析・評価した結果、運動が結腸癌のリスクを避けることは確定的であること、さらに肺癌や乳癌のリスクを下げる可能性があることが示されています。

 具体的な身体活動量として
「1日に1時間の歩行」と「週1回合計1時間の活発な運動」が奨励されています。

 日本癌疫学研究会の報告でも、「日本人においても運動不足は、喫煙、多量飲酒、塩分多食と並び、癌の主要なリスク要因である」とされています。

 部位別の評価としては、運動不足は大腸癌の「ほぼ確実なリスク要因」であり、肺癌、乳癌ではリスク要因の可能性があると同様の結果が出ています。

 それらの調査では、低い体力(有酸素能力)が、癌死亡のリスクファクターであることが示されており、身体活動によって高い体力を維持することが癌予防になることが示唆されています。

 また、日本人とアメリカ人では癌死亡の部位別割合が異なるにも関わらず、2つの研究が似通った結果であることから、身体活動(スポーツ)が癌を予防するメカニズムは、部位特異的なメカニズムとともに全身的なメカニズムの関与が大きいことを想像させ、この点に関するさらなる研究が期待されています。


Dettli式

出典:日本病院薬剤師会雑誌 2001.3

 Dettli式とは、患者の腎機能と薬剤血中消失速度から用量を求める方法で、腎機能に応じた与薬量設定の1方法として、ハベカシン注の添付文書に記載されています。(シセプチン注射液の添付文書にも記載されています。)

 ハベカシン注では、腎機能低下により全身クリアランスが低下することが報告されていることから、薬剤クリアランスが一定であることを前提とするDettli式の使用に当たっては注意を要するとされ、1日1回で使用することが検討することが勧められています。

 しかし、ハベカシン注の体内動態は、腎機能、体重、年齢、および肺炎の有無により影響を受け、肺炎時に定常状態分布容積が健常成人の約2倍に増加、腎機能低下時に消失が遅延します。一方、Dettli式は、薬剤分布容積や薬剤クリアランスが一定であることが前提となっていることから、これらパラメーターが変動するハベカシンではDettli式は用いるべきではなくTDMに基づいた適正な使用量設定が望まれます。

関連項目:安田の推定式


安息香酸ナトリウム注

高アンモニア血症

月刊薬事 1997.1

 先天性尿素サイクル異常症に伴う高アンモニア血症の治療ヒトの体内でタンパク質の分解により生じたアンモニアは肝の尿素サイクルにより尿素に合成され、尿に排泄されます。

 尿素サイクルによる尿素の合成には5つの尿素サイクル酵素とN−アセチルグルタミン酸合成酵素、及びミトコンドリア膜のオルニチン膜転送蛋白が関与します。これらの因子の先天的な欠損に基づく尿素サイクル代謝異常症では、尿素合成障害のため高アンモニア血症を生じ、嘔吐、痙攣、意識障害、食欲不振、嗜眠、精神発達遅延などの中枢神経症状を示します。

 先天性尿素サイクル代謝異常症での高アンモニア血症の治療法には、体内に蓄積したアンモニアを除去する方法と体内でのアンモニア産生をできるだけ少なくする方法があります。アンモニアの除去には、腹膜灌流、血液透析、交換輸血、輸液などが、またアンモニア産生抑制には、低蛋白食による食事療法が行われます。

 しかし、これらの治療法で十分な効果が期待できない場合もあり、近年、窒素含有物質を尿素以外の形で尿中への排泄を増加させることにより、高アンモニア血症を改善させる治療が行われています。

 非必須アミノ酸の1種であるグリシンは、グリオキシ酸、セリン、コリン、スレオニンなどから合成され、安息香酸とのアシル化により馬尿酸となって、尿中に排泄されます。このことに着目したのが、安息香酸ナトリウム注射製剤である。

Rx.安息香酸ナトリウム 12.5g
   注射用水 全100ml

高圧蒸気滅菌 10ml白色アンプル 室温保存

 安息香酸Naは経口でも有効(3g/日)であり、内服後速やかに馬尿酸となり、5〜6時間で85〜90%が排泄されます。急性発作時には経静脈が有効

[ 副作用]

 安息香酸Naは、防腐剤として食品に添加されています。大量摂取した場合には、グリシンの欠乏、浮腫、呼吸障害、腹部膨満感、オルニチントランスカルバラーゼ活性の阻害がありますが、治療量では特に問題はないと言われています。



免疫抑制剤FK506

高血糖のしくみ解明

cADPR

出典:朝日夕刊 1997年3月5日

 FK506(タクロリムス水和物)

 膵臓でβ細胞の中の蛋白質ににFK506が強く結びつきインスリンの分泌を妨げます。血液中のブドウ糖が増えると、その信号を伝える物質、環状ADPリボース(cADPR)がβ細胞で盛んに作られます。その信号で細胞内の貯蔵庫からカルシウムが放出されると、今度はカルシウム濃度の上昇を合図にインスリン分泌が増え血糖を抑えます。

 cADPRがうまく作られなかったり、受容体に異常があると血糖値が上昇してもインスリンの分泌が増えず高血糖の状態が続きます。

 今回FK506結合蛋白質と知られていたものが、じつはcADPRの受容体であることが突き止められました。

 cADPRはβ細胞以外にも生体のほとんどの細胞にあり、細胞の種類によって異なった役割を担っています。免疫を担うT細胞ではカルシウムの放出が免疫活性化に関連しているとされます。FK506がT細胞でもcADPRの結合を阻害し、カルシウムの放出抑えることで免疫を抑制していることが考えられます。



副作用の重篤度分類基準

 グレード1:軽微な副作用
 グレード2:重篤な副作用ではないが、軽微な副作用でもないもの
 グレード3:重篤な副作用と考えられるもの。すなわち、患者の体質や発現時の状態等によっては、死亡又は日常生活に支障をきたす程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの。

 本基準は、副作用の重篤度を判断する際の具体的で簡便な目安となるように作成されたものであるが、その利用にあたっては、個別の副作用症例の重篤度は副作用症状の種類のみでなく、患者の全身状態、原疾患・合併症の現状、転帰等を勘案して総合的に評価されるものであることに留意する。

例       グレード1    グレード2     グレード3
悪心・嘔吐 :悪心(嘔気)  : 嘔吐(注1)   :−
下痢    :軟便、泥状便  : 水様便 脱水  : 電解質を伴う水様便
                (グレード3に該当しない)

 注1〜グレード1か2かは、担当医師の判断によるものとする。




NSAIDsによる高カリウム血症

月刊薬事 1998.3 臨時増刊号 重大な副作用とそのモニタリング


 高カリウム血症は、NSAIDsによるプロスタグランジン産生が抑制されレニン・アンジオテンシン分泌低下の結果、腎でのカリウム排泄能が低下することで発現します。

 高カリウム血症で心電図上QRS間隔の延長が認められる場合にはカリウム濃度を下げる処置が必要となります。また血清カリウム値の異常も致死性の不整脈の発現まで無症候性であることもあり、電解質レベルのチェックが重要となります。

 腎機能障害、心不全、糖尿病あるいは多発性骨髄腫を発症しているケース、カリウム補助剤、カリウム保持性利尿薬あるいはACE阻害剤内服している等の危険因子を有する患者には腎機能や血清電解質のモニターを十分に行います。

 発生時には原因の除去(原因薬剤の中止)と、カリウムの摂取制限・吸収抑制および排泄促進等の処置をとります。同様の副作用を起こす薬剤として、カリウム保持性利尿剤やACE阻害剤などがあります。

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 NSAIDsによる高カリウム血症自体は高頻度に生じる有害作用ではありませんが、その発症にはプロスタグランジンの生成阻害以外にも多様な因子が関与していると考えられます。

 NSAIDsの中ではインドメタシンによるケースが多く、上記の危険因子が存在しない場合でも報告があります。高カリウム血症の重症度は腎機能障害の程度とは対応関係にはありません。腎機能障害時には、血清電解質異常、ナトリウム貯留に基づく血圧上昇・浮腫、また病理組織学検査では尿細管壊死が認められます。

 救急処置としてはカリウムに対する拮抗薬として、塩化カルシウムの静注や、細胞内にカリウムを取り込ませるためのグルコース・インスリン療法(グルコース液にインスリンを加えて心電図モニターした上で徐々に静注)、ケイキサレート注腸、腎機能が保たれていればラシックスやケイキサレート、そのはかに腹膜還流および血液透析など。




グルカゴン

 内視鏡検査の前処置薬としてグルカゴンが使用されます。動物実験で、グルカゴンが胃前庭部の空腹期運動を抑制します。さらに、これらの抑制は消化管平滑筋への直接作用ではなく、壁内神経叢レベルのコリン作動性神経節後線維を介して内因性アセチルコリンの放出を抑制します。不整脈や虚血性心疾患などを合併する症例に対しても、グルカゴン製剤が安全性の高い。

適応症追加:2000年5月


セロトニン症候群

出典:薬局 1998.12

 躁うつ病患者がうつ病相に転じた為、炭酸リチウムに加えてクロミプラミンの併用を開始したところ、発熱、発汗、振戦と共に錯乱状態を呈しました。

 これはセロトニン(5HT)作動薬により脳内の5HT活性が亢進することで発現する医原性の疾患です。

 原因薬剤としては、選択的5HT再取り込み阻害薬(SSRI)とMAOIとの併用例の報告が多い。しかし、5HT再取り込み作用の強いクロミプラミンや5HT作動製薬物であるトラゾドンなどの単独または炭酸リチウムとの併用でも発現するとされています。

 本症候群は原因薬剤の中止により24時間以内に速やかに症状が消失しますが、まれに死に至る場合もあります。診断はSternbachの診断基準により、5HT作動製薬物の追加または増量の後に生じた次ぎの症状、

1、精神神経系状態の変化、2、焦燥感、3、ミオクローヌス、4、反射の亢進、5、過剰発汗、6、悪寒、7、振戦、8、下痢、9、強調運動障害、10、発熱

のうち3項目以上の存在で定義される。

 鑑別が問題になるのは悪性症候群ですが、原因薬剤と神経・筋症状の相違が鑑別点となります。わが国ではいまだ報告例は少ないのですが、今後SSRIを使用が増加すれば発現頻度の増加が予想され、本症候群に関する認識が必要になると思われます。

出典:月刊薬事 Vol.40 No.4 1998

 抗うつ薬により起こるセロトニン症候群は、悪性症候群(Syndrome malin)と類似しています。その特徴的な症状は、不安、焦燥、興奮などの精神状態の変化です。

 発熱は必発症状とは言えませんが、いったん発熱すると異常な高熱になり、これが持続すると脳への不可逆的な障害を引き起こし、死に至ることもあります。


セロトニン症候群

A)セロトニン作動薬の追加や服用量の増加と一致して、下記の症状の少なくとも3つを認める。

1.精神状態の変化(錯乱、軽躁状態)、2.興奮、3.ミオクローヌス、4.反射亢進、5.発汗、6.悪寒、7.振戦、8.下痢、9.強調運動障害、10.発熱

B)他の要因(感染、代謝疾患、物質乱用やその離脱)が否定されること。

C)上記の臨床症状の出現前に向精神薬病薬が投与されたり、その用量が増やされていないこと。


       悪性症候群(Syndrome malin)   セロトニン症候群
原因薬剤
       ドパミンアンタゴニスト     セロトニンアゴニスト
       ドパミンアゴニストの中断    ドパミンアゴニスト

症状の発現 :数日〜数週間        数分〜数時間
        
症状の改善:   徐々(平均9日間)     24時間以内が多い

臨床症状

    発熱     90%以上       45%
    意識変化   90%以上       50%
    自律神経症状 90%以上       50〜90%
    筋強剛    90%以上       50%
    反射亢進    稀          頻度多い
    ミオクローヌス 稀          頻度多い

治療

  ドパミンアゴニスト     改善させる  症状を増悪させる可能性

  ドパミンアンタゴニスト   効果無し   改善


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