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1999年4月1日号 265

睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

インスリン抵抗性症候群とも関連か

     睡眠時無呼吸症候群は睡眠ポリグラフにより閉塞型、中枢型、混合型の3型に分類されています日常診療で問題になるのは閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)による多彩な臨床症状を呈する閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)です。

 OSASの成因にはPickwick症候群に代表される肥満以外の種々の要因が関与します。
OSASは心・血管系の異常を併発し、時には突然死の原因になることから早期発見、治療が必要です

{参考文献}治療 1999.3

 関連記事 睡眠時無呼吸症候群の薬物療法

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 いびきはOSASの最も重要な症状です。いびきは軟口蓋の振動により生じますが、睡眠中の舌筋や軟口蓋の緊張低下はいびきを助長します。その他に、仰臥位での睡眠や、アデノイドや扁桃炎肥大、鼻閉による口呼吸もいびきの原因になります。また加齢により、上気道の緊張低下や飲酒、睡眠薬の服用はいびきの増強の原因となります。
また、頭痛もOSASに併発する重要な症状で, 深夜や起床時に発現します。。

 仰臥位での睡眠時や飲酒後に時々見られたいびきが毎日見られるようになり、ある時期を期して漸次増強して、野獣の唸り声のような激しいいびきの繰り返しの後に、いびきの消失が見られ、再度激しいいびきが出現するようになった時には睡眠時無呼吸へ移行したとして注意する必要があります。また慢性的に激しいいびきをかく人は将来OSASに移行する可能性が指摘されています。

 OSASでは、いらいらして興奮しやすく突然怒り、急にうつ状態になり、人格の変化も見られます。睡眠中に胃液の逆流が見られ、胸やけや胸部の不快感を訴えたりします。これらの症状は他の種々の原因で見られる症状ですが、OSASの症状の一部であることを考慮しておく必要があります。胃液の逆流は高齢者では嚥下性肺炎の原因になるので注意が必要です。

 また、NIDDMの男性579例中、1.9%にOSAがみられ、非糖尿病の男性のOSAの罹患率より優位に0.4%高いと言う報告があります。

 OSAは種々の疾患に併発しますが、末端肥大症、クッシング症候群、甲状腺機能低下症、糖尿病など内分泌疾患にもみられることが知られています。

 1970年代より自律神経障害を伴った糖尿病の心・呼吸停止による突然死が注目されてOSAとの関係について論じられています。

 NIDDMの成因にはいくつかの要素が関連して病態が成り立っていると考えられており、その中でもインスリン抵抗性症候群が注目されています。この概念はインスリンの標的組織でのインスリンの作用障害、すなわち、末梢組織のインスリンに対する感受性の低下した状態です。その結果、耐糖能異常と高インスリン血症を呈します。

 インスリン抵抗性を来す原因としてカテコールアミンやコルチゾールなど血糖上昇ホルモンも代表的な因子です。NIDDMでは肥満が見られますが、肥満は糖尿病の発症の危険因子として関与しており、また肥満はOSAの代表的原因でもあります。

 OSASでは、カテコールアミンやコルチゾールなどが高値を呈すると同じに、高インスリン血症のみられることが報告されています。OSAによる末梢組織のインスリン感受性低下状態が耐糖能異常をさらに一層増幅させます。肥満で耐糖能異常のみられる時にはOSAの存在についても考慮して対処する必要があります。

OSAS:obstructive sleep apnea syndrome
OSA:obstructive sleep apnea

 OSASの10人中9人は診断されること無く見過ごされています。
頭痛、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病などに閉塞型無呼吸が潜在している可能性に留意する必要があります。

*治療薬としてはダイアモックス錠があります。 関連記事 
睡眠時無呼吸症候群の薬物療法もご覧下さい。

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睡眠中の呼吸リズムは二酸化炭素分圧(PCO2)に依存し、PCO2が低下すると中枢型睡眠時無呼吸(CSA)が起こります。

これまでの研究で左室駈出率が低下した心不全の患者で、動脈血二酸化炭素分圧(PCO2)が低値だと、睡眠時無呼吸症候群の頻度が高いことが示されています。

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AHI:Apnea Hypopnea index

無呼吸低呼吸指数

1時間当たりの無呼吸と低呼吸の平均回数

無呼吸:睡眠中に10秒以上換気が停止すること。
低呼吸:換気が50%以下に低下すること。

AHIが5〜15が軽度、16〜30が中等度、30以上が重度と判定します。

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OSAHS:obstructive sleep apnea hypopnea syndrome:閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群

SAS:sleep apnea syndrome;睡眠時無呼吸症候群

 病型には呼吸中枢に障害があり睡眠中に鈍麻して発生するもの(中枢型)、睡眠中の上気道筋肉の弛緩により気道閉塞をきたすもの(閉塞型)および両者の混合型とがあります。

 閉塞型が最も多く、混合型の要素を伴いやすい。男女比は5:1で,中高年の鼾(いびき)をかく肥満体型者に多く、飲酒,睡眠薬・鎮痛薬の服用は症状を悪化させます。

SAHS:sleep apnea hypopnea syndrome:睡眠時無呼吸低呼吸症候群

 SAHSは上気道の閉塞や狭窄により起こるOSAHSと中枢型睡眠時無呼吸症候群に大別されますが、中枢型のものは脳梗塞や脳出血など中枢の器質的疾患の後遺症として発症する場合が多く見受けられます。

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睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)と高血圧症

2003年9月1日号 No.367

 従来、高血圧症は10%が腎性、残りの90%が本態性高血圧で本態性の場合、降圧剤の内服による管理に頼らざるを得ない状況がありました。

 しかし、近年、OSAHSが高血圧症の独立した危険因子であることが明らかになり、OSAHSを合併する高血圧症患者に対する鼻
CPAP治療により、多くの症例で降圧剤の中止ないしは減量が可能で、内服薬の多剤併用によっても血圧コントロールが困難であった症例の血圧安定が報告されるようになりました。

 一般人口での高血圧症、糖尿病の有病率はそれぞれ20%、10%であるのに対し、OSAHS患者の高血圧、糖尿病合併率はそれぞれ50%、20%と報告され、また、OSAHS患者の有病率は2〜5%であるのに対し、高血圧患者や糖尿病患者のOSAHS合併率はそれぞれ20%、20〜50%と報告されています。

 OSAHSは生活習慣病と深い関わりをもつことに、もはや疑いの余地は無く、睡眠リズムを1つの生活習慣と考えれば、睡眠呼吸障害が生活習慣病に大きな影響を与えるのは当然のことです。

 双方向に合併率が高いことは一方の疾患が他方の疾患の発症や増悪に影響を与えていることが示唆され、発症の予防や治療管理といった疾患管理が多元的化していくものと考えられます。

 CPAP シーパップ continuous positive airway pressure 持続的気道陽圧法

 自然呼吸下に呼気時に陽圧をかけてやる方法

 肺水腫の治療に用いた陽圧呼吸(positive pressure breathing)に対して名づけたCPPB(continuous positive pressure breathing)とほぼ同一のものと考えられています。

 人工呼吸管理から
ウィーニング(weaning:離脱)する最終段階でよく使用されている方式。


{参考文献}治療 2003.8等     関連記事 
睡眠時無呼吸症候群の薬物療法もご覧下さい。

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CPAP
持続気道陽圧療法
continuous positive airway pressure


OSAHS;閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する療法 中等度以上の患者に第1選択される治療法

睡眠によって筋の緊張が低下すると、重力と吸気努力によって生じる陰圧が上気道を狭小化し、OSAHS患者では病的な換気低下や上気道閉塞が出現し、無呼吸が発生します。

この病的な無呼吸低呼吸による低酸素血症・高炭酸ガス血症や上気道閉塞を解除するたびに生じる覚醒反応が繰り返されることがOSAHSの様々な病態をもたらします。

CPAPは閉塞を来たす上気道に対して軟口蓋および舌を押し上げ、気道を開存維持させ、良好な睡眠状態を確保します。

この気道を開存維持させる圧は患者により異なり、同一患者であっても睡眠姿勢や睡眠段階により異なるので、圧設定を行うことが本療法のコンプライアンス維持に重要な因子となってきます。

CAPAは基本的に対症療法であることを患者さんに認識してもらうことが大切です。

日本病院薬剤師会雑誌 2008.11

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反復性過眠症
Kleine-Levin症候群


 10日間程度持続する過眠症状が反復して出現するが、過眠期以外の時期にはまったく異常が認められない事を特徴とする原因不明の疾患

 過眠期は、感冒などの発熱疾患や他の身体的・心理的変調(女性の場合は月経も含む)、飲酒など、何らかの誘因が先行することが多く、一定の周期はありません。

 思春期に好発し、成人になると自然治癒する傾向があります。反復性過眠症の内過眠期に過食を伴う一群をKleine-Levin症候群が本疾患の中核群で、過食を伴わない例はその不全型であるという立場が強調されています。

 治療法はまだ確立されておらず、過眠期発現の誘因を避けさせる一般的生活指導が最も重要です。

 発現を予防する目的では、炭酸リチウム、抗てんかん剤、抗うつ剤、L-DOPA、甲状腺末などが試みられていますが、いずれも確実な予防効果を持つとはいえません。

 最も有効性を示す報告が多いのは炭酸リチウムで、通常400〜800mg/日程度が目安とされていますが、用量依存性に過眠期の症状が軽減し、1,650mg/日で過眠期の発現がコントロールされたという報告もあります。

いずれの場合も過眠期が一度始まってしまうと過眠症状を中断させることは不可能で、対照的に中枢神経刺激薬を用いても無効な場合が多いばかりでなく、焦燥感や不安を強め、攻撃性がみられる場合もあります。

  出典:薬局 2008.1


医学・薬学用語解説(む) クリック →  無作為標本:random sample


<医学用語解説>

※チェーン・ストークス呼吸の機序
  周期性呼吸

 無呼吸の後、CO2が蓄積されてくると呼吸中枢が刺激されて過換気に向い、血中CO2が低下してくると再び無呼吸になる呼吸形式。
 脳出血、脳腫瘍、睡眠薬や麻酔の中毒などで見られます。


 慢性心不全に伴う循環時間の遅延と中枢での二酸化炭素化学感受性の亢進が関与していると考えられています。
睡眠中は高位中枢から呼吸ドライブがなくなるため、睡眠中の呼吸はもっぱら二酸化炭素化学反射による負帰還システムにより調節されています。

 睡眠に入ると化学感受性が低下し、無呼吸が誘発されやすくなります。更に心不全患者では循環時間の遅延があるため、動脈圧二酸化炭素分圧の変動が中枢に伝わる時間が遅れ、無呼吸が助長されます。

 呼吸停止が持続し二酸化炭素が蓄積すると、次に過呼吸に移行します。このとき実際に患者が覚醒し、脳波上に覚醒反応が認めたれます。覚醒により二酸化炭素化学感受性は亢進し、過呼吸がしばらく続いて動脈圧二酸化炭素分圧は著しく低下し、それが次の無呼吸を招くことになります。

 この繰り返しによって周期性呼吸(チェーン・ストークス呼吸)が発生します。

 出典:治療 2007.6


1999年4月1日号 No.265

女子大生は製薬企業が好き!?

バイアスとは(1)

    {参考文献}月刊薬事 1998.2

 ある大手新聞社が1994年に行った理系大学生の人気企業ランキングのアンケート調査の結果、表題のような結果が出ました。これは果たして本当でしょうか?

 理学部や工学部でアンケート調査をした場合、女子学生を見つけるのはなかなか困難で、ちっとも数が集まりません。理科系で女子学生が多いのは何といっても薬学部です。そこでてっとり早く例数(N)を稼いで調査の精度をあげるために、集中的に薬学部で調査を行ったためこのような結果が出てしまったのです。

 これは統計調査でサンプリングにバイアスがあった例です。普通、例数(N値)が高ければ高いほど、つまり症例が多ければ、多いほどその情報は正確であるとされますが、その症例が偏ってしまっていては間違った結果が出てしまうのです。これが統計でのバイアスです。

 バイアスとは「誤差」と訳す人も居ますが、「考え方などが他の影響を受けてかたよること。」です。「先入観」という訳語もあります。

 ちなみに、筆者は薬学部卒ですが、私の周りに居た女子達は、永久就職(注)を希望している子が多かったように思います。(注:永久就職とは、家庭に入ることです。)

バイアスの定義として「神様だけが知っている真実があるとして、研究結果から、真実が導かれることが望ましいわけですが、研究結果を真実から遠ざけてしまうすべての要因がバイアス」ということなのだそうです。

 今、この言葉が医学・薬学で注目されているのにはEBMということがあるからです。EBMとは、この薬剤ニュースでも何度も取り上げているように、化学的根拠に基づいた医療ということです。ということは、いままでの医学は化学的根拠に基づいていなかったということになります。

 「そんなことは無い。私たちの行っている医学は科学的だ」と大声で言いたいのですが、実態が分かるにつれて、大声では言えないということが段々と分かってきました。それは、新薬を承認する前に行われる「治験」がいい加減だったということなのです。

 もっと詳しく言うと、治験のサンプリング(どのような患者を選ぶか)、どのように薬効を評価するか、どのように集まったデータを解析するか。それらすべての点において今までの「治験」にはバイアスが入っていたことが分かってきたのです。

  以下次号


{添付文書改定のお知らせ}

◎ ベザトールSR錠(高脂血症治療剤)

  禁忌:血清クレアチニン値が1.5mg/dLを超え、HMG-CoA還元酵素阻害
      薬を使用中の患者〜横紋筋融解症があらわれやすい。

  併用禁忌(併用しないこと)
血清クレアチニン値が1.5mg/dLを超える患者
メバロチン、リポバス〜いずれも単独で横紋筋融解症が報告されている。本剤は主として腎臓を経て排泄されるため、血清クレアチニン値が1.5mg/dLを超える患者では本剤の血中濃度が上昇しやすく横紋筋融解症が発現しやすいと考えられる。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

 本剤は主として腎臓を経て尿中に排泄されるので、腎機能障害のある患者への使用は十分注意する必要がある。

また、高齢者では、加齢により腎機能低下を認める一方で、筋肉量の低下から血清クレアチニン値の上昇が軽微であるため、クレアチニンクリアランスに応じた与薬量の調節を行うこと。
なお、、与薬量はクレアチニンクリアランスの実測値より設定することが望ましいが、患者の身体状況等を勘案し、実測することが困難である場合は、クレアチニンクリアランスと高い相関性が得られる下記の安田の推定式を用いて、用量の設定を行うこと。

男性:(176-年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)
女性:(158-年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)

   血清クレアチニン値 クレアチニンクリアランス 与薬量
      (Scr)     (Ccr)
   Scr≦1.5mgdL    60mL/分≦Ccr 400mg/日(200mg×2)
   1.5mg/dL<      50mL/分< 200mg/日(200mg×1)
   Scr<2.0mgdL    Ccr<60mL/分 

<<投与補正係数(CI)>>


CI=1/1−F(1−Ccr/100)

F:未変化体で腎排泄される薬剤の%/100


至適投与量=成人用量÷補正係数(CI)

至適投与間隔=成人感覚×補正係数(CI)

関連項目:Dettli式


薬局の窓(6)

 DI業務〜DIとはドラッグインフォメーション(医薬品情報)のことで、これも薬剤師の重要な仕事の一つです。

 具体的な業務としては、医薬品ニュース(この薬剤ニュース)の発行、文献整理、添付文書改訂の整理を行っています。

 また、患者さんに対する医薬品情報の提供もDI業務と言えます。

関連項目:学生用テキストDIとは

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