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バイオ医薬品

1991年12月15日号 No.99

   バイオテクノロジーの進歩とともに、これまで従来の手法では入手が困難とされていたヒト型のホルモン、サイトカインなどの生理活性物質、ワクチン類、あるいは酵素などがバイオテクノロジー(主として組変えDNA技術および細胞培養技術)を応用して、比較的大量にかつ高純度で産生されるようになってきました。今後もこの分野の医薬品は、ますます発展が期待されるとともに、これまで治療が困難であった疾患への適用も図られていくことが予想されます。

           {参考文献} 医薬ジャーナル 1991.10


<バイオ医薬品の特徴>

1)物性面では主に高分子蛋白質
2)その種類はホルモン、酵素、成長因子、ワクチン、モノクロール抗体など多様
3)微量で強い生物学的活性を有する


<当院にあるバイオ医薬品:1991年>

アボキナーゼ(組織培養ウロキナーゼ:血栓溶解剤)
ヒューマリン(ヒトインスリン:糖尿病治療薬)
ノルディトロピン、ヒューマトロープ(ソマトロピン:ヒト成長ホルモン)
イントロンA、フェロン(インターフェロン)
アクチバシン(アルテプラーゼ:組織プラスミノーゲン活性化因子)
ロイコプロール(ミリモシスム:白血球減少消治療剤)

<開発中のバイオ医薬品>

*ヒト・インターロイキン(IL):抗悪性腫瘍剤
*EPO(エリスロポエチン):各種貧血の治療〜すでに製品化
*TNF(ヒト腫瘍壊死因子):抗悪性腫瘍剤
*SOD(ヒトスーパーオキシドディムスターゼ):虚血性心疾患等
*EGF(上皮細胞成長因子):抗潰瘍等
*CDP-コリン(シチコリン):脳障害機能改善
*単純ヘルペスワクチン:感染予防


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小児の急性薬物中毒

 昭和63年3月15日号 No.18       関連記事 
誤飲時の拮抗薬(中毒時の処置) 

 ・・・・薬の保管は子供の手のとどかない所へ・・・・

 日本中毒センターに寄せられた昨年1年間の急性中毒の相談件数は3万3千件を超えており、そのうち約83%が10歳以下の小児の事故で、それも2歳以下がほとんど占めていました。

 全件数の9.5%が一般用医薬品(市販医薬品)で、医療用医薬品もそれとほぼ同等7.5%もありました。

 小児の薬物中毒は、家族の活動時間と平行して発生し、医薬品の家庭内管理に問題があることが分かっています。

 医療機関として患者への指導すべきことを箇条書きにしてみますと

1.小児の手のとどく範囲に薬品を置いたままにせず、救急箱のようなきちんとふたのできる容器にひとまとめにして保管する。(お菓子の空き箱など食物を連想させるものは避ける)

2.保管場所は1メートル以上の高いところにする。特に危険な薬は鍵のかかる戸棚に保管し、使ったらすぐもとの場所に戻すようにする。(消毒剤や洗剤なども戸棚に入れ、小児の目に触れないようにする)

3.不要になったり、古くなった薬は生ゴミとともにふたのできるゴミ場顔に捨てる。シロップや外用の水剤は水で流して捨てる。

4.小児服用させるときは正確に計量してから明るいところで飲ませる。(水薬の容器に直接口を付けさせたり、暗いところで飲ませるのは事故の原因となります。)

5.大人が薬を服用するときはなるべき子供の見ていないところで服用する。


事故が起こった薬の置いてあった場所

1.机、テーブルの上  246件  25.1%

2.低い棚、テレビ、サイドボードの上226件  23.0%

3.床 124件  12.6%

4.食器棚、本箱、タンスの中207件  10.9%

5,その他 279件  28,4%


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誤飲(誤食)

   誤飲とは、本来経口で摂取すべきでないものを誤って飲み込むことです。

誤嚥

  誤嚥とは、口腔あるいは胃の中にある内容物を誤って、気管や肺の中に吸飲することです。

  誤嚥性肺炎とは、誤嚥下内容物が長く気管内に留まることから発症する肺の炎症疾患です。

                 関連記事 誤飲時の拮抗薬(中毒時の処置) 


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誤嚥性肺炎の発症メカニズム

〜〜食事とは関係なく発症〜〜

2012年8月15日号 No.573

 嚥下機能障害は、誤嚥を生じさせますが、誤嚥が生じることと肺炎が発症することは別です。誤嚥には、食事中にむせるような接触嚥下時の顕性誤嚥と屋かを中心に気づかないうちに鼻腔、咽喉頭、歯周の分泌物を嚥下する不顕性誤嚥があります。まずこの両者を区別する必要があります。

{参考文献}日本薬剤師会雑誌 2012.6


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 メンデルソン症候群(下記)を除けば顕性誤嚥が誤嚥性肺炎を直接発症させることはまれで、院内肺炎は、頻会に生じる不顕性誤嚥の帰結として発症すると考えられます。

 誤嚥性肺炎は、原則として食事とは関係なく発症すると考えるべきです。実際、絶食でも胃瘻留置後であっても、誤嚥性肺炎が発症することがその証拠です。

 夜間には、上気道反射が低下するからで、睡眠、鎮静剤、向精神薬などは嚥下反射を抑制し。不顕性誤嚥の原因となるだけでなく、嚥下障害悪化因子ととなります。

 健常高齢者であっても夜間は30分以上嚥下しない時間があることが報告されており、この間、咽喉頭に貯留した分泌物は必然的に誤嚥されます。

 加齢だけでは病的な嚥下障害は見られませんが、解剖学的な咽頭の位置は下方に低下し、嚥下の際の息止めで咽頭挙上に時間を要します。

 高齢者に多く処方される鎮痛剤、向精神薬などは嚥下反射を抑制します。結果として入院を余儀なくされるような高齢者は、二昼夜肝を問わず、不顕性誤嚥が高頻度に生じていると考えられます。

 食事で大量の誤嚥をすれば、メンデルソン症候群に類似する塩酸肺障害を中心とするARDS(急性呼吸促迫症候群)様の肺炎を生じますが、これは誤嚥性肺炎症例全体の中ではまれな病態と考えるべきです。

 誤嚥性肺炎の治療と管理で分かりにくいのは、細菌が関与する肺炎であるのに、抗菌薬を使っても治らない、再度悪化する、繰り返すという現象が日常的に見られる点です。

 しかし、誤嚥性肺炎は、肺炎自体の治療と同時に原因である誤嚥の治療も行わないと治る筈がありません。そこで治療する際には、治療中の誤嚥による再悪化を防ぐために、嚥下機能改善が必要になります。

 状態が良くない場合には、入院当初は絶食で管理するほうが良いのですが、嚥下機能は使われないと退化するため、嚥下機能が評価できる言語聴覚士などの指導のもと可能であれば早期に嚥下リハビリテーションを開始し、早期に食事を試してみます。

 入院中から絶食であっても嚥下を意識して、訓練することが重要です。発声の筋肉群と嚥下の筋肉群はオーバーラップしているため、積極的に発生を促し、会話をすることが嚥下機能の回復に役立ちます。

 喫煙は嚥下機能を悪化させ、肺炎のリスクを増加させるため、禁煙は必須です。睡眠剤、鎮静剤などの意識レベルを低下させる薬剤は、嚥下反射を悪化させるので、可能な限り最小量にします。

 三環系抗うつ剤など抗コリン作用を持つ薬剤は唾液分泌を減少させ嚥下障害を助長させます。

 ACE阻害剤、プレタール錠、サアミオン錠などは嚥下反射を改善して肺炎発症を頻度を減少させる可能性があります。ただし、誤嚥性肺炎の保険適用はありません。


誤嚥性肺炎の治療と予防

1)不顕性誤嚥対策

・なるべく頭部を挙上する体位を取る工夫をする
・口腔内細菌叢の改善(口腔ケア、口腔内清拭、義歯のケア、歯科受診、摂食嚥下リハビリテーション)
・胃食道逆流の予防〜夜間の軽度頭部挙上、制酸剤の適切な使用と中止
・経管栄養時の体位の工夫
・嚥下機能改善策〜嚥下訓練、薬物(ACE阻害 剤、プレタール錠など)、腸管蠕動改善、唾液分布改善、肺機能改善、無呼吸改善
・不顕性誤嚥の悪化要因を減らす(禁煙、睡眠剤、鎮静剤の減量、抗コリン作用薬の減量、気管カニューレ留置を避ける、排痰体位のドレナージ、体位変換
・嚥下の機能回復の追加手段(栄養改善、脱水改 善、意識レベルの改善、脳梗塞予防)

2)顕性誤嚥対策

 摂食・嚥下リハビリテーション、食事形態の工夫、食事介助、意識レベルの改善

3)肺炎予防策禁煙、肺炎球菌ワクチン摂取、インフルエンザワクチン摂取、呼吸器疾患の治療(肺機能の改善)、禁煙、免疫抑制物質の適正使用と減量

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(注)メンデルソン症候群

 食べ物の残りかすや胃の内容物などを誤嚥することで高度の呼吸障害を招くもの。初期段階では強度の酸性由来の胃液に起因する化学性肺炎を呈します。これが細菌性肺炎を招き、延いては肺水腫を引き起こすケースも認められます。

ショックや意識障害、イレウスなどの影響によって誤嚥を引き起こす傾向にあります。


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タバコ(煙草)誤食の最近の知見

2011年6月1日号 No.545

 タバコの誤食は、2歳以下の中毒事例が最も多く、過去にはニコチンの毒性が高いとして、全症例に胃洗浄が施行されるのが通例となっていました。

 最近の知見では、タバコ誤食による死亡例の報告がなく、嘔吐等により実際のニコチン摂取量が少量である為、侵襲を伴う胃洗浄を施行しない対処法が推奨されています。

{参考文献}メディカル朝日2010.6

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* 中毒機序

 タバコの主成分であるニコチンが自律神経系に作用する為、自律神経、中枢神経、骨格筋などの対して、少量では刺激症状を発生し、大量では中枢神経抑制により呼吸停止等が発生します。

 ニコチンは急速かつ容易に吸収され、15〜30分という速さで症状が発現します。半減期は1時間と短く、吸収された90%は肝臓で代謝され、残りは尿中へと24時間以内にすべて排泄されます。

 成人の致死量は30〜50mg(タバコ1本〜2本)で、幼児致死量は10〜20mgです。しかし、小児の誤食例では、タバコを口に入れても実際の嚥下量は少なく、またタバコ自身が持つ催吐作用ににより初期に嘔吐されるため、体内吸収量は従来考えられていた量よりもはるかに少ないとされるようになりました。

* 治療

 症状の発現が早い為、服用後1時間の間に症状がなければ無処置でよい。今日の小児治療指針12版では「無処置+2時間観察」となっています。

<理由>
 無症状〜軽症例では、「無処置+2時間観察」の治療で、悪化例や合併症の発生例は15年間で1例もない。
 小児のタバコ語食例では、申告量や推定量は不正確で、症状と一致せず誤差の大きいことが知られています。ニコチンの血中濃度の即敵でも、中毒量とされる濃度よりもはるかに低値で、推測より誤食量の少ないことが示されています。

 米国小児中毒センターの治療方針では、5本以上の誤食で初めて胃洗浄を勧めています。これに従えば、事実上胃洗浄施行の適応症例はほとんどありません。

 1988年に米国の中毒センターが発表したタバコ誤食の治療方針によれば、2本以下はすすぎのみ、2本以上であっても口すすぎと活性炭服用で、5本以上になって、初めて胃洗浄を推奨しています。

 1998年の日本小児科学会指針では、誤食量が2cm以下であれば胃洗浄なしの経過観察を推奨しています。しかし、その後、タバコ1本あたりの長さもニコチン含有量も銘柄により異なる為、2cmというのは再検討を要するとしています。

 そもそも誤食年齢は小児であり、正確な誤食量を把握することは難しく、cm単位の推定は無意味と思われます。

・胃洗浄は、挿入された太い胃管が十二指腸を  超えると、穿孔、出血、誤嚥など危険性が指摘されています。

・催吐〜手指等の機械的刺激による催吐は、患児に苦痛 と誤嚥の危険性をもたらし、痙攣を誘発する為、施行すべきではありません。

※トコンシロップによる催吐
 2005年のガイドラインでは、トコンシロップは除去できる毒性物質の量に疑問があり、転帰の改善を示すエビデンスがなく、さらに傾眠や誤嚥の副作用があることから。「毒性物質の摂取時にトコンシロップを投与しないこと」とされています。またUpTo Date2007によります6歳以下や、意識障害などのは禁忌とされています。
(その後調べたところ、6歳以下というのは、メディカル朝日2010.6の間違で6ヶ月以下というのが本当です。)


1911.6.1号 NO.545

  医学・薬学用語辞典  DoTSDOTS ←それぞれをクリックしてください。


メインページへ 昭和63年6月1日号 No.23

睡眠時無呼吸症候群

 定義〜持続時間10秒以上の無呼吸が、一夜7時間の睡眠中に30回以上出現し、しかもその無呼吸が入眠期やREM睡眠期にも出現する状態

 日中に居眠りをする人、不眠症の人、大鼾(いびき)、肥満、短頸、小下顎症、高血圧の人、扁桃・アデノイド肥大の人に多いとされています。  

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睡眠時無呼吸症候群の薬物治療 

2003年9月15日号 No.368  関連記事 
睡眠時無呼吸症候群と血圧の関係

 睡眠時無呼吸症候群治療(以下SAS)の第1選択は、経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP)や外科的手術などで、薬物療法は補助的な治療手段です。

 呼吸中枢刺激作用を持つ薬剤の中で、酢酸メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH、プロベラ錠)、ダイアモックス錠、テオフィリン、ナロキソン注などで、本症候群に対しある程度、効果が認められています。

・テオフィリン

 アデノシンは、呼吸抑制作用を持っています。この作用に、テオフィリンは拮抗作用を示しますテオフィリンにより、うっ血性心不全患者に見られる中枢型無呼吸には改善が見られます。しかし、テオフィリンには覚醒作用もあるため、無呼吸が改善したとしても睡眠そのものは改善しませんまた、アデノシンは睡眠をもたらす候補物質でもあり、SAS患者の末梢血中で増加することが示されています。

 閉塞型無呼吸症候群には無効またはわずかに有効とする研究があるものの、その有用性に関してはまだ結論は出ていません。

・ナロキソン

 ナロキソンなどのオピオイド拮抗薬は、全般的な大脳刺激作用を介して呼吸を促進します。またSAS患者の脳脊髄液中にはオピオイドが増加しているとの報告があります。いくつかのオピオイド拮抗薬を用いた治験では、無呼吸の平均持続時間を若干短縮する程度で、臨床的に有用であるといは言えません。

・その他

 三環系抗うつ剤は、比較的早くからSASに対して用いられてきました。最近では、新しいSSRIが有効であったことが報告されています。

 降圧剤のセロケンやACE阻害剤の一部が、無呼吸指数を有意に低下させたとの報告もありますが、降圧とSAS抑制との因果関係の解明は今後の課題とされています。

・酢酸メドロキシプロゲステロン

 酢酸メドロキシプロゲステロンは女性ホルモンの1種で、呼吸促進作用を持つことが知られています。最近の臨床研究では、換気量の二酸化炭素応答の改善がその機序であり、気道開大筋に対する効果がないため、本剤のSASに対する効果は小さいことが判明しています。

 しかし、覚醒時にも高二酸化炭素血症のある肥満低換気症候群でSASを合併する女性例では、有効と思われます。

 酢酸メドロキシプロゲステロンは、男性に長期にわたって服用すると性機能低下、脱毛を来します。また、男女とも血栓症のリスクが高まります。

・アセタゾラミド

 ダイアモックス錠(アセタゾラミド)は、SASの治療薬として保険適応が認められています。(海外では、未承認)。通常成人、1日1回250〜500mg

 代謝性アシドーシスをもたらすことによって、呼吸中枢を刺激します。また、動脈血二酸化炭素分圧に対する換気応答直線を、低い二酸化炭素分圧側にシフトさせる作用があることが実証されています。50%程度の有効率で、中等度以上では有効率は低くなっています。

 アシドーシスが確実に起こり、手足末端のしびれ感が多くの患者に見られるので注意が必要です。


 呼吸中枢に働きかけて、呼吸ドライブを上げることがSASの治療に役立つか否かという点は、必ずしも明確にはされていません。特に閉塞型無呼吸の場合、上気道の虚脱に吸気努力(吸気の陰圧として現れる)の過剰そのものが関係している可能性があります。

 一方、呼吸ドライブの亢進が上気道の開大筋活動を高め、上気道のポテンシー(能力)を上昇させて虚脱を防いでいるのなら、呼吸中枢の刺激は閉塞型無呼吸を含むSASの治療に有効であると考えられます。

     関連記事 睡眠時無呼吸症候群と血圧の関係もご覧下さい。

{参考文献} 臨床と薬物治療 2003.8 等


2003年9月15日号 No.368

   医学・薬学用語解説(め)

        めまい(vertigoとdizziness)はこちらです。


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5-HT3受容体拮抗剤

1993年1月15日号 No.122


 近年、癌療法は新しい抗悪性腫瘍剤の登場により著しい進歩を遂げてきています。しかし一方で抗癌剤服用に伴う種々の副作用が、患者のQuality of lifeという点で、また癌治療の面でも大きな問題となっています。中でも、悪心、嘔吐は発生頻度も高く、癌患者の苦痛度では、脱毛や血液毒性等を上回っています。

 嘔吐の刺激伝達にはセロトニン受容体の一種である5-HT3受容体が深く関与しており、5-HT3受容体拮抗剤が抗悪性腫瘍剤により誘発される悪心、嘔吐に有効であることが確認されました。

 癌化学療法による強い悪心、嘔吐が食欲減退や体重減少、栄養状態の低下などを来たして患者の体力の消耗、全身状態の低下を招きます。また、治療への不安感を高め、患者が以後の治療を拒否し治療の継続を困難にする場合もあります。さらに強い悪心、嘔吐のために抗悪性腫瘍剤の与薬量が制限され、治療効果を低減させる原因になることもあります。

 抗悪性腫瘍剤の服用や放射線の全身照射は、消化管の小腸粘膜に存在するEC細胞を刺激し、セロトニンの分泌を促進します。分泌されたセロトニンは、求心性腹部迷走神経末端にある5-HT3受容体に結合し、その刺激は直接あるいはCTZ(化学受容体)を介して嘔吐中枢に伝達されます。嘔吐中枢に伝達された刺激はさらに上位の中枢領域へと伝達され、悪心や嘔吐反応が起こると考えられています。

[参考文献]時の新薬16 カイトリル注


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降圧薬(血圧降下剤)中断症候群

昭和62年9月1日号 No.6

最近の高血圧症の治療に、数多くの降圧薬が用いられていますが、これらの中には急激な中断により重篤な高血症、特異な随伴症状及び心・血管合併症を惹起するものがあります。

頻度はそれほど高いものではありませんが、重症患者、心・血管合併症をすでに有する患者では危険なことがあり、特に服薬コンプライアンスの悪い患者では注意する必要があります。

<主な症状>

*overshoot:前値以上の高血圧
*高血圧性脳症、脳血管障害及び合併症
*狭心症、心筋梗塞
*交感神経活性の亢進を示す精神神経症状(高度の不穏、不安感、不眠、発汗、振戦、頭痛など)
*動悸、頻脈、頻拍性不整脈及び突然死など

<中断症候群が報告された降圧薬>

1.中枢性交感神経抑制薬:カタプレス、アルドメット、ワイテンス
2.β遮断薬:インデラル、テノーミン
3.交感神経末梢遮断薬:レセルピン
4.利尿降圧剤:各種
5.ACE阻害剤
6.カルシウム拮抗剤
7.降圧剤の併用
中枢性交感神経抑制
薬とβ遮断薬
中枢性交感神経抑制薬と利尿剤
β遮断薬と利尿剤

[参考文献]医薬ジャーナル 1987.4


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アガリクス(ヒメマツタケ)   こちらの記事も参考にしてください。→代替医療

 ヒメマツタケは、担子類のハラタケ属(Agarics)に属するブラジル産のキノコで、学名はAgaricus blazei Murril、カワリハラタケという別称もあります。なお、一般的には「アガリクス」も名が良く知られていますが、「アガリクス」とはヒメマツタケを含む30数種類のキノコの総称をいいます。

 ヒメマツタケには、β-D-グルカンなどの多糖類やリノール酸が豊富に含まれています。そのほか、各種アミノ酸、ビタミンやミネラル含有値が高く、なかでもビタミンB2やD、マグネシウム、カリウムなどが多く含まれています。

 1980年の第39回日本癌学会総会で、三重大学医学部の研究グループにより、ヒメマツタケ(岩出101株)が顕著な抗癌活性を持つことが発表されました。ほかにも、数多くの学会で研究成果が発表され、そのすぐれた効果が注目されています。

<これまでに知られている効用>

 抗癌作用、免疫促進作用、血糖降下作用、血圧降下作用、コレルテロール低下作用、消化管運動亢進作用、抗アレルギー作用、肝機能改善作用、ビタミンD2様作用等


         {参考文献} 三星堂医薬ニュース 2000.2

関連項目:β-D-グルカン製剤の感受性 、 代替医療


スピルリナ     関連項目:スピルリナとBCG菌体成分を用いた癌免疫療法

出典:日本病院薬剤師会雑誌 2001.5

 スピルリナは“らん藻類”の植物。アフリカや中南米の塩水湖に自生している長さ0.2〜0.5mmの螺旋形をしたした藻で、癌の予防、治療に効果有るとして注目されています。

 抗癌有効成分として、β-カロチン、クロロフィル、ゼアキサンチン、硫化多糖類が含まれています。

 スピルリナ抽出物である硫化多糖類が悪性黒色腫の肺転移抑制作用を示すことが報告されています。


AHCC
Active Hexose Correlated Compound

 AHCC(活性化糖類関連化合物)とは、数種類のキノコ類の菌を大型タンクで長期間培養して得られる培養物を抽出した物質で免疫強化を目的とする機能性食品です。通常のキノコ製品の主成分はβグルカンと呼ばれる成分ですが、AHCCでは、βグルカンに比べて粒子が小さいαグルカンと呼ばれる成分が主成分になっています。

 キノコ類の菌糸体を特殊な酵素で処理して、吸収しやすい形にした健康食品。優れた抗癌作用を持つとされています。

 AHCCの成分のほとんどは、植物性の多糖類ですが、体内に取り込まれるとインターロイキン(IL-12)を誘導することが知られています。

 IL -12は、NK細胞の増殖と活性化をはかるサイトカインとして見いだされたもので、その後、キラーT細胞の増殖と活性を促進させることも知られています。

 AHCCは剤と併用すると、抗癌剤の副作用である脱毛や食欲減退、倦怠感を解消し、白血球の減少も抑制するとの報告があります。


プロポリス

「プロポリス」とは、ミツバチ(セイヨウミツバチ等)が生産する物質です。ミツバチは、ポプラ類やヤシャブシ等が分泌する粘液性樹脂を採集し、後肢外側の花粉かごへ、だんご状(プロポリス)にして持ち帰り、巣箱の間隔や巣房の出入口に塗り、蜂巣の補強や冷気・水の侵入を防ぐのに使用します。また、侵入した外敵(ネズミ等)の死骸を封入してその腐敗を防いだり、卵を産みつける巣房の消毒にも利用します。

 プロポリスの語源は、プロ(前)+ポリス(都市=巣)からなるギリシャ語に由来し、巣の前にあって巣を守ると言う意味であるとされています。古代からヨーロッパではプロポリスを貴重な資源として活用されてきました。近年では化学分析等により、その組成や優れた特性が明らかにされつつあり、数々の可能性を秘めた物質として注目を集めています。

 蜜蜂の巣から取れる有用物には大きく分けて3種類あり、蜂蜜、ローヤルゼリー、そしてプロポリスです。プロポリスは蜜蜂が集めた樹脂類や花粉、蜜臘などが混ぜ合わされてできたゼラチン様の物質で、巣の保護や補集のために使われます。プロポリス等の有用物によってガードされた巣はほぼ無菌に近い状態となり、蓄えられた蜜が腐敗することがありません。

 プロポリスは蜜蜂の巣の構成成分の一部であり、そのまま服用したり摂取することは困難で、液状にするかあるいは摂取しやすい形態に変えることが必要です。

 国立予防研究所と協和醗酵研究所の研究グループは、プロポリスに抗癌作用のあることを確認した。

 ブラジル産プロポリスの成分を調べたところ、クレロダン系ジテルペンの一種である新化合物が発見されました。同化合物を肝臓癌や子宮頸癌などの患者から採取した癌細胞に加えたところ実験開始10時間後の癌細胞にはDNA(デオキシリボ核酸)を合成し分裂増殖するS期に限って抑制効果があり、1日後には死滅したとのことです。

 プロポリスの組成は約55%が各種の樹脂、30%が蜜臘、10%が油、5%が花粉です。微量栄養素の中では、バイオフラボノイド(ビタミンP)の含有率が極めて高く、優れたバイオフラボノイド源であるとされるオレンジの約500倍です。

 最近の研究では抗菌作用のみならず、胃潰瘍、インフルエンザ、風邪、鼻・気管の炎症にも効果があることが確かめられています。喉、舌、口腔内の炎症をやわらげるため、欧米ではプロポリス入りの歯磨やドロップまで市販されています。

 尚、プロポリス飲用に伴う副作用について、特にこれといって報告されていませんが、稀に湿疹が出ることがあるとする報告が見られます。現在、プロポリスは健康食品として市販されています。

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