読み込み中
しばらくお待ち下さい。 |
シスプラチンとホスミシンの併用(腎毒性の軽減)
シスプラチンは多彩な副作用を有しており、中でも腎毒性はDLF(ドーズ・リミティング・ファクター)となっています。
ホスミシンが抗生物質としての作用の他に、腎尿細管上皮のライソゾーム膜に対し安定化作用を有すると報告され、臨床的にもアミノG系の腎毒性が併用により、軽減されるとの報告もあります。
尿中NAG及びγ−GTP活性から検討して、シスプラチン腎障害に対して広く保護作用を有しているものと考えられます。
継続的にシスプラチンの与薬を行う場合、その初回時より腎障害を極力避けることが望ましく、その意味から、ホスミシンの併用は、その化学療法導入時より行ったほうが効果的です。
出典:泌尿紀要 32巻 9号 1986年
シスプラチン与薬3日前より7日間の4g/日のホスミシン併用がシスプラチンを反復使用した際の尿細管機能の保持に有用である可能性が示唆されました。
出典:癌と化学療法 第17巻 第1号 1990年1月
解毒剤
拮抗薬(中毒・誤飲時の処置)
有毒物質
拮抗薬
有機リン系殺虫剤 ------- 硫酸アトロピン、PAM(ヨウ化プラリドキシム):静注
カーバメート(有機リン系殺虫剤) -------
硫酸アトロピン:静注
パラコート、ジクワット(除草剤)
------ ケイキサレート
アセトアミノフェン ------
N-アセチルシスティン(内服)
青酸化合物(シアン) ------
亜硝酸Na、デトキソール
メタノール、エチレングリコール ------
エタノール
麻薬(モルヒネ、フェンタニル、ペチジン)------- 塩酸ナロキソン
ワーファリン ------- ビタミンK
シュウ酸、フッ化水素 ------- グルコン酸カルシウム(カルチコール)
水銀、ヒ素、鉛、銅、錫 ------
BAL
銅 ------- メタルカプターゼ
鉛
-------- ブライアン
鉄 --------- デスフェラール
イソニアジド --------- ビタミンB6
臭化物、硝酸銀 ---------- 塩化ナトリウム
抗コリン剤 ---------- ネオスチグミン(ワゴスチグミン)
メトヘモグロビン血症誘発薬剤 ------- メチレンブルー
ベンゾジアゼピン系抗不安剤・睡眠導入剤 ------- フルマゼニル(アネキセート注:静注)
ブロムワレニル尿素 ------- 塩化ナトリウム
シアン、シアン化合物 ------- 亜硝酸アミル:吸入(応急的)、亜硝酸Na:静注
シアン、シアン化合物、ヒ素(砒素) ---------チオ硫酸Na
シアン、シアン化合物 ---------ヒドロキソコバラミン:点滴
亜硝酸塩類、アニリン、フェナセチン、スルホンアミド類----メチレンブルー
エチオナミド、四塩化炭素、有機リン剤 ------------グルタチオン
アセトアミノフェン、ハロタン
亜硫酸ガス、金属(メチル水銀、鉛)
頭痛
片頭痛
出典:SCOPE 1999.7等
間中伸也:頭痛大学
http://www02.so-net.ne.jp/~drmana/index.html
◎ 緊張型頭痛〜7割
:頭が重い。頭が締め付けられ、重苦しい。肩こりやめまいを伴う。
:若い人からお年寄りまでいて、男女差がない。
:我慢できる程度の痛みなので、2〜3%しか病院に来ない。
:筋収縮性;パソコンで肩や首が凝る。
:ストレス性;NSAIDsを飲むとますます頭痛がひどくなる。
:どちらも抗不安剤が効く。心因的要因が強いときは抗うつ剤を追加する。
◎ 片頭痛〜2割:こめかみの血管が痛む。「特発性血管性頭痛」心臓の拍動と一致して、
ズギズキ、ガンガン痛む。頭が割れんばかりの激痛、錯乱状態になる人もいる。
:嘔吐を伴う。4時間から3日間続く。くも膜下出血に酷似
:女性に多い。
◎ 群発頭痛〜1割:片方の目が焼け火箸でえぐられるような激痛
:ほとんどが男性、体格がいい人が多い。
:三叉神経痛や片頭痛と間違えやすい。
NSAIDsやエルゴタミ誘発による薬剤性の頭痛もある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
急性頭痛
※ 急性水頭症
球栓作用
髄液の通路が突然ブロックされ、急速な脳室拡大を呈して、激しい頭痛が出現します。
脳室内腫瘍や脳出血による穿破によりモンロー孔や中脳水道が圧迫、閉鎖されて生じることが多い。
特殊な頭痛として第3脳室腫瘍(colloud cyst)がモンロー孔に陥入して頭痛を呈する球栓作用(ball
valve action)が知られています。
※ 低髄液圧性頭痛
拍動性の激しい両側性の頭痛で発症しますが、特徴として頭痛は起立により増悪し、臥位で軽減します。低血圧と間違われることも多く、診断は腰椎穿刺で行いますが、enhance
MRIで特徴的な硬膜のエンハンス像を認めます。
この頭痛の発症機序は頭蓋内内の支持組織が牽引、圧迫されて痛みを生じるもので牽引性頭痛(traction
headach)と呼ばれています。頭蓋内の器質的病変である腫瘍や血腫による頭痛の発現はこの機序に基づいています。
※ 解離性脳動脈瘤
血管解離時の激しい頭痛を主訴としますが、比較的若年者に多く注意を要します。
くも膜下出血群と非くも膜下出血(脳虚血)群とに分かれます。
中膜と外膜の間で解離が生じ、解離時の痛みとともに、外膜が更に破綻し、くも膜下出血を呈します。このとき解離と外膜破綻に時間的ズレが生じると二層性の頭痛となります。
<非くも膜下出血群>
血管壁は内膜、中膜、外膜の3層構造を呈していて、内膜と中膜の間で解離が起きると解離時の痛みが出現するとともに、内膜が内側へ圧迫されて血管腔を狭窄または閉塞し、その部位の神経症状を呈します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
マイナーリーク
破裂脳動脈瘤のマイナーリーク
脳動脈瘤が破裂すればクモ膜下出血が生じます。その時の典型的頭痛症状は吐き気を伴い、突然ハンマーで叩かれたような痛みととして成本には書かれています。
このような激しい頭痛ならばどんな医者でもクモ膜下出血を疑い頭部のCTを行います。しかし、実際の現場で軽い頭痛の訴えだけで「ちょっと風邪をひいたときの頭痛みたいだ」と表現される患者もおられるぐらい、クモ膜下出血による頭痛は様々です。
なかには朝、頭痛で目が覚めたと訴え来院する方もおり、その中でも破裂脳動脈瘤からわずかしか出血しないものをマイナーリーク(minor
leak)といいます。
普段経験したことのない頭痛であっても頭部CTでのクモ膜下出血の検出率は55%で、残りは腰椎穿刺によるリコール検索が診断上有意義であったとされています。
出典:治療 2004.4
<IHS分類による診断基準の要点> IHS分類〜国際頭痛学会
・緊張型頭痛〜両側性、非拍動性、軽〜中等症
活動で悪化しない。
30分〜7日間持続
(10回以上の発作エピソードが必要)
嘔気・嘔吐無し
羞明と音過敏の両方は無し
(一方はあってもよい)
・片頭痛〜片側性、拍動性、中〜高度の痛み
活動で悪化
4〜72時間持続
(5回以上の発作エピソードが必要)
嘔気・嘔吐、羞明と音過敏のいずれかを伴う
・群発性頭痛〜片側性、眼窩から前額部、激痛
15〜80分、群発性
(5回以上の発作エピソード)
片側性の結膜充血、流涙、鼻閉、鼻汁、縮瞳
顔面発汗、眼瞼下垂、眼瞼浮腫
(うち1つ以上)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鑑別:命に関わる疾患
脳腫瘍、くも膜下出血、慢性硬膜下血腫、髄膜炎〜普段とは違う頭痛ならCTを取る。
頭痛に逃げ込んでいる
日本人はストレス耐性が弱くなっている。
カフェルゴットは月に2〜3回、どんなに多くても月に10回まで、
禁断症状〜死ぬ苦しみ
予防薬を使うべき〜カルシウム拮抗剤、β遮断剤、効果が出るまでに1ヶ月かかる。
片頭痛は春や秋に集中的に起こる。〜その時期にカルシウム拮抗剤(ロメエリジン)で予防ができる。3ヶ月は続ける。
血管の腫れだから、一度起こると癖になる。
・ある時期ぴったりと止めることが、片頭痛体質を変えるために大事。
・予防薬を長期間飲めば飲むほど痛みは軽くなるし、頻度も少なくなり、発作時間も短くなる。
関連記事:ピロリ菌と慢性頭痛
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
メインページへ
Chronic
Daily Headache
2002年4月1日号 No.334
{参考文献}薬局 2002.2
Chronic Daily Headacheは、1週間に6日以上、6ヶ月以上続く慢性の頭痛の総称。IHS分類(国際頭痛学会)に当てはまらない頭痛を包括する概念として、最近よく用いられるようになってきました。
Chronic Daily HeadacheはIHS分類では、緊張型頭痛とされています。(かつては筋収縮性頭痛と呼ばれていました。) 1ヶ月間の頭痛の出現回数によって、15回未満の反復発作型と15回以上の慢性型に分け、それぞれについて頭部筋群の異常を伴うものと、伴わないものに細分類されています。
本症の中でIHS分類の慢性緊張型頭痛の診断基準を満たすものは一部で、多くはtransformed
migraneやwithdrawal headacheです。
transformed migrane:若い頃の低頻度で症状の強い片頭痛が、30〜40歳代で症状が軽くなって頻繁に起こるようになったもの。
withdrawal headache(rebound headache):鎮痛薬の常用により耐性を生じてしだいに服用量が増し、最後には鎮痛薬が効かなくなってしまう難治性の慢性頭痛。
transformed migraneの患者は頭痛発作の回数が多いので、鎮痛薬を過剰に服用する傾向があり、withdrawal
headacheを合併していることが多い。
* 治療の原則は、より徹底した鎮痛薬の服薬制限と適切な予防薬
<鎮痛薬からの離脱法>
1.仕事のない土日などにすべての鎮痛薬を突然中止する。
2.鎮痛薬を徐々に減らしていく漸減法
1.の法が成功率が高い。
予防薬〜バルプロ酸、三環系抗うつ剤、β遮断剤、Ca拮抗剤などがありますが、それぞれの有効性には個人差があり、また効果発現に1〜2週間かかることもあるので、十分な説明が必要です。
予防薬は、離脱療法と同時に開始して頭痛が増悪した場合、副作用と勘違いされることがあるので、鎮痛薬中止ないし漸減開始日の1〜2週間前または1週間後から開始します。
* 緊張型頭痛の治療法として、薬物療法は、手段の1つにしかすぎません。
頭部を中心とした上半身のストレッチや筋力トレーニング、姿勢の矯正、低い枕への変更、貧血の治療、禁煙などの生活習慣の改善や簡易心理療法などを組み合わせることが重要です。Chronic
Daily Headacheには、とりあえずNSAIDsを処方して帰すという安易な診療は厳禁です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
薬剤性の頭痛
出典:日本薬剤師会雑誌 1999.4等
慢性頭痛のある患者は、頭痛薬や鎮痛薬を常用・連用していることが多く、 鎮痛薬を週4日以上服用すると、薬が切れる(離脱)のよって頭痛が引き起こされます。すると頭痛の頻度が増し、頭痛薬服用の頻度が増えるという悪循環になります。
薬剤誘発性の発現機序に関しては様々な説がありますが、鎮痛剤を大量に連用、乱用していると、痛み刺激に対する閾値が下がり、本来なら頭痛を生じないような小さな痛み刺激に対しても頭痛を感じるようになると考えられています。これは頭痛患者のみにみられる現象です。なぜ頭痛患者のみにこのようなことが起こるのかは不明です。
関連項目:MBTによる片頭痛治療の実際 ピロリ菌と慢性頭痛
2002年4月1日号 No.334
<医学用語辞典>
CADASILcerebral autosomal dominant arteiopaty with subcortical
infarcts and leukoencephalopathy
CADASILは、一般に20〜40歳で前兆を伴った片頭痛を認めるようになり、30〜50歳代で一過性脳虚血発作や脳梗塞を発症し、徐々に仮性球麻痺や痴呆を呈する常染色体性優性遺伝子の疾患です。
病理学的には大脳皮質下の多発性脳梗塞と白質のびまん性病変を生じ、脳血管に特徴的変化を認めます。
最近、第19染色体19p13のNotch3遺伝子にミスセンス変異が認められました。一方、片頭痛の中で、前兆として片頭痛を伴う家族性の片頭痛(FHM:familial
hemiplegic migraine)でも遺伝子の研究が進み、同様に第19染色体19p13に存在するCANA1A遺伝子にミスセンスを認めました。
家族性片麻痺性片頭痛(FHM)は、臨床的にCADASILより早期に発症し、脳卒中発作、痴呆やうつ状態などを呈することもありません。発作間歇期に神経症状は認めず、MRI上皮質下白質の小梗塞や白質のびまん性病変は見られません。
CADASILと片頭痛が同一患者や同一家系内に生じる事を説明できるような、共通の制御因子などが存在する可能性があるのかもしれません。
薬物乱用頭痛
2008年4月15日号 No.473
薬物(鎮痛剤等)の乱用により、もとの頭痛がひどくなり、こじれたものを薬物乱用頭痛といいます。
片頭痛と緊張型頭痛が混在し、区別が困難となり、さらに複雑な頭痛へと変化します。
PDS
oeriodic synchronous dischstge
周期性同期性放電
脳波所見、炭酸リチウムの副作用
PSDはクロイツフェルドヤコブ病(CJS)に特徴的ですが、特異的ではありません。
PSDあるいは類似の周期性放電は無酸素性脳症、単純ヘルペス脳炎をはじめとする急性脳炎、脳血管性障害、薬物中毒、アルツハイマー病など数多くの疾患にも出現します。
大脳皮質の重篤な障害がPSDの出現に不可欠な要素と考えられています。
<PSDの生理学的機序>
1.大脳皮質の傷害の結果、皮質下構造に対する皮質抑制が失われ、深部灰白質の神経細胞群に過剰同期が生じ、それが逆に視床下部皮質路を介して、残っている皮質神経細胞を刺激して放電を起こしPSDが起こります。
2.皮質の神経細胞間に電気緊張性結合(electronic
coupling)が起こり、その結果、神経細胞間の相互作用が生じてPSDを形成します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ミオクローヌス
舞踏病様運動よりも急速かつjerky(ピクピクした早い反射)で、規則性のない不随意運動。
表面筋電位で記録すると、共動筋、拮抗筋に持続のきわめて短い筋放電が同時に出現している場合がしばしば観察されます。この責任病巣は大脳皮質から脊髄まで広範囲で、病因も様々です。
最近、ミオクローヌスの発症機序の解明が進み種々の立場から分類が試みられています。
ミオクローヌスはてんかん性と非てんかん性に大別され、てんかん性のものは脳波上のてんかん性発射に一致して出現するものをいいます。非てんかん性の多くは、自発的に存在しますが、光、音、触、筋伸展などの感覚刺激や随意運動の際に、誘発ないし、より増強される傾向があります。とくに随意運動に誘発される傾向の強いものは動作性ミオクローヌスといいます。
治療には抗痙攣薬を中心とした薬物療法が行われます。
出典:日薬医薬品情報 Vol.7 No.10(2003.10)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Piracetam
ピラセタムとミオクローヌス
出典:JJSHP 2000.5
ラセタム系の薬剤は、作用機序が不明ながら、25年以上もの間、記憶障害に効果があるとして使用されてきた薬剤です。
長期間の臨床経験から、副作用が少なく使いやすい薬の1つとして、ピラセタムがあり、やはり抗痴呆薬として長期間使用されていました。
皮質性ミオクローヌス
心停止など大脳の低酸素が急に起こり、その回復の後にこの低酸素による大脳皮質全体の脱抑制のために、全身にミオクローヌスが出現する病態をLance-Adams症候群と言います。
このLance-Adams症候群の患者に、ミオクローヌスに対してではなく記憶力障害に対してピラセタムを使用したところ、ミオクローヌスが減弱しました。そしてピラセタムを減量するとミオクローヌスが悪化し増量すると改善するという経過を確かめ、再現性が確認されました。
この報告をきっかけにピラセタムをミオクローヌスに使用するという試みがなされ、本剤が特に皮質性ミオクローヌスに有効であることが証明されました。
ミオクローヌスとは、とても急激で不規則な動きが本人の意思と無関係に起こる不随意運動です。原因、発生機序は様々ですが、その中で大脳皮質の異常発火が原因で起こるものが、皮質性ミオクローヌスです。
したがって、発生機序としてはてんかんと通ずるものがあり、皮質性ミオクローヌスとてんかんの一部は同一機序の疾患spectrumの中でとらえられています。非常に大まかに、簡単に言ってしまえば、「皮質性ミオクローヌスは、意識障害も全身痙攣も起こさない、ごく狭い範囲の大脳に起きた異常発火が原因となる、ごく一部の筋肉のphasc(相?:規則性のない不随意運動)な動き」ということになります。
この病態を確かめるには、通常の脳波に加えて、jerk-locked
averagin(JLA)法を用いて、異常な運動の前に脳波の棘波が出現していることを証明することが必要なこともあります。
その発生機序から推定できるように抗てんかん剤がこの治療の中心となる。
クロナゼパム、バルプロ酸、プリミドン、フェノバールなどが使用されるが、これに加えてピラセタムが登場したのです。
ピラセタムの薬理作用
ラセタム系の作用機序として考えられているものは、細胞のイオンチャンネルに作用してナトリウム、カルシウムの流入を促進し、カリウムの流出を抑制することにより、細胞の反応性を増加することです。しかし、これですべての現象は説明できず、抗痴呆薬としての機序は十分解明されていません。
ピラセタムは従来の抗ミオクローヌス薬の作用機序とは違った機序で働いていると考えられました。その機序としては、1.過剰グルタミン酸による異常興奮の抑制、
2.異常カルシウムチャンネル機構の阻害、 3.セロトニン代謝回転の促進などです。
尿素誘発ミオクローヌスモデルで、ピラセタムにより巨大SEPが小さくなり、ミオクローヌスの頻度も減少しました。また巨大SEPはあるが棘波のないモデルでも、ピラセタムが効果があったことにより、ピラセタムが大脳網様体などの皮質下の賦活系を抑制することにより効果を出している可能性も考えられました。
SEP:somatosensory evoked potential:体性感覚誘発電位
動物実験でもその正確な作用機序は不明ですが、本剤が他の抗ミオクローヌス薬と違った機序で効果を示していて、他の薬との併用が有効であることが判明したのは重要です。
臨床効果
ピラセタムは、様々の種類のミオクローヌスに効果があり、自覚的にも他覚的にもミオクローヌスは改善し、患者の日常生活に改善をもたらすことが判明しています。
原疾患はLance-Adams症候群だけでなく、多系統変性症などの変性疾患でも、皮質性ミオクローヌスなら効果がありました。特に、反射性や動作性ミオクローヌスは効果があるとされています。
さらにクロナゼパムやプリミドンとの併用により、その抗ミオクローヌス作用が増強し、重症の動作性ミオクローヌスにはピラセタムを含めた多剤併用が有用です。
日本での、検討でもミオクローヌスの頻度・強度が有意に減少し、日常生活活動度も有意に改善した。この症状の改善に伴い、自発性の改善や憂鬱な気分の改善も見られたとの報告があります。
電器生理学的検査では、giant SEPが本剤により小さくなる傾向はありましたが、有意な減少ではありませんでした。
動作性ミオクローヌスだけではなく、安静時ミオクローヌスにも効果がありました。
また、平均1年間、最長2年までの経過でも、すべての症例でミオクローヌスの抑制効果は使用期間中持続し、その間ほとんど重篤な副作用はありませんでした。
<用法・用量等>
12g/dayより開始し、臨床症状、効果を見ながら3〜4日毎に3g/dayずつ増量する方法がとられています。そして十分な効果が得られたらその量を維持量として続けること。
維持量は15〜21g/dayでしたが、個人差があるため、それぞれの患者で上記のような方法で最適維持量を決定する必要があります。
軽い眠気、下痢などの副作用が認められましたが、重篤な副作用はありませんでした。
注意点としては、あまり急に本剤を切らないことで、急に中止したときに痙攣が誘発されたことがあります。徐々に減量して行くことが勧められます。また、腎機能に異常があると薬剤の排泄が遅延するため、その用量に注意する必要があります。
同義語:介在配列 intervening sequence
エクソン
Exon
2002年6月1日号 No.338
これまでの分子生物学や生化学の研究から、細菌などの原核生物と真核生物(ヒトを含めた動植物など)の遺伝子は、DNAという同じ化学物質ではあるけれど、色々な点で大きな違いのあることが分かってきました。
大腸菌などの細菌ではゲノム上に遺伝子があたかもネックレスの真珠のように隙間無く並んでいるのに対して、哺乳類などの高等真核生物では遺伝子として働いているDNAはゲノム全体の数%で、それらはゲノム上にまばらに乗っており、残りの大部分のDNAはどんな働きをしているのか分かっていません。
そして、原核生物の遺伝子では遺伝情報が端から端までひと続きになっているのに対して、真核生物では遺伝子の中に意味のない介在配列(イントロン)がいくつも割って入っている場合が多く見られます。
イントロンによって分割された遺伝子の断片の1つ1つをエクソンと呼びます。遺伝子が発現するときには、イントロンもエクソンも全部RNAに写し取られて(転写)mRNA前駆体ができ、その後、スプライシング(下記)という反応によってイントロンが切り落とされ、エクソンだけがつながったmRNAができます。なぜ、こんな面倒なことが起きるのか、まだよく分かっていません。
真核細胞やそのウイルスの遺伝子では、タンパク質のアミノ酸配列を支配している塩基配列が支配していない塩基配列の挿入によっていくつかの部分に分断されているものが多く、このような遺伝子を分断された遺伝子split
geneと呼び,アミノ酸配列を支配しない挿入配列部分をイントロン、アミノ酸配列を支配し分断されている各配列部分をエクソンといいます。
高等動物の遺伝子では、最終的に蛋白質に表現される領域(構造配列)の途中に、全くその機能と関係無い配列が挿入されており、その部分をイントロンと呼んでいます。ほとんどすべての遺伝子に存在することが知られています。
その存在意義、由来などは明らかではありませんが、「イントロンは高等動物の遺伝子が進化していく過程で取り込んだ遺伝子の周囲の塩基配列である」との説があり、この考えはほぼ原則的に正しいことが示されています。
1つの遺伝子内に存在するイントロンの数と存在部位は各遺伝子で決まっており,イントロンの塩基配列はイントロンによって異なります。
* エクソンとイントロン
エクソンは、遺伝子による蛋白質の設計図、イントロンは途中で削られる部分。エクソンはゲノム全体の1.5%しかありません。
エクソン
Exon
イントロンintronが挿入され分断されている、アミノ酸配列を支配している動物遺伝子の塩基配列部分。
染色体DNAのうち、mRNAに転写され、何らかの機能発現に関与する遺伝子配列。
転写の際には、前駆体RNAからイントロン(上記)が除かれエクソン同士がつながったmRNAが合成されます。
この過程はRNAスプライシング(下記)と呼ばれています。
スプライシング
Splicing
イントロン(intron)とエクソン(exon)に分断された構造をもつ動物細胞の遺伝子では,まず,イントロンとエクソンが連続して転写され, heterogenous
nuclear RNA(hn RNA)が合成されます。次いで,hn RNAは細胞質へ移動する前にイントロン部分が切除され,エクソン部分が結合してメッセンジャーRNAとなります。
イントロンが除去される過程をスプライシングと呼びます。スプライシングが起こるイントロンとエクソンの境目には,ほぼ共通した塩基配列がコンセンサス配列(consensus
sequence)として見出され,RNAタンパク質複合体として存在するsmall
nuclear RNA(snRNA)と相補的配列となっています。hnRNAのイントロン‐エクソンの境目の配列にsnRNAが結合したものがスプライシング酵素splicing
enzymeによって識別され,切断と再結合によりスプライシングが行われます。
{参考文献}臨床と薬物治療 2001.7等
南山堂医学大事典等
オルタナティブ・スプライシング
選択的スプライシング。
mRNAのイントロンが存在する場合、異なったスプライス部位を選択してスプライシング反応を行うことにより、同一のmRNAから最終的に異なった構造を持つ成熟mRNAを産生することがある現象
レリーバー
対症・救急薬<------->コントローラー(予防・維持薬)