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F2胎児

 生殖試験で、薬物を与薬された被験動物より出生した新生児を成長させ、成獣になって後、交尾、受精して得られる胎児のこと。すなわち、もとの被験動物にとって孫にあたる胎児のこと。

 


2003年4月1日号 No.357 

ヌードマウス 

 先天的に無毛で胸腺が欠損しているマウス。

 この形質は劣性単一遺伝子nu(11番目の染色体)によって発現します。突然変異マウスとして発見され、T細胞分化の場としての胸腺が欠損しているために胸腺依存の免疫機能不全があり、ヒトのディジョージ症候群に類似したT細胞機能不全

 B細胞系には異常はなく、移植片に対しての拒絶反応が生じないことから、異系や異種の臓器や組織移植,ヒト癌の移植などのレシピエントとして頻繁に使われてきています。

 とくにヒト癌のin vivo継代培養によく使用されています。またT細胞分化の場としての胸腺機能を知る目的で免疫学の実験にも多用されています。

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スキッド(SCID)マウス

 機能的なTおよびBリンパ球を欠損するマウスで、ヒト新生児でみられる遺伝性の重症複合型免疫不全症severe combined immunodeficiency disease(SCID)のモデル動物。

 scid遺伝子は第16染色体上に位置し劣性に遺伝します。リンパ球の成熟には細胞表面の抗原レセプター(免疫グロブリンIgおよびT細胞レセプター)の遺伝子が分化過程で組換え再構成しなければなりませんが、スキッドマウスではこの機構に障害があり、そのため正常な抗原レセプターを発現せず,成熟した機能的なTおよびBリンパ球が出現しません。加齢に伴い10〜20%のマウスで血中IgやCD3+ T細胞が出現するleaky(漏出)という現象が起こりますが、その機構については明らかではありません。液性および細胞性免疫能を欠くためヌードマウスよりも各種感染症に対する抵抗力は弱いが、移植腫瘍の生着率が高く、さまざまな正常組織も排除されにくいので、「生きた培養試験管」としてヒトや動物組織のレシピエントに広く用いられています。

ノックアウトマウス 

 1対の染色体上にある両方の対立遺伝子を人為的に破壊し,特定の遺伝子の機能を失わせたマウス。

トランスゼニックアニマル

 形質転換動物〜外来の遺伝子を組み込んだ動物で、遺伝子を変換させることによって本来の組織以外のところで遺伝子を発現させたり、人工的に活性化した遺伝子を発現させたりして、個体内での遺伝子の機能を調べることができる動物。


AUC

血漿薬物濃度曲線下面積、吸収曲線下面積

Area under the curve ,Area under the blood concentration-time cure

血中濃度−時間曲線下面積

AUC=X(吸収率)/Vd(分布容積)×Kel(消失速度)

 分母の2因子は薬物により定まっているので、AUCは吸収量に比例するといわれています。

 薬物の2つ以上の剤型のバイオアベイラビリティーを比較するのに有用な指標となります。また静脈内投与の薬物あるいはバイオアベラビリティーが正確にわかっているときのほかの投与経路による薬物の分布容積を求めるのにも使われます。

分布容積
Vd:Volume of distribution


 分布容積とは、体内薬物量(吸収量:X)と血漿中薬物濃度(Cp)との間をとりもつ比例定数で、Vd=X/Cpと定義されています。

 Vdは仮想上の単なる定数で、実際の解剖学的容積を示すものではないことから「みかけの分布容積」とも呼ばれます。

 Vdは血漿外に分布した薬物量の指標で、血漿中薬物濃度に等しい濃度を持つスペースが体内にどの程度存在するかを意味します。もし、血漿蛋白との結合が100%であれば、その薬物の血漿外組織の容積は計算上0%となり、Vdは血漿容積(血漿量)に等しくなります。

 Vdの値は、処方量を薬物静注直後の血漿中薬物濃度で除すことにより求められます。

 Vdにより、薬物の体液中への分布の程度だけでなく、臓器・組織による薬物の取り込みの程度も推定することができます。Vd値が大きいということは、薬物の体内分布が広範囲にわたっているか、組織への取り込みが大きいか、またはこの両方の過程が起こっているかのいずれかを意味します。

 出典:添付文書の用語と解説(薬事時報社)


AUD
Autibiotic Usage Density

 数年前までは抗菌薬使用状況を把握する場合、月間あるいは年間の総指用量を集計して各種抗菌薬の使用動向を調査する方法がとられていました。

 しかし、最近ではAUDを用いるようになってきています。

AUD=特定期間の抗菌薬使用量(g)/DDD×特定期間の入院延べ日数(bed days)×1,000(or 100)


 このAUDは、異なる薬剤間との比較や異なる医療機関と比較する際に便利なツールですが、内容を理解して使用する必要があります。


 DDD(defined dairy dose)は1日の維持量を考慮して決定される基準値(g)です。このDDDは日本固有の値がないためWHO Collaborating center for Drug statistics methodology)の報告値を使用することになります。

 DDDの根拠とされる平均体重は70Kgで、さらに中等度の感染症を想定した使用量であることから、必ずしも日本で使用される用量を反映していないと指摘されています。

 そのため添付文書に記載されている成人通常1日量をDDDとみなして算出する方法もあります。いずれにしても異なる医療機関を比較するには、このDDDが同じでなければ検討できません。

 また、抗菌薬を多く使用する内科系が専門の病院と外科系が専門の病院を比較するには、病院の性質上困難となります。

 AUDを使用して抗菌薬の使用状況を検討する場合は、病床数、科の構成、平均在院日数、総在院日数、入院患者数、bed daysの定義(1,000 or 100)、使用したDDDなどを必ず明確にする必要があります。

 逆に、他の医療機関から報告されているAUDを参考にする場合は、先の項目が明らかにされていることを確認しなければならない。

       出典:薬事 2010.10


ED50
50% effective dose
50%有効量

 例えば、100匹のネズミにある用量で薬を飲ませ、50匹のネズミに効果が現れたときの量。

LD50

50% lethal doseの略.

 対象とする生体反応が致死作用の場合、そのED50はLD50といわれます。
 例えば、100匹のネズミにある用量で薬を飲ませ、50匹のネズミが死んだときの量。

毒薬では、マウスへの皮下注射でLD50が20mg/kg以下をおおよその目安としています。

劇薬は 急性毒性LD50が経口投与で30〜300mg/kg,皮下注射で20〜200mg/kg,静脈注射で10〜100mg/kgの範囲にあるものを目安とします。


FMLP刺激

FMLP:f−MET−Leu−Phe

 好中球の最も重要な機能は、異物、とくに細菌などの病原体の貪食処理で、生体防御にきわめて重要な役割を果たしています。異物を処理するまでの過程として、遊走能(走化能)、貪食能、殺菌能の機能が働いています。

 細菌などが生体内に侵入すると、好中球は細菌巣に対して、一直線に血管壁を通り抜け、向かっていき、その方向を決めるのは細菌や損傷された組織の出す化学物質(走化因子)です。走化因子には補体由来のC5aやロイコトリエンなどのほかに、細菌由来のものとしてN末端にホルミルメチオニンを有するペプチドがあります。

 合成ペプチドであるf−MET−Leu−Phe(FMLP)は強力な走化因子として知られ、好中球機能の一つで、走化性の測定に用いられています。

 好中球の走化性を測定する方法としてFMLP刺激が用いられています。


ウィーニング

 今まで、人工呼吸器まかせであった呼吸を、本来の自発呼吸に徐々に移行させていくこと。本来の意味は乳離れのこと。

 人工呼吸器からのウィーニングをはかる場合、呼吸状態が改善していることは勿論ですが、中枢神経系・循環状態が安定していることが条件です。

 敗血症や、腎不全が進行しつつあるようなときは、ウィーニングは控えた方が安全です。


全末梢(血管)抵抗
体血管抵抗

TPR:Total peripheral resistance
SVR:Systemic vascular resistance

左心室を出てから右心房に戻るまでの体循環系全体の全抵抗(左心室より駆出された血液が受ける抵抗)をいいます。

TPR(dyne・sec・cm−5)=平均動脈圧(mmHg)/心拍出量(l/min)×80


血友病C

 従来の遺伝的出血症状をAHF欠乏症といい、血友病Aといいます。

 内因性トロンボプラスチン形成障害による先天性血液凝固障害(PTC)を血友病Bといいいます。

 最近PTA欠乏症(plasma thromboplastin antecdent)によるものが、血友病類似疾患として発見され、これを血友病Cといいます。

この三者は区別した疾患とみなされている。

南山堂医学事典では下記

 血友病A(第VIII因子欠乏症)ならびに血友病B(第IX因子欠乏症,クリスマス因子欠乏症Christmas factor deficiency)を含めて,血友病という.第XI因子欠乏症のことを血友病Cと呼んだことがあったが,現在ではこの用語は一般には用いられていない


タイトジャンクション:tight junction

 密着(閉鎖)結合ともいい、細胞表面を帯状に囲んでおり、細胞間隙にはタイトジャンクションにより密閉された小区画が多数あり、内腔から細胞間隙を通して物質が通過するのを防いでいると考えられています。

BBB     〜BBBでの輸送システム

 1885年、ドイツの科学者エールリッヒは静注した色素が脳組織にだけは移行しない(染色しない)ことを発見しました。さらに1913年 エドウィン ゴールドマンは、脊髄液に入れた色素が脳組織から漏出しないことを発見し、血液脳関門(以下BBB)の概念を提唱しました。

 2003年、色素の脳組織移行制限にはclaudin-5が深く関与していることを日本のグループが証明しました。

 BBBは、脳毛細血管内皮細胞どうしの密着結合によって細胞間隙透過性を著しく制限しています。(タイトジャンクション)
 
 低分子の開発候補薬物のうち98%はBBBを透過しないと言われています。もしBBBを薬物が透過できれば中枢神経系疾患に対する薬物の選択肢は大幅に増加し、治療は格段に簡単になります。

 脳へのドラッグデリバリーシステムは、BBBの間隙を広げてデリバリーとする手法と、BBBに発現する輸送担体や受容体を利用した経細胞輸送でデリバリーする手法に大別されます。

 細胞間隙輸送で脳へのドラッグデリバリーを行う技術として、高浸透圧溶液を用いて内皮細胞を収縮させ、細胞間隙を広げる手法が報告されています。

 一方、経細胞輸送での脳へのドラッグデリバリーはBBB機能に影響を与えず、安全です。BBBに高発現するトランスフェリン受容体に対する特異的抗体(OX-26)にペプチドやリボソームに封入した遺伝子を結合させ、トランスフェリン受容体を介して脳へ到達させる手法が報告されています。この手法は高分子薬物には適していますが、低分子薬物への応用はされていません。いずれの手法も長所と短所があり、各々の疾患や薬物に適したデリバリーシステムの開発が待たれています。

claudin-5の機能抑制による脳へのドラッグデリバリー

 claudin-5の阻害によりBBB透過性の上昇は分子量800以下の化合物に限られ、BBB機能がある程度保持できる点で優れています。

タイトジャンクション蛋白

 脳毛細血管は内皮細胞同士がタイトジャンクション(密着結合)で連結されているために細胞間隙の物質透過性は厳密に制限されています。タイトジャンクションはoccludinやclaudinなどの蛋白群によって異型征されています。claudin-5をノックアウトするとBBBはDa800以下のの物質を簡単に透過させます。

     注〜Da:分子量

BBBトランスポーター

 異物の脳内移行性をBBBが制御している原因がタイトジャンクションだけでなく、脳から血液方向の排出輸送としてP-糖蛋白が働いていることが、1992年に初めて報告されました。

 現在、BBB輸送は分子レベルでの解析が進み、その生理的機能が解明されつつあります。
生理機能の解明は、従来の薬物透過とは異なる新たなコンセプトによるBBB中枢創薬研究への応用の可能性を提示しています。

 BBBにはさまざまな基質特異性、輸送方向性、発現極性をもつトランスポーターが発現しています。これらトランスポーターが強調して機能することで、脳に必要な物質だけを供給し、薬物の透過性を制限し、更に脳内の不要物を排出する「中枢維持・防御システム」として働いています。

 また、中枢疾患時には正常時とは異なる中枢維持・防御システムとしてBBB輸送機構が変化し、脳を病態から保護している可能性も示唆されています。

    出典:ファルマシア 2004.2 ファルマシア 2003.11 薬事     2003.6


Somogyi現象
暁現象(Dawn Phenomenon)

 早朝空腹時の血糖値の修正は、就寝時の服薬量を増減します。ただし、次の事項に注意する必要があります。

Somogyi現象:就寝時の中間型インスリン量の過剰により、夜間低血糖を来し反発的に血糖値が上昇すること。就寝時の中間型インスリンを減量します。

暁現象(DawnPhenomenon):中間型インスリンの作用発現時間が短く、朝食前のインスリン作用が低下し、低血糖の先行がなく血糖値が上昇する場合をいいます。就寝時の中間型インスリンを増量します。


コレシストキニン
CCK:Cholecystokinin

脳腸管ペプチドの1種

 CCKは中枢神経系に広く分布し、鎮痛、鎮静、摂食行動、記憶などの様々な神経機能を修飾している物質であると考えられています。

 CCKは、DAやGABAと一部共存しており、5HT作動性神経系などとの相互作用も報告されています。また、CCKの放出は、GABAによって調整されていると示唆されています。

CCKには、CCK−A受容体とCCK−B受容体が存在し、近年、特にCCK−B受容体と不安との関係が注目されています。

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 8個のアミノ酸で構成されるCCK8と4個のアミノ酸からなるCCK4があります。脳、特に大脳皮質に最も高濃度に局在しており、鎮静作用、体温効果作用、 脳内オピオイドに対する拮抗作用およびドパミン効果に対する抑制作用などを持っています。

 近年、CCKが記憶の保持に必要不可欠で、CCK8ないと記憶を意識レベルに呼び戻し行動に移すことが出来ないことや、CCK4が記憶の想起を妨げることなどが分かってきています。

 

南山堂医学事典では下記

 十二指腸粘膜細胞から放出される消化管ホルモンgastrointestinal hormone.脂肪の摂取に伴って分泌され,胆嚢収縮,膵酵素分泌を促進する.直鎖のポリペプチドで33個のアミノ酸残基からなる.C末端のオクタペプチドが活性をもっている.カエルの皮膚から抽出されたセルレインceruleinはCCKと類似した化学構造をもち,同一生物活性を示す.


フィッシャー比

Fischer比

分岐鎖アミノ酸(BACC)と芳香族アミノ酸(AAA)のモル比

BACC/AAA=フィッシャー比

BACC(分岐鎖アミノ酸):イソロイシン、ロイシン、バリン〜肝硬変患者で低下
AAA(芳香族アミノ酸):フェニルアラニン、チロシン〜肝硬変患者で増加

通常の食事のフィッシャー比は約3.0でほぼ一定

脳内アミノ酸代謝の面より考案されたアミノ酸注射液(Fischer処方)
分岐鎖アミノ酸/(フェニルアラニン+チロジン)〔モル比〕
モリヘパミン


SMS:Symptom-Medication Score
症状薬剤点数

症状重症度点数に薬物点数を加味したスコア。
薬物治療効果の判定に用いる。

SS:Symptom Score
 〜症状重症度点数は、最重症4点、重症3点、中等症点、軽症1点とスコア化して評価
MS:Medication Score
 〜薬物点数は、薬物の1日量に薬物ごとに定められた点数を与えるスコアで、例えば、局所ステロイドは2点、ケミカルメディエーター拮抗薬、抗アレルギー剤は1点、経口ステロイド・抗ヒスタミン複合剤は4点


アダカラム

内臓機能代用器

一般的名称  吸着型血液浄化器

 株式会社日本抗体研究所

 本品は、末梢血中の顆粒球を中心とした白血球を吸着除去することを目的とした体外循環用カラム(吸着型血液浄化器)として、株式会社日本抗体研究所により開発及び製造承認申請がされたもので、重症の活動期潰瘍性大腸炎の緩解促進を使用目的としています。


イオントフォレーシス

イオントフォレシス

 経皮吸収製剤の大きな問題は吸収性の低さで、経皮吸収を促進させるために物理学的方法、化学的方法、バイオケミカルな方法が用いられています。

 イオントフォレーシスは、その物理的促進方法の一つで、電流を発生させる装置を利用してイオン性薬剤を電気的な力で強制的に経皮吸収させる方法です。

 同様に超音波を利用したフォノフォレーシスという方法もあり、良く比較されます。

 イオントフォレーシスは1900年頃から開発され、1980頃から経皮吸収型DDSの研究が盛んになるのに伴い、再び注目され、現在、種々の薬物について検討が進められています。

 肝で初回通過効果を受ける薬剤や時間制御が要求される薬剤などへの応用が期待されています。その実用化には電流装置の簡便化などいくつかの問題点も残っていますが、経口吸収に問題があるペプチド類(インスリンなど)のような生理的な周期的作用を示す薬剤の場合、このパルス的な作用の発現にイオントフォレーシスは有効であるといわれています。

JJSHP 1997.11


エントレインメント

 特定の解剖学的構造を基盤とするリエントリーでは興奮旋回経路が一定であるため、リエントリー調律(頻拍)の心拍数(レート)が、興奮の伝導速度と旋回経路の長さによって決められる性質があります。また、頻拍の一周期の間に興奮間隙(exsitable gap)と呼ばれる時期があり、この時期に外から刺激を加えると、それに応じて頻拍のレートが変化します。そして刺激を中断すると再びもとのレートに戻ります。この現象のことを言いいます。

 局所の機能的な特徴やその変化が主因となってリエントリー回路が形成され、一拍ごとにその経路が変わるランダムリエントリーでは頻拍のレートは不安定であり、興奮間隙(exsitable gap)やエントレインメント現象が認められません。

 カテーテル電極を用いた臨床電気生理学検査ではエントレインメント現象を利用して頻拍や粗動原因としてのリエントリー回路の特性や部位を調べることが行われています。


神経成長因子

NGF:nerve growth factor

 神経成長因子(NGF)は、前脳基底部コリン作動性神経細胞の神経栄養因子であり、アルツハイマー型痴呆では同神経細胞の脱落がみられるところから、NGFの欠落とアルツハイマー型痴呆との関連性が注目されるようになりました。

 NGFは血液脳関門を通過せず、血中半減期も短いため、NGFを投与するには観血的に脳室内へ注入しなければなりません。この方法で症例に治療が行われた結果は有効でした。

 多数のアルツハイマー型痴呆患者を治療するためには、経口投与が可能で脳内に移行しやすく、NGFの増強作用または合成促進作用のある薬剤が必要となりますが、現在のところ、治験段階でアルツハイマー型痴呆を適応症にもつ市販薬はありません。

 治験薬として、T558、セレブロライジン、プロペントフィリン、イデベノンります。

1、前脳基底部を起始核として、中隔から海馬および基底核から大脳皮質へ投射しているコリン作動性神経系の栄養因子作用を持つこと。
2、海馬采を中隔のコリン作動性神経細胞が死滅するのを防ぐこと。
3、前脳基底部のコリン作動性神経系を神経毒イボテン酸で破滅した時にみられるラットの学習・記憶障害を改善すること。
4、老齢ラットの萎縮した細胞を回復し、学習・記憶障害を改善すること。
5、逆に、抗NGF抗体の活性フラグンメントを脳室内に持続的に注入したり、抗NGFモノおよびポリクローナル抗体を中隔へ持続的に注入すると、ラットの学習・記憶能が傷害され、神経細胞が萎縮し、海馬のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性が低下すること。
6、アルツハイマー型痴呆では、低親和性NGF受容体mRNAと受容体蛋白tが患者の大脳基底核に残存していること。および受容体の親和性も最大結合量も対象群との間で差が無いことなど

によりNGFがアルツハイマー型痴呆に対して有効ではないかと考えられています。

出典:医薬ジャーナル 1997.11


エマージング感染症

emerging infectious disease

新興感染症<新興感染症:エマージング>

 エマージング感染症:過去20年間に新たに発見され、しかも公衆衛生上問題となる感染症


・AIDS(HIV感染)〜瞬く間に世界中に拡大

・エボラ出血熱〜致死的疾患

・狂牛病(牛海綿状脳症)〜プリオンとヒトへの
   伝播による変異型クロイツフェルト・ヤコブ
   病との結びつき。

・Nipah virus〜マレーシアでコウモリからブタを
   経由してヒトに感染した急性脳炎

・SARS:重症急性呼吸器症候群

<再興感染症:リ・エマージング>
リエマージング感染症:一旦脅威でなくなった感染症が再び公衆衛生上の問題となってきた感染症

 クリプトスポリジュウム、エボラ出血熱、腎症候群性出血熱、成人T細胞白血病、毒素性ショック症候群:TSST,O157,ライム病、エイズ、ヘリコバクタピロリ、エールリッヒア症、HCV,ベネズエラ出血熱、コレラ、猫ひっかき病、ブラジル出血熱、エボラ出血熱、S・エンテリティディス、O157、コレラ菌0−137など

 WHOの統計(1995年)によると、世界での死亡原因の33%を感染症が占めています。
 人の交流がボーダレスになったことによる感染症の広がりと地球の温暖化が伝染病の大流行に繋がります。

 また新種の伝染病の発生の原因の一つとして、ジャングルなどで野生動物と共存していた病原体が、人による自然破壊のために人間社会に入り込んで来ていることも考えられます。

   出典:治療 1998.1  等


ピアレビュー
Peer review

同僚評価

 専門家同士がお互いの研究・意見・主張などをお互いに評価し合うこと。

 本来は同僚または同職種の人による評価の意味でしたが、医療の質に対する第三者評価をすることに使われるようになっています。

 院内感染対策も、これからは、第三者評価が成され、その結果を公開し、これを基に患者が施設を選択する時代になります。

 施設の感染対策への取り組み、有効な組織化と活動状況、実践的感染対策のコンプライアンス、実効的サーベイランスとその結果、評価に基づく改善等が評価されることになります。

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医薬分業

 元来、日本(広く東洋)では、医者や学校の先生は優れた人物で、決して間違わないものだという信仰にも似た思いがありました。しかし最近急速にその思いが崩れてきています。

 無論欧米でも、医師や先生は信頼できる人物と思われていますが、一方で「人は誰でも間違える:To erris human」という思想もありました。

 例えば今、盛んに推奨されている医薬分業(「病院に行ってもお薬は別の薬局でもらいましょう」というもの)ですが、これなども欧米では、医師にすべてを任せてしまうと危ないのではないかという思いが強かったためです。特に王侯貴族は、医師が買収されて毒薬を処方されることを恐れていました。
そのためにも、治療する者と薬を調合するものとは分けておく必要があったのです。

 医薬分業の利点は第3者(利益が絡まない人物)によるチェックができることです。また、全く悪意が無くても先ほども述べましたように、人は誰でも間違えるので、その間違いをチェックする機構が必要なのです。

 中国や韓国で医薬分業が失敗したのですが、医師や学校の先生は立派で間違うことがないというのは儒教の流れが浸透しているためでしょう。

 日本でも、兵士は武士、侍、もののふと尊敬され勇敢で何事にも恐れることない人物であると思われていましたが、西洋では兵隊を臆病なものとの前提で軍事教練を行っていました。ここでも人間を完璧なものとは思わない合理的(科学的)な西洋の考え方が現れています。この発想から行きますと、院外処方は、医師の処方には間違いがあるもの、そして身内(同じ病院内の)薬剤師では、その間違いに気づかないか、気づいても馴れあいで許してしまうとの前提の上に立っているのです。

 従来の病院薬剤部でのチェックに何らかの問題があったとは思えませんが、それを言ってしまうと院外処方は、患者さんによっては2度手間でしかも負担金が高くなるだけで、メリットの無いものになってしまいます。(現在日本ではかかりつけ薬局の意味がほとんど理解されていません。)

 最近、米国の方が私の勤務する病院に来られ、私の働いている薬剤部も見学されたのですが、その外国の方は、「この病院では、診察が済むとすぐにお薬がもらえるのですね。便利で素晴らしいですね」と言われた。この言葉に院外処方発行に向けて奔走していた私たちは少なからずショックを受けたのでした。

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アウトソーシング
OS

 外部委託のこと。例えば、調剤薬局も病院側のOSといえます。


2°HPT

 二次性副甲状腺機能亢進症のこと。


バリデーション

 特定条件下で実験系などが成立していることを、いくつかの基準のもとに証拠付ける操作

 新製品の製造開始や、品質に大きな影響を及ぼす製造手順の変更するとき、構造設備と手順、工程その他の製造管理と品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証すること。さらにこれを文書化することによって、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造する条件を明らかにすることが求められています。(GMPの一部)

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