【無駄口薬理学】【HLA】 【レセプター】【毒舌薬理学】


                   おくすり一口メモ

*番号をクリックすると内容がご覧になれます。

<<薬学辞典はこちら>>

リエントリー

薬を飲むときの水の量

サルモネラ菌の消毒方法/食中毒の予防

活性炭による薬物中毒の治療(誤飲)

酸、アルカリによる中毒の処置(誤飲)

ハング オーバー(睡眠薬の副作用)

薬物ショックの対策(救急処置)

ダウンレギュレーション

しゃっくり(吃逆)の薬物療法

10

蜂に刺されたときの薬物療法

11

尿への着色(薬剤による)

12

点眼薬とコンタクトレンズ

13

灯油による中毒(誤飲)

14

開放隅角緑内障

15

流水に勝る消毒薬はない!?〜意外に有効で簡便

16

点眼剤を使用した後、口の中が苦い場合があるのだが!?
 

リエントリー


1991年2月1日号 no.80

正常の心臓では、洞房結節に発生した心室内刺激伝導系を介して、左右心室の隅々まで伝えられた後に
不応期に入ります。

このため心臓の興奮伝播は、1心周期ごとに完結します。しかしある特殊な条件下では興奮波が1周期の間に消失せずに、再び元の部分に戻ってきて心臓を再興奮させることがあります。この現象を興奮の再侵入(リエントリー)と呼びます。

心房、心室での期外収縮や頻脈性不整脈の多くが、リエントリーによるものであることが確かめられています。


薬を飲むときの水の量


1990年12月1日号 No.77


服薬に用いる水の役割としては、(1)薬剤を流し込む。(2)薬剤を崩壊させ薬物を溶出
させる。という2つの要素があります。

(1)薬剤を流し込む:抗不整脈剤(メキシチール、アスペノン等)では局所麻酔作用を有し
服薬の際、水の量が少ないと胸部不快感や嘔吐、胸痛を訴えることがあります。
又、テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン等)を夜就寝前に服用し、食道潰瘍を生じ
ることもしばしば報告されています。

(2)薬剤を崩壊さす:アスピリンでの実験では、空腹時、水の量が少なければ吸収の遅延
と吸収量の減少が見られます。ただし、食後の服用ではあまり影響はみられません。

上記の理由から患者さんに説明する場合、「場合によっては薬の吸収に影響を及ぼすこと
もありますので、その意味からも、コップ1杯くらいの水で服用するのが良いです。」
と説明するのが妥当と思えます。


サルモネラ菌の消毒方法/食中毒の予防

1990年11月15日号(Q&A)

サルモネラ菌には次の2通りの型があり、それぞれ処置の仕方が異なります。

1)食中毒型:Salmonella属に属するタイプ。(急性胃炎型)

芽胞を形成しないとされているため、消毒剤に対する抵抗性は無い。通常の消毒剤(塩化ベンザルコニウム等)で消毒が可能。

2)チフス性疾患型:S.typhi,SparathphiA&Bにより起こる。

腸チフスは法定伝染病であり、伝染病予防法に規定された消毒法をとる。

3%クレゾール石鹸、3%フェノール、ホルマリン、次亜塩素酸ナトリウム、その他、塩化ベンザルコニウム等も代用薬品として認められている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

食中毒を予防するには

昭和62年8月1日号

食中毒の原因菌のほとんどはサルモネラ菌です。

腹痛と下痢の対症療法しか有効な治療法はありません。

サルモネラ菌のほとんどが耐性を持っているため、抗生物質は無効です。

<注意事項>

1.食品は2時間以上室温に放置しない。

2.冷凍食品は必ず電子レンジか冷蔵庫で解凍する。

3.温かい料理は必ず60℃以上で保温する。

4.消毒薬は塩素系(6%次亜塩素酸Na等)が最適


活性炭による薬物中毒の治療


誤飲中毒の処置法の一つとして活性炭の経口与薬は最も安全かつ簡便な方法で、有効性も催吐や胃洗浄と同程度またはそれ以上ということが判明ています。

活性炭は数多くの物質を吸着し、特に薬物ではほとんどのものが吸着されます。
ただし、エタノール、メタノール、鉄、リチウム、電解質などには効果がありません。

また、酸、アルカリなどの腐食性物質は、活性炭に吸着されないばかりか、活性炭で口腔や食道の潰瘍面が見えにくくなったり、活性炭により誘発される嘔吐で再び、粘膜が障害を受ける可能性もあります。その他、シアン化合物と活性炭の結合は弱いので、シアン中毒での活性炭の使用は胃洗浄に限定されます。

活性炭の用量は、原則として誤飲物質量の10倍ですが、できるだけ多い方が良く、成人で40〜80g、小児では12〜24gまたは1g/kg体重を用います。

使用の際は、活性炭を水に良く混合することが重要で、5倍以上の水に混ぜます。例えば40gの活性炭なら200ml以上の水によくかき混ぜて用います。こうしないと活性炭が腸管内で固まってしまうのです。


酸、アルカリによる中毒の処置

  強酸、強アルカリが常設されているのは研究室や実験室ばかりとは限らず家庭内にも存在します。例えばトイレ用洗浄剤(塩酸)、タイル洗浄液(水酸化ナトリウム)、カビ取り剤・漂泊剤(水酸化ナトリウム、次亜塩素酸)などで、洗剤、洗浄剤を誤って飲んでしまった場合には、酸、アルカリによる障害を想定しなくてはなりません。

経口摂取時の症状は、酸、アルカリともほぼ同様で、嚥下時痛、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの一般症状に加え、口腔、食道、胃、十二指腸の粘膜の広範な腫張、浮腫、びらん、潰瘍形成、出血、更に消化管穿孔による縦隔炎、腹膜炎なども起こり得ます。

<処置>
酸、アルカリいずれも催吐は障害を拡大するので禁忌

酸、アルカリいずれもpHの正常化には牛乳や卵が優れている。

胃洗浄も原則として行わないが、大量で摂取直後の場合には、嘔吐、穿孔を起こさないように慎重に経鼻チューブを挿入し、内容物を排除したうえで牛乳で洗浄する。

活性炭、下剤は使用しないこと。


6  

ハング オーバー


 持ち越し効果、または、残遺効果と訳されています 。
睡眠薬の使用により、その次の日も作業能率が低下したり、眠気、ふらつき、倦怠感が起こった場合を言う。
(昼間の眠気)排泄の遅い睡眠薬で数週間治療したときには、認知あるいは精神運動機能障害がみられる場合もある。短期間使用する場合でも、視覚機能を必要とする職業(自動車の運転手など)では作業能力の低下がみられることもあります。

<睡眠薬の副作用>

 現在広く使われているベンゾジアゼピン系睡眠薬は比較的安全性が高い薬ですが、注意しなければならない副作用があります。

 持ち越し効果(ハングオーバー)による翌朝以降の眠気(昼間の眠気)、突然の服薬中止による反跳性不眠・離脱症状依存性前向性健忘、筋弛緩作用や呼吸抑制などです。これらの副作用は、高用量の場合や、高齢者に出現しやすくなるため注意が必要です。

 また、睡眠構築への影響として、Stage2の増加、徐波睡眠、REM睡眠の減少など、睡眠内容に対してゆがみを与えます。しかし、アモバン錠や徐波睡眠を増加させ、ドラール錠はREM睡眠の減少が軽度であることが報告されています。

<用語解説>

レム睡眠
REM:rapid eye movement

 睡眠はREM睡眠とNREM睡眠の2相に分けられます。REM睡眠は急速眼球運動が出現する睡眠で、約90分周期で現れます。

睡眠構築

 一夜の睡眠でNREM−REMの各睡眠段階の出現量や出現時期、それらの持続性およびそれらの相互関係からなる総合的な睡眠特徴

反跳性不眠

 睡眠薬の服用によってほぼ満足すべき睡眠が得られるようになった段階で突然服薬を中止することで、以前より深刻な睡眠障害を生じること。短時間型の薬ほど出現しやすい。

Stage2

NREM睡眠を4段階に分類したものの1つで、睡眠段階2のこと。睡眠深度は中等度

徐波睡眠:睡眠段階3〜4で、深く寝入った状態


   出典:薬局 2002.5等

 関連項目

 睡眠導入剤一覧  睡眠薬適正使用 ベンゾジアゼピン系抗不安剤の離脱症状 抗不安剤の依存性


7 

薬物ショックの対策(救急処置)

1989年11月1日号 No.54

次のように覚えておくと便利です。

A〜Gを同時に確実に実施してください。

A:Airway(起動の確保)
B:Breathing(気道の確保)
C:Circulation(血管確保;2ヶ所以上、上肢あるいは頸部)
D:Diagnosis(診断;患者の観察)
E:Epinephrin(エピネフリン→アドレナリン;皮下、筋注)
F:Fibrillation(心室細動の除去)
G:Glucose(ブドウ糖補液;生食、その他の電解質等)

以上を10分以内に行うこと。


ダウンレギュレーション

1998年6月15日号 No.45

ホルモン類は、反復的に分泌または与薬されると、
受容体を連続的に刺激することにより
いわゆるダウンレギュレーションと呼ばれる現象が起こり受容体数が減少します。

最近発売されたスプレキュアという子宮内膜症治療剤もこの現象を利用することにより、
ゴナドロトピン及び性ホルモンの産生分泌を抑制し、子宮内膜症病巣の縮小、消失を計っ
たものです。

また女性の性周期出の出血も、女性ホルモンを一度ウオッシュアウトし、受容体に体する
反応性を高めるという意味があります。


しゃっくり(吃逆)の薬物療法

1992年8月15日号 No.113

Q:持続性のしつこいしゃっくりの治療方は

しゃっくりは横隔膜の不随意な間代性痙攣であり、ミオクローヌスに分類される多シナプ
ス反射です。しゃっくりは通常一過性で治療を必要としませんが、脳腫瘍、脳血管障害、
髄膜炎等の中枢神経疾患、尿毒症やアルコール中毒等の代謝性疾患、全身麻酔、開腹手術
胃癌など様々な原因により発生し、しばしば持続性かつ難治性となります。

薬物療法として確定的な薬剤は無く、従来より向精神薬(コントミン、セルシン、セレネ
ース等)や副交換神経遮断剤(硫酸アトロピン、ブスコパン)、抗痙攣剤(テグレトール、
アレビアチン)、プリンペランなどが使用されています。

近年、しゃっくりがミオクローヌスであるという観点から、ミオクローヌスに有効とされ
るランドセン(クロナゼパム)が使用され、著効したという報告があります。

難治症例にランドセンを1日1.5〜3.0mg経口で著効を示しており、第一選択剤にしても
良いかも知れないとする文献があります。ただし、逆にランドセンの副作用に"吃逆"が
あるのも事実で、しゃっくりに使用してかえって悪化することもまれにはあります。

 その他、"柿のヘタ"を煎じたもの(柿蔕湯)が有効とされています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 しゃっくりは健常人でも日常良く遭遇する症状であるため、しばしば軽視されてしまいますが、その裏に基質的疾患が隠れていたり、頑固で治療に難渋したりすることがあります。

 しゃっくり(吃逆)とは、肋間筋、横隔膜、前斜角筋などの呼吸筋の不随意運動で吃逆反射弓の救心路は食道、胃、横隔膜などからの横隔神経、迷走神経、遠心路は横隔神経、迷走神経から呼吸筋、内喉頭筋への刺激伝達によって構成されています。

 難治性の吃逆の場合、反射弓にかかわる病変が原因のことがあり、その究明を急がなくてはなりません。

 吃逆の治療に決まり切った方法というものはなく、その都度試行錯誤することも多いのですが、クロナゼパム(1.5〜3mg/日)、クロルプロマジン(50〜60mg/日経口、25〜50mg/回静注)が一般的です。その他 柿蔕湯やダイアモックスも意外に効果があります。

*柿蔕湯 〜柿の蔕(へた)20個を200mLの水に入れ、弱火で30分くらい煎じ100mLとしたもの。

<しゃっくりの非薬物的治療>

・咽頭部への刺激
 〜指などによる口蓋垂への刺激、うがい、アンモニアやエーテルによる刺激

・呼吸リズムの中断
〜息をこらえる、くしゃみ、驚かす!!

・横隔膜への刺激
〜両膝を抱え込む、両季肋部の圧迫

・迷走神経への刺激
〜眼球圧迫、頸動脈洞圧迫、外耳道への刺激

・胃拡張に対して
〜胃管による内容物の吸引、嘔吐

           出典:医薬ジャーナル 2002.3等

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

しゃっくり(吃逆)のメカニズム

しゃっくりは2日以上続くと死ぬという迷信がありますが、米国でしゃっくりが68年間続いたという記録が紹介されています。


吃逆は、横隔膜が痙攣する現象と理解されてきましたが、横隔膜収縮による吸気運動と声門(声帯)閉鎖筋群の収縮が一定のパターンを持って同期的に起こる協調運動で、横隔膜の痙攣だけでは吃逆にならないことが明らかにされています。

吃逆の発現メカニズムはほとんど明らかにされず、横隔膜を支配する横隔神経、迷走神経、交感神経などへの刺激で発生すると推測されてきました。ところが最近、ネコを用いた実験で、鼻咽頭後壁の機械的刺激により吃逆様運動が発生することが見出され、反射の刺激受容体が鼻咽頭後壁に存在することが明らかにされました。また、延髄疑核近傍の網様帯を電気刺激すると鼻咽頭後壁の機械的刺激によるのと同じ吃逆運動が誘発されたことから、吃逆反射の中枢が延髄網様帯内に存在することが証明されました。

さらに、舌咽神経咽頭枝の電気刺激で吃逆が誘発され、吃逆反射の求心路が解明されました。そして、吃逆を発生するには単発な電気刺激ではなく、連続的な刺激が必要であったことから、吃逆が発生するにはある一定の時間的な積算を持った刺激が必要で、それによって中枢の刺激発生域値を超え、吃逆運動が誘発されると考えられています。

これらの報告から、吃逆の発現メカニズムとして、まず鼻咽頭後壁の舌咽神経咽頭枝に何らかの刺激が加わり、舌咽神経を介して延髄孤束核に伝わり、それが延髄疑核近傍網様帯内のCentral Pattern Generatorに伝達されます。そこで吃逆のパターンが形成され、その指令は横隔神経と迷走神経を経由してそれぞれ横隔膜と声門に至り、そこで吸気運動(横隔膜の収縮運動)と声門閉鎖運動(声門閉鎖筋の運動)が協調して起こる結果、吃逆が発生すると考えられています。

慢性吃逆は男性が圧倒的に多く、男女比は5:1以上と報告されています。吃逆は病態生理学的に、良性で自然に経過する吃逆発作と、持続性で難治性吃逆に分けられて考えられています。

良性吃逆発作は、呑気症、食事やアルコールの過剰摂取、炭酸飲料、内視鏡検査中の空気注入などにより胃拡張を来たすこと、冷たいシャワーを浴びたときや、温かなあるいは冷たい飲み物を飲んだときなどの胃腸やその周囲の温度の急激な変化、急に生じた興奮や感情的ストレス、喫煙などにより発現すると考えられています。

持続性・吃逆難治性吃逆には多数の原因疾患があげられており、大きく心因性、器質性、特発性の3つに分類されています。重症の場合は、栄養不良や体重減少、疲労、脱水、不整脈、創傷部の裂開、不眠、重度の逆流性食道炎を合併したり、場合によっては死に至ることもあります。

  治療薬 上記の他に バルプロ酸Na15mg/kg/日
 

       出典:薬事 2006.8


10 1991.6.1 薬剤Q&A

ハチ(蜂)に刺されたときは?

A: 応急処〜針が残る場合には除去し、抗ヒスタミンの軟膏(レスタミン軟膏等)を塗布する。

  局所症状では、疼痛に抗セロトニン剤(ペリアクチンシロップ等)、抗キニン剤(ホモクロミン等)、キシロカインスプレーを使用し、腫脹にはアイスパック(1回1時間以内)、抗ヒスタミン剤、抗プラスミン剤(トランサミン)

  腫脹が強い場合にはステロイドに経口与薬を行う。

 蕁麻疹、悪心、嘔吐、動悸、息苦しさが出現した場合は輸液路を確保し必要に応じてデキタメタゾン等を与薬し経過を見る。

  中毒症状の強い場合やアナフィラキシーショック、咽頭浮腫や気道閉塞の場合は、気道の確保と酸素吸入、ボスミンの注射等を迅速に行う。

  眼球刺症には、ステロイド眼注が有効で、処置が早いほど消炎効果は、強い。虹彩炎が強い場合はアトロピンを点眼する。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

エピペン


 エピペンとはエピネフリン自己注射キットのことで2003年から市販されています。

 エピネフリンは、アナフィラキシー治療の第一選択薬として知られています。

 現在、使用には厳しい制限が設けられており、使用できる疾患は蜂に刺された場合に限られています。登録した医師でないと使用できないこと。患者も登録しなければならないこと、使用者は使用にあたって説明用のCDと練習キットにより使用法を熟知することなどが必要です。 (2005年4月より、蜂以外のアナフィラキシーにも適用が認められました。)


蜂毒アレルギー

 蜂の毒成分は蜂の種類で少し異なりますが、アミン、低分子ペプチド、酵素です。
アミンは、ヒスタミン、セロトニン、ポリアミンなどを含み、痛み、かゆみ、腫れなどの原因になります。低分子ペプチドはメチリン、蜂毒キニン、マストパランなどを含み、神経毒、溶血などに作用します。酵素はヒアルロニダーゼ、ホスホリパーゼA2などを含み、酵素作用のほかアレルゲンとして作用します。

蜂刺症

 蜂に刺されたときは、刺された部分を良く観察し、針が残っているときは人差し指ではじくようにして針を除去します。

 発赤、腫脹、かゆみなどに対しては抗ヒスタミン剤やステロイドの軟膏を塗ります。

 アナフィラキシーの前駆症状として口内の異和感、口唇のしびれ、四肢のしびれ、心悸亢進、耳鳴り、腹痛、下痢、悪心、尿意、便意などが認められたときには、厳重な経過観察を行い静脈路の確保の上、輸液や酸素、エピネフリンといった初期治療が必要になります。

 エピネフリンの用量は0.2〜0.3mgを筋注し、症状が改善するまで、5〜10分ごとに数回繰り返します。

       出典:治療 2005.3 増刊号


11 

尿への着色(薬剤による)

 1989年12月日号(薬剤Q&A)

 アドナ                橙黄
 アルドメット錠          放置すると暗色化
 インダシン(インテバン)    緑
 サラゾピリン錠          橙〜赤
 シンメトレル錠          茶〜黒
 テグレトール錠         赤〜赤褐色
 鉄剤(フェロミア錠)      黒
 トリプタノール錠         青緑
 ピロミジン錠           淡黄(アルカリ尿)
 フェニトイン            桃〜赤〜褐色
(アレビアチン、ヒダントール錠)
 フェナセチン           桃〜赤〜褐色
 プルゼニド錠          黄褐色(酸性尿)、橙〜赤(アルカリ尿)
 リファンピシン          橙
 ワーファリン錠         赤橙

 PAS 赤〜橙


12

点眼薬とコンタクトレンズ

1989年7月1日号

Q:目薬をさすときにコンタクトレンズははずさなくてもよいか?

A:一般にソフトコンタクトレンズは多孔性であるため、薬剤を吸収して一種の貯蔵庫となり、角膜に薬剤が長時間接触する可能性があります。

 点眼時および点眼後少なくとも1時間半はコンタクトレンズをはずす必要があります。(ハードコンタクトレンズではそのような可能性がないので装着したままで点眼しても良いと考えられます。)

 また、就寝前に点眼してはいけないとされていますが、その理由として、涙は睡眠中には分泌されず、そのため涙液の交換がほとんど行われず、点眼された薬物がそのまま滞留するためです。

 2000年 追記

 コンタクトレンズ装用時に点眼すると点眼液が涙液に滞留する時間が長くなり、角結膜の上皮細胞に障害を与える可能性やコンタクトレンズに吸着・蓄積し徐々に放出される可能性があるため、コンタクトレンズを装用したままでの点眼は避けた方がよい。

 上皮細胞に障害を与える代表的なものとして、チモプトール点眼、レスキュラー点眼、ジクロード点眼などの薬剤や塩化ベンザルコニウムなどの保存剤が知られています。

 コンタクトレンズには、大きく分けてハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズがあります。 ハードコンタクトレンズは疎水性で薬物の影響を受けにくいため薬物等の吸着は少ないのですが、原則としてどの点眼剤でも、装用時の使用についてのメーカーからの回答は、一部の点眼剤では可能でしたが、多くの点眼剤については、不可でした。

 一方、ソフトコンタクトレンズは、親水性であるため薬物や保存剤、色素など多くの物質を吸着保持するので、装用時の点眼剤の使用は避けなければなりません。また、コンタクトレンズ装用時の目の乾燥症状や目の疲れ、異物感などを改善する目的で人工涙液型点眼剤が使用されることがありますが、この人工涙液型点眼剤にも保存剤が使用されていることがあるため、特にソフトコンタクトレンズではこれらの点眼剤との併用に注意を払う必要があります。

 以上により、コンタクトレンズ装用時の点眼が不可能な場合には、点眼後にコンタクトレンズの接触を避けるために、点眼剤の消失時間を考慮して点眼から5〜10分以上の間隔をあけてコンタクトレンズを使用するように患者に説明します。


13 

 灯油のよる中毒

 1990年1月15日号

Q:誤って飲んでしまった場合の処置は?

A:この場合大切なのは「吐かせてはいけない」ということです。

 たいていの場合、出来るだけ速やかに毒物を体外に出すために、吐かせる処置をとりますが、灯油を飲んだときは、気管内に吸引される恐れがあり、かえって重症になることがあります。

 大量に飲んでいれば気管内挿管して胃洗浄を行った後、下痢をしていなければ塩類下剤を服用させます。

活性炭は有毒な添加物を含有しない限り用いません。必要に応じて抗生物質やステロイドを使用します。

重症であれば呼吸・循環器系の管理を行います。エピネフリンやイソプロテレノールの使用は避けます。

 


14

開放隅角緑内障

1991年4月1日号       関連項目 緑内障の分類

*緑内障:視神経乳頭、視野の特徴的変化の少なくとも1つを持ち、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害の改善あるいは進行を阻止し得る眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患。

  原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障は、眼圧レベルが違うだけで、1つの疾患としてまとめることが出来ます。


 開放隅角緑内障は、閉塞隅角緑内障と異なり正常眼の場合と同様に前房隅角は大きく解放しているのが特徴で、眼圧上昇が徐々に起こるため、自覚症状がほとんどなく、視野、視力の障害が顕著になって気がつく例が多い。

 β遮断剤を房水産生を抑制するために用いる。ピロカルピン(PL点)は房水の流入を改善するために、そしてピバレフリンは両者の効果(産生抑制と流入改善)を期待して症例に応じて用いる。

 慢性単純緑内障chronic simple glaucomaとも呼ばれた.主にシュレンム管内壁内皮細胞の変性のために房水流出抵抗が次第に増大し,眼圧が亢進し,主に視神経乳頭の篩板部において視神経線維の変性萎縮が起こり,特有の乳頭陥凹と視野欠損を惹起してくる.

眼圧上昇の原因の多くは、房水の流出障害です。

*開放隅角緑内障〜隅角が閉塞していないため房水は自由に線維柱帯に到達しますが、何らかの原因で線維柱帯が詰まることにより、房水の流出障害を生じます。

*閉塞隅角緑内障〜何らかの原因で虹彩によって隅角が閉塞されてしまっているため、線維柱帯への流れが阻害され房水の流出障害を生じます。
 (関連項目 緑内障の分類もご覧ください。)


15 

 流水に勝る消毒薬はない!?〜意外に有効で簡便

1990年11月1日号

 「消毒」 とは、人体に有害な細菌を感染性がなくなるまで希釈するか、静菌的な状態にすることを言います。

 消毒には、物理的方法(熱処理、あるいは濾過等)と、科学的方法(消毒薬)とがあります。それぞれの方法をその必要性に応じて選択することが重要です。しかし、消毒しようとする素材によっては消毒できない場合もあります。

 例えば、芽胞菌は高熱や乾燥、そして消毒剤に対して非常に抵抗性が強く、手洗いなどでは適当な消毒薬はありません。このような場合、手洗いには石鹸と流水によるしかありません。

 感染が起こるのは、菌の数が一定量に増えた時であり、菌数を減らすことが感染防止につながります。

 流水で洗うことは最も身近な感染防止対策といえます。

    注:この当時はまだヒビスクラブなどは一般的ではありませんでした。

〜〜〜〜〜追加記事2009.2〜〜〜〜〜〜〜〜

<衛生的手洗いとは>

 速乾性消毒薬(15秒以内に乾燥しない量)を両手、両手首に摺りこみ、乾燥するまでよく擦り込む手洗い法、

 または薬用石けん又は消毒薬などで30秒以上洗った後、流水で洗い流し、ペーパータオル等で拭く手洗い法
 




1993年2月1日号 No.123

Q:点眼剤を使用した後、口の中が苦い場合があるが、苦みの出る点眼剤にはどんなものがあるのか?

A:点眼剤の味については資料がありませんが、性状そのものの味については下記の通りです。おそらく点眼した薬剤が目に留まって鼻腔から口中へ流れ出してしまったものと思われます。

苦みの出るもの:ベントス点P・M、タリビット点、ノフロ点、チモプトール点など(この他にもわずかに苦いものがあります。)

その他、添加剤として塩化ベンザルコニウムやポリソルベート80などを含有する点眼剤(市販品に多い)についても苦みがあると思われます。

点眼が口中へ流れているということは、薬が患部にうまく働いていないことであり、副作用の危険性も増します。

点眼の際には用量が1〜2滴であっても、まず1滴だけをさします。点眼後しばらく目を閉じる、あるいは更に眉間を押えるなどの注意が必要です。

点眼後まばたきを繰り返す人がいますが、まばたきをすることによって涙が出て薬液を早く涙道から鼻腔に押し出してしまうので、望ましくありません。

ミケラン点やチモプトール点などのβ遮断薬では全身性の副作用も報告されていますので、特に口中に流れないようにする注意が必要です。


 

By 遠嶽 秀丸

< 無駄口薬理学に戻る > < やさしい薬理学自律神経編 >