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<医学用語辞典>

BE:Base Excess

 BEとは血液1Lを37℃、PCO240Torr,完全酸素下で滴定によってpH7.40に戻すのに必要な酸の量をいうが、正常値は±0(−2〜+2)mmoL/で、これより大であれば代謝性アルカローシス、小であれば代謝性アシドーシスを意味します。

 BEが以上に低い、あるいは乳酸値が異常に高い場合はIVHを中止します。


Breakthrough pain

{参考文献} 癌疼痛の緩和対策のアドバイス メディカルレビュー社

Breakthrough painとは、突出痛と訳すと分かりやすい。

 鎮痛薬により痛みがコントロールされている患者に突然一時的に現れる強い痛み

<狭い定義>

 鎮痛薬の規則正しい服用によってかなり良好な除痛を得ている患者さんに、突然、短い時間、間歇的に出現または増強する強い痛み。

<広い定義>

 1日の時間の50%以上にわたって感じている平均的な痛み(baseline pain)を越えて一過性に生じる激しい急性の痛みを含めることがあり、体を動かすときに生じるincident painや鎮痛薬の過少量(モルヒネの量が少ない場合)により鎮痛薬の次回服用時刻より早目に再発する痛みを含めることもあるなど、定義が確立しきっていない点があります。

 突出痛の調査によると、その64%は狭義の突出痛、44%は体動痛であり、1日に起こる突出痛の回数は1回から3600回(中央値4回)で、約半数の突出痛は出現し始めてから3分以内に最も強い程度となり、1〜240分(中央値30分)持続するとされています。

 痛みの種類は体性痛が33%、内臓痛が20%、神経障害性の痛みが27%、混合性の痛みが20%であり、痛みの原因は癌によるものが76%、癌治療に関するものが20%、両者共に関係ないものが4%です。

 痛みの部位は1カ所が78%、2カ所が20%、3カ所が2%であり、96%の痛みが同じ部位に生じ、約3分の1の患者では次回鎮痛薬服用時刻が近づいた頃に起こっています。

 癌患者の痛みには性状と臨床経過に応じた包括的な対応が大切ですが、これを踏まえた上で突出痛に推奨されている対策はrescue dose(臨時追加服用)です。rescue doseとしては、速効性で半減期の短い鎮痛薬を用い、突出痛発現後速やかに服用させることが原則です、

 経口モルヒネを服用中の場合には、1日投与量の6分の1、または5〜10%量の速効性モルヒネ製剤(末、ないし錠)を経口的に用いますが、急激に出現した突出痛には坐剤、ときに皮下注射も用います。

 体動痛の場合には、痛みを起こす動作が予定された時刻に会わせて事前にrescue doseを用います。神経障害性の痛みや咳嗽や排便が誘因となる痛みには、鎮痛補助薬を併用します。

 突出痛に必要であったrescue doseの回数は翌日から定時処方のモルヒネの増量の目安になります。
吸収の早いフェンタニールbuccal candy(口の中に加えて吸収させる製剤)が米国で導入され、突出痛の対応策の1つとして活用され始めています。

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レスキュー

 癌性疼痛は持続する慢性的な痛みに加えて、突出痛(breakthrough pain)が発現することがあります。デュロテップパッチのような長時間作用型オピオイドは持続する慢性的な痛みに対してのベースライン鎮痛薬で、突出痛に対しては便宜使用するレスキューが必要となります。

 デュロテップパッチを追加したり、硫酸モルヒネ徐放性製剤をレスキューとして使用したりすることは過量の危険性があるので行ないません。

 レスキューとしては短時間で鎮痛効果が得られる塩酸モルヒネ水、塩酸モルヒネ錠等の速効性モルヒネ製剤を使用する。1回のレスキュー投与量は切り替え前に使用していたモルヒネが経口剤又は坐剤の場合は1日投与量の1/6量を注射剤の場合は1/12量を目安として使用します。

<用量調節>

 用量調節は疼痛程度や副作用を考慮します。
増量はレスキューされたモルヒネ製剤の1日量(経口モルヒネ換算45mg/日以上)、および疼痛の程度を考慮し、3日毎に2.5mg増量します。

 急激な減量や中止を行うと退薬症候が現れることがあるので慎重に行います。また剥離後も血中濃度は徐々に低下し、半減するのに17時間以上かかることから、デュロテップパッチを剥離後24時間まで観察を続ける必要があります。

  出典:大阪府薬雑誌 2002.NO.10

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タイトレーション

 タイトレーションとは、低用量から始めたオピオイドを、除痛するために必要な量まで段階的かつ速やかに増量していくこと。

(例)
 ある患者が必要とするモルヒネの量を決定することが困難な場合、

MSコンチン錠を1日30mg1日3回   14時、22時、6時

 14時の内服後2時間以上経っても痛みが変わらない場合、16時にMSコンチンをもう10mg追加、1時間後に持続痛は軽減し副作用も見られなかったので、22時からの内服を20mgに変更。

 18時に出現した突出痛(breakthrough pain)には1日量の1/6量である5mgのオプソを内服。20分経っても痛みが軽減しないのでオプソをもう5mg追加すると痛みは軽減。そこで突出痛が出現したときの頓用は、10mgとしてタイトレーション終了。

           出典:薬局 2004.2


ウエルニッケ脳症

{参考文献} JJSHP 1、1997、その他

 IVH療法施行中に発現するアシドーシスの臨床症状

 今まで報告された特徴的な副作用症状は眼球運動障害で眼球が上につり上がったようになり、下に向かない。

 アルコール依存症や術後,妊娠悪阻などで不完全な食事摂取などの原因によりビタミンB1が欠乏して起こります。病理学的には乳頭体,第三脳室,中脳水道,第四脳室周囲の灰白質の急性期にでの血管内皮細胞の膨化,出血とその後の血管の増生やグリオーシスを特徴とします。

 臨床的には,眼球運動障害,失調性歩行,意識障害が三主徴とされています.眼球運動障害は,本症に高率に認められる特徴的な症状で,両側外転神経麻痺,両側方注視麻痺,上方注視麻痺,両側内転障害などが認められます。眼振も起こり、次いで失調性歩行や意識障害が出現してきます。

 多発神経炎,低体温,コルサコフ症状群を合併することもあります。血中の総ビタミンB1値や赤血球中のトランスケトラーゼ活性値の低下,チアミンピロホスフェイト効果が診断の参考となります。

〔治療〕

 ビタミンB1を1日100mg以上使用する.ビタミンB1の早期治療により,臨床症状は2〜3週でかなりの改善を示します。

(Karl Wernickeはドイツの神経学者,1848‐1905).


心電図異常

QT延長

 QT間隔は心室筋の興奮が開始(Q波の始まり)されてから再分極が終了(T波の終わり)するまでの時間であらわされます。QT間隔は心室筋全興奮の経過時間(電気的心室収縮時間)を意味します。

 QT間隔の延長は、心室筋の収縮時間の遅延を意味し、心電図上QT間隔は除脈時に延長します。通常、QT間隔は心拍数により補正したQTcであらわされます。

 臨床的には、心室性不整脈と相関が高いとされています。

<QT延長の認められる主な疾患>

1.虚血性心疾患
2.心不全(低心拍出病態)
3.重症心筋障害
4.心室の圧負荷
5.心筋炎
6.著しい除脈
7.低K・Ca・Mg血症
8.甲状腺機能低下
9.中枢神経系疾患
10.急性膵炎
11.遺伝性QT延長症候群
12.キニジン、プロカインアミド、アジマリン、ジソピラミド等の抗不整脈剤

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 QT間隔とは、QRS complexの開始からT波の終末部までの時間をいい、電気生理学的に心室筋の活動電位の持続時間(APD:action potenial duration)を反映していると考えられます。したがって、APDを延長するような働き(すなわち心室筋の再分極を阻害する働きを)有する薬剤は、QT間隔の延長を引き起こすと考えられます。臨床的にはクラスTaおよびクラスVの抗不整脈薬(キニジン、ジソピラミドなど)がこれに該当し、いずれもQT間隔の延長を引き起こすことが知られています。

 心室筋の再分極にはKチャンネルが重要な働きをしており、Kチャンネルを阻害することによって心室筋の再分極が阻害され、APD延長します。したがって、電気生理学的にいえば、心室筋のKチャンネル電流の阻害剤はQT間隔延長作用を有することになります。心室筋のKチャンネル電流についてはI kr,Iks,Ikur,Ito,Ik1などといった様々なサブタイプが存在することが知られています。テルフェナジンなどはI krの阻害剤であることが知られています。

 なお、QT間隔は心拍数の変化により影響を受けることが知られているため、臨床的にはQT間隔を心拍数で補正したQTc間隔が用いられることが多くなっています。

 臨床的にはQT間隔がTdP:torsades de pointesの危険因子の指標として最も広く用いられています。

出典:月刊薬時 3月臨時増刊号

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QRS延長

 QRS間隔は心室筋の興奮が開始(Q波の始まり)されて興奮が終了するまでの時間であらわされます。QRS間隔は心室内の興奮伝導時間を意味します。

 QRS間隔の増大は、心室内の伝導時間の遅延を意味し、心電図上QRS間隔が0.12秒以上のものをいいます。臨床的には、心室性不整脈と関連が高いとされています。

<QRS延長が認められる主な疾患>

1.虚血性心疾患
2.高血圧性心疾患
3.リウマチ性心疾患
4.心筋炎
5.心筋症

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PQ延長

 PQ間隔は心房筋の興奮が開始(P波の始まり)されてから心室筋の興奮が開始(Q波の始まり)されるまでの時間であらわされます。

 PQ間隔の延長は、房室結節での伝導時間の遅延を意味し、心電図上PQ間隔が0.20秒以上のものをいいます。臨床的には房室ブロックと相関性が高いとされています。

<PQ延長が認められる主な疾患>

1.虚血性心疾患
2.高血圧性心疾患
3.リウマチ性心疾患
4.心筋梗塞
5.心筋炎
6.心筋症
7.高K血症
8.甲状腺機能亢進
9.アジソン病
10.ジギタリス、βブロッカー、キニジン、プロカインアミド等の抗不整脈剤

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薬剤による心電図変化(抗不整脈剤以外)

出典:OHPニュース 1999.4

P−R間隔延長〜 向精神薬

QT延長〜 向精神薬、抗うつ剤の過量、テルフェナジン、エリスロマイシンとテルフェナジンの併用、プロブコール

洞頻脈〜 向精神薬、抗うつ剤、シサプリド、チアプリド、α遮断、β遮断剤、甲状腺剤、ミコナゾール

上室性頻脈〜 抗うつ剤の急激な過量

心房細動〜 カテコラミン類、アメジニウム、シロスタゾール、IFNなど

心室性頻拍〜 ブロムペリドール、マプロチリン、ミコナゾール、テルフェナジンとイトラコナゾールの併用

期外収縮〜 カテコラミン類、アメリジニウム、シロスタゾール、ミコナゾール、バゾプレシン、IFNなど

心室性不整脈〜 テルフェナジン、プロブコール


<抗不整脈剤との併用>

ワーファリンとアミオダロン
シメチジンとキニジン、アミサリン、β遮断剤、メキシチール
ラニチジンとインデラル
ヘパリンとインデラル
ヒドララジンとβ遮断剤
利尿剤とキニジン、ベラパミル
マクロライド系とジソピラミド


マロリーワイス症候群

 強い嘔吐により食道、胃接合部付近の粘膜に裂創を生じ、出血をきたす疾患。消化管出血の原因として、まれでなく、5〜15%を占めるといわれています。

 最初の嘔吐時ではなく、何回か嘔吐を繰り返した後に出血するものが典型的な症状。また嘔吐だけでなく、強い咳嗽をくりかえした場合にも生じることが知られています。

 大酒家にみられることが多く、食道、胃粘膜の脆弱化も、裂創や出血をきたす誘因の一つと考えられています。

 ニフレックによる腸管洗浄時に生じた症例があることは海外で報告されていますが、頻度的にはきわめてまれと考えられています。


OAS

出典:薬局 2000.10

Oral allergy syndrome

口腔アレルギー症候群

ここ数年で注目されてきた概念。
アレルゲンが食物であるため食物アレルギーの一種であるが、症状の発現が特徴的なことからOASとしてまとめることが出来ます。

<症状>

 OASは、様々な果物、野菜、ナッツ類の摂取により即時型アレルギー反応による直接接触した口唇の腫脹・発赤、口腔粘膜の浮腫・発赤・痒み・違和感、咽頭粘膜のの浮腫・発赤・痒み・違和感などや流涎を生じるもので進行すると呼吸困難、全身性の反応を引き起こすことがあります。

 さらにこれらの症状を有する患者は、シラカバ花粉症、ブタクサ花粉症などの花粉症を合併することが多くこれらの抗原での交叉抗原性を示していることが多く見受けられます。

<アレルゲン>

 OASを起こしやすい抗原食物は、りんご、さくらんぼ、桃、ニンジン、セロリ、ポテト、クルミ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツ、ナシ、プラム、アンズ、ココナッツ、トマト、キウイフルーツ、バナナなどが報告されています。

 これらのアレルゲンには交叉抗原性を示す共通抗原が含まれていることが多く、1つの食物抗原で感作されると交叉抗原性を示す他の食物に関しても同様の症状を呈することが多く見られます。

 これらの交叉抗原は、シラカバなどの花粉抗原、ラテックス・アレルゲン(ゴム手袋等のゴム製品)とも交叉抗原性を呈する場合があります。

<診断>

 症状は、原因食物の接触によって口唇浮腫、口腔違和感などが速やかに発症するため、口に入れたとたんに症状が出ることが多いので原因抗原を特定するのは容易です。

 検査では、血清中の特異IgE抗体を測定することで推定できますが、しばしば陰性の場合もあります。
皮膚テストでも市販の抗原液ではしばしば陰性になることがありますので、新鮮に調整したものか果物そのものを用いてprick to prickで行うとよいでしょう。

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ラテックスアレルギー
ラテックス−果物症候群

  2004年3月15日号 No.379

 ラテックスアレルギーとは、天然ゴム製品が原因となって誘発される即時型アレルギー反応のことです。エイズや肝炎などに対する防御対策として、医療従事者が天然ゴム製手袋を頻繁に着用するようになった80年代後半から、このアレルギーが増加し始めました。

 症状としては接触局所に誘発される蕁麻疹が一般的ですが、全身性の蕁麻疹やアナフィラキシーショックに発展する場合もあります。

 また、天然ゴム製品だけでなく果物や野菜に対しても即時型アレルギー反応を示す症例があり、「ラテックス−果物症候群」と呼ばれています。

 一部のラテックスアレルギー患者は、バナナやアボガド、栗、キウイなどの果物を食べたときにも、強い即時型アレルギー反応を示すことがあります。また、口腔咽頭周辺に限られた症状である
口腔アレルギー症候群(OAS)があらわれる人もいます。

 ラテックスアレルギー患者が幅広い植物に交差耐性を示す理由は、ラテックスアレルゲンと類似した蛋白質が多くの植物に含まれているからです。

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 血液中には、アレルゲン蛋白に特異的なIgE抗体が存在します。しかし抗体は、抗原全体を認識するのではありません。抗体はエピトープ(抗原決定基)と呼ばれる部分構造を認識します。従って、異なる蛋白が同じエピトープを持っている場合、抗体は各蛋白質を区別することが出来ません。これが交差耐性の原理です。

 幅広い交叉反応の原因となるような蛋白質抗原は、パンアレルゲンと呼ばれています。それらの多くは、酵素活性やリガンド結合能を持っています。生命活動の維持に重要な蛋白質の構造、特に機能発現に必要なドメインは、進化の過程で保存されています。また、酵素活性やリガンド結合能に寄与する部分構造は、分子の表面に露出している可能性が高いと思われます。そのような部分構造がIgE抗体に対するエピトープを与えた場合に、幅広い交叉反応が引き起こされると考えられます。

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植物の生体防御蛋白質とラテックスアレルギー

 植物は各種のストレス要因に抵抗するため、生体防御に関与する一連の蛋白質を誘導したり蓄積したりします。特に植物が病原菌に感染した際に誘導される生体防御蛋白質は、PR蛋白質(Pathogenesisi Related Proteins)と呼ばれています。

 このような蛋白質は、多くの植物で共通に誘発され、また、進化の過程で保存されてきた部分構造を持ちます。つまり、植物の生体防御蛋白質は、パンアレルゲンとなり得ます。

 天然ゴムの原料となる樹液は、ゴムの木の幹に切り傷を付けることにより採取されます。これはゴムの木にとってストレス以外の何者でもありません。またゴムの木が樹液を多く作り出すように、ある種の植物ホルモンが木に繰り返し注入されています。この物質は、生体防御反応をも誘導します。さらに、ゴムの木の品種改良の過程で、生体防御蛋白を多量に誘導するような性癖が、図らずも選択されてしまったのです。

 このような状況から、農園で栽培されているゴムの木から得られた樹液には、生体防御蛋白質が多量に含まれると思われます。そしてそのような蛋白質が最終製品から溶出したとすると、それらは進化の過程で保存されてきた部分構造を持つことから、幅広い交叉反応の原因になると予測されます。


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食物アレルギー

 ラテックス-果物症候群に似た様相を呈するアレルギー性疾患として、花粉症に伴う口腔アレルギー症候群(OAS)があります。

 通常は問題とならないような多くの果物や野菜が、即時型アレルギーの発症原因となる点に特徴があります。花粉症に伴うOASの原因となる食物アレルゲンも、加熱により容易にその抗原性を失うなど、従来の食物アレルゲンとは異なった性質を持っています。これらの食物アレルゲンは、感作抗原に対する交叉反応性に基づき症状を誘発する抗原であると考えられています。

クラスI食物アレルギー
完全食物アレルゲン

 今までの食物アレルギーに関する概念では、経口摂取した蛋白質によって感作が成立し、その後、同じ蛋白質を摂取した際にアレルギー反応の誘発に至るとされていました。ここでは、感作の成立段階と症状の誘発段階に、同じ蛋白質抗原が関与していることがポイントとなります。熱や消化酵素に安定な抗原だけが食物アレルギーの原因になると説明されてきたわけは、そのような蛋白質だけが経口感作を成立させ得ると推測されるからです。

 最近になって、こうした従来型の概念に相食物アレルギーは、クラス1食物アレルギー、そのようなアレルギー反応を引き起こす食物抗原は完全食物アレルゲンと呼ばれるようになりました。


クラス2食物アレルギー
不完全食物アレルゲン

 ラテックス−果物症候群や、花粉症に伴うOSAでは、感作の成立段階と症状の誘発段階に別々の抗原が関与し、両抗原が交叉反応性を持っていることがポイントとなります。

 食物に含まれる抗原は症状の誘発段階だけに関係し、経口感作を成立させ得る蛋白質に必須とされる熱や消化酵素に対する抵抗性を通常持っていません。こうした感作・誘発抗原の交叉反応性に基づくタイプの食物アレルギーをクラス2食物アレルギー、そのようなアレルギー反応を誘発する食物抗原は不完全食物アレルゲンと呼ばれています。

 ラテックスアレルギーに限らず、植物の生体防御に寄与するような蛋白質が交叉反応性アレルゲンとなっている事実が、次々と明らかにされています。生体防御蛋白質は様々なストレス要因により誘導されることから、大気汚染などにより、農作物な可能アレルゲン蛋白が増大している可能性も考えられます。

  {参考文献}日本薬剤師会雑誌 2004.2


2004年3月15日号 No.379 <医学・薬学用語辞典> (A) ATC/DDDシステムはこちらです。


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2005年12月1日号 No.419

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

==食物と運動の2つの要因が重なることによって重度のアナフィラキシー症状が出現==


 食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、食物と運動の2つの要因が重なることによって重度のアナフィラキシー症状が出現します。

 原因抗原の接種だけでは症状は無く、あったとしても軽度です。食物摂取後の運動により顔面の浮腫、呼吸困難、血圧低下、意識消失などの症状が出現します。

 発症年齢は運動が過激になる学童期から成人にかけて多く、日本では小中高生の1万人に一人の割合で発症することが明かにされています。原因抗原としては、小麦、エビ、カニ、イカ、貝類などが知られています。

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 即時型アレルギーの原因抗原は、卵、乳、小麦、ソバが多いのに対して、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因抗原は、小麦、エビ、カニ、イカ、貝類が多く、運動は、バレーボール、サッカー、バスケットボール、野球、ランニング、サイクリングなど比較的運動量が多く負荷がかかるスポーツが関与した症例が多く報告されています。

 食物依存性運動誘発アナフィラキシーもケミカルメディエーターの遊離がアナフィラキシーの原因ですが、運動により何が脱顆粒(ケミカルメディエーター遊離)を惹起するのかは不明です。

 小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、運動により血中の小麦由来グリアシン濃度が上昇することが報告され、運動による原因抗原の吸収増加が発症要因の1つと考えられています。

 また、運動だけでなく入浴でアナフィラキシーを引き起こした事例も有ることから、運動や入浴による体温上昇や多湿環境もアナフィラキシー誘発原因であると考えられています。

 食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、同じ原因抗原と運動の組み合わせでも毎回発症するわけではなく、その発症には、環境要因、疲労、睡眠不足、体調不良、ストレスなどさまざまな因子が関与していると考えられています。

 <緊急時の対応>

 食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度分類(下記参照)グレード3以上ならエピネフリンが必要になります。

 本年3月より、日本でもエピネフリン自己注(エピペン注)を食物に起因するアナフィラキシーに対して使用することが許可されています。

1.アレルギー原因食物を誤って食べてしまった場合は、2〜3時間は運動しない。2.アレルギー体質の学生が体育の最中に異和感を訴えたら、運動を中止させ安静にさせる。3.エピペン自己注を携帯している児童・生徒であればショック時には直ちに注射すべきですが重度のショック時には、自己注射できない場合も考えられます。患者保護者はもちろん養護教諭、担任教諭は日頃からエピペン注の使用をサポート出来るようにしておく必要があります
4.エピペンを持っていない児童や生徒で、抗ヒスタミン剤や、抗アレルギー剤を服用している場合は、発作が起こったら直ちにこれらの薬を服用し、呼吸器の症状が出ていれば医療機関へ搬送すべきです。

      {参考文献} 薬局 2005.10

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医薬トピックス(19)食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度分類

(グレード) 皮膚     消化器       呼吸器      循環器    神経

1)   限局性そう痒  口腔内そう痒感
     紅潮、蕁麻疹  口腔内異和感
     血管性浮腫   軽度口唇腫脹     

2)   全身性そう痒  上記症状に加え   鼻閉、くしゃみ         活動性変化
          紅潮、蕁麻疹  悪心、嘔吐    
     血管性浮腫                  

3)   同 上     上記症状に加え   鼻汁、明かな鼻閉   頻脈   活動性変化 
             繰り返す嘔吐     咽頭喉頭の絞扼感*        不安      
                                         またはそう痒感*                 

4)   同 上     上記症状に加え   嗄声*、犬吠様咳嗽*  頻脈   軽度頭痛
             下痢             嚥下困難*、呼吸困難* 不整脈*  死の恐怖感                                                    喘鳴*、チアノーゼ*  軽度血圧
                                                                 低下

5)   同 上     上記症状に加え   呼吸停止*       重度徐脈* 意識消失             
             腸管機能不全                           血圧低下*                  
                                                                 心拍停止* 

                      *エピペンの使用が必要


<医学用語辞典>

ex vivo遺伝子治療法

ex vivo とin vivo

出典:医薬ジャーナル 1999.6

 ex vivo遺伝子治療とは、遺伝子導入を行うための標的細胞を担癌患者より抽出し、in vivoで治療遺伝子を導入した後に、再び同一患者に戻す方法です。

一方、in vivo遺伝子治療とは、体内へ直接DNAを注入し、遺伝子導入を行う方法です。

 ex vivo遺伝子治療では、標的細胞の採取に外科的手技を要しますが、肝癌患者の大多数(70〜90%)が基礎疾患として重篤な肝硬変を持っているため、ex vivo遺伝子治療は実用的な方法とは言い難く、肝癌に対する臨床応用可能な方法は、in vivo遺伝子治療法に限られるのが現状です。




J−RACT:服薬能力判定試験

服薬作業能力評価スケール:RMDS
服薬理解能力:RCS

 RMDSは手席の器用さ・巧緻を把握するためのOKサイン試験及び血圧計とマンシェットを利用した両手の握力測定からなるもので、この2つの結果から患者の服薬作業能力を判定するものです。

 RCSは実際に使用している薬袋を用いて行います。

{参考文献}JJSHP 1999.9


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