時間薬理学(目次)

 

薬効の日内リズム

生体リズムと薬物療法

時間薬理学(降圧剤)

時間薬理学(抗癌剤)

時間薬物治療(気管支喘息)

体内時計機構とメラトニン

メラトニン/メラトニンアゴニスト

サーカディアンリズム

NPAS2:食事と体内時計

生命予後因子としての日内リズム


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クロノセラピー
Chronotherapy


 生体の生理機能や整理活動は昼夜常に同じ状態を保っているわけではなく、ほぼ1日を周期として変動する概日リズム(サーカディアンリズム)が存在します。

 例えば、気管支喘息患者の気管支狭窄のピークは、ヒスタミンなどによるケミカルメディエーターが上昇する深夜から早朝にかけて(午後4時頃)に起こり、呼吸機能が低下し、起動上昇が亢進します。また血圧や心拍数は早朝に上昇します。

 このような生体機能のサーカディアンリズムを考慮して薬物濃度をコントロールし、効果を増強して行う時間薬物治療をクロノセラピーといいます。
 気管支喘息の場合は、最も呼吸機能が低下する午前4時頃に、心疾患の場合は目覚めの頃に薬物血中濃度が高くなるようにコントロールすれば、最も有効に薬効を発揮できるし、また、その他の時間帯での副作用を軽減できます。

  出典:ファルマシア 2003.3

 

  HS病院薬剤部発行     

                                    

薬剤ニ ュ ー ス

  1994年

11月15日号

NO.164

 

 

   生体リズムと薬物療法

  

 近年、疾病の成因ならびに治療の研究においても「時間」という要因を考慮することの有益なことが実証されつつあり、このような知識を薬物療法に応用してその有効性および安全性を高めようとする試みを時間薬物治療(chronopharmacotherapy) と呼んでいます。

 {参考文献}

JJSHP VOL.30,NO.111994、薬剤ニュ-ス NO.56

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 人の体の機能は1日中同じというわけでなく、主としてほぼ24時間を1周期として変化していることが最近になって分かってきました。これまでの医学は、 薬理学を含めて、人の体の機能は24時間いつも同じであるという前提に立ってできているため、事実にあてはまらない場合もあります。新たに生体リズムという観点から医学を見直さなければならなくなってきたといってもよいかもしれません。

 与薬間隔・時刻については従来より漫然としっている傾向にあり、至適な与薬時刻設定の必要性がクロ−ズアップされています。

 生体リズム、その中の主として日周リズムにと関連して薬物の効果や毒性は与薬時刻により変化することが考えられ、現に種々の薬物動態に日周リズムが存在することが報告されています。

{時間薬物治療の望まれる疾患例}

 <疾患例>   <適用薬物>      <特性>

                                         

喘息                ・夜間に呼吸機能の低下

                  ・夜間アドレナリン低下

           テオフィリン    〜朝服薬時吸収上昇              

アレルギ−疾患           ・夜間にヒスタミン皮内反応最

                  ・夜間アドレナリン低下  

             抗ヒスタミン剤〜朝服薬時吸収上昇:効果に差はない

          テルギンG〜夕刻服薬時効果最大                 

消化性潰瘍             ・夜間胃酸分泌上昇

                   (春秋胃酸分泌上昇)

           Hブロッカ-〜夕刻服薬時胃酸分泌抑制持

                    続時間延長                

高血圧              ・午後血圧上昇、アドレナリン上昇

               ラシックス〜夕刻与薬時利尿効果増大

           インデラル〜朝服薬時吸収上昇、β遮断効果増強                                         

インスリン〜午前インスリン感受性低下、半減期短縮定速与薬に比し間歇与薬有効

                                         

リウマチ等痛みを伴う疾患       ・夜間、早朝に痛み、こわばり増強

              アスピリン、インダシン〜朝服薬時吸収上昇、副作用出現頻度増大

                                         

精神疾患               ・季節変動等症状が周期的に変化

                デパケン〜朝夜の摂食量の差に依存

                    朝服用時吸収上昇

           トリプタノール錠〜朝服用時吸収上昇、朝服用時鎮静作用、

                    末梢性コリン作用増強

            ジアゼパム   〜朝服用時吸収上昇、鎮静作用増強

                    夕刻服薬時分布増強            

緑内障                ・午後から夜間に眼圧上昇

             サンピロ・チモプト-ル〜夜間眼圧上昇              

腫瘍 

   5-FU〜定速注入に比し波状注入により与薬量を増加でき効果が増強、副作用が軽減

         ランダ(シスプラチン)〜朝与薬時尿中排泄増強

                    夕刻与薬時腎毒性低下

       

 


                 

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薬効の日内リズム(時間薬理学)

1989年12月1日号 NO.56

 ここ数年の研究から、生物が営む生理活動の多くに日内リズムが存在することが明らかにされています。

 どの動物にも1日を基調とした睡眠・覚醒のリズムがあり、体温の上昇もほぼ同じ時刻に起こることは以前より知られています。

 ホルモンの分泌や神経系の機能にも顕著な日内リズムがみられます。例えば、副腎皮質から分泌されるコルチゾールの血中レベルは、毎日我々が目覚める前後の早朝に最大ピークに達し、睡眠前半期に最低になる周期的な変動を繰り返しています。その最大値と最低値の間には数倍から時には10倍以上にも達する大きな違いがあります。

 成長ホルモン、インスリン、ACTH、甲状腺ホルモンなどこれまでに検索されているほとんどのホルモン分泌で、各ホルモンに固有の日内リズムが報告されています。

 さらに、カテコールアミン類、アセチルコリン、セロトニン、ヒスタミンなどの化学的伝達、その他の神経機能に直接関与していると考えられる多くの物質の脳内濃度にも、顕著な日内リズムがあることが見出されています。

 この様に体の生理的基盤が1日を通して一定の状態にあるのではなく周期的に変動しているという事実を薬理学的に解釈するなら、同じ量の薬物を与えても、それによって得られる効果は、その薬物をどの時間帯に服用したかによって量的、質的に異なることが予想されます。

 こうした時間薬理学の臨床への応用も既に始まっています。具体的な試みとして、制癌剤の使用に関する波状療法、喘息の時間療法、服用時間の選択によるステロイド剤の副作用の減弱、関節リューマチ・歯科治療での痛みのコントロール、インスリンの注射時刻の選択など数多くあります。

[参考文献] 日本薬剤師会雑誌 1989.11

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体内時計機構とメラトニン

出典:ファルマシア 2000.3

 睡眠・覚醒、摂食、生殖、代謝、生理など生体のほとんど全ての基本的生命現象には約24時間を1周期とする概日リズム(サーカディアンリズム)があります。

 このリズムを支配する体内時計機構は視床下部の視交叉上核(supra chiasmatic nucleus:SCN)あるいは松果体(pineal gland)に存在し、これらが機能的に結び付いて概日リズムを形成していると考えられています。

 1997年CLOCK遺伝子、Per遺伝子、1999年には光受容体と考えられていたクリプトクローム(Cry)ファミリーのCry1、Cry2が発見一方、体内時計の分子機構の解明と並行して、SCNの時刻発信を直接的に伝達し外界の明暗情報を神経内分泌情報へと変換するメラトニンの臨床応用も盛んに検討されています。

 主に松果体でトリプトファンからセロトニンを経て生合成されるメラトニンは性腺抑制作用、鎮静・催眠作用、抗ストレス作用などを持つことが知られています。これらの作用の中で、メラトニンの本質である生体リズムへの作用ならびに催眠作用から時差症候群の予防・治療と交替勤務症候群の治療にメラトニンが既に臨床応用されその有効性が認められています。

 また、最近では、体内時計の変調により睡眠相が慢性的に遅れ、概日リズムの位相を正常化させる時間療法が唯一有効とされている睡眠相後退症候群(DSPS)にもメラトニンの有効性が報告されています。さらにメラトニンの臨床応用の可能性としてICU(集中治療室)の入院患者に認められる正常な睡眠が不足し、夜間のメラトニン分泌が欠如し昼夜の増減リズムが平坦になることから、入院中に問題となるICU症候群(ICU患者は興奮・錯乱を起こす傾向にあり、その多くは一時的な精神病に発展する)の予防と治療でのメラトニンの有効性が示唆されています。メラトニンの副作用眠気、頭痛、などが知られていますが、重篤な副作用はまだ報告されていなません。

 日本では認可されていなませんが、愛用者が急増し、メラトニン自身の副作用よりはメラトニン合成過程の副生成物や賦形剤などによる重篤な意識障害が問題となっています。粗悪品の安易な服用は慎むべきです。

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生体リズムと時計遺伝子

薬事 2001年2月臨時増刊号

 生体には、体内時計が存在し、種々の生体リズムを制御しています。その本体は、視神経が交叉するSCN(視交叉上核)に位置し、時計遺伝子により制御されています。

 この遺伝子は中枢だけでなく末梢組織でも発現し、ローカル時計として機能しています。生体は体内時計の階層構造うまく利用し、生体のホメオスタシス機能を維持しています。体内時計の発信周期は、24時間ではなく、ヒトの場合約24.2〜25.1時間時間です。つまり体内時計は正確に24時間周期で変動するのではなく、短い場合や長い場合が存在します。

 環境サイクルのない、いわゆる恒常環境下での約1日の変動リズムを「概日リズム」といいます。
このような24時間のサイクルに合わせることを「同調」といい、光が最も強力な作用を示します。また、体内時計が発する概日リズム振動のことを「発振」といい、その信号が例えば松果体のメラトニン分泌を調節するような機構を「出力」といいます。

生体リズム機構は同調、発振、出力から成り立っています。

<SCN:視交叉上核>

 概日リズムを駆動する振動体が存在することが明らかにされています。SCNにはさまざまな脳部位からの神経が投射しています。特に、網膜から直接SCNにいたる網膜視床下部路(RHT:retinohypothalamic tract)は、外界の明暗変化の情報を体内時計へ伝達し、内因性に生み出されるリズムを正確に外界の明暗サイクルに同調させる重要な働きを持っています。

 また、網膜から中脳の外側膝状体中隔葉を中継してSCNに至る外側膝状体視床下部(GHT:geniculohypothalamic tract)は、RHTと同様に外界の明暗情報を伝えたり、覚醒レベルの上昇に伴う体内時計の位相変化に重要な役割を果たしています、


<発振>

Per遺伝子(PER蛋白質)Cry遺伝子(CRY蛋白質) CLOCK/BMAL1複合体等の関与
哺乳類ではPERとCRYがともに制御因子として機能を果たしています。

<同調>

1.光同調〜明暗(光)の変化による体内時計のリセット

2.非光同調〜光以外の因子によるリセット

 光刺激は主観的暗期に特異的に体内時計の位相を変化させますが、多くの非光刺激は明期に作用して体内時計をリセットします。

 このような非光同調因子として、制限給餌、強制運動、薬物による覚醒レベルの上昇、恒明飼育下の暗パルス刺激などが知られています。

神経伝達物質としては、GABA、ニューロペプチドY、ベンゾジアゼピン化合物、メラトニン、セロトニンなどが知られています。
 

<出力>

 遺伝子産物の活性が概日リズムを示す遺伝子、いわゆる時間調節遺伝子(clock-contorolled gene;CCG)は数多く知られています、時計遺伝子のいくつかもCCG同様リズミックな発現を示しますが、CCG遺伝子とその産物はフィードバックループの外にあるため、時計振動機構には影響しません。

 出力系の遺伝子のいくつかは直接時計遺伝子の支配下にあります。SCNのバソプレッシン遺伝子は明期の前半にピークを示します。またSCNや肝臓でリズミックに発現しているdbpも出力系の遺伝子です。肝臓でのアルブミン遺伝子や数種のP450分子の転写はこの転写因子の制御下にあり、転写活性が概日リズムを示します。

 時計遺伝子はSCN以外の他の臓器でも発現していて、SCNに比べ位相が遅れています。このことはSCNが中心時計として働き、他の部位に発現している時計遺伝子はローカル時計として働き、SCNから何らかの情報(ホルモン、神経機能)が他の臓器の機能をコントロールしているものと思われます。

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2005年10月15日号 No.416 医薬トピックス(16)


NPAS2:食事と体内時計

 多くの生物には、外界の刺激に反応して生理機能を調節する体内時計機構が存在し、約24時間周期で変動することから概日リズムと呼ばれています。

 哺乳動物では、CLOCK遺伝子をはじめとする時計遺伝子群がその実態を担っています。
視床下部に存在する視交叉上核(SCN)体内時計の中枢といわれ、視神経からの光情報を受け取り体内時計の調節を行っています。

 個体レベルの行動や睡眠・覚醒のパターン形成には、光環境だけでなく非光環境に由来する情報とのバランスが重要で、視交叉上核(SCN:中枢時計)とほかの脳部位(脳時計)および末梢臓器(末梢時計)との連携が不可欠です。

 体内時計と概日リズムを理解するために、中枢時計と脳・末梢時計の関連をつなぐメカニズムを明らかにすることが重要ですが、これまでほとんど解析されていないのが現状です。

 NPAS2は前脳特異的に発現するCLOCKの相同遺伝子として見出され、CLOCK同様、下流遺伝子の概日リズム依存発現を制御する因子と考えられていますが、その真の役割についてはこれまで明らかにされていませんでした。

 最近、NPAS2欠損マウスを持ち板解析から、摂食環境に対する適応性でNPAS2が重要な働きをしていることが明らかになってきました。すなわち食事による体内時計の調節に不可欠であることが分かってきました。

 光情報の存在下では、視交叉上核が中枢時計となり外界との適応をはかりますが、光情報が欠落した状態では、体内時計にとって外界環境条件を認知する脳時計からの情報がきわめて重要となり、NPAS2はそのような非光環境適応で不可欠な因子であることが推察されています。

 出典:薬局 2003.12

関連項目:サーカディアンリズム


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生命予後因子としての日内リズム

2004年6月15日号 No.385

 ヒトの各種生体機能には、24時間周期の日内リズム(内因性)あるいは外的環境(光・温度・食事摂取など)に影響されて生じる日内変動が(内因性+外因性)が存在します。同様に、多くの病態にも日内リズムや日内変動が存在し、疾患の発症時間や症状が悪化・多発する時間帯があります。

 種々の癌患者では日内リズムが高頻度に変容することが報告されていて、しかも癌患者の生命予後と関連する可能性が示されています。

{参考文献}ファルマシア 2004.6

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 転移性直腸癌患者200例を対象とした日内リズムのQOL及び生存に関する影響を前向きに研究した報告によれば、30%の患者で休息−活動リズムあるいはコルチゾールの日内リズムの変容が認められています。

 コルチゾールの日内リズムとQOLあるいは生存との間に明らかな関連性を見られませんでしたが、休息−活動のリズム性が明らかな例では、リズム性が乏しい例に比べて、QOLは良好かつ生存率が高いことが示されています。

 すなわち、4年生存率は、休息−活動リズムが明らかな例ではリズム性が乏しい例に比べほぼ2倍で休息−活動リズムは独立した予後因子であることが証明されました。

 同様に、転移性乳癌患者104例で唾液中のコルチゾールの変動を調査した報告では、37%の症例で唾液中コルチゾール濃度は朝8時に最高となり、その後低下する正常パターンを示しましたが、49%では遅い時刻にピークがずれ、14%でが明らかなリズム性を認めない異常パターンでした。4年生存率は唾液中のコルチゾールに正常のリズム性が認められる例では、認められない例のほぼ2倍でした。

 これらのことから、体内時計の概日周期性の変容は癌細胞の増殖となんらかの関連があると思われます。さらに乳癌のリスクの高い患者ではリスクの低い患者に比べ、ホルモンの日内リズムが変容する例が多いとされています。

 近年、
体内時計遺伝子が次々とクローニングされ、その制御機構とともに各種生体機能の日内リズムや疾患の時間生物学的特徴への関与も明らかにされてきています。

 時間治療は通常24時間周期の生体リズムに基づいて行われていますが、周期性を延長して時間治療を行うことも考えられます。また、従来の時間治療は生体リズムに基づいた受動的なものでしたが、体内時計を修飾して生体リズムを変容(あるいは正常化)させることによって、能動的な時間治療を行う方向性も示唆されます。

 くわえて、ゲノム創薬の時代を迎え、分子標的治療薬の開発が指向されています。これらの動向は従来からの時間治療のみならず、新たな時間治療の可能性を示すものです。

<疾患の発症や症状増悪のピーク時刻>

 0時   消化性潰瘍
 4時  気管支喘息
 5時  異型狭心症
 6時  偏頭痛
     アレルギー性鼻炎
 7時  慢性関節リウマチ
 8時  抑うつ症状
 9時  心筋梗塞
 10時 脳梗塞
 16時 高血圧症状
 18時 骨関節症
 22時 皮膚過敏


医学・薬学用語解説(G)  「ジェネリック医薬品に対する5つの不安」はこちらです。


<<用語辞典>>

メラトニン

 長い間無用の長物と考えられていた松果体が、メラトニンというホルモンを分泌していることを最初に報告したのは、米国のアーロン・ラーナーで、今から38年前のことである。その後このメラトニンが生体の日週リズムと関係していることが分かってきました。

 メラトニンは天然の睡眠薬であることが報告され、その後時差ボケの解消に有効であること、免疫強化、フリーラジカル除去作用等等、様々な報告が散見されるように為りました。

 メラトニンは睡眠の質に影響を与えるのではなく、多量で催眠作用、生理学的な量で睡眠覚醒リズム位相に影響を与えるものとして考えることが出きると思われます。

 この性質を利用して睡眠障害の中でも、睡眠覚醒リズム障害の治療に応用されます。

<メラトニンの副作用>

重篤な副作用報告はない。

多量長期使用で生殖機関の萎縮(動物)
メラトニンの代謝物であるL-kynureninには痙攣作用、quilinic acidには神経毒の作用
シフトワーカー(交代勤務者)には心冠動脈疾患のリスクファクターが存在する。(報告)
メラトニンはナノメーターレベルでは血管収縮作用があり、ミリメーターレベルでは血管拡張作用があると言われているのでシフトワーカーに投与する場合には注意を要する。

NSAIDsによって潰瘍が形成されやすいが、メラトニンはそれを悪化させやすいと言われている。

メラトニンは耐糖能にも影響すると言われている。

出典:治療 1999.1

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メラトニン受容体アゴニストとは

〜〜新しい作用機序を持つ睡眠導入剤が登場〜〜

2012年3月15日号 No.563

 ラメルテオン(ロゼレム錠)は、体内時計に密接に関与する視交叉上核のメラトニン受容体に対し高い親和性を持ち、視交叉上核の機能を調節します。これにより、睡眠と覚醒のリズムを整えることで、脳と身体の状態を覚醒から睡眠へ切り替えます。また鎮静作用や抗不安作用によらない睡眠を誘導することが期待できます。

 睡眠は、「夜だから眠る」という体内時計機構と、「疲れたから眠る」という恒常性維持機構の2つの異なるメカニズムにより調整されています。体内時計機構は概日リズム機構とも呼ばれ、体内時計を調節する物質であるメラトニンが脳の松果体から分泌されることにより睡眠が誘発されます。

 恒常性維持機能は覚醒中に体内に蓄積した睡眠物質により睡眠が誘発されます。ラメルテオン(ロゼレム錠)は薬理的に、ベンゾジアゼピン系薬剤とは全く異なり、筋弛緩作用や呼吸抑制などは発現しないと考えられ、臨床試験でも反跳性不眠や退薬症候群が認められていないため、断薬しやすいとされています。

 服薬者の起床時や日中のふらつきが少なく、リスクマネジメントの観点からも注目されており、ある病院では、ラメルテオンを導入してから転倒・転落の発生頻度は大きく減少したということです。

※ロゼレム錠 服用方法Q&A

Q:頓服でも効果がありますか?
A:頓服での効果はありません。連日服用を原則としています。

Q:効果発現の時期は
A:通常は、服用開始1週間後くらいから効果が発現し始めます。3ヶ月間の服用で最大の効果が得られますが、効果判定は2週間を目安に継続の可否を判定してください。

Q:ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬との併用は有用ですか?
A:併用は期待できます。併用することで、不眠症状が改善し、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を減量又は中止出来たことが報告されています。

Q:ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬からロゼレムへ切り替えは
A:併用期間なしでの切り替えは避けてください。ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は急に中止するのではなく、併用期間を設けて、患者の状態を観察しながら、減量・中止して下さい。通常2週間ほど併用した後に、その後の判断をして下さい。

Q:ロゼレム錠で効果不十分な場合は?
A:生活習慣改善の指導とロゼレムを2週間継続し、効果が認められればそのまま継続します。効果が不十分な場合は、中止を考慮し、漫然と使用しないで下さい。生活習慣改善の指導がしっかり行われていれば、ロゼレムの有効性は維持されやすいのですが、ある程度の期間経過しても効果が確認できない場合は、その他の薬物療法による治療も必要です。

* 効果判定を行い不眠が強いときにはロゼレムにベンゾジアゼピン系もしくは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を追加、あるいは切り替えることも検討してください。

<ロゼレム錠の特徴>
1.依存性がない。2.ふらつきが少ない。3.健忘がない。4.転倒・転落のリスクが少ない。5.自然な眠りが得られる。

    体内時計機構とメラトニン(上記)も参照してください。

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