無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学

 

 

 

 

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呼吸切迫症候群(RDS)

respiratory distress syndrome


 呼吸窮迫症候群は未熟新生児に多発する極めて予後不良の疾患。

 これまで人工換気療法による治療が行われてきましたが、主因が肺胞表面活性物質「肺サーファクタント」の欠乏にあることが明らかにされ、その根本治療として肺サーファクタント補充療法がはじめられました。

治療薬:サーファクテン 1987.11.25発売

特発性呼吸窮迫症候群

idiopathic respiratory distress syndrome(IRDS)
同義語:肺硝子膜症hyaline membrane disease(HMD),〔新生児〕呼吸窮迫症候群


 肺胞の拡張を維持するのには,肺胞内に肺表面活性物質(肺surfactant)の存在が必要です。肺surfactantは肺胞のII型細胞で産生され、在胎35週以降に急速に羊水中に増加します。

 その産生はglucocorticoidによって促進されます。肺の未熟性のために肺surfactantが欠如すると,肺胞虚脱から肺胞の換気不全が起きるのが本症です。

 強い換気不全のために肺胞内に血液成分が滲出し、フィブリン沈着が起こります。

 主要症状は多呼吸,陥没呼吸,呼気性呻吟expiratory gruntingおよびチアノーゼで、生後まもなくの発症が多い。早産児,低出生体重児に多いが,満期産児にみられることもあります。

関連記事

 トリプターゼクララによる限定分解をクララ細胞と肺胞と肺胞上皮細胞の分泌する肺サーファクタントと粘液プロテアーゼインヒビターは抑制しウイルス感染が阻止する。


TIA:Transient ischemic attack

一過性脳虚血発作

 脳血流障害によって起こる一過性の神経脱落症状。発症は突発性で、症状の持続は通常2〜5分ぐらいで、遅くとも24時間以内に完全に回復します。回復後はなんらの神経脱落症状も残しません。

 成因については、微小塞栓説が一般に信じられています。頭蓋内外の血管のアテローム硬化性病変などの病変部や心疾患の心腔内等に形成された血小板血栓などがはがれて血液の流れに乗り、脳血管を閉塞するために起こるとする説です。他に脳血管不全説があります。

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一過性黒内障
AF:amaurosis fugax

治療 2002.3増刊号


 一過性黒内障は眼動脈領域の虚血による一過性の視力消失と定義されています。
両眼視力は正常なのに片側のすべてあるいは部分的視力消失で、視力消失は数秒で起こり、数分以内に回復するのが一般的です。

 症状は、上半分の視野障害からはじまり、視野全体に及ぶのが普通ですが、斑点状や切痕状の視野障害も認められています。同じパターンを繰り返すことが多く、内頚動脈系の一過性虚血発作(TIA)の1症状と考えられています。

 一過性黒内障は脳梗塞の警告症状で重大な状態です。しかし痛みなどの激烈な症状もなく、容易に消失するため患者も直ちに受診することが少なく、医師もその症状を見て脳虚血と関連づけて考えるようにしなければ根本的な治療を行うことはできません。そのためにきちんと脳血流・血行動態の評価を行い、それに応じた適切な治療を行うことが必要で、脳卒中の専門医のいる病院への紹介が必要です。

 薬物治療〜微小血栓によるものであれば抗血小板薬(パナルジン錠、アスピリン錠など)が必要となります。


PE:pulmonary embolism

肺塞栓症

 さまざまな塞栓子によって肺血管系の循環が阻害される病変。太い動脈の塞栓は急激な胸痛、頻呼吸をきたし死亡する。


スーパーフィブロネクチン

 フィブロネクチンは細胞接着に関与する細胞表面蛋白質で、そのレセプターであるインテグリンと結合し、着床等の癌細胞の転移過程で重要な役割を果たすと言われています。

 スーパーフィブロネクチン(sFN)は、インビボで作り得る重合型フィブロネクチンで、生体内でのフィブロネクチンマトリクスと構造的に似ています。

このsFNに癌の抗転移作用があることが分かってきました。

関連項目:インテグリン阻害剤もご覧下さい。


TTウイルス

    出典:治療 1999 増刊号

 TTウイルス(TTV)は、1997年輸血後肝炎を引き起こすDNAウイルスとして日本で報告されました。名前の由来は患者のイニシャル(TT)に因むものです。

 TTVはHCVよりもIFNに高い感受性を有することが示されてます。

 TTV DNAは健常者でも効率に陽性を示すため、必ずしもTTVが肝炎の病態に主役を演じている可能性は高くないとの見解が発表されています。

 一般にアデノウイルス属は80〜90%のヒトに常在しながら病原性を持たず、他のウイルスの重感染契機に顕性化すると考えられています。TTVがアデノウイルス属を含むパルボウイルスと類似の構造を有していることを考慮すると、同様のことがTTV感染にもいえるかもしれません。しかし、まれにTTVが肝炎の病因として深く関与したと考えられる症例もあります。

 治療法として確立されたものはありません。

 TTV単独感染で治療を必要とする例は少ないと考えられます。


スーパー抗原

出典:現代医療 2000.6(増刊)等


 スーパー抗原は1989年に提唱された新しい概念の蛋白質性T細胞活性化因子で、細菌性、ウイルス性、植物性スーパー抗原に大別されます。

 細菌性スーパー抗原には、ブドウ球菌、レンサ球菌、マイコプラズマ、エルシニア菌などの産物が知られています。

 その多くは感染症の病原因子(外毒素)で、外毒素によるT細胞の過剰活性化が発症に関与します。

 ウイルス性スーパー抗原の多くはマウス乳癌原性内在性レトロウイルスの産物で、プロウイルスDNAの3′側のlong terminal repeatにコードされています。ヒトに感染性の狂犬病ウイルスやサイトメガロウイルスにもその存在が想定されています。

 植物性スーパー抗原は,イラクサの根茎のレクチンUrtica dioica agglutinin(UDA)がただ一つ報告されています。

 スーパー抗原の生体での結合構造はMHCクラスII分子であり、T細胞はMHCクラスII分子・スーパー抗原複合体を通常の抗原認識受容体α鎖・β鎖複合体のβ鎖可変部Vβエレメント選択性に認識して大量に活性化されます。

 スーパー抗原は、抗原提示細胞上のMHC class2分子にプロセシングされることなく直接結合して、T細胞受容体(TCR)Vβ選択的に膨大な数と種類のT細胞クローンに活性化シグナルを与え、細胞分裂や種々のリンフォカインの大量産生を誘導します。

 TSST-1を例にとると全体の約10%を占めるVβ2+T細胞を一括して活性化します。

 腸管や肝臓にはよく発達した免疫系細胞が配置されており、免疫学的にも重要な臓器です。強力なT細胞活性化因子であるスーパー抗原が腸管に導入されると、さまざまな免疫異常が誘導されると考えられています。

*細菌性スーパー抗原

 水溶性の単純蛋白質。組織培養系で強いT細胞活性化作用を示し、実験動物に投与したときはT細胞依存性の毒性を示しますが、ジフテリア毒素やベロ毒素ら標準的細胞毒素と異なり、直接の細胞障害活性は示さしません。
 エルシニア菌(偽結核菌)が産生するYPM、黄色ブドウ球菌が産生する毒素性ショック症候群(TSS)毒素(TSST-1)や腸管毒素(SEA〜SEH)、さらにA群レンサ球菌性発熱毒素(SpeA〜SpeF)などが挙げられます。

*ウイルス性

 狂犬病ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルスにスーパー抗原の存在が報告されていますが、まだ不明な点が多く残っています。

 ・インスリン依存性型糖尿病の病原因子としての内在性レトロウイルス


確認診断用ツベルクリン

出典:三星堂Q&A等

 ツベルクリン反応検査は個体が結核に感染したかどうかを診断する唯一の臨床検査と言って良く、日本では、48〜72時間後に発赤の長径が10o以上のものを陽性と判定し、それに硬結があれば中等度陽性、副反応(二重発赤、水疱、壊死)の伴うものを強陽性、発赤だけのものを弱陽性としています。

 結核の診断に用いるツベルクリンには、「一般診断用」、「強反応者用」、「確認診断用」の3種類が市販されています。

 それぞれ1回用量中(注射液量0.1mL中)に含まれるツベルクリン活性物質量は
以下の通り(  μg)

・一般診断用(0.05μg):通常30歳未満の者を対象

・強反応者用(0.01μg):30歳以上の者、結核患者など通常の「一般診断用」を使用すると注射部位に反応が強く現れ、水疱や壊死等を生じるおそれがある場合に使用する。

・確認診断用(0.5μg):「一般診断用」による判定結果が陰性または擬陽性の者、ときに小児など反応のでにくい者でさらに精密検査を必要とする場合に使用 (結核予防法によるツベルクリン反応検査には使用しない。)

 強反応用ツ反の判定基準は一般用に比べて確立されていませんので、過去のツ反の痕跡があるなど強い反応が予想される特別の場合以外は、30歳以上に対しても一般用を使用した方がよいと思われます。

<ツ反の臨床的意義>


1.個人の感染の有無
2.結核管理では、結核、非結核の鑑別診断、BCG接種対象の選定、接種技術の評価、ハイリスクの選定、3.集団感染の有無、4.疫学的には、結核感染率、蔓延状況の比較調査、5.その他、最近では、細胞免疫機能検査としても用いられます。

関連項目 ツベルクリン反応についての最近の知見


ポドフィリン


出典:三星堂Q&A

 ポドフィリンはポドフィルム脂のこと。ポドフィルム根をアルコールで抽出した液に水を加えて析出させた樹脂様物質。

 臨床適応としては、いぼ(疣)や尖圭コンジローマなどに用いられています。

 現在、日本では医薬品としての市販はなく、試薬のみ市販されています。

 生殖器などにできる柔らかい疣に25%鉱物油液を綿棒でつけ、6時間後に石鹸水で洗い、タルクを散布しておくと3日以内に表皮脱落が起こり除かれます。

 老人性角化症は軽く掻爬したのちポドフィルム脂25%、サリル酸20%を含有するアセトンアルコール等量混合液を15〜30秒綿栓で押しつけると、2週間後はがれて角質層が除かれます。

<ポドフィリンアルコール>

 ポドフィリン 20g
 エタノール(95%) 適量 
 全量100ml

10%ポドフィリン安息香チンキ

 ポドフィリン末 10g
 安息香チンキ全量 100ml


アルドステロン・エスケープ現象


出典:日経メディカル 1999.7(日本モンサント資料)


 アルドステロン・エスケープ現象は、ACE阻害剤によってAUは抑制されても、アルドステロンの産生は十分には抑制できない現象のこと。

心不全に対する大規模臨床試験(RALES)によるとアルダクトンA錠の併用で総死亡率が29%減少しました。


 アルダクトンAは、K+保持という点以外にも、種々の作用から突然死のリスクを減少させていると考えられます。例えば圧受容体機能不全の改善もその1つです。

 心不全患者を対象に、心筋へのカテコールアミンの取り込み評価した試験では、プラセボ群に比しアルダクトン群で心筋へのカテコールアミンの取り込みの優位な増加が認められました。

  一方、高血圧患者で血漿アルドステロン濃度と左室心筋重量とが有意な相関を示すというデータもあります。また、実験高血圧ラットで、心筋線維化や左室肥大が、AUと独立した形でアルドステロンにより惹起されること、そしてやはりアルダクトンAが血圧と独立した形でその心筋線維化を改善することが報告されています。

 心筋梗塞後のリモデリングをACE阻害剤が改善することは良く知られていますが、アルダクトンAもまたACE阻害薬(ラミプリル)と同様にリモデリング改善効果を示します。

 アルドステロンはAUからだけでなく、他の色々なルートからも産生されます。
特にACE阻害薬を服用する場合は、キマーゼなどの非ACE以外の経路から産生されるAUがアルドステロン産生を増加させる可能性もあります。

・アルダクトンA錠は、重症心不全患者の死亡率を有意に減少させた。
・死亡率の減少は、心不全の進展および突然死の有意な減少による。
・重症心不全患者での標準治療にアルダクトンA錠を追加することが勧められる。

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アルドステロン・ブレイクスルー

 本態性高血圧症患者にACE阻害薬を長期間使用したところ、血漿アルドステロン濃度は一旦低下するものの次第に上昇し、半年から1年後には服用前の値よりも高値になる現象

 ただしアルドステロン・エスケープという言葉は、内分泌領域ではアルドステロンの腎ナトリウム貯留作用の減弱という意味で用いられるため、ACE阻害薬などの使用時にアルドステロンが再上昇する現象は、アルドステロン・ブレイクスルーと呼び、区別するようになっています。

 この現象は、ACE阻害薬だけにみられる現象ではなく、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)でもみられます。

   出典:メディカル・トリビューン 2007.10.4  選択的アルドステロン・ブロッカー SAB セララ錠の広告


PCC

Pharmaceutical Care Conference

患者さんの症例報告をし、それに関して、みんなで質問、討論する会

その症例に、薬剤師として着眼する所は何か?

Drへのアプローチなど、、、話し合う会なんです。


突然死

肥大型心筋症での突然死予防

出典:臨床と薬物治療 2000.2


 小学校〜高校生で年間約100名が突然死しています。

 突然死は心血管系の疾患によるものが最も多く、その中でも、先天性心臓病が最も多く、次に肥大型心筋症が多く見られます。

 初期の肥大型心筋症患者の多くが無症状で、日常生活指導は極めて重要です。

 突然死を多く認める肥大型心筋症多発家系では、遺伝要因も絡んでおり、慎重な対応が望まれます。
肥大型心筋症(特に男子)では、競技系スポーツは原則禁止すべきで、不整脈チェックのため毎年のホルター心電図検査が重要です。

<薬物療法>

 拡張障害、心筋虚血に対しカルシウム拮抗薬、流出路狭窄に対してはβ遮断薬が有効であり、一般にカルシウム拮抗剤と併用されます。

 突然死の原因として重篤な心室性不整脈の占める位置は大きく、β遮断薬やカルシウム拮抗薬でカルシウム拮抗薬で効果が不十分な症例ではクラスT抗不整脈薬が用いられます。従来の抗不整脈薬が無効な症例にはクラスV抗不整脈のアミオダロンが用いられます。

 脳硬塞(塞栓)も肥大型心筋症の死因の1つであり、心房細動合併例では塞栓症のリスクが高く、アスピリンやワーファリンの投与が必要である。拡張相肥大型心筋症に至った症例では、ACE阻害剤や利尿剤などの心不全治療薬の適応となります。

関連項目:働き盛りの突然死


脳低温療法

   出典:医薬ジャーナル 2003.7

 脳の温度を少し下げることで、脳虚血に伴う神経細胞の障害や虚血範囲が軽減することが報告されています。一方、臨床的にも重症脳損傷患者では、脳の温度が38〜44℃に上昇する現象(脳内熱貯留現象)が報告され、脳の低温管理の重要性が強調されてきました。

 最近では、心筋梗塞などで一時的に心肺停止に陥った(心肺停止蘇生後)患者の救命と予後改善のために、自己心拍再開後にこの脳低温療法が行われ、神経学的予後を改善させるとの報告があり、注目されています。

脳低温療法は、脳保護法としてこれまでにない有効性が臨床面で確認されてきた反面、心肺機能、血液凝固系、免疫防御系の障害を来しやすく、その管理法が脳の低温療法の成否を決めます。

<適応>

 心肺停止患者の脳低温療法の対象となるのは、目撃者のある心原性院外心肺停止蘇生後患者、窒息、溺水の患者です。最初の心電図所見が心室細動で、心肺蘇生術が5〜15分以内に医療従事者により成された症例や自己心拍再開後に収縮期血圧90mmHg以上に保たれる症例など様々な報告例があります。

<輸液管理上の注意点>

重症脳損傷患者、特に若年者では体温の上昇を来している場合が多く、一方、術後患者では、既に体温が35〜34℃台まで低下していることが多くなっています。

* 温度の低い輸液をするだけで急激に体温が低下します。

 体温は血液の温度に大きく左右されますので、用量負荷効果の高い輸液、例えばマンニトールの急速輸液も急激な温度低下を招きます。さらに、脳低温療法中では、患者が脱水に傾くケースがよくあります。循環維持のために冷たい輸液を急速補給するときでも、急激に体温が低下する原因になります。

その対策として、適正な輸液管理と十分な循環量を保つことが重要です。

* 脳低温療法中の電解質異常

 34℃以下では、血中カリウムが低下して不整脈を誘発し易くなります。特に血中カリウムは頻回に測定し補正する必要が出てきます。この時の低マグネシウム血症の合併は、難治性の不整脈を誘発します。こんな場合、Mg、Pを含有する輸液(ヴィーン3Gなど)が有用です。

 全身の低体温化で心機能低下の発生や寒冷利尿による脱水などで全身循環が不安定となるため、全身循環を確認しながら導入する必要があります。

 34℃以下では、グルコース代謝が脂質代謝に変換し、グルコース利用能が低下します。
糖代謝への影響が少ない酢酸リンゲル液(ヴィーンFなど)が効果があると思われます

 更に低体温による利尿効果、末梢血管抵抗の上昇、血液粘度の上昇や脳外科術前・術中・術後管理の中でマンニトールなどの過度の使用による脱水などにより、全身性の微小循環障害を誘発することがあり、服温期にみられる多臓器不全や播種性血管内凝固症候群(DIC)発症原因の1つとなります。

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COX阻害剤を用いた脳温管理法

出典:治療 2000.2

 重症脳損傷で異常な脳温上昇が二次的脳損傷を助長するといわれています。重症脳損傷に対する脳低温療法はわが国を中心に近年新たな発展を遂げて来ました。

 その一方、管理の煩雑性や合併症などの問題も指摘されています。

 <COX阻害剤でNSAIDsの1つであるインドメタシン(以下IND)を応用した薬理学的脳温管理法>

 脳圧のコントロールが困難な重症脳損傷に対しては33.5〜34.5度の軽微脳低温管理を行ない、脳圧コントロールが比較的可能な症例には脳温を37度以下に保つ脳平温管理を行なっています。

導入:脳温/脳圧の測定下にIND坐剤(100mg)を使用。さらに鼻腔内へ冷風を送気し、鼻粘膜冷却と熱放散により脳を選択的に冷却する熱放散冷却法を併用します。

維持:脳温はIND(6mg/kg/day)と室温の調節で維持します。
復温:徐々に投与量を軽減し、室温調節で0.5〜1.0度/dayで復温します。

<考察>

 COX-1は構成型酵素で各臓器に定常的に発現しているといわれ、COX-2は誘導型酵素で炎症と関与していると考えられています。

INDはCOX-1,2両者の強力な阻害剤であり、脳損傷時での薬理作用は多彩です。

*IDNの脳損傷時での薬理作用

1.脳圧降下作用、2.炎症性サイトカインやNOなどのneurotoxic factorの産生抑制、3.脳温上昇予防、4.脳浮腫抑制、5.血液脳関門の維持、6.血管内皮障害抑制

 この中でも炎症性サイトカインの産生抑制や脳浮腫抑制作用などが重要と考えられます。

 また本法では、脳低温療法中に問題となる肺感染症が有意に少なく、この理由として(1)炎症性サイトカイン抑制による全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防、(2)冷却ブランケットを用いないため肺理学療法が用意に行なえることが考えられます。

 COX-2を選択的に阻害するエトドラグ(ハイぺン錠)の使用も試みられています。


抗MRSA抗生物質

出典:薬局 1999.8

 1960年代に欧米で報告されていたMRSAは、日本では1980年頃に増加し始めました。グラム陰性菌に強く、陽性菌に弱い第3世代セフェム系が、多量に使われていたことが原因と考えられています。

 第3世代セフェム剤の使用によってより多くのグラム陽性菌であるブドウ球菌が臨床から分離され、そのMRSA化が早まりました。

 MRSA感染症は、単独ではなく緑膿菌などのグラム陰性菌との複合的な感染が主流です。また、重篤な基礎疾患を合わせ持っている場合も多く見受けられます。

 ハベカシン(アルベカシン:ABK)は、細菌の細胞膜を透過してリボソームに結合することで、DNA転写を阻害し、蛋白合成を阻害します。その結果、細胞壁がもろくなり細菌を死へと至らしめます。種々のアミノグリコシド不活性酵素により不活性化されにくいため、アミノグリコシド耐性MRSAに対しても優れた抗菌力を有しています。また、グラム陽性菌・陰性菌にも殺菌的に作用します。

 濃度依存的に殺菌作用を示し、さらに短時間殺菌力に優れています。PAEは長く、薬剤接触濃度が高いとPAEも延長します。(下に関連記事あり:アルベカシンの耐性化は進行しない。

 バンコマイシン(塩酸バンコマイシン:VCM)はボルネオの土壌より分離されたグリコペプチド系抗生物質であり、タゴシッド(テイコプラミン:TEIC)はインドの土壌より分離された類似構造の数種類のグリコペプチド系抗生物質の混合物です。

 両薬剤は、ペプチドグリカン前駆体であるD-alanyl-D-alanineを含むペプチドに強く結合し、ペプチドグリカン合成酵素を構造的に阻害し、細胞壁を抑制し、細菌に対して時間依存的に殺菌作用を示します。したがって、グラム陽性菌にのみ殺菌作用を持ちます。

 また、VCMには細胞膜透過性変化、RNA合成阻害作用も知られています。VCMのPAEは薬剤接触時間に依存しますが、TEICは接触時間にも濃度にも依存して長くなります。

<副作用>

 ABK、VCM、TEICには腎毒性聴覚器毒性がみられます。ABK総投与量が4000mgを越えると腎障害の発生率が高まるという報告もあります。高いトラフ値が腎障害の原因なのか結果なのかは十分な検討がされていませんが、TDMで薬物動態を観察するとともに血清クレアチニン値やBUNなどの性化学的検査も併行して行なう必要があります。

 VCMの腎障害は精製率の向上とともに減少しましたが、アミノグリコシド系は腎障害を悪化させることにより、従来通りTDMで血漿中濃度のコントロールを行なった方がよいと思われます。

 TEICの腎障害や聴覚障害は比較的少ないとされています。それは、VCMやABKよりも緩徐に排泄されるので、腎尿細管中の薬物濃度が上がりすぎず、尿細管内に取り込まれる薬剤量も減少するからだと考えられています。また、脳内にはほとんど移行しないので聴覚障害が起きないと推測されています。

  VCMにはレッドマン症候群が報告されています。レッドマン症候群はヒスタミン遊離作用に起因することから、時間をかけて(60分以上)投与することで回避できます。

 TEIC静注時にヒスタミンが遊離されるという報告もあるため、30分以上かけて点滴静注する必要があります。

<TEIC耐性菌>

 VCMとTEICの耐性メカニズムには違いがあり、耐性菌の膜蛋白とPBP(ペニシリン結合蛋白)を調べてみると、35-kDaの膜蛋白(TEICに感受性のあるMRSAには存在しない)が出現し、PBP2の増加が確認されました。耐性菌間でもペプチドグリカン構造に違いが見られました。このような構造的変化がTEICの感受性の低下と関連していることが示唆されています。

 ヨーロッパでグリコペプチド系抗生物質の耐性について大規模な調査が行なわれましたが、TEIC耐性菌の頻度は0.57%、中程度耐性株は0.56%で現状ではそれほど深刻ではありません。

 VCM耐性菌の頻度は0.47%、VCM耐性腸球菌の出現・伝播は懸念されるものの、TEICもVCMも依然としてグラム陽性菌感染症の治療薬として有効であることが示されています。

  TEICの方が耐性化を起こしやすいとおもわれるのため、米国では、未だに認可されていません。

 日本では1997年にVCM低感受性MRSAが発見されています。

 MRSA感染症治療に際しては、副作用や耐性菌の出現が懸念されますので、必要最小量の使用を心がけることが必須です。また、薬剤での治療以前に、設備や医療従事者の手指の消毒など、病棟レベル、病院レベルでの院内感染対策の確立・徹底により、予防策をより強化して行くべきだと思われます。

 その他:バクトロバン(鼻腔用)など

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アルベカシン(ABK:ハベカシン注)の耐性化は進行しない!!

     出典:薬事 2002.6

 カナマイシン系の半合成アミノグリコシド抗生物質であるアルベカシン(ABK)は抗MRSA在として1990年に認可されて以来、広域に臨床使用されていますがMRSAのABK耐性化は進んでいません。その理由を抗生物質と耐性因子の2つの面から検討した結果、次のようなことが明らかになりました。

1.ABKはアセチル化酵素による修飾を受けないとされていました、しかしアミノグリコシド産生菌由来のアセチル化酵素を用いた実験では容易にアセチル化されますが、抗菌活性を失わないというユニークな性状(二段活性)を持つことが見出されました。そのためアセチル化酵素依存性のABK耐性は出現しないと予想されます。

2.これまで唯一のABK耐性因子とされているAAC(6')/APH(2”)の遺伝子は、ABK耐性に必要なものの必要十分ではなく、ABK耐性化のためには未知要因が関与すると思われます。

* AAC(6')/APH(2”)  →アセチル化 / リン酸化二機能酵素

 なおゲンタマイシン(GM)ではAAC(6')/APH(2”)遺伝子の存在と耐性は完全に相関します。

 ABKは既知のAME修飾部位に関してGMと同じですが、GM耐性が二機能酵素遺伝子の存在と完全相関するのに対してABK耐性は二機能酵素を持つ特定の菌株(例えばM22型コアグラーゼ遺伝子保持菌株)に限られるという現象が認められました。

 AME:アミノグリコシド修飾酵素

 またこのM22型コアグラーゼ遺伝子保持菌株は1990年代にはすでにマイナー化しており、MRSAでのABK耐性化は今後も進まないものと予想されます。


リスプロインスリン

出典:臨床と薬物治療 2000.4

 現在、糖尿病治療に使用されているインスリン製剤は遺伝子工学技術の導入でヒトインスリンとして精製されており、効果発現の早さから即効型、中間型、遅効型、2相性製剤に分類されます。

 しかし現在の即効型インスリンでも食事の30分前に皮下注射しなければ食事摂取とともに上昇する血糖を抑えることは出来ません。また注射したインスリンの血中濃度の立ち上がりに個人差が大きいことから、立ち上がりの遅れによって逆に低血糖を起こすことがあるなどの欠点もありました。

 リスプロインスリンは食事直前に注射することで、食事による血糖の上昇を抑制でき、かつ速やかに血糖値が正常に戻ることが報告されている超即効型インスリン製剤です。

1)T型糖尿病(とくに幼児期あるは小児期T型糖尿病),2)食後血糖をただちに下げたい場合、3)従来の即効型インスリン製剤のインスリン作用が長引く場合、4)肝障害など食後血糖のみが高くなる場合に第1選択薬となり得ます。

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リスプロ インスリン

basal-bolus療法

 健常者では絶食時にも持続的に少量分泌されるインスリン(基礎分泌)と、食後に急速に余分に分泌されるインスリン(追加分泌)があります。食事によって変化する糖の流れをうまくコントロールするためには、基礎分泌と追加分泌の両方が必要です。

インスリン分泌がほとんど枯渇しているインスリン依存の患者では、すべてのインスリンを注射で補給しなければなりません。その場合、基礎分泌にあたるインスリン(basal)は、NPHインスリンやウルトラレンテインスリン等で、そして追加分泌のインスリン(boulus)はレギュラーインスリンで行うのがこれまでのやり方でした。

しかし、中間型、持続型製剤ではインスリンの皮下からの吸収にはそれぞれピークがあり、長時間にわたる一様なbasalのインスリン補給を行うのには困難な点がありました。またレギュラーインスリンの吸収は健常者の食後のインスリン分泌よりもずっと遅く、そのため食後の血糖上昇を十分に抑えられていませんでした。

 リスプロ-インスリン(商品名 ヒューマログ)は、超速効型インスリン製剤で、インスリンのbasal-bolus療法でbolusに求められる条件、早く吸収され作用が早く終わるという性質を備えています。

 リスプロ-インスリンは食事の直前に注射でき、食後血糖を良く抑えることなどの利点がありますが。一方、食後数時間経ってからの血糖値はレギュラーインスリン使用時よりも高くなる傾向にあります。リスプロの長所を十分に生かすには、併用する中間型、持続型インスリン製剤の調整や同時使用が必要です。

<長速効型インスリンが必要な理由>

 健常者ではインスリン分泌は30〜60分で最大となり、3〜4時間で元に戻ります。

 レギュラーインスリンを皮下注すると、血中インスリン濃度は注射後10〜20分で上昇し始め、90〜120分で最大に達し、元に戻るのに4〜5時間かかります。

 レギュラーインスリン注射時には約60分までは健常者よりもインスリン濃度は低く、4時間以降は高くなります。そのため、食後の血糖上昇を抑えるには、レギュラーインスリンは食前30分に注射する必要がありますが、実際患者がそのようにするのは難しい場合がありました。

 食後の血糖を抑えるためインスリンを増量すると、後になって低血糖が増えるというジレンマを生じ、強化インスリン療法の妨げになっていました。

 レギュラーインスリンの吸収に時間がかかるのは、注射液中ではインスリン分子が6量体を形成していて、皮下注射後、6量体のままではあまり吸収されず、組織液で薄まって2量体や単量体になってから吸収されるためです。

 6量体を形成しにくく、注射後すぐに2量体や単量体に解離するインスリン製剤ができれば吸収が早くなるはずです。超速効型インスリンは、インスリン分子の、2量体や6両体系性に関与する部分を修飾して、インスリン分子が会合しにくくした製剤です。

 2量体形成の際にはB鎖のC末端ふきが相互に逆向きに水素結合を作ります。この部分のアミノ酸配列を入れ替えることによって2量体を形成しにくいインスリンの製造が可能になりました。

 インスリン リスプロは初めて実用化された超速効型インスリンアナログ製剤で、インスリンのbasal-bolus療法でbolusに求められる条件、早く吸収され作用が早く終わるという性質を備えています。

 食後血糖を良く抑えることなどの利点がありますが、一方、食後数時間経ってからの血糖値は従来のレギュラーインスリン使用時よりも高くなりやすくなっています。

リスプロの長所を十分生かすには、併用する中間型、持続型インスリン製剤の調整や同時使用が必要です。

 2型糖尿病(NIDDM)の患者では、インスリンの基礎分泌はかなり保たれていますが、追加分泌が低下し、なおかつ遅れるのが特徴です。

 2型糖尿病で良いコントロールを目指すために、毎食前にリスプロを使用するのは、低血糖の心配が少なく、良い方法です。食事の直前に注射しても従来のレギュラーインスリンを30分前に注射したのに劣らない食後血糖抑制が期待でき、かつ重症低血糖が少ないことは、患者のQOLの面で評価されます。

       出典:日本病院薬剤師会雑誌 2002.2

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インスリン グラルギン   (ランタス注) アベンティス ファーマ

 中性の生理的pH領域で低い溶解性を示すよう設計されたヒトインスリンアナログ

 等電点がヒトインスリンのpH5.5からpH6.7に移行

 本剤は約pH4の溶液ですが、皮下注すると直ちに生理的pH7.4で等電点沈殿を起こし、微細な沈殿物を形成して皮下に滞留します。この沈殿物からインスリン グラルギンが緩徐に溶解し、皮下から血中に移行します。この溶解過程が皮下からの吸収律速となります。

特徴: 1回の皮下注でほぼ24時間にわたり生理的な基礎インスリン分泌パターンを再現。
   : 血糖降下作用のプロファイルは、明らかなピークを示さない。

インスリンアナログと細胞増殖活性

 インスリンには細胞増殖作用があります。インスリンの構造を変化させるとこの作用が増強される可能性があり、それよって癌の発症頻度の増加などが現れることがあります。
その作用により開発中止になった製剤もあります。


消毒薬耐性

   出典:薬事 2000.4

 消毒薬耐性を支配している遺伝子が発見されています。

 これらの遺伝子は伝達性プラスミドや染色体から検出されており、その細菌の耐性機構は、膜蛋白による薬剤の菌体外排出であるとされています。それらの耐性遺伝子にコードされている膜蛋白はエネルギー依存型の排出ポンプであり、菌体外に透過して入ってきた薬剤を菌体外に排出する機能を持つことによる耐性獲得が報告されています。

予防対策

 薬剤の濃度、作用時間、作用温度、汚染度(細菌数)は消毒薬の効果に及ぼす大きな因子です。これらを十分に考慮し、薬剤の特徴を把握したうえで使用しなければなりません。

 多くの耐性菌は低度に分類される消毒剤に抵抗を示しますが低濃度のアルコールを添加することで殺菌力の増強も認められています。さらに汚染が心配される用途に使用する際には高濃度のアルコール添加薬剤が有効な方法と考えられます。

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2002年3月1日号 No.332

消毒薬の耐性菌

    {参考文献}日本病院薬剤師会雑誌 2002.2

 これまで、消毒薬の抗菌作用点は複数であり、かつ有効濃度と使用濃度の差が非常に大きいため、抗菌薬とは異なり、消毒薬に対する耐性菌は出現しにくいと考えられていました。このため、消毒薬耐性菌なるものは存在せず、消毒薬に対する感受性が低下した消毒薬抵抗菌が存在しているのだという考えが主流でした。しかし、このような消毒薬に対する感受性が低下した菌株の中には、消毒薬耐性遺伝子を獲得した菌株、あるいは特定の遺伝子が変異したことにより消毒薬耐性菌となった菌株が存在することが明らかになってきました。

 消毒薬耐性菌は抗菌薬の耐性菌と同様に、感受性菌株とは遺伝的に明らかに異なっているものであることが、明らかになっています。

 初期の頃、MRSAの消毒薬耐性は4級アンモニウムを含む薬剤に耐性を示すと報告されていました。しかし、そればかりではなく色素系消毒薬、防腐剤にも耐性を示すことが分かってきました。

 さらにこれまで蛋白に結合しやすく感受性が測定できなかったポピドンヨード(イソジン)にも耐性菌が存在することが明らかになってきています。すなわち消毒薬耐性は消毒薬の化学構造や分子量に関係なく、各種消毒薬に交叉耐性示す多剤耐性となっています。ただし、重金属耐性(水銀等)や消毒薬分解による耐性機構では、個々の重金属あるいは分解薬物特異的に耐性を示しています。

<消毒薬耐性機構>

 消毒薬の多剤耐性機構に関しては、菌体外排出の促進であると報告されています。

 耐性菌は、細胞膜に排出ポンプを持っており、これは多剤耐性癌細胞が、各種抗癌剤を細胞外に排出してしまう機構と共通しています。

 グラム陰性桿菌は外膜と内膜を持つ二層膜構造のため、グラム陽性菌より薬剤排出機構が複雑で、複数の蛋白が関与しています。

<消毒薬耐性遺伝子の分布>

 消毒薬耐性遺伝子としては、
プラスミド系と染色体系のものがあります。

 プラスミド系の代表的なものは、黄色ブドウ球菌で発見されたqac遺伝子群です。高度耐性となるqacA、qacB遺伝子群は幅広い薬剤に耐性を示し、大きな伝達性プラスミドから検出されています。

 qacC、qacDは黄色ブドウ球菌に低度耐性を示します。これらを総称してsmr;small multidrug resisitance geneと呼ぶことが提唱されています。

 染色体性の消毒薬耐性遺伝子は、もともと染色体に存在していた特定の遺伝子が変異して消毒薬耐性を発現するようになったものです。ノルフロキサシン耐性遺伝子として見出されたnorA遺伝子は、排出ポンプをコードしていました。その遺伝子が変異して消毒薬に対しても耐性化してしまいました。

 消毒薬耐性MRSAは地域による分布の偏りはなく、全国に分布しており、最近の調査では、80%のMRSAが消毒薬耐性株となっています。

 最近(2002年)、院内感染事故を起こした病院から分離されたセラチア菌や、他の医療施設の流しから分離されたグラム陰性菌も標準株よりも消毒薬に対する感受性が低下していました。

 緑膿菌やセラチア菌はもともと消毒薬に対する感受性が低いのですが、さらに積極的に消毒薬を排出する菌株が存在していることになります。

 さらに、消毒薬との接触があまり考えられない環境からも消毒薬耐性菌株が検出されたことから、消毒薬耐性菌が病院から自然環境へ伝播していく危険性が危惧されています。

 現在病院で使用されている主な消毒薬の中で、耐性菌の存在が報告されていないものは、フェノール系、次亜塩素酸系、アルコール系のものです。

 しかし、フェノール系の消毒薬は現実には使いにくく、次亜塩素酸系も業務用の風呂等で恒常的に使用していると、ある日突然菌が増加する現象が認められています。使用する濃度や使用条件に注意しないと、耐性菌が出現する可能性があります。

 アルコール類でも、感受性の低下したセラチア菌やブドウ球菌等が検出され始めています。今のところ、消毒マニュアル通りの消毒法を遵守すれば問題はありませんが、不適切な消毒により、より高度な耐性菌株を増加させないことが重要です。


2002年3月1日号 NO.332

体から薬の効果が消えるのは、半減期の5倍 は こちらです。

添付文書の読み方(2)

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