無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学  

 

 

 

読み込み中

 しばらくお待ち下さい。

 

    

 

 

 

 

 


p1


MALToma
MALTリンパ腫
mucosa-associated lymphoid tissue

 MALT:気管支や消化管などに、外来からの抗原に対して粘膜を介して形成されるリンパ組織で、胃のRLH(reactive lymphoid hyperplasia)や腸管の孤立リンパ小節等がこれにあたります。

 MALToma(MALTリンパ腫)は、このMALTから発生する低悪性度リンパ腫で、1983年、節外リンパ腫の一亜型として、提唱され、消化管、気管支、唾液腺等に発生します。

 臨床的には1、長期間にわたって限局性の病変を示し、2、治療によく反応し、予後がよい。組織学的には1、centrocytelike cell、2、形質細胞の浸潤、3、リンパ濾胞の残存がMALTomaの特徴です。

 以前より胃のRLHと診断されていたものがこれに相当するといわれています。

 MALTomaが、リンパ節原発のリンパ腫と全く起源の異なる細胞から生じるものか否かは、今後の課題です。

 最近、胃十二指腸潰瘍や萎縮性胃炎などの胃病変として注目されているヘリコバクタピロリの除菌によって、このMALTomaが改善あるいは治癒すると報告が相次ぎ、両者の関連性に関心が集まっています。

 MALTomaの場合は、ヘリコバクタピロリの除菌が標準的な治療となっていますが、わが国では保険適用がないこともあって一般的になっていません。

     出典:SCOPE 1998.4

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

MALTリンパ腫に対する除菌治療

    出典:日本薬剤師会雑誌 2003.5

 1983年、リンパ腫の分類として、粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)と関連性がある節外性のB細胞性リンパ腫がMALTリンパ腫とされました。

 その病理学的特徴は胚中心細胞類似の腫瘍細胞(centrocyte-like cell:CCL)の増殖、腫瘍細胞による胃腺管の破壊像であるlymphoepithelial lesionの形成、腫瘍細胞の濾胞への増殖(follicularcolonizatin)、形質細胞への分化です。

 胃での後天的MALTはヘリコバクタ・ピロリ感染によって発生します。すなわち胃MALTリンパ腫はH・ピロリの長期持続感染を基として発生する疾患です。

 リンパ濾胞を形成する慢性胃炎から低悪性度リンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫(高悪性度リンパ腫)へと進展していくことが考えられています。

 胃低悪性度MALTリンパ腫にH・ピロリ除菌治療を行った場合、約70〜80%に病変の消失が認められています。しかし中には病変に変化のない症例や除菌後に急速に増悪した症例などもあり、H・ピロリ除菌に反応しない場合での2次治療として、放射線治療、化学療法などが選択されます。臨床的にはH・ピロリの除菌の適応判断が重要です、除菌治療後に病変が改善されてくれば、定期的な経過観察に移行できます。


p2

ステロイドによる白内障

 ステロイドは水晶体細胞で構成成分である水を増加させ膨化をまねきます。また、ステロイドが水晶体線維に特異的なアミノ酸を結合することにより、水晶体線維の配列に乱れを生じ、水晶体の混濁が生じるとされています。

 点眼などの局所的な使用で起こることはまれとされており、一般的には全身投与の副作用で生じます。

 特徴的所見としては、水晶体後嚢下皮質にも混濁が及びます。
 初期には自覚症状がなく、進行に従ってまぶしさやかすみ、視力低下を自覚するようになります。小児では混濁が水晶体全体に及びやすく、白色瞳孔の状態で発見されることもあります。

 ステロイドの使用期間が長いほど、また使用量が多いほど注意する必要があります。全身与薬による白内障では両眼に発生し、その混濁の程度は両眼ほぼ等しく、一方、局所投与の場合には片側点眼時には点眼した側のみに生じます。


p3

チロシナーゼ阻害剤

出典:府薬雑誌 1999.1 

 チロシナーゼ:銅を含む酸化還元酵素。動植物の色素産生の関わる酵素 

 このチロシナーゼの欠損がチロシナーゼ陰性型眼皮膚白皮症(白子症)という遺伝病の原因であることが明らかにされています。 

 皮膚のアザやシミのような褐色調の色素沈着はメラニン色素沈着によるもので、これはアミノ酸の一種であるチロシンがチロシナーゼの存在下でドーパへと変換し、さらにドーパキノンとなり、その後自動酸化によりメラニンを形成するという代謝経路のうちで起こります。 

 この代謝経路はチロシナーゼが関与している酸化還元反応が主体で、酸化の途中で多くの活性化酸素(フリーラジカル)が生じ、これらが細胞障害を引き起こします。しかし、正常の細胞ではこのような活性化酸素の産生はメラニン色素顆粒と言う一定の顆粒の中で起こり、細胞自体が変性、壊死等を起こすことはありません。 

 このようなチロシナーゼ反応を特異的に阻害するような薬剤があれば異常なメラニン産生を阻止することが可能と考えられます。 

 化粧品の分野では、チロシナーゼ阻害剤作用を持つ物質として、エラグ酸、アルブチン、コウジ酸などが知られています。 

 化粧品としてチロシナーゼ阻害剤活性を有するクリームなどを購入することはできますが、現在「チロシナーゼ阻害剤」として発売されている医薬品はありません。


メインページへ

2003年5月1日号 No.359

脳内移行を決める要因(抗ヒスタミン剤の眠気)

   出典:府薬雑誌 1999.1 

 脳内移行性は脂溶性、通常は指標として
水と油の分配係数で理解されることが多かったのですが、分子量がある程度大きくなってくると、それだけでは説明が難しいケースが出てきています。 

 ヒスタミン受容体拮抗薬の場合も、塩基性薬物輸送体により脳内に取り込まれることが明らかにされています。この輸送体に対する親和性は両性イオン型構造の薬物では低いことが考えられています。 

 両性イオン型構造とは分子内に陽イオと陰イオンの両方を持つ構造で、陽イオン型物質とは輸送体蛋白への親和性が変わっている可能性があります。海外も含めこのような両性イオン型のH1受容体拮抗薬が増えてきています。

 薬剤をカルボン酸型にすることにより、脳への移行性が大きく低下し、それを説明する輸送体を介する取り込みは仮説ですが、興味深いと思われます。なおカルボン酸型構造を取らず眠気頻度の少ない薬剤もあり、脳移行性を説明する場合には、輸送体親和性の詳細な解析と、さらに薬物の汲み出し機構をも合わせて考える必要があります。

 最近
P糖蛋白との関連が示唆されています。

<抗ヒスタミン剤一覧:当院採用分>

      (第1世代)                 
 眠
       ポララミン、ペリアクチンシロップ
       アリメジンシロッフ
 気
      (第2世代)                  
[強] 
       アゼプチン錠、ザジテン、ニポラジン錠
 |        
 |     (第3世代)                   
 |
 |     アレグラ錠、アレロック錠、アレジオン錠
 ↓      エバステル錠、ジルテック錠
       クラリチン錠

[弱」    (Th2サイトカイン阻害剤)         

        アイピーディ

      (ケミカルメディエーター遊離抑制剤)   

       インタール、リザベン
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

分配係数と眠気の関係
(分配率)

 
分配係数〜疎水性の尺度

 相接する2つの相の中にある溶質の濃度の比で、溶質の分配の程度を示します。


 膜内のイオン濃度の表し方によって分配係数の値は異なります。界面での膜内イオン濃度を単位面積中の開いているチャネルに入り込んでいるイオンの数とすると、分配係数の値は開いているチャネルの密度に比例します。またチャネルのイオン親和性にも関係しています。チャネルが飽和から非常に遠い状態にある場合、表面電位が変化する処置を施すと分配係数の値は変化します。しかし、チャネルが飽和に近い場合、膜表面のイオン濃度が変化しても膜内のイオン濃度は変化し得ないため、表面電位が変化したところで分配係数は変化しません。またこの場合、溶液中のイオン濃度の上昇と共に分配係数の値は低下します。
 
 一般に、抗アレルギー剤による眠気は脳に移行した薬剤がヒスタミン受容体を遮断した結果、引き起こされることから、薬剤性の眠気を予測するパラメーターの1つとして、薬剤の分配係数が用いられてきました。

 分配係数の大きな薬剤は血液−脳関門の透過性が高い上、受容体への親和性が高いため眠気を引き起こしやすく、逆に小さな値のものは、透過性や受容体への親和性が低く、眠気の発現頻度が少ないと考えらます。

 ただし、添付文書に記載されている分配計数値の解釈には注意が必要です。

1.薬剤がプロドラッグあるいは活性代謝物が生理活性の本体である場合、分配係数は親化合物の値なのか、それとも代謝物の値のなのか不明な場合があります。
2.分配係数を見積もる際の水相のpHによって異なります。また油相は何かによっても異なります。
3.分配係数はの値は実数値なのか対数値なのか

 例えば、クラリチンの添付文書によりますと、分配係数は pH7 l-オクタノールで1.2×10 4(100の4乗)これを対数値で表すとlogPC=4.1となります。

 アレグラのpH7 水-オクタノール系で2.0(logPC=0.3)と比較するとクラリチンのほうが眠気が出やすい見えます。 

 しかし、クラリチンの添付文書に書かれている値は親化合物のロラタジンのもので、その作用本体である活性代謝物のDCLのものではありません。

 ちなみにDCLの 分配係数は10でlogPCは1.0で小さい。

        出典:医薬ジャーナル 2003.6 等


p5

ホメオパチー
ホメオパシー
homeopathy ホメオパシーは「同毒療法」とか「同病療法」と訳されています。

         出典:治療 2002.1

 19世紀初頭のドイツの医師Samuel Hahnemannは、チャイナの皮からとったキニーネを食することで発熱、悪寒、下痢というマラリアと同じ症状が誘発されることが見出されました。さらにマラリアの患者にキニーネを食べさせたところ症状が出なくなることを発見しました。

 こうして「症状を起こすものは、症状をとる」という仮定のもとに自分の体で人体実験しながら症状を起こさせる物質とその量を確定して、それによる治療を確立し、250の病気を治したといわれています。この療法がホメオパチーです。

 現在、風邪などの解熱にNSAIDsを使用していますが、これは生体防御反応を妨害していることは一般にも知られつつあります。体温を上げることで免疫細胞が活性化され細菌やウイルスに対する抵抗力が増すからです。

 ホメオパチーでは、病気の症状は、病気を克服しようとする身体努力の現れであると考え、同様の症状を誘発する物質(レメディー)により病気と同じ波動を注ぎ込み、もっとひどい症状を起こさせます。それにより身体は「病気である」ということに気付き、自然治癒力を発揮すると説明しています。これを「類似の法則」と呼んでいます。

 ホメオパチーではもう1つ「無限小」という法則があります。

 病気と同様の症状を誘発させる物質(レメディー)は水に薄めて使用するのですが、この薄め方を極端にもとの物質の分子が検出できないレベルにまで薄めます。そして「薄められたものほど効き目が強力」という、これまでの科学常識では考えられないものです。

 勿論世界的に反論が起こったことは言うまでもありません。しかし、このホメオパチーを有効とする論文も後を絶ちません。

 イギリスでは、ホメオパチー専門の(しかも王立)の病院や研究施設が設立されています。アメリカでも最近10年くらいの間に代替医療として実用的に役立つと急速に広まっています。

    日本では2000年に「日本ホメオパチー医学会」が設立されています。

<ホメオパシー製品>

 最近、健康食品店、薬局、ダイレクトメール、個別訪問販売を通じて販売され、広汎な疾患に対する使用が宣伝されています。
 
 例:頭痛に対し最低量の頭痛発症剤を処方することにより身体の自然治癒力を高め治癒させるなど。  

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
オステオパチー

osteopathy

1874年、アメリカのDr.Andrew Stillによって発表された徒手療法

身体の異常な構造は体循環に悪影響を及ぼすと考えられ、体のゆがみを矯正すれば、自然治癒力を引き出せるというのがオステオパチーの原理です。

全ての筋肉・骨格の調整、内臓・内臓の支持組織や関節に多数存在する固有受容器に対するアプローチなど体のあらゆる部分が対象で、中心的治療法となる手技は、ポイントに対して最小限の力しか加えず、いたいというより気持ちがよいという感覚を覚えるくらいの矯正治療です。

   日本でもオステオパシー学会があります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カイロプラクティック
Chiropractic

1984年アメリカで考案された脊椎を調整する治療法

約32個ある背骨のずれ、あるいはあらゆる骨格の接合部の関節機能不全が、各神経を圧迫し、各組織に悪影響を及ぼすとともに生体の生命力(自然治癒力)を低下させると考え、脊柱の歪曲やズレ、変位、関節機能不全を元に戻そうとする手技。


p6


吸着ロス

出典:日病薬1999.4 

 ニトロール注、ニトログリセリン注を輸液チューブに接続し経時的に薬液濃度を測定すると薬物濃度が著しく低下することが報告されています。

 薬物濃度は開始後30〜60分後に、それぞれの初期濃度の30.6%、10.8%まで低下しその後徐々に回復します。

 1.医薬品の含量低下は、輸液容器表面への吸着ばかりでなく、容器への分配及び拡散による吸着現象を示します。

 2.吸着にはプラスチック容器の可塑剤として用いられているジエチルヘキシルフタレートが関与しています。

 エチレン・酢酸ビニル共重合体でも起こる。一方、ポリエチレンでは吸着は認められませんでした。 

 その他にも、ジアゼパム、フルニトラゼパム、ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系、シクロスポリン、塩酸ニカルジピン、ジルチアゼム、インスリンなど多くの医薬品がプラスチック容器内で含量低下を起こすことが報告されています。 

 分配係数、酸塩基解離平衡、溶液のpHなどの医薬品の物理化学的性質と輸液容器やチューブの材質に十分注意し、薬物投与設計を行う必要があります。


p7

腎機能障害でのNSAIDsの使用


出典:医薬品ジャーナル 1999.4 P143

 腎障害は、腎でのプロスタグランジン(PG)合成抑制作用にあるため、下記のことに注意するひつようがあります。

 できるだけ短時間のも、腎でのPG合成抑制作用の弱いもの、尿中への非活性体で排泄されるもの、それに過敏性腎障害を起こさない薬剤を選択します。、しかし、これらをすべて満足するNSAIDsはありません。

 実際には、短時間作用のロキソニン、ボルタレンなどがよく使用されています。

 長時間に続く疼痛の場合、フェルデン、スリンダク、メブメトンなどが使用されています。


p8

生ワクチンと不活化ワクチン

出典:JJSHP 5 1999 

<生ワクチン>

 病原性を弱めたウイルスや細菌等を接種して人体に軽微な感染を起こさせることにより免疫を獲得します。

 接種後1ヶ月は他のワクチン接種は不可 

 1回の接種で強固な免疫を獲得でき、その強さは自然感染と同様に終生免疫が期待できます。

 副作用:数日ないし、2〜3週の潜伏後に症状を呈することが多い。弱毒化されていますが、野生株の病原性は弱いながらも残っており、ある程度の副反応の発現は避けられません。しかし軽微な副反応がほとんです。

<不活化ワクチン>

 大量に培養されたウイルスや細菌等を集めて精製し、感染防御抗原をホルマリンや加熱等で不活化しまたは減毒処理を行ったもので数回の接種で強固な免疫を獲得することができます。

 接種後1週間は他のワクチン接種は不可 

 通常、2回以上の接種で免疫効果を獲得しますが、長くても10年以上は持続しません。

 副作用:アナフィラキシーなどのアレルギー反応として現れますので、接種後すぐに症状を呈する場合が多く見受けられます。過敏反応は通常一過性であり、後遺症を残した症例は現在まであまり報告されていません。

* 生ワクチン 

ウイルス:ポリオ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、黄熱 細菌:BCG 

* 不活化ワクチン 

ウイルス:日本脳炎、インフルエンザ、狂犬病、B型肝炎、A型肝炎 細菌:コレラ、肺炎球菌、百日咳・ジフテリア・破傷風(3種混合) レプトスピラ:ワイル病秋やみ  トキソイド 毒素:ジフテリア、破傷風、ジフテリア・破傷風(2種混合)


p9    2004年3月1日号 No.378

ワクチンの接種時期(日本での) 

 DPT
diphtheria‐tetanus‐pertussis(DTP)combined vaccine
〜ジフテリア、百日咳、破傷風混合ワクチン

   1:3ヶ月、2:4ヶ月、3:5ヶ月、4:15ヶ月、小6年(DT) 

 ポリオ(経口)

   1:3ヶ月、2:9ヶ月(生後3〜90ヶ月間に2回) 

 麻疹 1:(生後12〜90ヶ月間に1回) 

 風疹 1:(生後12〜90ヶ月間に1回だが、当分は中学生も対象) 

 BCG

   1:3ヶ月、2:小1年、3:中1年

 (4歳未満のツベルクリン反応陰性者)(小学1、2年および中学1、2年のツベルクリン反応陰性者) 

 日本脳炎 1・2:3歳、3:4歳、4:小4年、5:中2年 

 水痘 1:1歳以上で未感染者に1回 

 おたふく 1:1歳以上で未感染者に1回  


 <接種間隔がずれた場合の予防接種スケジュール>

* DPT 1期1回のみ〜2回接種し、通常の追加接種1回とします。

 1期2回のみ〜6ヶ月以上なら間隔が開いた時は、追加接種1回           

        〜6ヶ月未満なら、3回目を接種し、通常の追加接種1回

 1期3回のみ〜1年半以上間隔が開いていても、通常の追加接種1回   

          年齢が90ヶ月以上ならDTを追加接種1回  

* ポリオ

 1回のみ〜間隔はいくら離れていても2回目を行います

 2回のみ〜間隔はいくら離れていても途上国へ行くなら3回目を行います。 

* 日本脳炎

 1期1回のみ〜1年経過していれば、2回接種するか、1回接種して翌年追加接種1回。   

 数年経過していれば2回接種し翌年追加接種1回

 1期2回のみ〜2年以上経過していても追加接種1回

    {参考文献}JJSHP 1999.5 


メインページへ

ワクチンギャップとは

2011年8月1日号 No.549

 諸外国では、多くのワクチンが子供の成長、感染予防から必要であるという捉え方をしている一方、日本では、ワクチンの導入にそれほど積極的でなく、ワクチンの接種機会が少ない“ワクチンギャップ”という状況にあります。

’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’

 21世紀では、全ての子供はワクチンにより予防可能な疾患(VPD:vaccine preventable diseases)に罹患することなく生きる権利があるとWHO(世界保健機構)は述べています。しかし、日本でも多くの優れたワクチンが接種可能な状況でありながら、予防接種の種類によってはそれを受ける人が少ない、あるいは機会が少ないなどにより、その恩恵を受ける人口は必ずしも多くない状況が続いています。

 欧米の先進国では、VPDのうち15〜16種類のワクチンがすでに国民に無料で接種されています。一方日本では、予防接種法で予防接種を定期接種(無料)と任意接種(有料)に区分し、定期接種に入っているワクチンは国が推奨するが、任意接種のワクチンは法律外のワクチンとして国は推奨せず、接種を希望する者は個人の費用負担で行うという仕組みになっています。

 欧米の先進国のみならず開発途上国でも多くの国で子供たちが接種すべきワクチンに位置づけている予防接種が、日本では任意接種という分類になっていて、「国や自治体から連絡が来ない→ 個人の費用負担がある→受ける必要性がない(自己負担までしてやる必要ないワクチン)」という考え方になり、接種率が低くなっています。

 <日本(定期接種:無料)>

BCG,ポリオ、DPT(三種混合)、MR(麻しん、風しん)、DT(二種混合)、高齢者インフルエンザ

<日本(任意接種:有料)>

水痘、ムンプス、B型肝炎、インフルエンザ、Hib、PPV(肺炎球菌)、子宮頸癌、PCV(結合型肺炎球菌)、狂犬病、A型肝炎、ワイル病、黄熱病

<米国(接種推奨)>

1.B型肝炎:生下時、1〜2ヶ月、6〜18ヶ月
2.ロタウイルス:2、4、6ヶ月
3.DTaP(三混):2、4、6ヶ月、15〜18ヶ月、4〜6歳
4.Hib:2、4、6ヶ月、12〜15ヶ月
5.PCV:2、4、6ヶ月、12〜15ヶ月
6.IPV(ポリオ):2、4、6〜18ヶ月、4〜6歳
7.インフルエンザ(毎年):6ヶ月〜6歳
8.MMR:12〜15ヶ月、4〜6歳
9.水痘:12〜15ヶ月、4〜6歳
10.A型肝炎:12〜23ヶ月(2回)

 ワクチンギャップの招いた原因として、充実した医療保険制度高度な医療に甘んじ疾病予防に対して適切な時間や予算がかけられていない点、被接種者の直接費用負担が大きい任意接種というカテゴリーの存在が挙げられています。

 ワクチンギャップの解消には時代合わない欠点の改善、サーベイランスの充実、予防接種への理解度の底上げ、そして予防接種に関する議論を定期的かつ継続的に行える公的な場の設置が必要と思われます。

 感染症の診断、治療、予防の基本には、疾病の発生動向の把握(サーベイランス)が重要であることは、異論のないところではありますが、サーベイランスにより現状を把握することで、さらに強化すべき点、改善すべき点が明らかになるだけでなく、効果が数字として現れる事で、ワクチン事業にかかわっている者へのフィードバック、行政担当への説明などが可能となってくると思われます。

{参考文献}薬局 2011.7  国立感染症研究所感染症情報センター   神谷 元   岡部 信彦


2011年8月1日号 No.549

スタチン:感染症に対する有効性

 感染症にスタチンが有効である可能性が示唆されており、臨床応用に向けた更なる研究が待たれています。

 スタチンの持つ抗炎症作用や免疫修飾作用といった多面的作用が明らかとなり、敗血症や肺炎などの感染症分野でのスタチンの研究が進んでいます。

 スタチンの各種細胞への影響は多岐にわたり、各免疫担当細胞への影響には炎症性サイトカインやケモカインの抑制、Th2へのバランス変化などが報告されており、基本的に感染防御に関する炎症反応を傾向があります。

 肺炎モデルマウスを用いた検討では、スタチンの使用により抗炎症効果が示されたとの報告がある一方で、肺の炎症反応を増強させたとの報告もあり、スタチンの感染症治療に対する評価は明確ではありません。

 ヒトと同様に真核生物である真菌は、HMG-CoA還元酵素を律速酵素とするメバロン酸経路を持っています。病原真菌のメバロン酸経路の最終産物は、主な抗菌薬の標的にもなっているエルゴステロールであるため、スタチンのエルゴステロール合成阻害を機序とした抗真菌薬としての作用が期待されます。

 深在性真菌症で重要ないくつかの真菌に対して、スタチンが静真菌的、あるい殺真菌的作用を持ち、他の抗真菌薬との相乗効果があることが確認されています。しかし、真菌の発育抑制には現在の臨床的な用法・用量では達成不可能なスタチン濃度を必要とするため、抗真菌学的な効果を目的としたスタチンの使用には、用法・用量の検討、あるいは真菌のHMG-CoA還元酵素により選択性の高いスタチンの開発などが必要です。

 近年、現行のスタチンの用法・用量による肺炎の予防効果については、スタチンの使用が肺炎の予防的な効果を持つとの報告がある一方で、肺炎の予防効果は無いとの報告もあります。

 肺炎による死亡抑制効果については、レトロスペクティブな検討では、スタチン使用群は非使用群に比べて、入院後30日以内の死亡率が低かったと報告されていますが、2つのプロスペクティブな観察研究では、互いに異なる結果となっています。

 このように現時点ではスタチンと肺炎の関係について結論を導くことは困難ですが、今後さらに感染症でのスタチンの研究領域が広がることが予想されます。

{参考文献}薬局 2011.6


ADEM
急性散在性脳脊髄膜炎

ADEMは、ウイルス感染後やワクチン接種後に稀に生じるアレルギー性の脳脊髄膜炎です。ウイルス感染後のADEMは、発疹性ウイルス(麻疹、風疹、水痘、帯状疱疹等)、インフルエンザウイルス等のウイルスによる感染に引き続いて発症することが多いとされています。

一方、ワクチン接種後のADEMは、日本脳炎の他、麻疹やインフルエンザ等のワクチン接種に引き続いて発症します。

 初期症状として、頭痛、発熱、痙攣等が見られ、ステロイド等の治療により多くの場合、正常に快復しますが、運動機能障害や脳波異常等の神経系の後遺症が約10%程度あるといわれています。


p10

トロンビンの飲み方

出典:JJSHP 1999.6 

 糖蛋白であるトロンビン製剤は上部消化管出血の治療に経口与薬されますが、胃酸による失活を防ぐためにあらかじめ胃内pHを上昇させておかなければいけません。 

 各社の添付文書には牛乳またはリン酸緩衝液を使用するように記載されています。

 添付文書にはリン酸緩衝液についての具体的な情報が記載されておらず、医学雑誌等にマーロックスに混合して使用する論文がいくつか掲載されています。

 マーロックスは止血効果を持つとされ、制酸剤としても有効性が高い。しかし、その成分である水酸化Al、水酸化Mgはトロンビン製造の際に吸着剤として用いられるので、トロンビンとマーロックスは配合不適と考えられます。

札幌医大では、1.まず、リン酸緩衝液を約50mL服用する。 2.次に、トロンビン製剤を約50mLのリン酸緩衝液に溶解する。 3.はじめの服用から約5分後、2,で溶かしたトロンビン製剤を服用する。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 追補 :JJSHP 2001.11

 0.5%炭酸水素Naは、リン酸緩衝液に匹敵する優れた胃酸中和作用を有し、しかもトロンビンに影響を与えないことから、消化器系の副作用を考慮しても、臨床応用に耐えうるものと思われます。

作り方(1) 炭酸水素Na末 0.5g100mLの水に溶解。
    (2) メイロン注7%を14倍に希釈


p11

パーキンソン病と薬剤性パーキソニズムの鑑別点

出典:薬事 1999.6            

          パーキンソン病             薬剤性パーキソニズム 

 原因薬剤   なし(悪化の原因にはなる)      あり
 病気の進行 非常に緩徐               比較的速い
 初発症状   振戦が多い               歩行・運動障害が多い
 振戦の性質  静止時に目立ち規則的        姿勢、動作で誘発・増強
 筋固縮    歯車様                  鉛管様または歯車様
 運動障害   無動、寡動、小歩、突進、すくみ   動作の遅さと少なさが目立つ
 症状の左右差 初期には偏側性           通常は両側性


p12

コラーゲン療法
 尿失禁

出典三星堂 Q&A 

 尿失禁の治療法として、尿道内腔に狭窄を形成し禁制機能を改善させる「尿道周囲注入療法」は古くから用いられ、当初はテフロンペーストが注入用素材として使用されていました。しかしテフロンは注入に圧力を要し注入が困難なこと、尿道粘膜下組織からペーストの噴出があることといった技術上の問題に加え、注入部位からテフロン粒子が移動し肺などに塞栓を起こす可能性や発癌性の疑いもありました。 

 最近そのような問題を改善する素材として、GAXコラーゲンが開発され、諸外国で臨床に導入されるようになりました。 

 GAX:Glutaraldehyde Cross linked Collagen 

 適応症例 腹圧性尿失禁または真性尿失禁を有する患者


p13

脱毛の対策

 抗癌剤(ドキソルビシン等)

出典:三星堂Q&A 

 抗癌剤による脱毛の機序は明確にはされていませんが、毛疱内毛母細胞を障害するためと考えられています。

 しかし毛母細胞が完全に障害されて無くなることはないために、脱毛は一時的、可逆的であることが多い。 

 対策としては、1.頭蓋冷却法(ゲルパック法、氷嚢法等)、2.育毛プロテインクリーム使用等が考えられています。 

 1.の場合は、薬剤投与15分前から頭部の冷却を開始し、投与終了後も30〜45分間連続して冷やし、頭皮温を32℃に維持します。 

 2.育毛プロテインクリームとしては、テタリスクリーム(三恵製薬)が販売されています。主成分はアルブミン、グロブリン、メチオニン、酢酸トコフェロールなどであり、ダメージを受けた毛根に栄養を補給し、毛母細胞を活性化させることにより効果を発揮すると考えられています。 

 1日3回、1回1チューブ(3g)とし頭皮全体に擦り込む。 顕著な脱毛が治るまで約3週間は使用を継続することが望ましい。 


p14

ライ症候群とバルプロ酸

バルプロ酸(VPA):デパケン、バレリン 

出典:月刊薬事 1998.4 

 1979年頃より、VPAによるライ様症候群についての報告が認められています。その原因として、VPAによる高アンモニア血症の発現があり、血清カルニチン低下との関連が指摘されています。すなわち、VPAによる遊離カルニチンのアシルカルニチンへの転換、及び腎での再吸収の低下などが考えられていますが、詳細は不明です。 

 また、VPAやその代謝産物による尿素サイクル酵素の阻害などの報告があります。遊離カルニチンの欠乏やカルチニンパルミトイルトランスフェラーゼの不活性状態では長鎖脂肪酸はミトコンドリア外に留まり酸化を受けます(ジカルボン酸産生)。

 一方カルニチンはアシルCoAや、種々の有機酸、脂肪酸と反応しアシルカルニチンとなり、有毒物質の尿中への排泄を促します。    


p15

SCU

Stroke care unit 

 出典:JJSHP 2000.4 

 急性期脳卒中を専門的に扱う独立した診療ユニットで、急性期からリハビリテーションまでの脳卒中に一貫して対応する診療システム 

 従来の臨床科の枠を越えた包括的な医療システムでstroke unit(SU)あるいはstroke intensive care unit(SICU)と呼ばれることもあります。 

 SCUの目的は、脳卒中患者を発症直後に迅速に収容し、神経内科、脳神経外科、循環器科、麻酔科などの専門医から構成される医師団、看護婦、理学療法士などの医療チームの連携のもとに、独立した病棟で脳卒中急性期の包括的診療を迅速かつ効果的に行ない、治療成績の向上、早期の機能回復などを目指すことにあります。

 リハビリテーション開始までの期間の短縮、在院期間の短縮、転機の改善につながると期待されています。


p16

キマーゼ 

   出典:ノバルティスファーマ資料 医薬ジャーナル2003.2

 レニンまたはACEに依存しないAU産生系としては、キニン・テンシン以外に、トニンやカテプシンD・G、キマーゼなどがあります。 

 「キマーゼがACEより強力にかつ選択的にAUを産生することは特筆されてよい。」

 キマーゼ活性はヒトの皮膚、消化管、心血管などの組織で確認されており、心臓および血管でのAU産生能はACEより大きい。これらの点から、心肥大や心筋症、内膜傷害時の血管肥厚や動脈硬化といった病態でキマーゼの関与が想定されています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ACE以外もアンジオテンシン1を2へと変換し、血圧上昇の誘因となる新たな酵素が発見されました。それがキマーゼです。
キマーゼは肥満細胞が分泌するセリンプロテアーゼで、多くの動物が持っているものです。

 ですから、一口にアンギオテンシン2(A2)産生といっても2種類あって、ひとつは以前から言われてきた血液循環系に依存する「全身性レニンーアンジオテンシン系」で、もう一つは血管のACEやキマーゼに依存する「血管局所アンジオテンシン2産生系」ということになります。

 重要なことは、キマーゼのA2変換能は組織が傷害を受けたときのみに活性化されるということで、そして、このキマーゼからのA2受容体拮抗剤は有効ですが、ACE阻害剤の場合は無効であることです。

 高血圧治療の目的は動脈硬化などの臓器傷害を防ぐことであり、高血圧病態についてはキマーゼ抜きに語ることは出来ません。


p17

機能水

出典:薬事 2000.4 

 現在、関係の研究会・学会等で使用されている「機能水の」範囲は、「原水に水溶性の電離性無機物質(食塩、塩酸等)を添加し、電解水生成装置を用いて電解することで得られる産生水、アルカリ水の総称」ですが、隔膜を介して得られる強酸性電解水、強アルカリ水と無隔膜で電解する弱酸性電解水、弱アルカリ電解水があります。 

 そして、「驚異の水」として報道された強力な殺菌力を示すとされているものは、強酸性電解水がその中心的存在です。 

 強酸性水が院内感染防止対策で利用されて効果をあげています。

例: 手洗い用、環境消毒  医療器具・機械の消毒〜内視鏡、透析機器  

アルカリイオン水

 アルカリイオン水は、制酸、胃酸過多、消化不良、胃腸内異常発酵、慢性下痢などの胃腸症状に効用があるとされていますが、その作用機序は明らかにされていません。

 アルカリイオン水の飲用効果としての臨床的検討の報告はあまりありませんが、便通異常をはじめとする腹部症状の改善に有効であるとしたものもあります。しかし、この作用がアルカリイオン水特有の作用であるのかあるいはその作用機序は何に由来するのかは今のところ不明といわざるを得ません。

 アルカリイオン水の飲用が、短鎖脂肪酸をはじめとする腸管内環境を変化させるとの知見もあり、その効用の解明には多面的な検討が必要と思われます。

クリック → 無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学 こちらも ご覧下さい。