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エスタブリッシュ医薬品
エスタブリッシュット医薬品

 近年、特許期間満了後の長期収載品と後発医薬品(ジェネリック)を総称して、エスタブリッシュ医薬品という新たな概念が提唱されています。

 新薬の登場により、これまで治療法のなかった疾患が治療可能となり、また、治療効果が向上するとなれば、患者にとっては大きな福音です。しかし新薬が登場したからといって、既存の医薬品が不必要になることはありません。例えば、降圧療法での利尿薬の有用性が見直されています。また、糖尿病治療薬のビグアナイド系薬では、新たな効果も報告されています。

 従って、既存薬が持つ利点を生かす、あるいは再発見することは、治療の選択肢を増やす上でも重要と思われます。

 また、既存薬で治療可能な疾患や患者の場合、効果と安全性に対する評価が確立している「標準的治療薬」と言われるようになった医薬品を用いることで、医療従事者は定型的な治療を安心して行うことができ、患者にとっても医療コストが抑えられます。つまり、質の高い医療を行う上で新薬と標準的治療薬(エスタブリッシュ医薬品)は車の両輪であり、両者の共存が求められます。

 新薬か後発品かといった選択ではなく、新薬、長期収載品、後発医薬品を問わず、それぞれの医薬品の特徴を評価して選択することが重要です。その意味で、効果と安全性に関する評価が確立している標準的治療薬の果たす役割はかなり大きいといえます。

 エスタブリッシュ医薬品は、長期の臨床使用経験に基づき、効果と安全性の評価が確立されており、今後も長く使われていく標準的治療薬を意味しています。具体的には、長期収載品と後発医薬品を総称する名称です。

 エスタブリッシュ医薬品と概念が似ているものとして「ビンテージ医薬品」や「クラシック医薬品」などがありますが、これらは長期収載品に対する呼び方と言えます。今後幾多の議論を経て概念が固まっていくと思われますが、「エスタブリッシュ医薬品」の誕生は、標準的治療薬の重要性を再評価し、長い使用経験を持つ医薬品の意義を見直そうとする動きとして評価できます。

      出典:医薬ジャーナル 2012.12

E-drug

essential drug
必須医薬品


WHOの定義では、「大多数の住民のニーズを満たし、いつでも利用可能であるべき医薬品」のこと。

<利点>                        <欠点>
医療の質・コストの管理の向上          医師の“自由な処方権”の簒奪の可能性
医薬品使用の知識普及・教育が容易      新薬開発を阻害
地域の医療の質の保証
医薬品流通の簡素化
医薬品の副作用の発見が容易
治療のコンプライアンスが向上

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P-Drug:Guide to good prescribing drug    

Personal drug

   優秀処方薬 

 WHOが発行した『Guide to Good Priscribing』では,薬物治療の論理に基づいて医師が適切に選択した医薬品を「P-drug(Personal drug)」と呼んでいます。

 「P-drug」は,医師がよく診る患者の病気を治す医薬品グループのことです。効果や安全性,費用などを改めて考えてから,医師が通常,安心して処方できる薬品がP-drugです。またそれを再考するとき,2番目,3番目に使用する薬品も,当然考慮しなければいけませんから,1つのクラスの中で治療する段階的なアプローチとなります。

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出典:JJSHP 2000.7

P-drug

personal drug あるいはpriority:最優先

自分の手持ちの薬

 自分が日常良く診療する疾患群について、それぞれの疾患毎に予めP-Drugを選択しておくことで合理的に治療を進めることができる。というもの。

 そして、このP-drugwp選択するにあたっては、他の人々(先輩医師、根拠に乏しい製薬企業の情報など)が考え実行していることを盲目的に真似るのではなく、自分自身でエビデンスに基づき、医薬品を選択しなくてはならないとされています。

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「P-drug」       丁 元鎮(日本病院薬剤師会広報部部員)

 P-drug 「自家薬篭中」と訳せば分かりやすい。ただし、P-drugは単に「治療に使える、自分の得意な薬品リスト」のことではありません。そのようなリストは、臨床経験豊富な医師が自らの手の内を披瀝する「私の処方集」的なものにしかすぎません。

 一方、P-drugは剤形・用量(投与)計画・治療期間といった情報を医師が完全に把握し、患者個々の問題点に応じた適正な薬物治療を選択するためのプロセス全体と、その結果選択された薬の集合を指します。

 大方の医師はそのようなプロセスをごく自然に実践しているではないかという人があるかも知れませんが、必ずしもそうとは限りません。実際には、多くの医師は次のようなプロセスで処方を覚えていく:先輩医師のまねをする→薬の名前や薬理作用を覚える→自分なりの処方にアレンジする→経験に頼り「この組み合わせがいちばん良いはず」と考える。こういった臨床経験にそれなりの価値があるかもしれませんが、evidence には乏しいと思われます。

 同様に、P-drugリストは最終的に医師個人が作成するものです、その際陥りやすい落とし穴として:
・指導者の使っているリストをそのまま使う
・治療ガイドラインをうのみにする
・その他、既製の医薬品集を無批判に用いる
などが考えられます。このようなプロセスは "Evidence-based" とは言えません。


 WHOが出版している "Guide to Good Prescribing"(日本語書名:「P-drug マニュアル:WHOのすすめる医薬品適正使用」,医学書院,1998)[1]によれば、医薬品の適正使用(すなわちP-drugリストの作成)手順は次のようになります。

Step1. 診断を定義する Define the diagnosis
患者の症状、疾患に用いられる、一般的な第1選択薬を考える。この時点では患者個人に合っているかどうかはまだ考慮しなくてよい。
Step2. 治療目標を特定する Specify the therapeutic objective
薬物によって何をしたいか(目標)を正確に定義する。これが明確であるほど、P-drugの選択は容易になる。
Step3. 有効な薬物群の目録を作成する Make an inventory of effective groups of drugs
治療目標と各種薬物との関連付けを行なう。
Step4. クライテリアに従って有効な薬物群を選択する Choose an effective group according to criteria

薬物群の選択には次のような視点が求められます。

(1)有効性 薬物動態学:ADMEの観点から比較 → 用量計画 薬力学
(2)安全性 可能性のある副作用(できれば出現頻度と安全域も)
(3)適合性 禁忌、全身状態、妊娠、授乳期、食物、剤形、用量計画
(4)治療費 薬剤経済学的な検討
Step5. P-drugを選択する Choose a P-drug
(1)活性物質と剤形を選択する
(2)標準用量計画を選択する
(3)標準治療期間を選択する

 このようにしてP-drugを選択し、ようやく処方を書くに至るわけですが、処方後はStep6.として「治療のモニター(中止を含む)」を行ないます。なお、診療の中ですべての患者に薬物療法が必要とは限らないことも銘記すべきです。すなわち治療法として1.助言と情報提供 2.非薬物療法 3.薬物療法 4.専門医への紹介なども考慮に入れておくことが肝要です。

 どのような治療を開始するにせよ、P-drug 同様の "P-treatment"(Personal treatment)の手順を踏むべきであると前掲書は述べている。すなわち次のような手順です。

適正な治療の手順 The process of rational treatment
StepT. 患者の問題を定義する
StepU. 治療目標を特定する
StepV. 患者にとって自分の P-treatment が適切であるか検証する
StepW. 治療を開始する
StepX. 情報、指示、注意を与える
StepY. 治療をモニター(または中止)する

 以上述べたように、P-drugの方法論は薬物治療における「問題指向システム(POS)」および「EBM」の徹底ともいえます。また、WHOが提唱する "E-drug(essential drug):必須医薬品リスト" の考えにも通じます。

{参考文献}
[1]津谷喜一郎他訳:P-drug マニュアル-WHOのすすめる医薬品適正使用-,
医学書院,1998.
[2]別府宏圀:薬の適正使用−P-drug−,放送大学教材「薬の歴史・開発・使用」,
放送大学教育振興会,2000.


DPB:Diffuse Panbronchiolitis

エリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)小量長期療法

 従来びまん性汎細気管支炎(以下DPB)の予後は不良とされてきましたが、エリスロマイシン治療により治療成績が改善されてきました。        
                                  
 DPBにおけるエリスロマイシンは常用量の半分で有効とされ、与薬2ヵ月頃より明らかな咳・痰の減少、呼吸困難の軽快がみられます。    
                                  
 エリスロマイシンは抗生剤としての作用よりもリンパ球系に働き活性化を抑制し、好中球が炎症部位に集まるのを抑制するとされています。好中球は気道局所においてス−パ−オキサイド産生により組織障害を惹起しますが、エリスロマイシンはこれも抑制し、イン ビトロでもリンパ球・好中球の作用を押さえることが確認されています。しかしその詳しい作用機序には不明な点もあります。 関連記事(緑膿菌アルギネ−ト)

 また類似病態として慢性気管支炎や気管支拡張症における有効性も次第に明らかになってきています。                      
 出典:薬局 5 1995                 

 近年、難治性の慢性気道感染症であるびまん性汎細気管支炎(DPB:Diffuse Panbronchiolitis)や慢性副鼻腔炎に対してエリスロマイシンなどの14員環系薬剤の少量長期与薬の有効性が確かめられています。

 この作用機序はまだ明確ではありませんが、本来の抗菌作用によるものではない新しい作用機序として気道分泌抑制、リンパ球活性化、NK細胞活性化、好中球エラスターゼ産生抑制、細菌の付着能抑制など多彩な活性が報告されています。

緑膿菌バイオフィルムに対する破壊作用〜16員環には認められず、14員環系のみ

出典:日本病院薬剤師会雑誌 1999.11

関連記事 エリスロマイシンとモチリン


アトピーとIL−5特異的遺伝子転写抑制薬

IL:インターロイキン

出典:JJSHP 1997 5

 T細胞・好酸球性炎症がいわゆる“アトピー疾患”の本体であり、治療のターゲットとして重視されるようになってきました。特に活性化T細胞より産生されるIL−5は、好酸球特異的な活性化因子であり、喘息患者の気管支肺胞洗浄液(BAL;Bronchoa lveolar lavage)液中に高濃度に認められ、有症状者では、血液中でも検出されることから気道の好酸球性炎症成立に深くかかわっているものと推測されています。

 気管支粘膜生検組織や、 BAL液中に回収される細胞の免疫組織学的解析を行って、気管支喘息患者の気道炎症局所には、活性化したCD4+(ヘルパー)T細胞の浸潤が顕著にみられること、喘息の重症度や気道過敏性の程度と活性化T細胞数との間に相関が認められること、好酸球数とT細胞数とが相関すること、さらに喘息患者では末梢血中にも、活性化T細胞数が増加し、ていること等が明らかになっています。

 これらの知見は、すべて気管支喘息の好酸球性炎症は、ヘルパーT細胞と大いに関連があることを示しています。さらに喘息患者の気道粘膜に存在するT細胞は、IL−3,GM−CSF,IL−5のmRNAを発現しており、これらのサイトカインの産生により好酸球の活性化を促進する可能性が示唆されています。

アトピー型気管支喘息患者の末梢血単核球(PBMC)をアレルゲンであるダニ抽出抗原で刺激すると、上清中に健常人PBMCに比べてはるかに大量のIL−5を産生します。このIL−5産生は、CD4+T細胞に由来する。アトピー型気管支喘息患者が有するダニアレルゲンを認識するT細胞は、IL−5を産生し、好酸球性炎症の成立に重要な役割を演じていることが示唆されます。

気管支喘息

1.アトピー型〜主として小児期に発症して、ダニなどのアレルゲンに対するIgE抗体を有する。全体の約2/3

2.非アトピー型(内因型、感染型)〜成人発症に多いIgE抗体が認められない。

 この2つは、極めて似通った病像を呈することが特徴であり、喘息には、IgE抗体とは異なる、アトピー型、非アトピー型に共通の病因が存在することをうかがわせます。 非アトピー型の気管支喘息患者でも、IL−5産生は、健常者に著しく亢進しています。 以上の知見は、T細胞のIL−5産生を制御することが、好酸球性炎症の治療につながることを強く示唆しています。

 新種の化学物質(OM−01)が、IL−2やIL−4の遺伝子転写には影響せず、IL−5の遺伝子転写をきわめて効果的に抑制します。

マウスの遅発型喘息モデル(in vivo)で好酸球浸潤を抑制。



ブドウ糖を多く含む飲料水

ベイスン錠服用中の患者の低血糖

低血糖に対する救急処置

 急に異常な空腹感や冷汗、手足のふるえ、目のちらつきなどの症状が現われた時は、血糖血が低下していますので、10〜15gのブドウ糖をとって下さい。通常の砂糖などでは効果がありませんので注意して下さい。 ブドウ糖が多く含まれている飲料水としては、はちみつレモン、コカコーラ、オロナミンc、ハイシーアップル、ハイシーオレンジなどがあります。これらの飲料水250ml(約1本分)でブドウ糖10g程度を摂取することができます。


アミロイドーシス

DMSO;ジメチルスルホキサイド

出典:薬事新報 1998 No.1510

 線維構造を有する特異な「アミロイド」と呼ばれる蛋白質が、全身の諸臓器や組織の細胞外に沈着した結果起こる代謝性疾患であり、沈着の部位により、多彩な障害が現れる。 病因により、原発性、骨髄腫に合併するもの、持続性、遺伝・家族性、局所性、老人性、その他のものに分類することができます。

 沈着する主要なアミロイド蛋白は、原発性と骨髄腫に合併するアミロイドーシスでは免疫グロブリンL鎖に由来するAL蛋白、続発性ではAA蛋白、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)では、異型プレアルブミンとなっており、この他、老人性アミロイドーシス(AS)、皮膚アミロイドーシス(AD)、また甲状腺髄様癌に合併したアミロイドーシスでは、カルチトニン関連物質であるといわれています。

 これらのアミロイド蛋白は、生体の種々の構成蛋白に由来するか、あるいは種々の病気によって作られる一種の終末的物質に由来することから、早期発見が困難で、進行例でも鑑別しにくい。 さらに重要臓器が侵襲を受け、沈着や発症の原因が不明で、沈着物質が生理的条件下で難溶であることから、アミロイドーシスは予後不良の難病であり、本質的な治療法が無く、もっぱら対症療法が行われています。

 DMSO;ジメチルスルホキサイドは米国では間質性膀胱炎に対する症状と改善剤として無菌の50%w/w膀胱内点滴注入液が市販されています。日本では医薬品としては認可されておらず、一種の有機溶媒として利用されることが多い。

(CH3)2SO 分子量78.13の液体

 薬理作用〜膜浸透促進、局所鎮痛麻酔、抗炎症、鎮静、細菌発育阻止、冷却、一過性利尿などの作用を有するとされています。

 DMSO療法は、全身性アミロイドーシスでの対症療法の一つで、作用機序は十分に解明されていませんが、アミロイド蛋白の沈着抑制・分解促進あるいは抗炎症、鎮痛効果などによるものと考えられています。

与薬法〜外用塗布、内服、静注、腸注など

 外用としては、DMSOの50〜90%希釈液(蒸留水)を1日10〜20ml罹患部皮膚に塗布し、皮膚が乾燥するまで被覆せずに放置します。塗布後迅速に浸透し、5分後には血中に出現し、4〜6時間も血中濃度が維持されるといわれます。 内服では、DMSOは独特のニンイク臭を有するため、ハッカ水、単シロップ、ジュースと混ぜ、1日5〜20mlを2〜3回に分けて服用します。

 副作用は長期大量の動物実験で水晶体混濁、ヒトでは呼気のニンニク臭、味覚異常、数%以内の局所皮膚炎、嘔吐、頭痛など、特に重大なものは認められず、比較的安全と考えられますが、慎重に観察する必要があります。

 アミロイドーシスの他の療法としては、免疫抑制剤、NSAIDs、コルヒチン、セファランチン、自律神経失調調整剤、血漿交換などが試みられていますが、いずれの治療法も複雑な病因のため、確固たる治療効果が上がっていないのが現状です。

出典:1990.11 「見捨てられた良薬」

 DMSOは細胞外へ沈着したアミロイド線維蛋白の生体内での解離を目的として臨床試用されており、‘厚生省特定疾患アミロイドニューロパチー調査研究班’を中心にして治験がなされています。

 DMSOで有効であった症例は、3ヶ月以上5ml/日の持続 長期与薬できずに終わってしまった例〜@急な転帰をとった重篤例、A副作用で中止した例、B無効例 本症の成り立ちが重要臓器へのアミロイド沈着であり、沈着が自然に消失する例はほとんどなく次第に沈着することが多く、広く進行するものであるからDMSOを1週間や1ヶ月で効果がないと結論を下して中止せず、持続与薬の工夫の必要性を示唆している。 医薬品ではなく試薬であるから、患者もしくは家族の承諾を得ること。

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透析アミロイドーシス

 長期透析患者では関節や軟部組織にβ2ミクログロブリン(BMG)を前駆物質とするアミロイドが沈着することによって様々な病変が引き起こされます。

 アミロイドの沈着によって手指が自由に曲がらず激しい痛みを伴う手根管症候群や破壊性脊椎関節症、骨嚢胞などの骨関節障害などを総称して透析アミロイドーシスといいます。

 透析開始後12年の患者50%に、20年後の患者には100%にアミロイドーシスが発症するといわれており、ハイパフォーマンス膜の使用やHDF・HFや選択的カラムを用いたDHPなどの施行によりBMGを積極的に除去する対策が試みられています。

    出典:月刊薬事 2002.5


パリアティブケア

palliative care

出典:日病薬誌 1999.1    関連項目  緩和ケア概論 もご覧下さい。

 パリアティブケアは緩和ケアを意味します。

 パリアティブケアとほぼ同義の言葉としてホスピスと言う言葉が使われる。

 ホスピスが終末期の医療を行う施設という語感があるのに対して、パリアティブケアは何を目標とするかによって規定された概念です。

 WHOによるパリアティブケアの定義では「治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患を持つ患者に対して積極的で全体的な医療ケアであり、痛みのコントロール、痛み以外の諸症状のコントロール、心理的な苦痛、社会面の問題、霊的な問題と解決が最も重要な課題となる。最終目標は、患者とその家族にとってできる限り良好なQOLを実現させることである。」となっています。

 したがってパリアティブケアは末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対しても癌などの病変の治療と同時に適用すべきです。また、在宅医療が進展する今日、在宅でのパリアティブケアも必要不可欠となると思われます。


高カルシウム血症

なんらかの要因で大量のカルシウムが体内に吸収され、腎臓の排泄能力を超え血清Ca濃度が10.5mg/dl以上になった場合に高カルシウム血症となります。

高カルシウム血症の原因としては悪性腫瘍に伴うものと原発性副甲状腺機能亢進症が最も重要で、誘因となる薬剤としてはビタミンD、チアジド系利尿剤などが知られています。

一般的に4g/dl以下の低アルブミン血症を伴う場合は、

      補正Ca(mg/dl)=Ca+〔4−Alb(g/dl〕を用いないと高カルシウム血症を見逃すこともあるので注意が必要です。

高カルシウム血症では尿の濃縮力が低下しているため、脱水状態であることが多く、その補正を行うのが第一です。

    出典:日薬医薬品情報 Vol.12 No.7(2009.7)


MAH:malignancy associated hypercalcemia

悪性腫瘍と高カルシウム血症

ビスホスホネート(ビスホスフォネート)

MAH:malignancy associated hypercalcemia

出典:医薬ジャーネル 1997、5 P133

 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症(以下MAH)は、これまで著効する薬剤がみあたらず、その治療はかなりなおざりにされていました。しかし近年、強力な骨吸収抑制剤(ビスホスホネート)が開発され、MAHの治療はやりがいのあるものになってきています。 ビスホスホネート剤は、骨吸収にのみ親和性があり、破骨細胞による骨吸収を長期間にわたり抑制します。ビスホスホネート剤を1回、点滴静注するだけで高カルシウム血症は14日以上も是正されます。(与薬後に発熱が生ずることがありますが、その他の副作用はいずれも軽微なものです。)

 MAH患者の高カルシウム血症が是正されるとQOL(生活の質)が向上し、本人はもとより家族からも喜ばれます。もはやcureは望めないMAH患者には、早期より積極的に治療していくことが推奨されます。

 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症(malignancy associated hypercalcemia;MAH)は、もっとも重篤な腫瘍随伴症候群であり、その発生も高頻度です。従来は、MAHに対する効果的な薬剤がなかったことと、医師側の諦観あるいは無関心とがあいまって、MAHの治療はかなりなおざりにされてきた感があります。

MAH治療の意義

 正常の場合、血清カルシウム値は、8.5〜10.5mg/dlの間に厳重にコントロールされています。しかし補正した血清カルシウム値が12mg/dl台に上昇してくると、全身倦怠感や食欲不振が生じてきます。さらに高カルシウム血症が進むと腎尿細管での尿濃縮力が障害されて多尿となり、口渇と多飲が生じてきます。血清カルシウム値が14〜15mg/dlを超えるようになると、脱水の傾向が強まり、補液が十分でない場合には、乏尿となり、急性腎不全を起こしてしまいます。また精神活動も低下して、家族との会話も円滑にできなくなり、ついには混迷から昏睡に陥ってしまいます。このような高カルシウム血症による臨床症状は、血清カルシウム値が急速に上昇してくるMAH患者では、特に顕著に認められます。

 一般に、血清カルシウム値が次第に上昇してくる原発性副甲状腺機能亢進症の患者では、血清カルシウム値が12mg/dl台でも無症状であり、特に処置を要さないことが多い。しかしMAH患者では、これは十分に危険な兆候であり、高カルシウム血症を是正しておく必要があります。特に血清カルシウム値が14〜15mg/dl台にもなれば、緊急事態であり、直ちに補液を十分に行って尿量を確保した上で、ビスホスホネート剤を静注すべきです。

 高カルシウム血症が是正されると、悪心、嘔吐、口渇感が消失し、体力や気力が回復します。それまで入院を余儀なくされていた患者でも、一時帰宅できることもあります。特に、高カルシウム血症クリーゼのため昏睡に陥った患者が意識を回復してきた場合には、本人はもとより患者からも大いに感謝されます。また高カルシウム血症が改善すると腎機能も改善するので、原疾患によっては、より積極的な治療も可能となります。

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乳癌の骨転移にビスホスフォネート

 従来、乳癌の骨転移の治療法として、化学療法、放射線療法、内分泌療法が用いられてきましたが、それらは癌細胞に直接作用する癌腫特異的治療であったのに対し、ビスホスフォネート療法は、癌細胞には直接的な抗腫瘍効果を発揮せずに、骨に作用して骨転移の形成・増殖抑制をもたらし得るため、臓器特異的治療法と呼ぶことができます。そのため、あらゆる癌腫の骨転移に対しても効果が認められると思われます。しかし、増殖能の高い腫瘍の骨転移に対しては疼痛軽減効果が認められることはあっても多覚的な抗腫瘍効果が得られることはほとんどありません。

 このため、ビスホスフォネート療法は乳癌や前立腺癌等の腫瘍増殖速度の緩徐な癌腫の骨転移が良い適応となります。

 ビスホスフォネート療法は乳癌の骨転移治療で骨合併症を予防し、その奏効率は10〜20%と考えられています。

出典:日本病院薬剤師会雑誌 2001.10

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癌骨転移のメカニズム

 癌細胞の転移メカニズムとして必ず血流動態説と環境適所説が挙げられますが、乳癌のような特に骨転移を起こしやすい癌の転移機序を血流動態説で説明するのは難しく、環境適所説、つまり癌細胞と骨微細環境との相互作用の重要性が指摘されています。

 骨に到達した癌細胞はまず増殖の場を作るためには骨を破壊しなければなりませんが、骨転移組織の検討や、破骨細胞抑制剤であるビスフォスフォネートに骨転移の進行阻止・予防作用が認められることから、骨吸収の主役は破骨細胞であるとされています。

 癌細胞が産生する破骨細胞形成・活性化刺激因子の中で、少なくとも乳癌骨転移については、PTHrP(parathyriod hormone-related proteun)が乳癌骨転移巣で90%以上高発現すること、マウス骨転移モデルで抗PTHrP抗体による骨転移が抑制されることなどからPTHrPが重要であるとされています。

 ほかにも破骨細胞の主要な形成・活性化因子であるRANKL(receptor activator of NF-κB)やプロスタグランジン、IL-1、IL-6、IL-11、TNFαなどについて報告されています。

 一方、骨其質は非常に豊富なgrowth factorを含んでいて、骨吸収によってそれらのgrowth factorを癌細胞に供給されることが骨転移巣の進行に重要であると考えられます。


溶骨性転移のメカニズム

1.破骨細胞による骨吸収によって放出されるIGFは癌細胞のアポトーシスを抑制し、増殖を促進します。TGF−βとカルシウムイオンは癌細胞の骨吸収促進因子(PTH-rP等)の産生を高めます。

2.癌細胞から産生された骨吸収(PTH-rP等)は骨芽細胞上の受容体に結合し、RANKL発現を促進します。

3.骨芽細胞や癌細胞が発現するRANKLは破骨細胞前駆細胞のRANKを刺激して、歯骨細胞への分化を促進します。

RANK〜RANKLの受容体

RANK+RANKL→破骨細胞形成促進

 溶血性骨転移では、転移癌細胞と骨芽細胞、破骨細胞との間にこのような協働体制が成立します。また一部の癌細胞は骨形成阻害因子を産生することにより骨芽細胞の活性を抑制するとの報告があります。その結果、骨吸収と骨形成のバランスが崩れ破壊のみが進行します。


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PSA
prostate specific antigen

 前立腺特異抗原

 前立腺癌の検査方法

 簡便で感度の高い腫瘍マーカー

 <PSAスクリーニングはまだ勧めるべき時期ではない。>

 PAS検診で前立腺早期癌が見つかることは、間違いのないことですが、今世界で問題とされているのは「PSA検診で見つかる早期癌を治療することによって患者に益があるのか、又は不利益をもたらすことがないかどうか」がよく分かっていないのです。

 前立腺癌は、比較的おとなしい癌で、被膜を越えて浸潤・転移しなければ長期に生存できます。無症状の癌を見つけて早期に治療を加えることで、かえって生命予後を悪くしたり、排尿障害や性障害などの不利益だけを与えているのではないかと懸念する声もあります。

 日本人も含めてアジア人は、黒人、白人に比べて前立腺癌の発生率が少なく米国でもアジア系など前立腺癌のリスクにPSA検診を行うことに疑問がもたれています。

         出典:治療 2004.1

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前立腺がんの内分泌治療

MAB(CAB)療法

男性ホルモンと前立腺癌の関係

 前立腺癌細胞は、男性ホルモンを栄養源にして増殖しています。

 精巣摘出手術は、手術で精巣を取り除くことによって男性ホルモンを低下させ、癌細胞の増殖を抑える治療法です。

 LH−RHアゴニストは、精巣からの男性ホルモンの分泌を抑制し、前立腺癌細胞の増殖を抑える持続性の注射薬です。4週間持続型と3ヶ月持続型があります。

 女性ホルモン剤は、女性ホルモンの1つであるエストロゲンを増やすことにより、男性ホルモンの産生を抑制します。

 抗男性ホルモン剤(抗アンドロゲン剤)は、精巣と副腎の両方から分泌される男性ホルモンをブロックする薬です。ステロイド性と非ステロイドがあり、ステロイド性は前立腺癌細胞と下垂体の両方に作用しますが、非ステロイド性では前立腺癌細胞内に対してだけ作用します。これらは、多くの場合、LH−RHアゴニストと組み合わせて用いられます。

副作用:女性化乳房、ほてり、性機能の低下


MAB(CAB)療法

 前立腺癌での併用療法は、作用の異なる2つの薬剤を組み合わせて用いることで、精巣と副腎の療法から分泌される男性ホルモンの影響を最大限に抑え、前立腺癌に対する治療効果を高めることを目的に行われます。

 こうした治療法はMAB:maximum andorogen blockade療法、あるいはCAB:complete andorogen blokade療法と言われています。

 進行癌を対象とした調査では、非ステロイド性抗男性ホルモンを用いたMAB療法を行った場合、LH−RHアゴニストまたは除睾術単独の治療に比べ、死亡リスクの低下や生存期間の延長などの効果が認められるとの報告があります。

     出典:大阪府薬雑誌 2005.9


昭和62年10月1日号 No.8 に掲載


吸着ロス

 糖尿病でのインスリン療法では、通常は単独で皮下注されますが、糖尿病患者の術後管理、手術後のIVH時の高血糖対策として点滴静注、また、劇症肝炎や肝硬変のGI(グルカゴン、インスリン)療法、心臓外科でのGIK(グルコース、インスリン、カリウム)療法など、他剤と配合して用いられる場合があります。

 この際に、インスリンが配合変化や、輸液バッグ(点滴セット)に吸着することによって力価が低下するという報告があります。

(シオノギ社内データより)

 インスリン テルモ社製ハイカリックIVHパックHC1320に生食1500mlを入れ、次にヒューマリンR30単位を加えて振り混ぜ、24時間点滴し、経時ごとにインスリン含量を測定

 結果 3時間後で89.4%、12時間後で85.8%、24時間後で79.1% 診療の場では、1つの輸液バックよりの点滴は通常長くても12時間で滴下されることが多い。 高カロリー輸液やグルカゴン・インスリン療法でのインスリン与薬量は、糖尿病患者での血糖コントロールを目的としたインスリン療法とは異なり、結果的にインスリンの与薬量が少なくても許容されると思われるので、あえてインスリンの配合量を調整する必要はないと考えられるが、この判断は当然主治医に委ねられるべきことです。

 


防虫剤(樟脳、ナフタリン、ペラジクロルベンゼン)の見分け方

カンフル(樟脳)とナフタリンの見分け方

65度の温湯に入れる

カンフル(樟脳) 固体 水面に浮かぶ

ナフタリン 固体 水底に沈む

ペラジクロルベンゼン 油状 水底に沈む

誤飲の際の処置については、各論を参照のこと



リファンピシン(RFP)服用患者では、ハルシオン(トリアゾラム)が無効


 トリアゾラム(TRI)は、主にチトクロームP450 3A4(CYP3A4)により代謝を受けます。 リファンピシン(RFP)はCYP3A4およびその他のチトクロームP450酵素系の強力な酵素誘導薬であり、数多くの薬物と相互作用を起こします。 最近、5日間のRFP前与薬でミダゾラム経口与薬後の血中濃度および効果が著明に低下することが報告されました。TRIは構造と代謝の両面でミダゾラムと密接な関連性を有していることから相互作用について試験した結果、RFP与薬中はTRIが無効になります。 これは、RFPにより腸管壁および肝のCYP3A4が酵素誘導を受けた結果、TRIの代謝が亢進したことによるとの可能性が最も高い。

 

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