HS病院薬剤部発行     

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薬剤ニ ュ ー ス

  1994年

9月15日号

NO.160

                 

ピーエヌツインの使用上の注意 

   

    ・・・・外袋をはずすと変色します・・・・                                  

 ピーエヌツイン(以下:PNツイン)は糖・電解質を含む第T層と高濃度のアミノ酸を含む第U層を隔壁で区別し一体化したキット製剤です。ふたつの層を仕切る隔壁は少し力を加えることにより容易に引きはがすことができます。    

 ふたつに分離しているのは、糖とアミノ酸の反応(メイラード反応)を防ぐためです。

            

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『着色にご注意下さい』

・ PNツインはアミノ酸の酸化分解を防ぐために、外装が施されています。この外装をはずすと2日で着色しますので、使用直前まで外装をはずさないで下さい

 ・ もし誤って外装をはずしてしまった場合は、ただちに隔壁を開通して2層を混合しておいて下さい。

 そうしておけば、着色は1週間は防げるとのことです。

 メイラード反応とは、糖とアミノ酸による褐変反応のことですが、この反応は常温では反応が遅いため、1週間は安定なのです。

[PNツインの一般的注意]

 経中心静脈栄養療法の栄養輸液として組織を固定しているので、重篤な肝障害、腎障害等の特殊な輸液組成を必要とする疾患には使用しないこと


 “ビタミン剤の使用制限について”         

 前号でも、お知らせしましたように、1994年10月1日より、ビタミン剤が外来でも与薬制限されることになりました。

  食事が出来る状態であれば、ビタミンB群とC製剤(内服・注射供)は、保険適用となりませんのでご注意下さい。

  ビタミン使用に際しての別刷りの刷子を配布しますので合わせてご参照願います。


<<用語辞典>>

HD

血液透析

出典:薬剤師が知っておきたい臨床知識(薬事時報社)等

 血液透析は、腎不全の治療として最も一般的な方法で、透析を行う本体である透析器(ダイアライザー)と、これに透析液を供給する透析供給装置からなり、そのほかに血液回路内の血液の性状を観察したり、血液内に混入した気泡や異物を補足したりするドリップチェンバー、血液の出入り口となるシャント(ブラッド・アクセス)も必要です。

シャント(別名:)blood access:ブラッドアクセス

 動脈と静脈を直接つなぎ合わせたものシャントといいます。これは、動脈から血液を体外循環回路に導き、十分な血液量を得るためのもので、血液透析に不可欠です。

 血液の出入り口という意味ですが、最近は血流のシャントを利用しないシャントができたため、より広い範囲を意味する用語であるブラッドアクセスという言葉が用いられるようになってきています。

 シャントというのは短絡ということで、血液に限らず、本来通るべき道を通らず、近道するということです。

 血液透析用のブラッドアクセスを分類すると、シャントの有無により2つに分け、さらにシャントしているものを外シャントと内シャントに分類しています。現在では大部分の透析患者が内シャントを使用していますが、血腫を作らないように失敗を避け、後の止血を確実に行うことが重要なポイントです。

 このシャントから血液ポンプによって血液が取り出され、ダイアライザーに送られます。血液はダイアライザー内で半透膜の内側を通り、この間に電解質が是正され、小分子物質、たとえば尿素、クレアチニン、尿酸などの窒素化合物、リン酸、硫酸などの有機物などが除去されます。一方、透析液供給装置から送られた透析液はダイアライザー内の透析膜の外を流れ血液浄化を行うとともに、Caや重炭酸など必要な成分を補給することもできます。

限外濾過(UF:ultrafiltration)

 血液透析では、除水機能も必要不可欠で、除水は濾過の原理に基づき行われます。濾過は通常の濾過とは異なり、血液側に陽圧をかけるか、透析液側に陰圧をかけるかして、相対的な高圧側から陰圧側に水を引きます。これを限外濾過といい、適量の除水が可能となります。

 こうしてダイアライザーを通った血液は、静脈側血液回路を通って体内に戻ります。

 一般的に血液透析は患者側の条件によっても異なりますが、週に2〜3回、1回の透析時間は4〜6時間です。

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血液浄化療法

透析療法

HF
hemofiltration
血液濾過法

 
 血液透析では、拡散の原理を用いているため、分子量の小さな物質は多く取り除かれますが、分子量が大きくなるにつれて、除去が悪くなります。

 血液濾過法は透析液は流さず、置換液を血液回路内に多量に流し、フィルター膜(サイズの大きいフィルターを用います)の穴から濾過液の流れとともに物質を除去します。そのため膜の穴を通過するものであれば、大きな物質も小さな物質も同程度に除去できます。その結果、血液透析に比べて分子量の小さなものの除去は悪くなりますが、大きな物質が多く除去できます。

 血液濾過は、限外濾過によって水と溶質を除去する方法です。老廃物を十分に除去するためには大量の限外濾過液を廃棄する必要があるため、大量の補充液の輸液を同時に施行することで体液量のバランスを取ります。

 この方法の利点としては、1.中分子量から高分子量の溶質除去に優れている。2.血液中の尿素の低下速度勾配が血液透析より急でないため血漿浸透圧の変化が少なく、不均衡症候群(下記)、緑内障の悪化が起こりにくい、3.水処理装置、透析液供給装置が不要などがあります。

 欠点としては、尿素などの低分子除去能が劣り、高価であることなどがあります。

 現在(2000年)の保険制度では、血液濾過の適応があるのは、透析アミロイドーシス、透析困難症、緑内障、心膜炎、心不全の合併です。

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不均衡症候群

 血液透析療法に伴う合併症の一つで、初回導入透析あるいは高能率透析時に認められることが多い。

 透析治療の後半ないし終了直後より中枢神経系の脳圧亢進症状(頭痛、悪心、嘔吐、痙攣など)が出現します。この症状は一過性で,翌日には消失するとされています。

 不均衡症候群の原因は、血液中の尿素などの除去速度に比べて、脳脊髄液中の除去速度が遅れるため、血液中と脳脊髄液中との間の浸透圧較差が生じることによるという説(reverse urea effect)があります。この結果、脳浮腫が生じて、脳圧亢進症状が出現することになります。

 尿素以外にもナトリウムの影響もあるとされています。予防としては浸透圧較差が著しくならないようにすることで、透析効率を著しく良好にしないことが大切です。

 初回透析時には、透析時間を短く、頻回透析とする方法がとられます。


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HDF
hemodiafiltration
血液透析濾過

 血液透析濾過は、血液透析と血液濾過を同時に行い、両者の弱点を補う方法です。これにより、理論的には、小分子量から大分子量までの溶質除去能の向上が期待できます。

 保健適応は透析アミロイドーシス、透析困難症です。

 最近では、多臓器不全に対するサイトカインを除去する目的で濾過法を使用する場合もあります。

* HF・HDF時は、置換液を注入するため、空気誤入や補液量と除水量のバランスに注意しましょう。


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イーカム
ECUM:extracorporea ultrafiltration method

 イーカムは、透析液や補充液を用いず、限外濾過のみを施行する方法です。

 老廃物の除去や電解質の補正などの高価はありませんが、血液透析よりも水分を除去することが容易です。したがって、うっ血性心不全の治療や乾燥体重(ドライウエイト)を設定するための情報を得るため施行することがあります。


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血液吸着法
直接血液灌流法
DHP
direct hemoperfusion

 吸着剤に患者の血液を直接接触させ、物理的あるいは免疫反応を利用して病因物質を除去する血液浄化法。

吸着剤が微細になり、血液と分離しにくくなる場合や血小板の付着など生体適合性がよくないときは、分離した血漿のみを灌流すこともあります。(PP:plasma perfusion)

 DHPの長所は、HDやHF(上記)では除去できない、あるいは除去効率の悪い物質(蛋白結合率の高い物質や分子量の大きい物質)を除去できる可能性を持っている点です。

 一般的に中毒では活性炭カラムを用いる直接的血液灌流法(DHP)が第一選択とされる事が多い。特に分子量300〜5000の化合物をよく除去します。

 また血液透析(HD)はアルコール、睡眠薬、向精神薬、鎮痛剤などに有効です。

 これらの血液浄化法は蛋白結合率の高いものや脂溶性の毒物には効果が期待できません。


アデノシン仮説


透析中に低血圧が起こる理由

 透析中の低血圧は急激な除水に伴う血液量の減少を起こし、低Na透析による細胞内への水分移行による血液量の減少は臓器虚血を起こします。

 消化器系臓器の虚血によりATPの構成成分であるアデノシンが細胞外液中に遊離しますが、アデノシン代謝物はその受容体を介して細動脈拡張作用を示します。そのため血液の再分布が起こり静脈還流量が低下し、心拍出量は減少します、

 心拍数が減少すると臓器虚血は更に進行し、更にアデノシンが遊離され、急激な血圧低下が発生します。

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*透析中にまれに血圧が上昇する患者さんもいます。
 

 ほとんどの場合血液透析に伴う除水によって血圧は下がりますが、まれに透析中盤から終了時にかけて血圧が上昇する場合があります。(透析導入時では、約80%の頻度で血圧は上昇します。)

 透析による血圧低下を避けるために、生体はレニン-アンジオテンシン系と交感神経系を亢進させて心拍出量を増加させ、末梢血管抵抗を増加させます。

 血圧上昇の原因として血漿からの除水速度よりも間質からのplasma refilling rateのほうが早いことが考えられます。一般的には動脈硬化の著明な糖尿病患者や悪性高血圧の症例などによく見られるケースです。

 透析後、血圧が高くなる患者では有意に死亡のリスクが高いことも明らかになっています。このような患者では透析前にACEIを用いることがあります。

               出典:薬事 2003.7

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CAPD:Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis
連続携帯式腹膜透析

 腹部に設置したカテーテルから腹腔内に透析液を注入し、一定時間滞留させる間に腹膜を透析膜として使い血中の老廃物を透析液に移行させた後に、透析液を体外に取り出して血液を浄化する治療方法

 CAPDは腹壁を通してカテーテルを腹腔に入れます。カテーテルの先端は腹腔の中で最も低いところに留置し、もう一端は皮下を通って腹部より直接出します。この管を使って、腹腔内へバッグを入った約2Lの透析液を入れ、数時間後に空のバッグに出して捨て新しいバッグを付け換えて、腹腔に新しい透析液を入れます。このような操作を1日4〜5回、自分で行います。液の出し入れなどバッグの交換には1回約30分かかります。

 透析液の入ったバッグと、排液用の空バッグを一体化したものがツインバッグ(あるいは排液バッグともいいます)です。腹部から出ている管と1回接続するだけで、透析液の排出、注入ができます。バッグ交換の手順が簡単で、筋に汚染される機会が減少します。

 腹部から管が出ていますが、日常生活には特に問題はありません。カテーテルは専用のチップで栓をして服の下に隠れます。また防水シートを貼って入浴もできます。

 CAPDは自宅で透析液を交換できるので透析施設に通院する必要が無く、時間と場所の制限が少なく社会復帰が向上する等の利点がある一方、腹膜炎を合併する危険があること、蛋白質が廃液され低栄養となる等の欠点もあります。

 これまで国内で市販されている全ての腹膜透析液は、浸透圧物質としてブドウ糖を含有しており、夜間就寝時など長時間にわたって患者の服腔内に貯留する場合、血液中の過剰な水分を取り除く“除水効果”低下するのが問題でした。除水量不足は慢性的な体液過剰を招き、末梢性浮腫、肺うっ血、高血圧等の原因となり、循環器系の合併症や、それによる死亡率増大にもつながります。

 腹膜透析で十分な除水が得られない場合、高濃度のブドウ糖透析液を使用するか、または頻繁に透析液を交換しなくてはならず、腹膜への液強が増大し、患者のQOLが低下します。この問題を解決するため、ブドウ糖よりも分子量の大きいイコデキストリンを浸透圧物質に使用する透析液が開発されました。

 出典:日本病院薬剤師会雑誌 2004.6


各種血液浄化法によって除去されにくいジゴキシン

 ジゴキシンの生体分布は、Na+−K+−ATPaseの分布に依存するため、心筋、骨格筋、腎臓、肝臓、小腸などで高く見られます。
とくに、心筋内ジゴキシン濃度は血清濃度の約70倍(報告によっては30倍)、骨格筋内濃度は血清濃度の10〜20倍と高濃度で移行するため、相対的に血漿濃度は低くなり、分布容積(Vd)が大きくなります。腎機能正常者のVdは6〜7L/kg、慢性腎不全患者でも4〜6L/kgと大きいため、いかなる血液浄化法によってもほとんど除去されないと考えられます。

 つまり体重50kgの腎不全患者のVdは約250Lになりますから、血清ジゴキシン濃度が1.0ng/mLであれば体内のジゴキシン量は250μgと考えられます。そのうち血液透析によって浄化される血漿量はわずかに2.5L、さらに間質液(細胞間液)を加えても10L程度しかありませんから、細胞外液中のジゴキシンは蛋白結合率を25%とすると0.75ng/mL×10L=7.5μgしかなく、体内ジゴキシン量の約3%しか細胞外液に存在しないことになります。

 Vdが大きいと組織での薬物の結合力も強く、ジゴキシンは分布するのに数時間を要するため、細胞内液から細胞外液への移動は非常に遅いと考えられます。そのため実質的には細胞外液のみを浄化する血液透析(HD)をはじめとした各種血液浄化法では十分除去されません。

 ジゴキシンの透析クリアランスは10〜30mL/分で、HD直後の血清ジゴキシン濃度は明らかに低下するものの、2時間以内にほぼ透析前の濃度に戻ると報告されています。(吸収、分布に時間を時間を要するため、ジゴキシン経口薬では服用後6時間以上経過しないと血清濃度と組織内濃度が平衡状態に到達しないといわれているため、もっと時間を要する可能性も考えられます。)

 また、HDで除去されるジゴキシンのクリアランスを20mL/分とすると4時間透析で5L足らずで、Vdの2%以下にすぎません。この場合、透析膜に透水性の高い膜(high fiux膜)によるジゴキシンクリアランスは45mL/分、活性炭を用いた血液吸着法(DHP)で50〜100mL/分で腹膜透析(CAPD)によるクリアランスはHDよりもはるかに低く、2〜3mL/分です。

 ジゴキシン中毒の治療法としてはCAPDはまったく無意味です。一見、有効そうに見えるDHPでもジゴキシンのVdがあまりに大きいため、だとえDHPで血液中と細胞間液中のすべてのジゴキシンを吸着したとしても。それらの生体内ジゴキシンに占める割合は低いため、DHPによるジゴキシン除去率も4〜8%以下と低いことが報告されています。

 急性ジゴキシン中毒に活性炭を用いたDHPはほとんど効果がなく、あらゆる血液浄化法によるジゴキシン除去効率が低いため、ジゴキシンを血液浄化後に補充する必要はないと思われます。

<ジゴキシン中毒の治療法>

 海外では、速効性で有効率も高いヒツジ由来digoxin immune Fab(digbind)が販売されています。(日本では利用できません)

 対症療法〜大量服用直後であればトコンを使っての嘔吐、胃洗浄。活性炭の内服が有効

 時間が経過していれば中毒症状を回避するために、心室頻拍の治療としてリドカイン、フェニトイン、β遮断剤
房室ブロックや洞房ブロック症状を伴う場合には、アトロピンあるいはペースメーカー植え込み

 腎不全患者は容易に高カリウム血症、高マグネシウム血症になりやすいためK剤やMg剤は慎重に用いるべきです。
実際にはNa+−K+−ATPaseを阻害するためジゴキシン中毒では高カリウム血症になりやすく、その場合には細胞内へのカリウム取り込みを増やし血清K値を下げるグルコース-インスリン療法やカリウムの吸収を抑制するポリスチレンスルホン酸カルシウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどの陽イオン交換樹脂が用いられることもあります。ただし、低K血症はジゴキシン中毒を助長することにも留意しておく必要があります。

 腎排泄されなかった、ジゴキシンは胆汁中に排泄され、腸肝循環します。とくに腎不全患者では、糞便中にジゴキシン排泄が増加するため、腸肝循環するジゴキシンを活性炭あるいはクレメジン細粒で吸着除去するほうが有効だと思われます。

 リクセル(β2ミクログロブリン吸着カラム)の使用もジゴシン中毒の治療に有用との報告があります。(リバウンドを考慮していないとの批判もあり)

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リバウンド

 血液透析では細胞外液を中心に浄化していますが、組織中に移行した薬物が血中に移行するため速度は血中の薬物を除去する速度よりも遅いため、透析終了直後の血中薬物濃度は低くなっているものの、その後、組織に移行した薬物が血中に再分布します。そのため血中濃度再上昇することがあります。

 これをリバウンド現象といい、分子量が大きいほど、血液浄化法の血流量が大きいほどリバウンド現象は顕著です。

 分子量の大きいバンコマイシンではとくに顕著なリバウンド現象が現れることは有名です。
全ての物質で多少のリバウンド現象は認められます。

 血液ろ過(HF)では通常の血液透析よりもリバウンド現象が顕著ではないと考えられますが、細胞膜を通過しやすい尿素(分子量60dalton)でもHF後のリバウンドが認められており、分子量60daltonの尿酸ではもっとも顕著です。


薬局 2006.8

 

 

 

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