1996年11月15日号 211
糖尿病とLDLのグリケーション
コレステロールが糖と化合物を形成
蛋白質が糖によって非酵素的に修飾される反応は糖蛋白質が酵素的に糖付加を受ける反応(glycosyl-ation)異なり、グリケーション(glycation)と呼ばれています。この反応は、メイラード反応として、アミノ酸輸液と糖液との配合変化(黄変)などでよく知られています。 近年、このグリケーションによる修飾反応が生体蛋白質にも生じることが判明し、老化現象、動脈硬化症などの加齢に依存する種々の病態に関与している可能性が注目されるようになりました。 「なぜ糖尿病では粥状動脈硬化症が有意に高いのか?」という疑問に答える仮説として、動脈硬化症の発生、進展でのグリケーション(糖化)の関与が考えられています。 {参考文献}ファルマシア 11 1996 熊本大学医学部第2生化学教室 |
’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’ 蛋白質の非酵素的糖付加反応は1912年フランスのメイラードが発見し、メイラード反応と呼ばれています。この研究は主として食品化学の分野で進められていましたが、1968年に人ヘモグロビン分画中にグリケーションをうけたHbA1cが発見され、にわかに生体でのこの反応の意義が注目されるようになりました。
糖尿病が動脈硬化症に対して促進的に作用するメカニズムとしては、LDLのグリケーションという観点からは次の2つの可能性(説)が考えられています。1つは、LDLが反応前期で修飾を受けたglycatedLDKは、LDLと比して、LDL受容体に対するリガンド活性低下のため、血中消退速度(クリアランス)が遅延し、結果として血中コレステロール値上昇を惹起する可能性です。
もう1つは、LDLが後期反応による修飾を受けAGEs(後期反応生成物)-LDLとなり、AGEsレセプターのリガンドとして、細胞に直接作用し、泡沫細胞を形成する可能性です。
現在最も受け入れられているのは、前者の糖化LDLの代謝遅延説です。LDLが糖化(グリケーション)されるとLDL受容体に対する認識が低下し、クリアランス遅延が起こり血中LDLコレステロール上昇し、動脈硬化症の発生、進展に促進的に作用するという考え方です。
近年、酸化や酸化ストレスが広くメイラード反応に関係していることに指摘されています。
AGEsのうち、その生成に酸化反応を必要とするものは、グリケーション産生物ともいわれ、その存在量は、加齢や糖尿病で増加しているといわれています。
糖尿病患者から分離したLDLは、健常人のLDLよりも銅による酸化修飾を受けやすくなっていたとの報告もあります。
また、動脈硬化症巣のAGEs-LDLは、マクロファージスカベンジャー受容体(MSR)を介してマクロファージに取り込まれ、マクロファージを直接的に泡沫化し、動脈硬化の発症、進展に関与している可能性も示唆されています。
AGEs
(LDLと糖の化合物)
Advanced glcation endproducs
↓
老化(age)&
糖尿病合併症、動脈硬化症
透析性アミロイドーシス
アルツハイマー病
AGE
Advanced Glycation End-products
後期糖化生成物
生体内の蛋白は非酵素的にグルコースと結合し、シフ塩基からアマドリ化合物になり、さらに複雑な反応過程を経て最終的にAGEになる。
これを非酵素的糖化(glycation)、あるいはMaillard反応と呼ぶ。例えば、HbA1cやGA(グリコアルブミン)は、ヘモグロビンやアルブミンが各々糖化されたアマドリ化合物である。
最近の抗AGE抗体の開発は、生体のAGEの解析を可能とし、またAGE受容体の存在も明かになり、各種蛋白の糖化が注目され始めている。
AGE化した蛋白は、その機能が損なわれると共に、マクロファージや血管内皮細胞などのAGE受容体と結合する。それにより、マクロファージや血管内皮細胞は、サイトカイン、活性酸素、エンドセリン1などを放出する。これらが糖尿病の合併症の発症や進展に関係あるとされている。
糖尿病患者の血管や腎糸球体などの組織、水晶体蛋白、血液中などにAGEの増加が見られ、動脈硬化にもAGEの強い関りが認められている。
現在、AGE阻害薬の一つとして、アミノグアニジンの臨床試験が進められている。
JJSHP 1999.12
糖尿病の検査
・HbA1c
グリコヘモグロビン検査
赤血球のヘモグロビンにブドウ糖が結合したもの。一度できると、その赤血球が壊れるまでなくなりません。赤血球が、壊れるまでの平均期間は約1〜2ヶ月ですので、過去1〜2ヶ月の平均血糖値がこの検査により分かります。正常値は6%以下、糖尿病の場合 7〜8%にコントロールされることが望ましいとされています。
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HbA1cを体温に例えると、患者さんに説明しやすい。
その患者さんのHbA1cに30をたすと体温に近くなります。例えばHbA1cが8.0なら30たして38℃(治療が必要です)
HbA1cが11なら30たして41℃(かなり重症です)というぐあいです。ただし、6.5未満の人は自分は大丈夫と誤解してしまいますので、
6.5未満の人には注意が必要です。
出典:治療 2008.12
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・HOMA−R(ホマー指数)
インスリン抵抗性を示す指数
{空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)÷405}で計算されます。
正常では1前後で、2以上では抵抗性の存在が疑われます。
・正常血糖クランプ
euglycemic hyperinsulinemic clamp
生理的に筋肉を中心とした個体のインスリン感受性を評価する方法
早朝空腹時、速効型インスリンに持続的に静注し、さらに他方よりブドウ糖液を注入することにより、血糖を空腹時レベルに維持します。この条件下では、注入ブドウ糖(GIR:glucose
infusion rate)が体内に取り込まれるブドウ糖量と一致することが確かめられており、注入ブドウ糖量が、その個体のインスリン感受性を反映することになります。
・フルクトサミン
血清蛋白のεアミノ基にブドウ糖が非酵素的に結合した糖化蛋白のこと。
過去約2週間の平均的血糖値のコントロールの指標として用いられます。
日内変動の程度や治療効果の1週間単位での評価として用いられます。
正常値は200〜285μmol/L
・1.5−AG
アンヒドログルシネート
ブドウ糖の1位が還元されたもの。血糖コントロールの悪化に伴い急激に値が悪化します。
血糖コントロールが比較的良好な状態での変動が鋭敏なため、この範囲内での血糖コントロールの指標となります。つまり軽症の糖尿病の血糖変動を把握するのに利用されます。
正常値は14.0μg/dl/dl以上
・ケトン体(尿中、血中)
ケトン体は、脂質の代謝産物で、アセト酢酸、βオキシ酪酸、アセトンの総称。
血糖値がかなり高いときなど体内で等を十分利用できない時、代わりのエネルギー源として脂質が利用されます。ケトン体が増加すると血液が酸性になり、重症な場合はケトアシドーシスを起こします。
尿中ケトン体は定性試験で用いられることが多く、通常は−(マイナス)であることから、中小度以上の糖尿病では、尿糖ともに改善すべき具体的な検査項目です。
Cペプタイド
インスリンがプロインスリンから作られるときに、同じ量作られるペプタイドで、膵臓のインスリン分泌能を調べる検査。
糖尿病のタイプを調べたり、インスリン治療中の糖尿病患者のインスリン分泌能の測定に用いられます。
GTT
Glucose Tolerance Test
OGTT
75gブドウ糖負荷試験
経口ブドウ糖負荷試験
oral glucose tolerance test(OGTT)
国際的にはブドウ糖の75 gを負荷します。ブドウ糖負荷前後の血糖および血中インスリン(インスリン治療患者などではC‐ペプチド)の経時的変動から,それぞれ生体の耐糖能および膵島B細胞機能が評価されます。
ブドウ糖負荷試験。空腹時に75gの糖分を飲んで、一定時間後の血糖値に上昇度から糖尿病かどうかを診断します。ただしGTTが正常範囲内でも、糖尿病性網膜症の所見が得られれば、糖尿病と診断されます。
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SMBG
Self-Monitoring Blood Glucuse:血糖自己測定
<SMBGの目的>
1.治療への動機付け
2.インスリン用量の調節
3.食事・運動・インスリン・経口血糖降下剤による生体応答の習得
<SMGBの運用>(第2回ADA SMBGコンセンサスカンファレンスより)
1.より厳格な血糖コントロール達成のために
2.糖尿病の薬物療法中の低血糖症の用量調整のために
3.重症高血糖の回避
4.ライフスタイルにあった薬物療法の用量調整のために
5.糖尿病妊娠での血糖変動の把握とインスリン療法開始の決定
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CGM
持続血糖モニター
これからの血糖測定
毎日の血糖値を測定するのに血糖自己測定(SMBG)は欠かせません。しかし、SMBGによる血糖測定は点であり、一見良好にみえる場合でも、実際には激しい血糖変動が生じている可能性もあります。
血糖値を連続した値として知ることができれば、いままで捉えることのできなかった症状の把握ができ、より適切な血糖コントロールが可能になります。すでに欧米では24時間の血糖値が測定可能な持続血糖モニター(CGM)が1型糖尿病に対して日常診療で使用されています。
CGMは皮下組織にセンサーを挿入し、間質液中のグルコース濃度を連続的に測定するものです。値は実際の血糖値ではありませんが、SMBG値を入力し変換・補正することにより、測定精度は日常臨床では問題はありません。
しかし、静脈血測定の血糖値と比較すると時間的なずれや低血糖域の誤差などの問題もあります。
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BIDS(Bedtime Insulin Daytime Sulfon ylurea)
最近は、内因性のインスリン分泌をわずかであっても大切にしようとSU剤の効きの悪い人に少しのインスリンを乗せてやることで良い結果が出る場合があるそうです。
日中にSU剤の内服をして、寝る前にインスリンを打つというものです。
出典:KAMISAKA ノート
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Peaks&Valleys
Peaks(食後高血糖)とValleys(低血糖出現)の改善
食後高血糖は、その全般的血糖コントロールに及ぼす影響や、心血管系疾患リスクとの関連に関して重要です。低血糖出現は、血糖コントロールの厳格化を阻害する要因であるため、より生理的な血糖コントロールを目指すには、これを回避することが求められています。
ヒューマログ注のパンフレットより 日本イーライリリー
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トラッキング現象
出典:医薬ジャーナル 2000.12
小児期に高脂血症であったものは、成人してからも高脂血症である傾向が強いこと。
子供の頃から食事を中心とした生活習慣の適正化をはかることが重要です。
tracking:追跡,能力別クラス編成