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インターロイキン

1991年11月1日号 No.96

 

 免疫担当細胞は主として、T細胞、B細胞、マクロファージより構成され、各細胞が機能
を発揮する際には細胞間相互作用が必要です。

 細胞間相互作用は主として液性因子により媒介され、当初リンパ球由来の因子はリンホカ
イン、探求由来の因子はモノカインと命名されました。しかし後に同一因子がリンパ球や
単球など複数の細胞から産生される場合もあることが明らかになり、1つの分子腫により
機能が発揮されることが明らかになった因子をインターロイキン(IL)と命名すること
が提唱されました。

{参考文献}医薬ジャーナル 1991.10

’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’ インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチ
ン(EPO)などは、ILの基底を満足する因子でありながら、発見者の意思により、ILと
いう名称を用いられていません。

 ILとこれらの因子が別々の群として取り扱われる理由はなく、一括してサイトカインと
するのが適当ですが、ILという名称の普及により、特別なグループの扱いを受けている
のが現状です。

 現在までIL−1からIL−11まで11種類のILが報告されています。

<臨床的な応用が期待されるインターロイキン>

《IL-1(別名LAF)》
T・B細胞の増殖・分化・活性化、NK活性増強、マクロファージ・好中球活性化
血管内皮細胞増殖、接着分子発現増強、線維芽細胞増殖、破骨細胞活性化、発熱中枢刺激など。

《IL-2(別名TCGF)》
T細胞増殖・分化活性化、B細胞増殖・分化、NK細胞増殖・活性化、LAK細胞誘導、マクロファージ活性化

《IL-3(別名Multi-CSF)》
血液幹細胞および血液3系統細胞の分化・増殖、破骨細胞増殖、好酸球・肥満細胞の活性化

《IL-4(別名Baso-CSF》
T・B細胞の増殖分化、肥満細胞増殖、休止期B細胞の活性化、IgG1、IgE産生誘導、レセプターの増殖

IL−5〜IL11についての臨床データはほとんどありません。(1991年:下記参照

IL−6は動物実験で血小板増多を来すことが知られている。

IL−11もIL−6と同様の作用があることが注目されている。

 インターロイキンは、免疫系のネットワークの機能的根幹をなすものと考えられ、その精巧な臨床機能は免疫機能の改善、抗腫瘍作用、リンパ系を含む血液細胞の増殖作用により生体防御能を飛躍的に高める可能性があります。

 既にEPO、G−CSF、M−CFS、GM−CSFが臨床利用されており、残る血小板産生を促進するサイトカインが追求されています

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2000年追記

IL−1:リンパ球活性化因子、内因性発熱物質
IL−2:T細胞増殖因子
IL−3:血細胞増殖因子
IL−4:B細胞刺激因子
IL−5:B細胞増殖因子
IL−6:B細胞刺激因子
IL−7:リンパ球の生成
IL−8:好中球走化因子
IL−9:ヘルパーT細胞やマスト細胞の増殖因子
IL−10:ケモカイン合成阻止因子
IL−11:血小板回復促進因子
IL−12:細胞障害性リンパ球成熟因子
IL−13:TNFα(腫瘍壊死因子α)やIL−1βの産生抑制因子
IL−14:T細胞増殖因子
IL−17:IL−6、IL−8、GM−CSF、LIF(白血球阻害因子)、PGE2の産生刺激因子
IL−18:インターフェロンγ誘導因子


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心因性咳嗽とcough tic


2007年11月1日号 No.463

 代表的な慢性咳嗽の原因として、成人では喘息、後鼻漏、胃食道逆流症。小児では感染症、授動喫煙、喘息があげられます。しかしこのような疾患以外に診断と対応に苦慮する慢性咳嗽として、心理要因の関与する問題、心因性咳嗽とcough ticがあります。

 いずれも診断が遅れた場合には、いたずらに各種の検査や服薬を繰り返しつつも経過は遷延化し、患者の身体的、精神的苦痛は多大であるため、早期の発見と適切な対応が望まれます。

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※心因性咳嗽とcough ticを疑うポイント

1)症状を説明し得る理学的所見がない。
2)鎮咳剤をはじめとする咳嗽に対する薬が無効。
3)症状は夜間の睡眠を妨げない。

 心因性咳嗽とcough ticとの違いをあえてあげれば、夜間睡眠中の咳嗽は、心因性では通常完全に消失するのに対して、cough ticでは、“睡眠中に認めることもあっても睡眠を妨げない”とされています。

 喘息、ことにcough variant asthmaは夜間の症状の悪化が特徴であり、夜間の症状改善は心因性咳嗽とcough ticを疑う重要なポイントといえます。

<症例>

 小学6年生 男児

 幼稚園の年少時、瞬目チック、幼稚園から多動を指摘されていた。

 1週間前から咳嗽、鼻汁、発熱があり、学校を休んでいた。症状が軽快したので登校を試みたところ咳嗽の増強を認めた。咳嗽は、乾性でやや犬吠様、律動的。夜間入眠時は認められなかった。

 血液検査、X線撮影では異常所見は無かった。

<経過>

 小児心療科受診までの2ヶ月間、咳嗽は持続。
 経過と臨床症状から、チック障害と診断。

 チックに関して、脳の機能的な問題(運動を調節する脳の働きがうまくいっていない)で起こること、大人になるまでには必ずず治る、育て方に問題があったのではないことを説明

<心因性咳嗽かcough ticか>

 心因性咳嗽かcough ticかを鑑別するのが難しいこともあります。

 チック症では、瞬目や顔面の律動的な動きなど、他の複数の症状を疑うことが多いのですがisolated ticと呼ばれる単独症状の場合には心因性咳嗽との鑑別は難しくなります。

※ チック症状は精神的緊張や不安により増強することが多いため、チック症状であっても心因の影響は多少の差はあっても受けることになります。

 すなわちcough ticに対して不安や緊張を和らげるような心理療的対応を行うことは適切と思われます。従って、感得bつが困難な場合には、無理やりに鑑別するよりも両者に対する共通する適切な対応(もはや痛みを伴う検査を繰り返さず、症状は必ずよくなることを保障して、不安を取り除くことが重要と考えられます。

          {参考文献}治療2007.9
 


<医薬トピックス>

 小児に対するタミフル〜A型とB型では有効性が異なる?!! はこちらです。


<用語辞典>

チック

トレット障害

コプロラリア

 チックは不随意運動の一種で、突発的に繰り返し起こる急速で短い限局的な骨格筋の収縮、または発声、発語で、前者は運動性チック、後者は音声チックと呼ばれます。

 運動性・音声チックはそれぞれが単純チックと複雑チックに分けられます。単純運動チックは、それぞれが単純チックと複雑チックに分けられます。

単純運動チック〜まばたき、首振り、肩すくめ
複雑運動チック〜触る、顔の表情を変える、身繕いをするなど、体の色々な部分が一緒に動く

単純音声チック〜咳払い、鼻鳴らし、舌打ち
複雑音声チック〜状況に合わない単語や句の繰り返し
  反響言語(おうむ返し):特定の単語や句の繰り返し、文節を繰り返す
  コプロラリア:卑猥な単語の発声

 複雑運動・音声チックは一見目的があるように見えるが脈絡はありません。

 小児期には10〜24%の子供にチックが見られると言われています。
発症は6歳前後でピークとなり、10歳代には多くの症例で軽快・消退するという年齢的特異性があり、女子よりも男子の方が3〜4倍多いと言われています。

*一過性チック障害:1種類または、多彩な運動性チック、または音声チックが1年未満の経過で出現

*慢性運動チック、慢性音声チック:それぞれのチックのみが1年以上の経過で出現

*トレット障害(Tourette):多彩な運動性チック、および1つまたはそれ以上の音声チックが1年以上の経過で出現

 一過性チックは、基本的には疾患の説明と、患児、家族へのカウンセリングや環境調整だけの対応で多くは消失します。

 チック症状により本人と家族が悩んだり、チック症状が社会的生活上での妨げになっている場合には薬物療法の適応になります。最も多く使用されるのはドパミンD2受容体遮断薬であるハロペリドールとピモジドです。

      出典:薬局 2002.12


<NST関連用語集>

PEG
percutaneous endoscopic gastorostomy
経皮内視鏡的胃瘻造設術

 PEGは内視鏡を用いて細いチューブを腹壁〜胃壁を貫通させて、栄養を直接胃に流し込む方法で、主として摂食障害が1ヶ月以上持続する場合に行われる小手術のことです。

 開腹しないため患者にとっては低侵襲でリスクが少なく、管理も容易なため、近年急速に普及してきています。

<従来の経鼻胃管と比較した場合のPEGの利点>

1.チューブの交換が容易
2.チューブ交換時の肺への誤挿入がない。
3.チューブの頻繁な交換がない
4.事故抜去が少ない。
5.在宅管理が容易
6.胃噴門機能を悪化させない。
7.チューブ接触による鼻咽頭や食道潰瘍の合併症がない。
8.異和感が少ない。
9.積極的な嚥下リハビリが可能
10.顔面付近にチューブが無いことによる心理的好影響と美容上の改善

<PEGの欠点>

1.胃瘻造設時に内視鏡設備と内視鏡技術習得医が必要
2.造設時2名の医師が必要
3.GER(胃食道逆流)を誘発し、嘔吐回数が増加する例がある。
4.外科的処置による合併症が有る。
5.胃内固定板により胃通過障害を起こすことがある。

<関連用語>
 胃瘻:胃の内腔と皮膚表面を交通する瘻孔のこと。

 瘻孔:組織の中に出来たトンネル状の孔(穴)のこと。

 PEJ:経皮内視鏡的空腸瘻
  PEG造設後の胃瘻部から、専用カテーテルの先端を幽門を超えて十二指腸もしくは空腸に置く方法

 PTEG:経皮経食道胃管挿入術
  頚部に食道瘻を超音波下で作る。内視鏡を用いずに造設できるので、PEGが施行不能もしくは困難な患者に用いられます。


Immunonutrition
免疫賦活物質

 過剰な炎症反応を制御して患者の生体防御能や免疫能を高めることで、手術侵襲度を相対的に低下させるような特殊栄養成分

 Immunonutrientsを含んだ経腸栄養剤は免疫増強栄養剤(IED:immune-enhancing diet)と呼ばれ、IEDを用いて感染性合併症の減少や予後の改善を期待する特別な栄養管理法がImmunonutritionとして注目されてきています。

 1986年に熱傷モルモットを用いたω3系多価不飽和脂肪酸による免疫低下の改善を報告して以来、アルギニン、グルタミンω3系脂肪酸、核酸成分、ビタミンA,C,EなどがImmunonutrientsとして報告され、これらを栄養学的必要量以上に用いる試みが実践されるようになりました。

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・アミノ酸
 グルタミンとアルギニンは、非必須アミノ酸ですが、侵襲時には需要が供給を凌駕するため、“条件付必須アミノ酸”と呼ばれています。

 グルタミンは、好中球やリンパ球などの免疫担当細胞にとって主要なエネルギー源となり、核酸合成の他多くの代謝経路に代謝されて行くと考えられています。グルタミンにより蛋白代謝の改善がなされるとともに、リンパ球、マクロファージ、好中球の機能が高まります。

 アルギニンは、成長ホルモン等の分泌作用があり、核酸やポリアミンの合成に必須で、尿素サイクルの主要なアミノ酸です。さらに一酸化窒素化合物やグルタミンの前駆物質でもあります。

 アルギニン補充の効果としては、侵襲時に蛋白崩壊の減少、窒素平衡の改善、創傷治癒の促進、細胞性免疫能の増強等が実験的に知られていますが、詳細には明らかにされていない機序もたくさんあります。

・脂肪酸
 ω3系多価不飽和脂肪酸には、魚油や植物油に含有されているリノレン酸系の必須脂肪酸が含まれています。ω3系のαリノレン酸は、免疫増強・修復作用に密接に関与するエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等に代謝されます。
 ω3系多価不飽和脂肪酸はさまざまな過程を通してこれに拮抗し、過剰な炎症反応を抑制します。
 ω6系のリノール酸型の脂肪酸はアラキドン酸カスケードを介してエイコサノイドを誘導し、炎症増強作用を持っています。

 

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