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インフルエンザの薬物治療 

2000年1月15日号 283

  シンメトレル錠の効果と問題点

   アマンタジン(シンメトレル錠)は長い間、パーキンソン病や脳梗塞に伴う意欲・自発性低下の改善薬として用いられてきました。A型インフルエンザへの適応が追加されたのは1998年です。

 アマンタジンはA型インフルエンザウイルスが持つM2蛋白(下記参照)の機能をブロックすることにより、ウイルス増殖を抑えます。ただし、M2蛋白のないB型インフルエンザウイルスには効きません。

 インフルエンザ対策の基本はワクチン接種ですが、その予防効果は70〜80%程度です。そこで、これを補完するものとして期待されているのが、アマンタジンです。

    {参考文献}Infection news 1999.9.10

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<主な利点>

1.有効性が毎年の抗原連続変異に影響を受けない(新型のインフルエンザウイルスにも有効)

2.服用後24時間以内に効果が出る。

3.ワクチンと併用することで相乗効果が期待できる。

4.発病した患者への治療効果もある。

<予防効果>

 予防に用いる場合は「あくまでワクチン療法の補完するものとして使用する」のが原則です。

 アマンタジンを100mg/日投与したときの発病防止効果は75%でワクチンとほぼ同等の効果ですが、内服開始24時間以内で有効血中濃度に達するため、速効性では勝ります。

<勧められる使用法>

 ワクチン接種前に流行が始まった場合には、ワクチン接種と同時に2週間アマンタジンを使用します。

 2週間経つとワクチンにより抗体が上昇し予防効果が出てきますので、アマンタジンを中止します。(中継ぎとして使用)

<問題点>〜副作用と耐性ウイルス

副作用:不眠、ふらつき、食欲不振、吐き気などの消化器症状、中枢神経系の副作用;5〜33%

 まれに抑うつ、振戦、歩行障害などの重篤な中枢神経症状

 *量が多すぎると悪夢、いやな夢を見るとの報告があります。

 治療的に使用すると、耐性ウイルスの出現が 30%にものぼるという報告もあります。耐性ウイルスは当人に悪影響を与えることはありませんが、新たに感染した人はアマンタジンが効かなくなります。

 アマンタジンの予防的使用は、「老人ホーム、慢性疾患施設など院内流行のリスクが高く、しかも副作用の管理・監視が可能な施設で実施するのが望ましい」と指摘されています。

 治療的使用の場合は与薬期間が短いため、副作用はあまり心配ありません。ただし、耐性ウイルスの出現を極力抑えるために「対象は発症後48時間以内の重症例と高齢者

 ハイリスク群に限り、3〜5日にとどめるべき」とされています。

<テオフィリンとの併用に注意>

 アマンタジンは高用量で用量依存的に痙攣を引き起こします。併用した場合にテオフィリンの痙攣誘発作用を増強する可能性があります。 (痙攣は0.16%;1000人で1.6人)

<小児への適応>

  シンメトレル錠(アマンタジン)のA型インフルエンザウイルス感染症の小児用量
      
 3〜6mg/kg/day、分2、5日間

 高熱の頻度が低くなり、有熱期間も短縮される。発熱改善効果は、通常24時間以内に現れる。(出典:日本病院薬剤師会雑誌 2001.3)

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ノイラミニダーゼ阻害剤  関連項目:新型インフルエンザ

 かねてから話題となっていた、インフルエンザウィルスのノイラミニダーゼ阻害剤「ザナミビル(一般名)」が製造承認されました。

 製造承認日は平成11年12月27日となっており、今後発売日等が注目されます。(追記:2001.2月薬価収載、内服薬「タミフル」も発売)

 この薬剤はノイラミニダーゼ阻害作用を持ち、ノイラミニダーゼを有するA型B型両方のインフルエンザウィルスに有効となっています。

 腸管吸収されませんので吸入剤(粉末)となっています。

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小児に対するタミフル〜A型とB型では有効性が異なる?!!

 最近、B型インフルエンザに対するタミフルの有効性を疑問視する報告出されています。

 1〜15歳の小児外来患者(489名)を対象とした調査(タミフルを服用開始後から解熱までの日数を指標として評価)ではA型およびB型患者での全有熱日数は、それぞれ1.30日及び2.18日で、B型患者で有意に延長していました。

 特に1〜5歳の幼児ではそれぞれ1.42日及び2.37日とその差が著明でした。
11〜15歳では2群に有意な差は認められませんでした。(A:1.30日、B:1.54日)

 感染力の指標であるウイルス感染価からも、服用開始後3日まではウイルスの感染が持続していることから、幼児でのB型インフルエンザに対するタミフルの有効性が低いことが示されています。

1〜5歳の幼児ではタミフルの用量を増量、あるいは他剤を考慮するなどの対応が必要とする意見もあります。


    出典:ファルマシア 2007.10

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<インフルエンザ感染のメカニズム>

  HA、NA表面の赤血球凝集素:hemagglutinin

 インフルエンザウイルスがヒトに感染して増殖するためにはいくつかのポイントがあります。

1)感染の最初期の「付着」という段階ではウイルス表面にあるHAが細胞表面の糖蛋白質あるいは糖脂質末端のシアル酸をレセプターと認識して結合します。

2)貫通:レセプターに結合したウイルス粒子はエンドサイトーシスによって細胞質内に取り込まれます。細胞室内に取り込まれたウイルスを包む小胞をエンドソームと言います。

3)エンドソーム内は弱酸性で、このためHAの構造に変化が生じてウイルス膜とエンドソーム膜が膜融合します。

ウイルスは細胞内に取り込まれてエンドソームを形成します。この時、ウイルス内のpHが5.5ぐらいに下がって初めて膜融合と脱殻が起こり、ウイルスの遺伝情報が細胞核に伝わります。pHを下げるのは脂質層を通関しているM2蛋白で、イオンチャンネルと呼ばれています。

4)ウイルス粒子内のリボ核蛋白質複合体(RNP)は膜蛋白質1(M1)などの内部蛋白質と結合しているため、これらの蛋白質とRNPの結合をゆるめて細胞質内にRNPを放出する準備をしなくてはなりません。

この脱殻の段階で膜蛋白質2(M2)を介してエンドソーム内のH+イオンがウイルス粒子内に流入して、RNPは内部蛋白質との結合が緩み、細胞質内に放出されます。アマンタジンはこの過程でM2の作用を阻害してRNPの放出を抑制します。

5)放出されたRNP核内に運ばれてRNAポリメラーゼによってRNAの転写と複製でウイルス蛋白質が合成されます。

6)複製されたRNAは核蛋白質(NP)あるいはウイルスポリメラーゼと結合してRNPとなって、M1や非構造蛋白(NS)によって核内に運び出され、細胞表面に送られます。
 RNPは表面のHA、NAや蛋白質とともに「出芽」によって表面に押し出されるウイルス粒子表面のHAとNAの末端にはガラクトーシスと結合したシアル酸があります。
 NAはこのシアル酸を切り離すことで、ウイルス自身の糖蛋白質末端のシアル酸を認識してお互いが結合し、感染力を失わないようそれぞれのウイルス粒子が独立して出芽します。ザナビルやオセルタミブル(タミフル)この段階でのNAを阻害してウイルスの感染性を無くします。

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追加記事 OHPニュース 2002.2

治療のタイミング

 アマンタジン、ノイラミニダーゼ阻害薬はいずれも48時間以内、できれば36時間以内に使わなければウイルスが全身に広がってしまい、薬剤での治療は不可能となります。


<合併症>

 高齢者の場合4割以上に肺炎が起こるとされています。局所に菌が住み着いてプロテアーゼがたくさん作られている患者では、インフルエンザに感染しやすくなると同時に、インフルエンザに感染して細胞の表面がじくじくしてくると、もともと局所に細菌が多いので、簡単に二次感染を起こします。アマンタジン、リレンザ、タミフルを使っても抗生物質をある程度使用する必要があります。

       (関連項目、プロテアーゼ阻害剤 参照のこと)


<トキシック ショック シンドローム:Toxic Shock Syndrome>

 インフルエンザ感染を契機として発症する黄色ブドウ球菌の二次感染で起こります。
産生する毒素により致死率が高い重篤な状態になることがあります。

 患者は65歳以上の高齢者がほとんどです。インフルエンザ流行時に、老人ホームや精神病院のなかで大量に感染が起こり死亡者も多数出たことがあります。

 特に精神病院では一般的に閉鎖環境で黄色ブドウ球菌を持つ患者が多いと言われています。この菌はドアの取っ手や廊下の柵を介して感染し、菌が鼻腔に住み着きます。

<<発熱は生体の防御反応>>

  直腸温で38℃、体外温度で40℃以上になると、マクロファージや好中球の活性化率、中和抗体の産生などがは大幅に上がってきます。40℃を超えるとある所の最近やウイルスの増殖が抑えられることもわかっています。(更に高体温になるとかえって免疫機能が低下するといわれています。) 

   解熱剤を使うと、免疫機構を弱めることになり、また病気の正確な経過の把握を困難にしたり、受診のタイミングが遅れたりすることもあります。


 ただし熱性痙攣の既往のある人の場合は、解熱する必要があります。

 その場合、物理的な冷却(脇の下、足の付け根を冷やす)などで効果があります。

 高齢者で食事が出来なく、また点滴が出来ない状態では、38℃の発熱が1日続くと脱水状態になります。心不全、腎不全で死亡例もあるので、リスクのある人には少量のNSAIDsが必要になる場合もあります。

*脳への障害は?? 〜40℃以下では熱そのものによる、障害の心配はありません。41.6℃を超える場合では、脳に障害を起こす可能性があります。動物実験では、発熱時に脳が傷害を受けやすくなり、わずかな傷害から脳浮腫や脳出血が起こり易くなります。

<発熱の欠点>

 発熱時には基礎代謝率、身体の酸素消費量、二酸化炭素産生量が増加し、心血管系や呼吸器系の仕事量が増えます。心疾患や呼吸器疾患のある小児やショック状態の小児では、それらは不利となり、発熱に伴う免疫機能を相殺すると考えられます。

 

 関連項目 クオリティオブライフと対症療法(無駄口薬理学)

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<厚生省より記者発表資料が出されましたのでお知らせいたします。>

*インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤の使用について

<概要>

 平成11年度厚生科学研究「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:森島恒雄 名古屋大学医学部教授)より以下の報告を受けた。

 平成11年1月から3月までにインフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した事例に対してアンケート調査を実施し、解析が行えた181例(うち小児170例)について解熱剤の使用の関連性について検討を行った。

 その結果、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンSR・錠・坐薬)又はメフェナム酸(ポンタールシロップ)が使用された症例では使用していない症例に比較して死亡率が高かった。

 しかしながら、インフルエンザ脳炎・脳症においては発熱が高くなるほど死亡率が高くなることが知られており、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸はこうした重症例の解熱に使用される傾向にあることを踏まえ、さらに統計的な解析を行ったところ、これらの解熱剤とインフルエンザ脳炎・脳症による死亡について、わずかではあるが有意な結果を得た。

 本研究は、今後更なる研究が必要であり、これらの解熱剤とインフルエンザ脳炎・脳症による死亡との関連性については、結論的なことは言えない状況と考える。 (1999.12.21)

2000年追記

緊急安全情報 2000年11月

ボルタレン・錠、SRカプセル、坐薬をインフルエンザ脳炎・脳症患者に使用しないこと!!

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発熱パターン

*稽留熱:continuous fever

 日内の差が1℃以内の持続する高熱。
・感染性発熱:化膿性髄膜炎、脳炎、腸チフス(サルモネラ症)
・非感染性発熱:川崎病

*弛緩熱:remittent fever

 日内の差が1℃以上あるが、最低の体温が37℃以下に下がらないもの。
・感染性発熱:急性ウイルス性呼吸器感染症、マイコプラズマ肺炎、急性中耳炎、
      :細菌性肺炎、膿瘍、敗血症、尿路感染症、結核、細菌性心内膜炎
・非感染性発熱:リウマチ性疾患、腫瘍

*間欠熱:intermittent fever
・日内の差が1℃以上で、最低の体温が37℃以下になるもの。
・感染性発熱:マラリア、回帰熱

*周期性発熱
 周期性発熱には、周期性不規則性発熱と周期性規則性発熱がある。
・周期性不規則性発熱は無熱期と有熱期が数日の経過で交代して出現
  感染性発熱:胆道感染症、膿瘍、鼠咬症、ブルセラ小
・周期性規則性発熱は無熱期と有熱期が一定の間隔で交代
 非感染性発熱:ホジキン病(Pel-Ebstein型発熱)
 


クリニカルインディケーターとは(臨床評価指標)

EBMに向けて(8)

参考文献 JMC:JAPAN METAL COLLAR CORPORATION 日本メタルカラー株式会社

 クリニカルインディケーターとは、クリティカルパス(クリニカルパスという言い方も広まってきている)から派生した言葉で、実際に行われている医療の経過や結果の意義有る項目を指標として設定し、それで、そこで施行されている医療の質を評価するものです。

 たとえば、虫垂炎(盲腸)の手術で考えますと、一般的に入院期間が短くなれば、良い手術と評価される方向となりますので、入院期間が一つの指標となるわけです。もちろん、同じ虫垂炎でも程度により入院期間に差がでますので、虫垂炎の程度をその指標に加味して設定する必要があります。

 効果的な指標の設定とその評価は、なかなか困難なところがありますが、その際、必要な要項として『客観的な把握+容易な評価』の2点を満たす必要があります。

 又、比較するため、標準の値が必要となります。 

 諸外国では、すでにかなり研究が進んでいて、アメリカ・オーストラリアでは、以下の方法があります。

診療評価の方法として現在考えられているのは、

 1) clinical indicator: outcome(結果)とprocess(過程)を考慮したもの

 2) clinical pass

 3) outcome status が現在考えられています。

*クリニカルパスとの関連、EBMとの関連

 クリニカルパス(クリティカルパス)とは、一つの疾患に対して治療の道筋を示す方法です。クリニカルパスの評価の方法として具体手的に最も有効な方法がクリニカルインディケーターと考えられます。むしろ、この2つがペアになって、医療そのものが評価されると言っても過言ではありません。

 逆にクリニカルインディーケーターを考えるとき、その対象の治療方法があまりにバラバラで統一性がなければ、indicator(指標)として本当に意義があるのかどうかも疑いやすくなります。また、多くのバイアスが入ってくることにより、インディケーターの信用性も落ちてくる可能性があります。

 EBMは、治療の方法を経験論でなく、治療効果が十分に期待できるかどうかを評価した上で、治療方法を選択するという方法です。この方法を考えると、その評価という図式においてクリニカルインディケーターが、意義あるもととして浮かび上がってきます。

 同時に、EBMに対応する治療法をクリニカルパスとしての概念に取り入れることにより、これらの3者は密接な関係を見せることが明らかとなります。すなわち、EBMは、これらの2者によるより大きな発展を遂げるものと思われます。


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QI:qualty indicator;クリニカルインディケーター
  最近の動向と実際

2011年10月1日号 No.553

 医療の質は、医療提供の構造(ストラクチャー)、診療の内容や過程(プロセス)、診療の結果(アウトカム)という3つの側面から評価されます。

 最近では、患者の健康アウトカムを最も良くする可能性の高いことが臨床研究によって実証された診療プロセス(エビデンス)がどの程度実際に行われているのかを数値で表す試みが広く行われるようになりました。

 そのような質を表す指標をQI:qualty indicatorと呼びます。

 医療の質を改善する為には、そもそも医療の質とは何かを知り、何らかの方法で測ることができなければなりません。

 1960年代では、医療の質はストラクチャー(専門職の種類や数、器機や組織、記録など)につての評価が指標となっていました。

 理想的には、医療の質は、患者の健康アウトカムで評価すべきです。しかし、1)人はいつかは死ぬべき運命にあること(望まないアウトカムである死をそもそも避けることができない)、2)医療の結果は不確実で確率的にしか予見できない(個人の患者で行う医療の結果を100%確実に予測できない。→学問としての医学が科学としてはまだ不十分である)、3)統計学的に、一般的に少数の患者しか扱わない個々の医師や医療施設でのアウトカムが、エビデンスが依拠する多数の患者集団を対象にした臨床研究の結果とは異なる可能性があるなどの理由から、アウトカムよりもプロセスを(行うべきことをきちんと行っているか)の、医療の質をより反映すると考えるべきなのです。

<プロセス評価>

 1990年に米国ではは、「個人や集団に対して行われる医療が、望ましい健康アウトカムをもたらす可能性の高さ。その時々の専門知識に合致している度合い」を医療の質と定義しています。

 望ましい健康アウトカムをもたらす可能性の高い診療やエビデンスに基づいた医療とは、EBM(エビデンスに基づいた医療)にはかならず、医療の質を知ることは、診療プロセスがEBMの原則の則っているかどうかを評価するということでもあります。

<改善への動機づけ>
  〜Evidence Practice Gap

 確立されたエビデンスがあっても、様々な理由(最近明らかにされたエビデンスを知らない、知っていても信じない、知ってはいるが実践できない等)から、エビデンスに準拠した診療が行われない、あるいは普及に時間がかかることが少なくありません。

 エビデンスと実際に行われている診療との間に格差(Evidence Practice Gap)があること、つまり診療内容に改善の余地があることを知らなければ、質の高い医療(エビデンスに則った医療)を実践しようという意欲は起こってこないと思われます。

 エビデンスとは実際に行われている診療の間の格差の有無、程度を示す目安(指標)を質指標QI:qualty indicatorと言います。

<QI改善活動>

 聖路加病院での例では、糖尿病患者でのHbA1cが7.0%未満にコントロールされている患者の割合を高める為に、何度も経口血糖降下剤の使い方についての勉強会を開催したり、長期間HbA1cが高値を続けている患者については、担当医に内分泌(代謝)科にコンサルテーションするように推奨した結果、QIは明らかに改善したとの報告があります。

{参考文献}医薬ジャーナル 2011.9 聖路加病院 院長 福井次矢等


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QIの指標一覧   〜臨床指標評価委員会で決定した指標項目〜

       率=分子 / 分母 (/ は÷)

1.患者満足度(入院、外来)=満足と回答した患者数 / 回答した患者数

2.死亡退院患者率=死亡退院患者数 / 退院患者数

3.入院患者の転倒・転落発生率=報告された転倒件数 / 入院延べ患者数

4.手術開始1h以内の予防的抗菌薬使用率=手術前1h以内に予防的抗菌薬が開始された退院患者数 / 退院患者数

5.退院後6週間以内の緊急再入院率=退院後6週間以内の緊急入院患者数 / 退院患者数

6.予防可能であった可能性のある静脈血栓塞栓症の発生率=入院期間中に静脈血栓塞栓症を 新規発症した患者数 / 肺血栓塞栓予防管理料を算定されていない退院患者数

7.手術患者での入院期間中の静脈血栓塞栓症発症率=入院期間中に静脈血栓塞栓症を新規発症した患者数 / 手術を受けた退院患者数

8.褥瘡発生率=真皮までの損傷異常の褥瘡の院内発生患者数 / 入院延べ患者数

9.糖尿病患者の血糖コントロール=HbA1cの最終値が6.6%未満の患者 / 糖尿  病の薬物治療を受けている患者数

10.急性心筋梗塞患者のアスピリン使用率=急性心筋梗塞で入院し、生存退院した患者のう ち退院時にアスピリンが処方されている患者数 / 急性心筋梗塞の診断で入院し、生存退院した患者数

11.手術患者での静脈血栓塞栓症の予防行為実施率=静脈血栓塞栓症の予防行為を行った患者数 / 手術を受けた退院患者数

{参考文献}医薬ジャーナル 2011.9
  

<医学用語辞典>

outcome:アウトカム〜結果、成果

 医学的に結果をだすこと。→QOLの向上、患者の回復など

 アウトカム研究とは、理想的な医療と実際の医療のギャップをうめることを目的としている。

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マルチトラック式アウトカム

 入院時に最終アウトカム、つまりゴールを設定するのではなく、術後の1週間の患者の状態を見て、ゴールを設定すること。

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アネムネ用紙

 看護師が入院時に患者情報を聴取するための用紙

 患者名、主訴、現病名、既往歴、特異体質、入院時一般状態、家族構成、宗教など

 

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