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1999年2月1日号 261

EBMとは     シリーズEBMを考えるもご覧下さい。

   科学的薬物療法の実践     関連項目 EBMの理念

  EBM;Evidence-Based Medicineは「個々の患者の医療判断の決定に、最新で最善の根拠を良心的かつ明確に思慮深く利用すること」と定義されています。

 すなわち「最近までの研究成果や信頼しうる根拠に基づいて、効果的で質の高い患者中心の医療を実践すること」です。

「豊富な臨床経験に基づく臨床医学のArt(技)の部分」と「信頼しうる科学的根拠に基づいたサイエンスの部分」の両方をうまく用いることがEBMの実践です。

{参考文献}月刊薬事 1999.1  JJSHP 1998.9

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Medicineは通常、医学・内科学と訳され、臨床医学を意味します。また医薬・内服薬などの意味もあり薬物療法ととることもできますが一部で「まじない・魔法」の意味も併せ持っていました。

「medicineとは、不確実な科学であり、確率の技術である」との格言があるように、同じ病気の患者に、同じ薬を使用してもそれが有効な場合もあれば、無効な場合もあります。

 医療行為の有用性は、現在確率統計学的にしか評価できないのが現状です。そこで、効果的、効率的医療の評価、選択、適用による医療の見直し、すなわち根拠に基づく医療;EBMの概念が出てきました。

 科学的根拠のない治療方法を排除し、根拠のある医療を推進することを目的に、EBMは現在世界的に急速に普及し実践し始めています。

 EBMの実践とは、患者のケアを行う上で必要となる診断や予後、治療法、その他の臨床あるいは保健上の問題について、臨床的に重要な情報を生涯にわたり自己研鑚する過程のことです。 

 薬剤が正確に使用された後でも、その効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされるという一連のサイクルが必要となります。
EBMのプロセスは大きく分けて4つからなる明確な行動目標として設定されています。

1.目の前の患者が抱えている問題を明確にする。
2.その問題についての情報を収集する。
3.収集した情報を批判的に吟味する。
4.その情報を患者に適用する。        関連項目 
PECO

 患者の問題から始め、患者へのフィードバックで終わる。患者に始まり、患者に終わるプロセスとして、全体を行動様式として提示していることがEBMの形式上の大きな特徴。

1.患者の問題の定式化〜
・まず取り上げる問題が治療、副作用などのいずれのカテゴリーに属するかを考えます。(薬物治療の問題)
・その問題を、患者、治療方針、評価するエンドポイントの3要素で明確に定義する。
・このとき評価するエンドポイントが患者中心に設定されているかどうかに注意します。単にコレステロールを減らすというだけでなく、心筋梗塞を減らすあるいは死亡率全体を減らすという真のエンドポイントを設定することが重要です。

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 論文で読んだ知識をどのように患者に適用するか。

 このときは論文の医療設定と自分の患者の医療設定の違いの吟味、あるいはどのように論文結果を患者に説明するかが重要です。

 ここで重要なことは「科学的根拠があるのでこれに従って飲みなさい」ということではなく、目の前の患者の個別性をよく考慮し患者との話し合いの中で実際の医療内容を決めていくことです。

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骨とエネルギー
口呼吸は万病の元 (7)

このシリーズは東京大学医学部口腔外科 講師 西原克成先生が「治療」1997.12〜1998.9に連載されていた文章を参考に再構成したものです。

  細胞呼吸の中心は中胚葉系の間葉細胞からなる造血リンパ系、脈管リンパ系、骨格系、筋・腱・靭帯・関節系、皮下組織などが担当します。それで免疫病をやんだ時、骨端の関節頭が変形したり顔がつぶれ、背中が曲がり、皮膚や筋肉が壊れ、上皮組織では間質性の炎症を生じます。

 また骨格は動くと変形しますが、このときに当然エネルギーを必要とします。筋肉の要求する膨大なエネルギーの源となるリンは、当然筋肉の中心に位置する骨が供給しますが、骨が活発に活動する部位はいうまでもなく骨髄腔です。力学刺激を負担した骨の髄腔内では、急激に代謝が活発化してリモデリングを始めますが、当然、造血系にはエネルギーが供給できなくなってしまいます。

 嫌気的造血が白血球造血でエネルギー源はチオールエステルと考えられ、そして好気的造血が赤血球造血で、ピロリン酸エステルがこれをまかないます。それで同じ骨髄腔でも軟骨の多い関節頭では白血球が作られるのです。骨も軟骨もコラーゲンの高次化したものですから、コラーゲンも同様に障害される。骨と軟骨のコラーゲンのリモデリングには高エネルギーのリン酸とチオールエステルが多量に必要なのです。

 小児を歩かせすぎたり、大人でもスポーツをしすぎると免疫病になるのは、関節頭の白血球造血巣が力学刺激でくたびれて造血障害を起こすためです。このときは無害であっても腸内細菌が多量に体内を巡ると白血病や悪性リンパ腫を発症します。

 骨休めを怠るだけでしばしば再生不良性貧血・血小板減少症・白血球減少症・白血病などになりますが、これは前述の理由で骨髄での造血を止めてしまうからです。疲れたヒトはそうなると脾臓で造血を始めるが、ここでは血小板は産生されません。

 それで重度の血小板減少症の患者の脾臓が摘除されます。脾臓を摘除すればなくなった所で造血はできないから、やむなく骨髄で再び造血をはじめますが、骨休めしない骨は荷重を負担するだけでエネルギー代謝が手一杯ですから、造血を促して血小板を増やすために副腎皮質ホルモンが用いられていたのです。これは、骨休めの代用なのです。

 つまり造血障害とは、栄養障害、バクテリアの共存とあいまって骨格系の不適切なエネルギーの吸収によって起こったのです。

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薬局の窓(2)

 薬剤部の調剤室に散薬の自動監査システムが入りました。

 このシステムでは、コンピュータを利用し医事課で入力したデータをもとに散薬が間違いなく秤量されているのかをチェックすることができます。

 散薬は外から見ただけでは監査しにくかったのですが、より一層、正確な調剤ができるようになりました。

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