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1999年5月1日号 267

NUDとは(2)

治療薬の最近の知見  関連記事 NUD(1)

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 NUD(non-ulcer Dyspepsia:潰瘍の無い消化不良)は慢性胃炎と診断され漫然と治療が継続されていた症候群であり、高齢化やストレス過多の社会を反映して増加する傾向にあるとされています。

 また我が国では、NUD患者の半数以上に消化管運動の機能低下すなわち胃排出遅延や腸管蠕動運動の低下が関与しているとされており、その治療には消化管運動機能改善薬が繁用されています。

{参考文献}OHPニュース1999.1

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<<消化管運動機能改善剤の分類>>

1.オピオイド受容体作用薬〜セレキノン

2.抗ドーパミン剤〜プリンペラン、ナウゼリン

3.セロトニン受容体作用薬〜アセナリン

4.モチリンアゴニスト(注参照)〜エリスロマイシン

5.漢方薬〜六君子湯、半夏瀉心湯

 消化管運動期の改善剤としてのオピオイド受容体作用薬〜オピオイド受容体には主にμ、σ、κの3種類の受容体が存在しますが、消化管運動に係わっているのはμ、κ受容体であるとされています。μ受容体はオピオイドに対する親和性の異なる2種類のタイプが存在し、ともに神経伝達物質の遊離を抑制するとされています。

 セレキノン錠はμ受容体に対して高い親和性を示し、低濃度では交感神経にあるμ受容体に作用し、ノルアドレナリン分泌を抑制します。ノルアドレナリンは副交感神経に対して抑制的に作用していることから、この分泌を抑制することでACh分泌量は増加し、消化管運動は亢進します。一方、高濃度になると親和性の低い副交感神経上のμ受容体にも作用し、副交感神経からのACh分泌を抑制し、消化管運動は抑制されます。このようにセレキノン錠は消化管運動亢進の状態に対しては抑制的に、遅延あるいは低下している運動に対しては促進的に働くと言う二面性を有しており、過敏性腸症候群(IBS)にも使用されます。

 プリンペラン錠とドーパミン受容体ドパミンD2受容体拮抗薬はドパミンの副交感神経からのACh分泌抑制作用を解除することで低下している胃運動を改善するとともに中枢性にCTZのドパミンD2受容体に作用し、制吐作用を示します。ナウゼリン錠は血液脳関門を通過しないため、中枢神経症状は少ないが、バイオアバイラビリティ(約10%)が低くプリンペラン錠と比較して大量に与薬されるためプロラクチン血中濃度の上昇に注意が必要とされます。また、最近、プリンペラン錠の胃運動機能改善作用は5−HT4受容体刺激作用によるものであるとされています。

 アセナリン錠とセロトニン受容体  アセナリン錠は5HT1、5HT3、5HT4受容体に作用し、5HT1をブロックし、5HT4を刺激することでより強い消化管運動機能改善作用を発揮し、その作用は上部消化管から下部消化管にまで及びます。

 臨床では慢性胃炎、胃切除後症候群、逆流性食道炎および偽性腸閉塞等に数多く使用されています。一方、アセナリン錠はCYP3A4で代謝されることからアゾール系抗真菌剤やマクロライド系抗生物質との併用で血中濃度が上昇する可能性があり、濃度が高くなると海外で報告されている心電図異常であるQT延長など心血管系に対する影響が現れる可能性が示唆されています。

(注)モチライド モチリンは十二指腸及び上腹部空腸粘膜に存在するペプチドホルモンで、IMC(空腹期伝播性収縮)の発現に関与しています。

 エリスロマイシン(当院未採用)はモチリン分泌細胞に作用し、モチリンの分泌を促進させるとともに平滑筋のモチリン受容体に直接作用して腸管運動を亢進させ、また胃排出促進作用も有しているとされます。

*エリスロマイシンはモチリンアゴニストといえます。

 モチリンは消化管運動を亢進する働きのあるタンパク質です。ヒトの消化管では、空腹時に1〜2時間ごとに胃から始まって回腸末端(盲腸の前)まで移動していく周期的な強い収縮運動が生じていることが知られており、これを空腹期肛側伝播性強収縮帯(IMC)と呼んでいますが、このIMCを制御しているのが、モチリンであるとされています。

 モチリンは受容体を介して作用を発現するとされており、このモチリン受容体に対してエリスロマイシンが作用して、消化管運動を亢進するという報告があります。ちなみにこの作用発現についてもエリスロマイシン少量、つまり抗菌作用が期待できないような少ない量で、効果発現を得ることができるとされています。


 クラリシッドのモチリン作用はエリスロマイシンの1/5とのことです。(メーカーに問い合わせ)

 エリスロマイシンでは、600mg1日1回

   関連記事 NUD(1)


血圧の高い人は給料が高い?

バイアス(3) [参考文献}月刊薬事 1998.2等

 ある会社で何十人かの社員に給料と血圧のアンケート調査をしたとしましょう。この結果から血圧を横軸、給料を縦軸にとって散布図を書くと、きれいな正の相関があることが分かります。すなわち血圧が高い人は給料が高くなることが分かります。

 これが真の関連であるとするならば、給料を上げるためには塩辛い味噌汁を毎日飲めば良いことになりますが、そんなことをする人はいないと思います。

 わが国は年功序列社会です。基本的には年齢の上昇と共に給料は増加するはずです。また年齢と共に血圧が上がるというのは医学的な事実です。したがって年齢が高い人は、血圧も給料も共に高くなり、見かけ上の相関が生じます。このように第3の変数が、2つの変数両方に関連して、見かけ上の関連を生じさせる現象のことを交絡:confoundingといいます。

 また、アメリカのこんなキャンペーンがありました。「ニューヨーク市民でいるよりも海軍に入ったほうが死亡率が低いので、皆さん海軍に入隊しましょう。」 なぜなら、海軍の死亡率は1000人当たり9人、市民の死亡率は1000人当たり16人だというのです。ちなみにこの数字自体には嘘はありません。この場合も年齢という因子が絡んでいます。海軍の人は若いが、市民は子供、老人を含みます。死亡率を比較するのに、年齢を合わせて比較しないと不公平なのです。

 治験を行う際も、このような交絡が、入り込んで来る訳で、多角的な視野で患者の背景因子(年齢、性別、病気の重傷度など)を考慮しないとその統計データは、全く信頼できないものになってしまうのです。臨床研究では、薬物の作用(D)と反応(R)の関連を評価したいわけですが、第3の因子がこの2つの関連を歪めてしまうことがあります。このような現象が交絡です。


「ワンポイントお薬メモ」

 胃粘膜保護剤のように、安全と思われている薬でも添付文書には、妊婦、妊娠している可能性のある婦人には禁忌と書かれているものがあります

 アロカでは、子宮収縮作用があり、当院で採用されているウルグートCpでは、動物で催奇形性が認められているため禁忌となっています。

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