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ウイルス性肝炎
C型肝炎の発見
====非A非B肝炎ウイルスの解明====
昭和63年8月1日号 No.27
近頃(昭和63年)、血液を介して感染する非A非B肝炎ウイルスの一部の抗原蛋白遺伝子のクローニングに成功し、非A非B肝炎ウイルスウイルスの抗体検査のめどがついたと米国カイロン社の発表がありました。
非A非B肝炎ウイルスはインドなどで流行した水系感染するものと、血液を介して感染するものとの2種類があり、今回発見されたのは、後者で、これは輸血後肝炎の95%以上、散発性肝炎の40〜50%の原因となっている最も大きい肝炎ウイルスです。
今回開発に成功したウイルス抗体の原理はEIA法(酵素抗体法)と呼ばれるもので、非A非B肝炎ウイルスに感染していることが証明されている血清のうち50〜80%が陽性であったと言われています。
キットの改良により将来100%近く、感度は上がるものと期待されています。
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<輸血後肝炎防止のための非特異的方法>
1)輸血単位を極力減らす。:特にFFPと濃厚赤血球の併用の禁止などの適応を厳密にする。
2)400mlパックの利用:輸血単位数が半減する。
3)自己輸血:輸血後肝炎、エイズ、その他の副作用の減少が期待される。
<非A非B肝炎ウイルスの知識>
日本人の場合、感染性を有するキャリアの比率は肝機能正常者の3〜5%、全人口の2〜10%、抗体保有者は20〜30%、場合によっては40%にも達すると予想されています。
大人数のプール血清で製造される凝固因子製剤には、非A非B肝炎ウイルスのキャリア血清が確実に混入しており、肝炎が50〜60%に発生します。
加熱処理したものでも非A非B肝炎ウイルスの不活化は出来ません。
非A非B肝炎ウイルスの院内感染
1989年1月15日号 No.36
近年、医療従事者のB型肝炎院内汚染事故による劇症肝炎の報道があり、社会的にも注目を集めました。
院内汚染事故のほとんどが処置中の注射針によって起こっています。この事故形態はB型肝炎と全く同じで、就業まもない医療従事者に多発しています。
<処置>
*血液の付着
B型肝炎と同様に対処する。一般診療時には特別の処置は不要ですが、血液・体液が付着する可能性のある時にはゴム手袋を使用する。
着衣、ベッド、床などが汚染されたときは、血液を拭く取った後、流水で十分に水洗するか、次亜塩素酸Na又はステリハイドなどの液で消毒する。
*器物の消毒(B型の場合と同様)
十分な水洗と加熱滅菌が最も確実。加熱できない時は次亜塩素酸Na又はステリハイド
・次亜塩素酸Na 10〜30分
・ステリハイド 10〜30分
・エタノール 10〜30分
・煮沸 20分 等
*事故時
現時点では、ウイルス増殖を抑えるために、事故後は過労・睡眠不足を避けることが肝要で事故後数日以内に肝機能検査を行い、その後、月1回1年間追跡する必要があります。
こちらも参照して下さい。→医療従事者のC型肝炎感染の対策
C型肝炎
1990年6月1日号 No.66
C型肝炎と言う名称は、1974年ニューヨーク血液センターからB型肝炎ウイルスとは全く関係の認められない潜伏期の長い輸血後肝炎が存在することが報告され、A型肝炎、サイトメガロウイルスとは関係なく、第3の病原候補として“型”と呼んだのが始まりとされています。
非A非B肝炎には、発生の際の形態によって輸血後肝炎、地域感染、流行性などに分類することが出来ます。
1989年、米国カイロン社が輸血後肝炎の原因とされている関連抗体の測定法を確定し、そのウイルスによるものを“C型肝炎”と命名しました。我が国でも昨年(1989年)の12月にこのC型肝炎ウイルスの抗体検出用試薬が認可され、1990年4月1日付で保険適用となりました。また、日赤血液センターでは、1989年11月から献血者のスクリーニングに使用されており、輸血後肝炎の危険が大幅に減少するものと期待されています。
<肝癌死亡者と非A非B肝炎ウイルス(C型肝炎)>
我が国の肝癌死亡者は1975年以来急増し、人口10万対比18.90と倍増していますが、このうちHBs抗原陽性肝癌は不変で、急増しているのはHBs陰性で肝癌全体の75%を占め、輸血の前歴があります。
Hbs抗原陰性の肝癌は17,000人でそのうち13,000人がHCV抗体陽性であり、その40%が輸血歴があります。これはHVC抗体スクリーニングを開始したことにより防止できうる症例であり、今後27年間に15万人を越える肝癌が予防できることになります。
C型肝炎その後もご覧下さい。
ウイルス肝炎
1990年6月15日号 No.67
現在(1990年)知られている、ヒト肝炎ウイルスとしてA,B,C,D,Eの5種類があり、その性質は大きく異なっています。
ウイルス性肝炎の免疫学的臨床区分からは、経口感染を主とする流行性肝炎と、血液・体液を介して感染する血清肝炎とが存在します。一般にウイルス肝炎ではウイルスが異種でも類似症状を呈することが多く見られます。
急性肝炎は一過性に感染し、また慢性肝炎は持続性感染に基づいており、どの肝炎ウイルスも一過性感染は起こすが、持続感染するものとしないものとに分けることが出来ます。
1)一過性感染で持続感染のないもの
*A型、E型〜流行性肝炎タイプ
感染は不顕性のことが多いので急性肝炎・劇症肝炎となることもある。しかし、持続感染がないので、慢性肝炎、肝硬変、肝癌になることはない。
2)持続感染するもの〜B型、C型、D型(血清肝炎タイプ)
*C型肝炎〜非A非B型肝炎のうち、少なくとも40〜60%を占める。
*D型肝炎(デルタ肝炎:HVD)
デルタ肝炎ウイルスはHBVの感染状態にある宿主にのみ感染が成立する。HBVとHVDの重感染はHVBの単独感染に比べ高頻度に劇症肝炎を引き起こすことが報告されている。
*E型肝炎
発展途上国の青年、成人層に見られる。臨床的にE型肝炎はA型肝炎に酷似している。感染後2〜9週、平均5〜6週の潜伏期間を経て、黄疸を伴って発症する。無黄疸、あるいは無症状の症例もある。
C型肝炎最近の話題(治療法)
2002年9月15日号 No.345
genotype Ib
HCV genotype Ib : serogroup 1
{参考文献}日本薬剤師会雑誌 2002.9
最近、C型肝炎にはウイルスのタイプがあり、日本ではgenotype
1b,2a,2bのタイプが存在することが明らかになりました。また、ウイルスの量の測定も可能になりました。
ウイルスの量に関しては、当初genotype 2a,2bはウイルスの量が現在より低く検出されていましたが、主にウイルス量が多い症例に無効例が多いことが明らかになってきました。
その後、1994年からウイルス量の測定法がprobe法ver.2になり、genotype
2a,2bではver.1の測定よりもウイルス量が高くなり、genotype
1b同様にウイルス量が高い症例も存在し、genotype
2a,2bに関しては、genotype 1bに比べて明らかにインターフェロンの効果があることが判明しました。
しかし、日本人のC型慢性肝炎患者の約70%が効果の悪いgenotype
1bです。
C型慢性肝炎治療で難治といわれているgenotype
1b高ウイルス量症例(100kcopies/ml以上)に対する治療法の選択は2001年末からリバビリン(レベトールカプセル)併用療法やコンセンサス・インターフェロンの登場さらにインターフェロン使用期間の保険上の“縛り”が取れ*注(下記参照)長期使用が可能になったことにより、症例によるベストの治療法を選択する時代に入ったといえます。
現在、推奨される療法
インターフェロンα2bとリバビリンの併用療法です。ただし、催奇形性のことを考え妊娠可能な女性や治療開始前のヘモグロビン値が低値の例などは、第2選択としてコンセンサス・インターフェロンを考えます。
更にこれらの治療でも著効を得られない症例として、インターフェロンの長期使用をおこなうことを考慮します。インターフェロンでウイルスの陰性化が得られれば、その後2年間インターフェロンを使用すると著効が得られたという報告もあります。
いずれの治療でもウイルスの陰性化が得られないような症例では、肝硬変・肝癌への進展抑制のためALT値の正常化を目的としたインターフェロンの少量間歇療法を選択することになります。
また、1週間に1回のペグ・インターフェロンとリバビリンの併用療法も現在、開発治験中です。
*注 肝硬変および肝癌の再発抑制に対する保険適応は、現在も認められていません。
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C型慢性肝炎治療の最新の知見
2007年12月1日号 No.465
現在、日本のB型肝炎ウイルス(HBV)キャリア率は約1.7%、HCVキャリア率は約1.2%です。また、HCV抗体陽性者の自然経過はHCV曝露から高率に慢性化し、20〜30年後に肝硬変、そして肝細胞癌(HCC)へと移行することが明らかとなってきています。
現在、慢性肝炎は、インターフェロン(以下IFN)、ウルソデスオキシコール酸(以下UDCA)、プロテアーゼ阻害剤などの集学的治療により、肝癌撲滅を目指し、ウイルス性慢性肝炎から肝硬変に移行しないように努力することが求められています。
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*IFN治療
対象の選択には60〜65歳以下が望ましく、病期の進行度が軽いもの、線維化が強く起こるような肝炎の活動性が弱いものが宿主側の良好な効果を得る要因となります。
またウイルス側の要因として、ウイルス量が少ないこと(100KIU/ml,1Meq/mL,300fmol/L未満)、Genotype(G)のgenotypetype2a,2b(serotype2群)はgenotypetype1b(1群)に比べIFN効果が良く、このことによりIb高ウイルス群では難治例とされてきました。
(1)持続性IFNの必要性と薬物動態の最適化(ペグ化)
従来のIFNは急速に代謝され、半減期が非常に短いため、基本的には週3回注射されています。
ペグIFNは週1回で安定した血中濃度を維持するので、忙しくて通院が困難な患者さんにとっては待ち望まれた薬剤といえます。また、血中濃度を維持することによって、従来のIFNでみられていたウイルスの再増殖の抑制が期待できます。
(2)持続性IFNと抗ウイルス剤の併用療法
・ペグIFNα2b+レベトール
(ペグイントロン皮下注用50μg)
・ペグIFNα2a+コペガス
(ペガシス皮下注180μg )
の2種類が現在使用できます。
ペグイントロン(α2b)の場合は、効果と副作用の出現を考慮し体重あたりの用量を設定して使用します。
ペガシス(α2a)では、施行する前に採血し、血算、白血球分画を測定しなければならないという煩雑さが規定されています。
* ウルソデスオキシコール酸(UDCA)
UDCAは熊胆(クマノイ)の主成分で、古くから日本で使われています。現在では、二重盲検法により慢性肝炎にも有効とされています。
2007年にC型慢性肝炎患者に600〜900mg/日で保険認可がされるようになりました。原因療法としてのIFN療法とともに、肝庇護療法としてC型慢性肝炎の治療の両輪になっていくと思われます。
UDCAの作用機序
1.利胆作用、2.肝細胞膜保護作用、3.体内胆汁酸プールの変換、4.免疫調節作用の4つが考えられています。
*プロテアーゼ阻害剤(治験中)
HCVの増殖に際して、HCVが持つ3つの律速酵素が関与していることが明らかとなってきました。プロテアーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼです。
この中でプロテアーゼに対する阻害剤の治験が一番先行しています。
{参考文献}日本病院薬剤師会雑誌 2007.11
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ペグIFN 2aと2b 現在、PEG-IFN製剤としては2剤あり、それぞれの適応に若干の相違があります。
・ペグIFNα2a+コペガス
(ペガシス皮下注180μg )
・ペグIFNα2b+レベトール
(ペグイントロン皮下注用50μg)
両者の違いは、ペガシス+コペガスでの再投与での投与期間とIFN未治療の2型高ウイルス量患者への適応です。
再投与で48週投与可能であることは、難治性である再投与患者にとってはメリットがあると思われます。またレベトールには貧血等の問題があり、高ウイルス量の患者すべてに使用できるわけではありません。
ペガシスは、単独療法も可能で、すべてのC型慢性肝炎の患者に対して適応を持っているので、それぞれの患者に応じた治療の選択が可能です。
PEG-IFN製剤はα-2aとα-2bの2剤があります。それぞれに結合しているPEG(ポリエチレングリコール)の分子量が違うため、生物学的活性に違いがあります。
2aの方がより大きな分子量のPEGを結合しているため、半減期がより長く、細胞間を容易に通り抜けることが出来ないことにより体内分布もより限局的になっています。
これらの治療法により、1型高ウイルス量症例に対しては、従来では1割に満たなかった成績が5割を超えるところまで成績が向上しています。
{参考文献}大阪府薬雑誌 2007.10
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※ C型慢性肝炎の治療ガイドライン(H18年)
初回では、高ウイルス量は難治性であるからPEG-IFN・RBV併用療法が第一選択となります。低ウイルス量は治癒しやすいため、従来型IFN単独もしくはPEG-IFN単独療法が第一選択となります。
再治療では、ウイルス量によらず難治性であることから、RBV併用療法が治療の基本で、もしRBVが使用できなければ、IFNの長期使用することになります。
再治療の原則は、初回治癒無効の要因を検討し、その上でウイルス排除を狙う治療を行うのか進展予防(発癌予防)を狙う少量長期療法を選択するかです。
(初回)
Genotype1 Genotype2
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高ウイルス量 Peg-IFNα2b + リバンビン Peg-IFNα2b + リバンビン
(48週間) (24週間)
Peg-IFNα2a + リバンビン
ペガシス
(48週間)
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低ウイルス量 IFN(24週間) IFN(8-24週間)
Peg-IFNα2a Peg-IFNα2a
(ペガシス:24-48週間) (24-48週間)
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※ Genotype1かつ高ウイルス量の患者の治療
Genotype1で治療中のHCV-RNAが12週以内に消失する患者では、通常通り48週間でSVRを狙います。
SVR:ウイルス学的効果
13週から24週も間に消失する患者では、治療期間を48週から72週へ延長することでSVRが改善することが分かってきています。
24週以内にVCV-RNAが陰性化しない人には、SVRを見込める率が極めて低いため、ALTさえ正常化していれば48週間で長期ALTの正常化維持を目指すか、肝発癌予防を目的としたIFN単独療法などのその他の療法へ移行すべきです。
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◎ インターフェロンα2b・リバビリン併用療法による脳出血について
インターフェロンα2b・リバビリン併用療法中に脳出血が認められた症例があります。高血圧、糖尿病又はその既往歴、家族歴のある患者、耐糖能障害のある患者には慎重に使用して下さい。
高血圧及び糖尿病の両疾患を合併する患者では、脳出血が生じるリスクが高いので注意して下さい。
2002年9月10日新聞報道あり
2002年9月15日号 No.345
医学・薬学用語辞典(さ) 酸塩基平衡はこちらです。
2002年10月1日号 No.346 医学・薬学用語辞典(し)
・瀉血療法
・鉄摂取制限療法
〜〜〜新しいC型慢性肝炎の治療法〜〜〜〜〜
従来から、鉄は組織障害性の強い微量元素として注目されてきました。
鉄の過剰状態から起こる代表的疾患は、最近その責任遺伝子が明らかにされたヘモクロマトーシスや、難治性の貧血に伴って生ずるsecondary
hemosiderosis等でした。これらはいずれも全身的な強い鉄過剰状態による組織障害と、それに伴って生じる臓器障害が特徴ですが、今回、特定の臓器への鉄毒性に注目し、臨床的にその重要性を喚起するきっかけとなったのは、1994年に、慢性C型肝炎に対する瀉血療法の報告です。
瀉血療法は、鉄貯蔵のコントロールによって肝炎を抑えることを目標とした治療です。
鉄貯蔵は本来経口的に摂取されたもの、従って鉄のコントロールという意味から鉄摂取制限療法も有効と思われます。
経口摂取される鉄のコントロールが肝炎の抑制につながるとの報告は1999年に報告されており、2000年には慢性肝炎に対する鉄摂取制限の有効性も報告され、2001年秋の消化器病週間(DDW)で、瀉血療法と鉄摂取制限療法が推奨されるべき治療法としてとりあげられました。
<適応症例>
1.HCV抗体陽性、HCV−RNA陽性でC型慢性肝炎と考えられる患者。(肝硬変の場合は慎重に対応)
2.インターフェロン療法あるいは他の抗ウイルス薬との併用で効果が期待しがたく、ALTのコントロールが良くない症例
3.全身状態(心、肺、腎機能)が良好であること。
4.原則として70歳以下の成人。ただし、全身状態が良好な場合は、この限りではない。
5.患者が本療法について十分に理解し、インフォームドコンセントが得られていること。
6.強い貧血を伴っていないこと。(男性13.0g/dL、女性11.0g.dL)
以上の6項目を満たしている症例を適応とする。
{参考文献} 医薬ジャーナル 2002.8
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鉄分を含むサプリメントは要注意
〜〜〜C型慢性肝炎では悪化の恐れ〜〜〜
2007年2月1日号 No.445
C型慢性肝炎では、肝組織に過剰な鉄の蓄積が見られます、過剰な鉄は細胞質内に遊離イオンとして存在し、活性酸素の産生を高めます。その結果、肝組織障害が引き起こされ徐々に肝硬変へ進展していくと推測されています。
C型慢性肝炎の患者では、鉄分の多い食事は避けるように指導し、当然、一般医薬やサプリメントに含まれる鉄分についても注意する必要があります。
日本人の食事摂取基準によりますと、食事から摂取する鉄の推奨量は、30歳以上の男性は1日7.5mg、女性は10.5mgとされています。
市販されているドリンク剤の中には1日推奨量の半分量にも達する鉄分が含まれているものもあります。瀉血療法(注*参照)を行っている場合には、貧血により鉄の吸収率は高まっているため、鉄分を含む一般医薬品やサプリメント摂取には気をつける必要があります。
食品でも肝臓に良いとされているシジミは100g当たり5.3mgの鉄を含有しています。
また、漢方薬やサプリメントとして使用度の高いウコンは古くから肝機能改善薬や健胃薬として用いられていますが、ウコンは鉄分を多く含有している可能性があります。
市販されている製品により含有量は大きく異なることも予想されますが、標準的なウコンを利用した場合、1日当たりに摂取する鉄分は1.5〜3mgとなります。これは食事から摂取する鉄の推奨量の1/3に相当します。
サプリメントや健康食品の摂取量は個人差がありますが、健康維持の目的で、ほぼ毎日利用される可能性が高く、特にIFN療法を選択しなかった患者では、ウコンやシジミを自己判断で常用するケースも多いことが予測されるため注意が必要です。
<成分として鉄を含有する一般用医薬品>
商品名 鉄の含有量(1日量)
アスパラMAX(ドリンク剤) 4.5mg
アスパラドリンク( 〃 ) 2.25mg
アルファEX(ミニ・ドリンク剤) 4.5mg
コーラスFローヤル( 〃 ) 4.5mg
コールカップチュアブル(カルシウム剤) 5mg
チョコラFEケア(ミニ・ドリンク剤)5mg
ドックマン(滋養強壮剤) 4mg
バイランCaⅡ(カルシウム剤) 4.5mg
ユンケル心臓薬(強心剤) 4mg
レバコール(総合ビタミン剤) 4.5mg
レバコールロイヤル(ミニ・ドリンク剤) 4.5mg
<成分として鉄を含有するサプリメント素材>
ウコン 1.5〜3mg(1日分)
大麦若葉(青汁)1.5〜4mg(〃)
タイム 110mg(100g当たり)
バジル 120mg( 〃 )
{参考文献}薬局 2006.12
注*瀉血療法〜活性酸素の産生を介して発現する鉄の細胞毒性を緩和させる。瀉血は、IFNの治療効果を増強する可能性もあります。
(上記参照)
<医薬トピックス> ドクターズ・サプリメントはこちらです。
肥満の解消で有効性が高まる。
〜〜〜C型慢性肝炎のIFN治療〜〜〜
肥満は、細胞機能に影響するホルモンシグナル伝達経路の混乱や蛋白質と糖の異常な循環量を引き起こします。つまり、多くの細胞と臓器機能に影響する広範囲の代謝変化に関連しています。この生化学的な調整不全は、心疾患、糖尿病、非アルコール性脂肪肝など重度の慢性疾患に繋がります。
米国での研究(メイヨー・クリニック財団)によりますと、「減量、インスリン抵抗性改善薬、薬剤試用期間の延長あるいは、増量で、肥満のC型慢性肝炎患者に対する治療の有効性が高まると考えられる」との考えが示されています。
同研究では、過剰な脂肪組織の蓄積がペグIFNαとリバンビンの活性を阻害すると考えられる3つの経路を同定しています。
1.脂肪組織が免疫機構を調節するホルモンを活発に分泌しており、脂肪組織の増加はペグIFNによる免疫賦活経路の標的の調節を困難にし、薬剤を無効にする。
2.肥満がインスリン抵抗性を惹起し、それが肝臓の脂肪蓄積の原因となる。肝臓に脂肪が蓄積されるほど、線維化や瘢痕組織形成リスクが高まり、しばしば永久的に肝機能と血流が変化する。C型肝炎ウイルス(HCV)により肝細胞はインスリンに反応しなくなるため、肥満が問題を複雑にし、肝疾患を悪化させる。
3.脂肪組織がペグIFNαの体内循環量を低下させる。そのためペグIFNαがHCVに対処する免疫機構を刺激する能力が弱まる。
<対策>
1.減量して脂肪組織を減らせば、これら3種の経路全てに対応できる。肥満のC型慢性肝炎患者の減量は、肝生検のケ科や肝酵素レベルの改善と関連することが明らかにされています。
2.インスリンに対する細胞感受性を改善する薬剤、メトホルミンやピオグリタゾンなどの糖尿病治療薬は肝細胞の脂肪蓄積を減少させ、疾患の進行を可逆させる。
3.併用療法での与薬量を増やし与薬期間を延ばせば薬剤の循環量が増え、その有効性が改善する。
併用療法への感受性の低さの背後にある代謝因子の問題の改善に焦点を当てた治療戦略は、肥満のHCV感染者で低いウイルス持続陰性化を克服できる可能性が高いと思われます。
出典:メディカル・トリビューン 2006.8.10
Hepatology(2006;43:1177-1186)
DAAs
Direct Acting Antivirals
直接 C 型肝炎ウイルス HCV を殺す DAAs (Direct Acting Antivirals) の標的として、プロテアーゼ阻害剤 protease inhibitors とポリメラーゼ阻害剤 polymerase inhibitors などがあります。
そして、前者の第一世代の薬剤としてテラプレビル Telaprevir が発売され、また第二世代の TMC 435 と MK 7009 が使用できる見通しです。 高いウイルス駆除率を有する経口剤で C 型慢性肝炎を治療できるようになってきました。
3剤併用療法〜 テラプレビル+ペグイントロン+レベトール
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Child‐Pugh分類
チャイルド・ピュー分類
肝硬変の重症度を判定する分類
チャイルドとピューの2人の研究者が考案した分類法で、血清ビリルビン、アルブミン、腹水の有無、肝性脳症の有無、プロトロンビン時間(肝臓でつくられる血液を固める作用をもつ蛋白質の検査)の5項目から肝臓の障害度を評価するものです。
1点 2点
3点
肝性脳症 なし
軽度 時々昏睡あり
腹水
なし 少量
中等量
血清ビリルビン
(mg/dl)
2.0未満 2.0〜3.0 3.0超
血清アルブミン
(g/dl)
3.5超 2.8〜3.5
2.8未満
プロトロンビン
時間(%)
70超 40〜70
40未満
Child-Pugh分類 A 5〜6点
B 7〜9点
C 10〜15点
各項目のポイントを合計しその合計点で分類します。
Child Cは、非代償性肝硬変そのもので、肝細胞癌や食道静脈瘤などの手術や、積極的な治療は難しいとされています。
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ミラノ基準
Milan criteria
肝癌の進行度分類には,UICC(国際対がん連合)による分類と日本肝癌研究会による分類がありますが,現在,国際的に広く普及しているのがミラノ基準(Milan criteria)です.
これは肝硬変合併肝癌に対する脳死肝移植の成績から導かれた分類です.腫瘍(癌)が単発で5cm以下か,多発で3個以下で3cm以下の場合をミラノ基準に合致するといいます.
ミラノ基準合致の患者さんに肝移植を行った場合は,ミラノ基準を逸脱した患者さんに比べて,手術成績(生存率)が有意に良好です.この基準は,当初は肝癌の移植適応を決めるために用いられていましたが,最近では肝癌の治療方針を決める上で広く利用されています.
肝がんに対する肝移植は、
a.癌が1つなら5cm以下、または
b. 3cm以下で3個以内、
という基準(ミラノ基準)を満たす場合に考慮されます。
2012.4.7 枚方消化器勉強会より