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1996年9月15日号 207    関連項目ウイルス性肝炎

G型肝炎ウイルス

劇症肝炎とも関連?

   

 A、B、C、D、Eに続いてG型肝炎ウイルス(HGV)が発見されました。
 1995年アボット社の「ウイルス発見グループ」のSimonsらはGBV(GBは人名)の分離同定に成功したことを報告しました。

 また別にGenelabs Technologie社も新しいウイルスHGVの分離に成功しました。
 この2つのウイルスは、HGVとGBV-Cは遺伝子配列からほぼ同一のウイルスのものと考えられます。
タマリン(猿の一種であるマーモセットの亜種)を用いた感染実験の結果、G型肝炎ウイルス(HGV)が血液を介して感染することや慢性感染を惹起することが明らかにされています。

{参考文献} ファルマシア 1996.8  

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 人間の肝炎との関連では米国の場合、非A〜非E型肝炎の約7%であり、急性肝炎や重症型では0〜3%と低率ですが劇症肝炎では40%と高値となっています。わが国でも非A非B型慢性肝炎では9%と低率でしたが劇症肝炎では40%と高率でした。

 注目されるのはC型肝炎との重感染で米国ではC型急性、慢性肝炎の20%、日本でも同程度の比率でGBV-Cの重感染がみられています。これはC型とG型の感染ルートが似ていることを意味するのかもしれませんがまだ不明です。

 一般の供血者でのGBV-Cの陽性率では、米国の成績ではトランスアミナーゼ正常の供血者では0.8%でしたが、異常値の場合は3.9%でした。
 リスクグループは麻薬常習者の15.0%で、やはり血液を介する感染であることをうかがわせます。
 日本では平均1.2%で、トランスアミナーゼの異常者、正常者間での差はみられませんでした。一方、西アフリカの原住民は17.8%と高値で原産国はこのあたりと思われます。
 
 Genelabs社のHGVでの報告でも、米国の供血者で1.7%程度で、トランスアミナーゼの正常、異常で大きな差はなく、麻薬常習者で33%、非A〜非E型慢性肝炎で8〜12%、C型肝炎で19%、肝癌7%とGBV-Cとほぼ同様の報告がなされています。

 このような結果から、GBV-CないしHGVは非A〜非E型肝炎ではごく一部にしか陽性者がなく、多くの非A〜非E型肝炎は、残念ながら未解明のままです。

 GBVの存在を明らかにできたのはRDA(representative difference analysis)という新しい核酸の検出法を応用したからで、今後この手法がさらに活用されると思います。HGVの発見はこの点で画期的ですが、臨床にどれだけのインパクトを与えるかは今後の問題です。

 /これまでに発見された\
 \肝炎ウイルス    / 

 A型肝炎〜経口感染
 B型  〜血液感染 
 C型  〜血液感染
 D型(デルタ肝炎):HB抗原陽性者のみが感染
 E型:流行性肝炎〜経口感染
 F型〜インドから報告された経口感染するウイルス、少なくとも赤毛ザルに感染することが明らかにされた。今後、遺伝子構造等の解明が必要


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輸血後肝炎についての最近の知見C型肝炎の発見その後)

1992年11月1日号 No.118

 輸血後肝炎は、ピーク時(1963〜1964)には発生数が実に50%を越し、大きな社会問題となっていました。当時非A非B型肝炎と呼んでいたもののほとんどが、現在ではC型肝炎であることが分かってきました。

 B型肝炎は一時期、医療関係者が劇症肝炎であいついで死亡し、マスコミなどで騒がれましたが、献血された血液のスクリーニング法の改善によって、1989年以降、輸血後B型肝炎は、1例も発生していません。


 C型肝炎につきましては、これまでは全供血者の15%を越える高い発生率が続いていました。1989年、米国でC100-3抗体測定系の開発により日赤も、この方式を導入し発生率を1/3以下までに減少させることができるようになってきました。


<輸血後肝炎の発生率の変遷>

調査期間     追跡例数    輸血後肝炎発生率     備考

1963〜1964    385      196件(50.9%)   民間輸血銀行

1965〜1967    386      120件(31.1%)   輸血制度への移行期

1968〜1972    537      87件(16.2%)    輸血制度の定着

1973〜1976    290      28件(9.7%)     HBSスクリーニング

1977〜1980    257      48件(16.7%)    R-PHS法 

1981〜1985    257      46件(17.9%)    S-GPT値36ku血液の排除   

1986〜1987    72       12件(16.7%)    400mlパックの出現      



<現在ならびに今後の動向>

 C100-3抗体スクリーニングが導入されることにより、輸血後肝炎の発生率は16.3%から3.3%と薬1/5に減少しています。

 更に今年2月より、HCVPHA法によるスクリーニングが実施されており、輸血後C型肝炎の予防もあともう一歩のところまできました。

{参考文献}Pharma Medica 1992 Vol.10 NO.9

<400mlパックについて>

 輸血の際は、出来るだけ400mlのパックを使用してください。 

 血液は、1パックづつ異なった人より採血しています。ですから使用する本数が多くなればなるほど、輸血後肝炎の危険性はおおきくなります。

 400mlのパックを使用することにより、さらに安全性はたかくなります。

* 3本以上血液を依頼された場合、予告無しに400ml製剤が入りますのでご了承願います。

* 400mlパックは、MAPに切り換わっています。

関連項目 C型肝炎の発見


<医学・薬学用語辞典> 2007.7.1 No.455

データマイニング

 蓄積されたデータから、新たに有効に活用できる情報を取り出すこと。

 データに特徴的なパターンを見出し、多面的に役立てていこうという分野

〔例〕
 スーパーマーケットでのレシートの分析

”紙オムツ”と“缶ビール”といった意外な商品の組み合わせを買うお客さんが多かった。
夫が妻から頼まれた紙おむつを買いにスーパーへ行き、ついでに自分の好きなビールも買ったというわけです。そこでこれらを近くの棚に配置したら売り上げが増加したといいます。

 医薬品医療機器総合機構では、集積された副作用情報から出来るだけ早く危険性を察知する必要があり、2004年度から「データマイニング手法の安全対策業務への導入」について、検討作業を進めています。

 現在では、オーソドックスな統計学的リスク解析を中心としていますが、今後層別や併用薬シグナルの検出などによりデータマイニングに近い解析が予定されており、その成果が期待されています。

    出典:ファルマシア 2007.2 等

 

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