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消毒剤の副作用

1990年12月1日号 No.77

   消毒剤の副作用については、手術消毒時の手荒れや、過敏症等が知られていますが、その他にも強い毒性を持つものがあります。

 消毒剤の副作用は、適用を受ける患者側のみならず、その取扱者にも生じ、その使用法については十分な注意を必要とします。

{参考文献}薬事 1990.11

 
<ステリハイド>

 皮膚炎、結膜炎、鼻刺激症状、アレルギー等

 ステリハイドの毒性は強く、その使用は器具に限られています。
本剤の副作用は、人体への付着のみならず、その蒸気の吸入でも生じ、眼や呼吸気系の粘膜を刺激します。

 本剤の取扱は、換気の良い場所で、プラスチックエプロンとゴム手袋を着用して行う必要があります。また、浸漬には蓋付きの容器を用い、本液をこぼすなどして大量の蒸気を吸入する可能性のあるときは、防毒マスクと保護メガネを着用するのが望ましいとされています。

<次亜塩素酸Na>

 * 塩素ガスの発生(咽頭や気管支の痛み、咳など)

 大量の塩素ガスの吸入は、次亜塩素酸Naを換気の悪い場所で広範囲の清拭に用いた場合に生じやすい。浸漬法で用いる場合は、蓋付きの容器を使用する。
 本剤は強アルカリ性で、他の洗浄剤と併用すると大量の塩素ガスを発生する。

<イソジン、ヨードチンキ>

*甲状腺機能異常、代謝性アシドーシス、腎不全等


 イソジンやヨードチンキのヨウ素は、膣や口腔粘膜、熱傷部位及び新生児の正常皮膚などから良く吸収される特性があります。したがってこれらの部位に頻回使用すると、血中ヨウ素濃度が上昇し、副作用を起こすことがあります。さらにヨウ素自体による重篤な接触性皮膚炎の報告もなされています。


<アルコール類(消毒用アルコール)>

*アルコール類では、大量吸入による中枢抑制作用に注意する必要があります。また、ヒビテンアルコール引火による火傷も報告されています。

<その他の消毒剤>

*クレゾール石鹸〜人体に用いないこと。腐食性あり、吸入による全身毒性
新生児のいる室内での使用禁止(吸入による高ビリルビン血症)

*ヒビテン〜粘膜には使用禁止
0.05%を厳守すること。

  ヒビテンアルコール〜首から上への術野消毒には用いないこと。(目や耳への毒性あり)

*リバノール:外傷に用いて潰瘍や壊死、アレルギー性の接触皮膚炎

*ピオクタニン:湿潤部位への使用で潰瘍、刺激性の接触皮膚炎


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疾患別にみた消毒薬の選択

2005年6月1日号 No.407

 各消毒剤にはそれぞれ特有の抗微生物スペクトルがあり、消毒対象微生物の種類により選択されるべきです。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)やウエストナイル熱、高病原性鳥インフルエンザなど動物や昆虫が関わる疾患が相次いで問題となったため、新興感染症に対する消毒剤の選択についても、正しい認識が必要です。

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細菌の消毒の基本は熱水(80℃10分間)です。
 消毒対象物が人体、環境表面、非耐熱性器材の場合には、熱水が使用できないため、消毒剤を選択します。

 塩化ベンザルコニウム30分
 次亜塩素酸ナトリウム30〜60分
 アルコール清拭

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* 一類、二類ウイルス感染症の消毒

 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、SARS、痘瘡、急性灰白髄炎

 次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、消毒用アルコール系(エタノール、イソプロパノール)

 ウイルス性疾患の中で、一類、二類感染症の患者の体液や排泄物などの消毒には熱水(80℃ 10分間)が第一選択されます。

* 一類、二類細菌感染症の消毒

 ペスト、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス、パラチフス

 塩化ベンザルコニウム、両性界面活性剤(デゴー51)、アルコール系、次亜塩素酸ナトリウム80℃・10分間の熱水を使用

* 重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルス:一類、二類感染症)

 グルタラール、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール系、イソジン、10分間の熱水
 患者が使用した物品や病室の消毒も行う。
手が触れる部位はアルコール清拭。熱水洗濯機が無い場合は、0.05〜0.1%次亜塩素酸ナトリウムへ30分間浸漬

* 急性灰白髄炎(ポリオ:一類、二類感染症)

 0.05〜0.1%次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、アルコール系、イソジン

* 腸管出血性大腸菌感染症(三類感染症)の消毒

 アルコール系、テゴー51、塩化ベンザルコニウム、塩素系、グルコン酸クロルヘキシジン

 患者が用便した後のトイレの水洗バルブやドアのノブなど直接触れた部位を中心に消毒リネン類は熱水を使用するか家庭用漂白剤に浸漬してから洗濯

* 四類感染症の消毒

 A型肝炎、E型肝炎、ウエストナイル熱、黄熱、狂犬病、高病原性鳥インフルエンザ、サル痘、腎症候性出血熱、デング熱、ニパウイルス感染症、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、リッサウイルス感染症

 グルタラール、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール系、イソジン

 多くのウイルスは56℃30分で不活性化されますが、エンベロープ(膜)を持たないウイルスは、加熱処理にも抵抗性で、小型なため濾過による除去も困難です。

*五類感染症の消毒

 肝炎ウイルス、エイズウイルス

 グルタラール、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール系、イソジン

 器具類にはグルタラールに30分〜1時間浸漬、床などの環境には、次亜塩素酸(明かな血液汚染が無い場合は日常の清掃で良い)

{参考文献} 薬事 2005.5
 



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<<用語辞典>>      出典:医薬ジャーナル 2001.9等

ヒドロ(水腎症)

 腎臓から膀胱に通じる尿管が癌により閉塞し尿を排出できず、腎盂、腎杯が拡張して痛みが生じるような症状。

 腎臓から膀胱へつながる尿管が癌などにより閉塞されてしまい、尿が腎臓に貯まってしまう状態。

 処置としては、膀胱から閉塞している尿管に管を通じて腎臓まで開通させる方法と、皮膚から腎臓に向けて管をを入れて排尿させる腎瘻(じんろう)を作る方法があります。

水腎症に対する処置が成功した後、腎機能は10日目くらいで回復すると言われています。

腎機能の評価を焦って行うと失敗するので、注意が必要です。


SISIテスト
Short Increment Sensitivity Index Test


ある大きさの音を聞かせ、時々その強さを一定のレベル増加させて、音の強さの変化が聞き取れるか否かを測定する聴覚検査

高率に音の強さの変化が聞き取れるときは、補充現象陽性です。

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補充現象
リクルートメント

 音の強さを変化して聞いた場合、正常聴力者に比較して異常に音を大きく感じる現象で、内耳蝸牛障害による難聴の際に見られます。


MASスコアー

manifest anxiety scale

明白な不安検査

意識上の体験として不安の強さをはかる検査。50項目の質問で行われます。



出典:医薬ジャーナル 2001.10

サクソンテスト

 口内にガーゼを含ませて噛み、それに分泌された唾液を吸収させ、ガーゼの重さを量り、唾液分泌量を計測するテスト 2g/2分が基準値

ガムテスト

 ガムを10分間噛み、その間に分泌した唾液の体積を測定 シェーグレン症候群の診断では10mlが基準値

シルマーテスト

 下眼瞼内に細長い紙を入れ、その後、自然な瞬きをしながら、5分間でどれくらい濡れたか長さを測定して、涙の量を計るテスト

Face scale

 当日の気分を知るための尺度で、顔の絵を1(笑顔)から20(悲しい顔)までの20段階で示し、どれに該当するかを患者に選択させる。

SDS

Self-rating Depression Scale
自己評価式抑うつ性尺度

 20の自覚症状に関する質問で構成されており、各質問の回答には1〜4点が与えられ、その総得点で抑うつ状態を判定するもの。
最低が20点、最高が80点で、点数が高いほど抑うつ状態がつよい。

VAS
visual analog scale

 左端がもっともひどく、右端が症状ゼロの10cmスケール

 患者の状態を知るための尺度で、10pの線分上のどの辺に該当するか×印を記入してもらう。

 痛み(pain)の場合は、0p「痛みなし」から10p「これまでに感じた最大の痛み」まで、全般的(global)な場合は、0p「全く具合の悪いところはない」から10p「これまでで最も具合が悪い」

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