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1998年11月1日号 256

小型球形ウイルス:SRSV

ノーウオークウイルス、ノロウイルス

冬季の食中毒について

   
≪小型球形ウイルス≫

  small round structured virus

 SRSVは2002年夏の学会で最初に患者が出た米国の町ノーウオークにちなみノーウオークウイルスと呼ぶようになりました。
(2002年追記)

 2003年8月食品衛生法が改正され、ノロウイルスに変更されました。

潜伏期:18〜48時間

疾患の持続:1〜2日

患者の年齢層:乳幼児、学童、成人

伝播様式:食物、水系、糞口、飛沫?

 SRSVは、過去5年間の合計908件の集団発生例の80%は秋〜冬季(10〜3月)に発生しており特に1〜3月の厳寒期に多い傾向にあります。

 患者の規模は50人以下が大半であり、推定原因食のトップは生牡蠣で(全体の35%)、他では生牡蠣以外の魚介類、寿司、野菜サラダ、サンドイッチなどが推定原因食とされています。

{参考文献}薬局 1998.6

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 急性胃腸炎患者糞便から電子顕微鏡で検出される直径40nm以下の小型の球形状粒子すなわちノルオーク
(ノーウオーク)様ウイルス、典型的カリシウイルス、アストロウイルスなどを含めてSRSVと呼称してきましたが、各ウイルスの遺伝的性状が明らかにされてきた現在、前2者はヒトカリシウイルス科、後者はアストロウイルス科として分類されるようになりました。ヒトカリシウイルス科はノルオークウイルス群・スノーマウンテンウイルス群に代表されるSRSVとサッポロウイルス群のカリシウイルスに大別されます。

 SRSVのプロトタイプであるノルオークウイルスは1972年に胃腸炎ウイルスとして世界に先駆けて、米国の学校で流行した下痢症患者から電子顕微鏡により発見されました。それ以後日本を含め世界中で同様のウイルスが発見されるようになりましたが、SRSVには、多くの遺伝子型が存在するようです。

 SRSVは乳幼児から成人まで感染・発病する胃腸炎ウイルスであり、その潜伏期間は40時間前後で突然の嘔気で始まることが多くみられます。その後下痢・風邪様症状を認めますが発熱は多くありません。

 年少者は嘔気・嘔吐がより強く、成人は下痢を伴う場合が多くなっています。胃腸症状は1〜2日で改善しますが軟便期間中はウイルスが排泄されているものと思われます。特別な治療は必要としません。

 SRSVは血清型が多く存在し、また獲得した抗体の持続も1年内外と短いので成人であっても何度も感染することがあります。


<感染経路>

1)毎年晩秋から初冬にかけてSRSVの流行期がありヒトの糞便中に排泄されたウイルスが下水を通じて河口・海へ流れ、養殖中の牡蠣や帆立貝などの二枚貝の中腸腺に蓄積されます。その後厳寒期に出荷された貝の生食にり感染します。

2)SRSVに汚染された調理人の手指または汚染された水やまな板を介してSRSVが付着した生野菜などを食べて感染します。

3)保育園、小学校などで飛沫(くしゃみなど)により、また老人ホーム、病院などで糞便を介して集団感染します。

 SRSVは組織培養での増殖が成功しておらず、その検出は電子顕微鏡の他には主にPCR法(Polymerase chain reaction)が用いられています。またバイオテクノロジーの応用によって作成したSRSV粒子を用いたELISA(酵素免疫測定法)の開発も進められています。


<<進化論の誤り>>

口呼吸は万病の元 (2)

 このシリーズは東京大学医学部口腔外科 講師 西原克成先生が「治療」1997.12〜1998.9に連載されていた文章を参考に再構成したものです。

 脊椎動物の5億年の進化という場当たり(原文のまま)の力学対応の末に我々の身体構造は思いもよらない構造的欠陥を抱えていることになります。

「適者生存」とは、生存できたものをヒトが勝手に適者と誤解したに過ぎません。同じ遺伝子を持っていても、単なる偶然で多くの個体が死滅し、一方同じ偶然で多くの個体が生き残ります。この生存か死滅かに際して「適者か不適者か」を判断する神の意志やヒトの価値観は左右しないのです。

 進化が生体力学で起こり、我々の身体は多くの構造的欠陥をかかえているのであれば、体の使い方を誤っただけで病気が起こります。これが機能性の疾患です。陸に住む哺乳類には数々の構造的欠陥がありますが、ほぼ人類だけの構造的欠陥が、口で呼吸できることです。

 このため、細胞レベルの消化・呼吸・代謝が障害されて“ほぼ”人類特有といわれる免疫病が発症します。なぜ“ほぼ”かと言うと、犬でも猫でもヒトに近い状態で長期飼育すると同様の病気を発症するからです。

 眼・鼻・平衡器の中枢神経系の感覚器と同様に、腸管に入って最初の本格的な腸管機能としての消化・吸収・造血を担当する造血器官がワルダイエル扁桃輪です。

 この器官は、我々が、まだ哺乳類になる前には、鰓(エラ)として機能していたものです。鰓は口から吸い込んだ水中の様々の物質を体内に吸収、消化、排出します。

 エラが気管支と消化器に分かれてからは、気管部で消化吸収の対象となるのが酸素、チリ、細菌、ウイルス、臭い物質、ガスなどであり、食道部(口蓋と舌扁桃)が食品中の栄養物質、微生物・毒物などで、口経由からでは、細菌やウイルスは消化(排除)されません。

 このかつてエラであったワルダイエル器官が、筋肉からなる内蔵頭蓋と神経頭蓋の内蔵脳を繋ぐ機能を持ち、空気と食物から得られる環境情報を白血球やリンパ球が吸収して体全体にその情報を運び、これにより体全体を統制しているのです。

 このシステムは原始脊椎動物では脳下垂体の原器が司っていたものです。したがって精神神経系活動の脳と内蔵腸管系機能である鰓腸の両者を、体に入ってくる空気と食物の情報によってコントロールしていた造血器でした。

 それでワルダイエル扁桃輪が「口呼吸」でやられると全身の免疫系がやられるのです。
(続く)


医薬品等安全性情報150号

◎ アルブミン製剤の使用で死亡率増加

  英国コクラン研究所から、既存の無作為抽出比較試験24報を系統的な総合評価を行った結果、重篤な循環血流量減少、熱傷、低アルブミン血症等の患者で、アルブミンを与薬した群と与薬していない群とで比較検討したところ、与薬群で死亡率が高かったとの論文が報告された。
 現在、我が国においては、中央薬事審議会において専門家による検討が行われているところであるが、今後ともアルブミンの使用にあたっては使用基準を踏まえ、適用を十分に検討するとともに患者の状態を十分に観察する等、慎重に行うことが必要である。

◎ 白血球除去フィルター使用の輸血時における血圧低下、ショック

  血液製剤(濃厚赤血球製剤、血小板製剤)の輸血に際し、発熱、悪寒、蕁麻疹等の白血球に起因する副作用を防止する目的で、白血球除去フィルターが使用されている。白血球除去フィルターを使用して輸血を行った際、血圧低下、ショック症状が発現した症例が30例(血小板製剤輸血時に22例、赤血球製剤輸血時に8例)報告されている。
 
◎ シアノアクリレート系外科用接着剤と滅菌済脳外科用パッドとの併用によ
  る脳動脈の閉塞性血管病変

  該当製品:・ビオボンド・アロンアルファA

 脳動脈瘤の破裂防止等の脳外科手術において、滅菌済脳外科用パッドでラッピングの後にシアノアクリレート系外科用接着剤で固定を行った際に、脳動脈における狭窄や閉塞等閉塞性血管病変の発現症例が、これまでに16例報告されている。



≪販売中止のお知らせ≫

・バイシリンV2錠
(ペニシリン系抗生物質)
・硫酸カナマイシンバイアル
(アミノグリコシド系抗生物質)


在庫がなくなり次第採用中止となります。


マラリアの治療   関連項目:輸入感染症(空港マラリア)

 マラリアはハマダラカという蚊によって媒介される熱性疾患で、熱帯・亜熱帯地方に広く分布します

 ヒトのマラリアには熱帯熱、三日熱、卵形、四日熱マラリアの4種類があり、マラリア原虫の種類により分けられています。熱帯熱マラリアは別名悪性マラリアと呼ばれ、治療の遅れにより致命的となる場合もあります。

 マラリアの感染予防は基本的には蚊の刺咬を避けることですが、実際には蚊の刺咬を完全に回避することは困難で、抗マラリア薬を定期的に服用してマラリアの発症をおさえる予防内服を考慮する必要があります。

 WHOでは流行地における薬剤耐性熱帯熱マラリアの存在とその度合により、クロロキンによる予防内服が可能なA地域、クロロキンによる予防効果がわずかしか期待できないB地域、ファンシダ−ルにも耐性を示すマラリアが存在するC地域に分け、WHOが推奨する地域別予防内服薬を挙げています。(但し、薬剤の選択基準は現地の薬剤耐性マラリアの拡散状況により適宜変更されます。)


  WHOが推奨する地域別予防内服薬(1992年1月現在)

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  流行地域       予防内服             服用 
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  A     クロロキン単独       300mg塩基を毎週1回
                      又は、予防内服せず 

        クロロキン+プログアニル  プログアニルは
                      200mgを毎日1回

  B     または、クロロキン単独
        または、予防内服せず
        クロロキン+プログアニル

  C     または、ドキシサイクリン  100mgを毎日夕食後1回
                          
        または、メフロキン     250mgを毎週1回

        または、予防内服せず 


 以前はマラリア予防薬として、多くの場合クロロキンが使用されていましたが、クロロキン耐性マラリアの出現により、現在は使用範囲が限られています。また、国内では、長期使用による眼障害(網膜障害)のため、クロロキン含有製剤は20年ぐらい前に製造を中止しています。

 以前マラリア予防に使用されていたファンシダ−ル(スルファドキシン・ピリメタミン;日本ロシュ)はマラリアの治療薬であり、予防としては承認されていません。予防に用いた場合、治療に比べStevens-Johnson 症候群(皮膚粘膜眼症候群)等の重篤な副作用発現の危険性が高くなるとの報告があります。

 プログアニルやメフロキンは日本では販売されていなません。

 現在、 日本国内で入手可能な予防内服薬は、 テトラサイクリン系抗生物質のドキシサイクリン(ビブラマイシン;ファイザ−他)のみですが、本剤の予防効果についての評価は実際には明確にされていません。 毎日100mgを夕食後に服用し、内服期間は、流行地滞在中はもちろん、流行地を離れても4週間は継続して服用することが必要です。副作用としては、下痢、嘔吐などの消化器症状や光線過敏症などがみられます。動物実験で胎仔毒性が認められているほか、歯牙の着色やエナメル質形成不全、一過性の骨発育不全を起こすことがありますので、妊婦及び8歳以下の小児には禁忌です。

 塩酸キニーネ、ファンシダール、キニジンは市販されています。(キニジンは塩酸キニーネ、ファンシダールが入手できない緊急の場合のみ使用。)
アラレン(クロロキン)ラリアム(メフロキン)は市販されていません。アラレンは熱帯熱マラリア以外では第一選択薬。


2001年の10月にエスエス製薬より、マラリア予防薬メフロキサンが発売

 昆虫忌避剤としてDEETが一般的です。また、ピレスロイド系殺虫剤を浸漬した蚊帳も有効とされています。

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マラリア原虫

 ヒトへの感染型であるスポロゾイトがハマダラカの吸血時にその唾液腺から注入されると肝細胞内に侵入して増殖後、血中に現れて赤血球内で輪状体、アメーバ体、シゾント(分裂体)と発育すると感染赤血球を破壊し、放出されたメロゾイトが新たな赤血球に寄生するシゾゴニー(多数分裂)を繰り返しますが、その増殖周期は原虫種により48時間もしくは72時間(四日熱マラリア原虫)です。

<血液シゾント>

 人体中に注入された原虫のスポロゾイドが肝細胞で組織シゾントに成長後、メロゾイトとして血流に遊離され、赤血球内で順次、輪状体、トロホゾイド(栄養型)、シゾント(分裂型)に成長したもの。

 シゾントは赤血球を破壊し、メロゾイトとして遊離、未感染の赤血球に侵入し同じサイクルを繰り返します。

 ただし、三日熱と卵形マラリア原虫のスポロゾイトの一部は、肝細胞内侵入後、すぐには発育を開始しないヒプノゾイトhypnozoite(休眠原虫)と呼ばれる発育環を形成し、両種に特有の再発の原因になります。また、いずれも赤血球内型メロゾイトの一部は分裂せずに雌雄の生殖母体gametocyteに分化し、
人体内ではそれ以上発育しないが、ハマダラカに取り込まれると、その中腸内で減数分裂して生殖体に成熟します。

 雄性生殖体は精子に似た鞭毛を放出し雌性生殖体と合体してザイゴート、次いでオーキネートなります。これが腸壁を穿通してその外膜下に定着して
オーシストoocystになり、核分裂を繰り返して内部に多数のスポロゾイトを形成します。

 オーシストの破裂によって放出されたスポロゾイトは唾液腺に集積して感染性になり、ハマダラカの吸血の際に人体に侵入します。

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スタンバイ療法

SBT:stanby treatment
緊急自己治療


 マラリアを疑う発熱があり一定時間以内に医療機関を受診できないときに緊急避難的に抗マラリヤ薬を服用すること。

 SBTが中心となるのは熱帯熱マラリア罹患のリスクが低い地域(高い地域では薬物予防の徹底が主流)、リスクが高いところと低いところを訪問し、一定しない場合、短期間の頻回な滞在・年単位の滞在で薬物予防では副作用の頻度が高くなると予想される場合などが挙げられます。

出典:スズケン医療情報室 H13.8.7

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