無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学

 

 

 

読み込み中

 

 

 

しばらくお待ち下さい。

     

 

 

 

 


ADFR療法

出典:OHPニュース 1996.11

Active-Depress-Free-Repeat

 BMU(下記参照)で休止期に短期間に骨の未分化間葉系細胞に強い刺激を与えて活性化し、出現した破骨細胞による骨吸収活動を抑制し、次に骨芽細胞による骨形成活動を抑制からから解除して骨形成を促し、これを反復して、そのたびにBMUで新生骨の増加を期待する療法のこと。

 活性化薬剤としては、活性型ビタミンD3、PTH、甲状腺ホルモン、成長ホルモンなど 骨吸収抑制剤としては、カルシトニン、オステン、ビスフォスフェート、エストロゲン、ビタミンK2、経口Ca剤、フッ素など 一方、骨形成促進作用を有する強力な薬剤はまだ開発されていませんが、ビタミンK、オステンなどには骨吸収抑制と共に骨形成促進作用もあるので適切に使用すれば有用と思われます。


骨のリモデリング
BMU

出典:月刊薬事 1997.1

 骨吸収と骨形成が繰り返されることをいいます。
この過程は、1休止期、2.活性期、3.吸収期、4.逆転期、5.形成期と5つの相にわけることができます。骨吸収と骨形成はカップリングした状態にあり、骨量は一定に保たれます。
カップリングの制御は全身的にPTH(副甲状腺ホルモン)、活性型ビタミンD3、カルシトニンの3つのカルシウム調節ホルモンによりコントロールされています。

 一方、局所的に行われる骨のリモデリングの調整は、生体全体の恒常性の維持とは独立して、骨の状態にのみ対応して行われます。この局所の調節にかかわる因子としてサイトカインが知られています。

出典:OHPニュース 1996.11

 骨は常に機械的なストレスにさらされており、その強度を保つために絶えず修復作業を行っています。
まず最初に破骨細胞が骨を貧食して、骨吸収窩を形成することにより開始されます。ついで骨芽細胞が骨吸収窩内に移動してきて、骨を新たに形成していきます。この一連の骨の修復過程をBone remodelingといいます。
骨格はこのリモデリングを行うと無数の小さなユニットから成りbasic multicelluar unit(BMU)と呼ばれています。

 この過程は3〜4ヶ月の周期を要しますが、正常人では、骨全体の表面積のうち約3ヶ月前後の骨がリモデリングを行い、大部分は休止期の状態にあります。

 40歳を過ぎた女性では骨吸収量の方が常に骨形成量よりも多くなります。特に閉経後の女性ではエストロゲンの欠乏より骨吸収が亢進し、高代謝回転型骨粗鬆症を呈し、骨密度は急速に減少します。




IDDMとHLA

出典:PM 1997.1

 従来の血清学タイピングによるHLAの抗原頻度の検討では、日本人IDDMはDR4,DR9と正の相関があり、DR2と負の関連があることが示されてきました。

 今日、HLAのタイプは遺伝子レベルで解析が行われるようになり、日本人のIDDMと相関があるのはDQA1 0301-DQB1 0401(DR4ハロタイプ)およびDQA1 301−DQB1 0303(DR9ハロタイプ)であることが明らかになっていいます。

 抗原提示細胞上のHLAクラスU分子は、細胞の外から取り込まれた抗原が分解されて生じるペプチド(抗原ペプチド)と結合して、これをCD4陽性Tリンパ球に提示することがその主たる役割です。

 HLA遺伝子には他の遺伝子ではみられない顕著な多型性が存在するため、細胞に発現されるHLA分子の構造も個人によって異なります。HLAクラスUでの抗原Lペプチドとの結合部位の構造の違いは、結合しうる抗原ペプチドの種類に個人差を生じさせることになります。 クラスU分子ー抗原ペプチドの複合体とCD4陽性Tリンパ球の抗原受容体(TCR)の結合についても同様のことがいえます。このようなHLA分子の多型性に起因する免疫応答の個人差が、IDDMの“遺伝子の違い”、すなわち疾患感受性を決めていると考えられます。


トロポニンT

 血液検査、胸部X線、CT,MRI,RI,心臓カテーテル、心電図、心臓超音波検査、心機図など

 トロポニンTは、その約94%は心筋細胞筋原繊維の構造蛋白の一部を構成し、残り6%は細胞質に可溶性分画として存在することから、心筋細胞質からの逸脱と構造蛋白障害の両区画の病態を反映するものと考えられ、急性心筋梗塞の新しい生化学マーカーとして従来のマーカーとは異なる特性を有します。

<特徴>

1.長い時間帯〜急性心筋梗塞発症後、約3時間から2〜3週間にわたり異常値が持続
2.高い診断感度〜健康人血中にはほとんど検出されませんので、微少な物も含め、心筋障害を非常に鋭敏に検出します。
3.高い心筋特異性〜心筋由来のトロポニンTを検出しますので特異性が高く血栓溶解療法のモニタリング、心筋障害の診断に有用です。

 血液検査では、現在、生化学マーカーとしてGOT,LDH,CK(CK-MB)、ミオグロビン、ミオシン軽鎖がありますが、トロポニンTが新たなマーカーとして加わりました。

 生理機能検査の中で、安静時・ホルダー・負荷(マスター2階段試験、トレッドミルテスト)心電図と、心臓超音波検査がルーチンで行われています。

出典:HS病院中央検査科資料 1998.10.13


キス病

伝染性単核球症

 EBウイルス(Epstein-Barr virus)感染による伝染性単核症(infectious mononucleosis:IM)のことをいいます。

 EBウイルスとは、バーキットリンパ腫より分離された人ヘルペス 科ウイルスであり、咽頭がんの原因ウイルスとして知られています。初感染する年齢層により症状は多様であり、小児期に感染をうけた時は、無症状に経過して免疫を獲得します。

  不顕性感染ですが、青年期に初感染をうけると伝染性単核症に罹患します。子供では感染してもあまり発病せず、成人で感染すると約50%の人が発病します。

 アメリカでは、大学生の間でキスによってこの病気が流行したとの報告があります。このように、感染経路は人から人であり、経口または飛沫感染ですが 、前述のように学生の間でキスにより感染することもあるため、学生病またはキス病とも言われています。

 日本では小児期の感染が多いためか、比較的少ない疾患です。ちなみにEBウイルス抗体保有率はアメリカは20歳まで30%、フランス10歳まで55%、30歳まで60〜70%ですが、日本では1歳代で40%、2歳代で80%であり、30歳くらいまでにはほぼ100%の人が感染するといわれています。

 EBウイルス感染症の病期分類は、

I相:小児に多く、発熱・気道症状のみで異型リン パ球はみられず、リンパ球増多もありません。

II相:やはり小児に多いが、ウイルス血症が起こるので、発熱、リンパ節腫脹、発疹をみますが、リンパ球増多や異型リンパ球の増多は著明ではありません。

III相:若年者に多く、ウイルスが2次組織としてのリンパ節、扁桃、肝臓や脾臓で増殖するものです。

 伝染性単核症の潜伏期は2週間から4週間であり、その症状は(1)持続する高熱、(2)リンパ節(特に頚部)の無痛性の腫脹、(3)肝・脾腫、(4)咽頭発赤、扁桃炎(著しく発赤し偽膜がつくことがある)、(5)発疹などです。また、臨床検査上の特徴は、末梢血に単核球が50%以上に、異型リンパ球が10%以上に増加することであり、肝機能の低下が認められます。肝臓の変化は組織学的には余り強くなく、中等度の肝細胞の腫脹、空泡化、胆管周囲のリンパ球の浸潤が主な所見です。

 肝機能検査を行うと、ほとんどの例で肝細胞酵素 SGOT、SGPT、LDHの上昇が見られ上昇率は正常値の2〜10倍位といわれています。また約半数にビリルビンの上昇が見られます。これらの肝異常は伝染性単核症の経過中、2〜3週目に見られますが、他の肝臓をターゲットにするウイルス肝炎では病初期より酵素活性の上昇を見るのと異なっており、鑑別に用いられます。したがって、急激な酵素の活性を見るものに対しては他のウイルス肝炎を考慮しなくてはならなりません。幸いなことにこのEBウイルスによる肝炎は経過が軽く、肝機能が完全に正常化するまでの期間もおよそ30日くらいと短期です。もちろん慢性肝炎にはなりません。また、伝染性単核症は通常、数週間で自然軽快する予後のよい疾患です。

<<伝染性単核球症>>メルクマニュアルより引用

 EB(エプスタイン-バー)ウイルスによる急性疾患で,発熱,咽頭炎,リンパ節腫脹などが特徴


疫学と病態生理
 EBウイルス(EBV)はどこにでも存在するヘルペスウイルスで、その宿主は人間およびある種の霊長類

 EBVは比較的不安定で,伝染性は強くなく、伝染性単核球症の罹患者と最近接触があった者は、患者の約5%。潜状期はほとんどの例で30〜50日とみられています。

 血液製剤の輸血によって起こることがありますが、口腔咽頭から無症候性にウイルスを排出している健康なEBV血清陽性者との間の口腔咽頭の接触(キス)によって非感染者に感染する頻度の方がはるかに高い。幼児期の伝染は下層の社会経済グループの人々の間で,また人が混み合った状態のもとでより頻繁に起こります。

疫学
 約50%の小児は5歳までにEBVに初感染します。大部分は無症状である。思春期や成人では無症状のことや、伝染性単核球症として認められることもあります。


症状と徴候
 倦怠感、発熱、咽頭炎とリンパ節腫の4徴候が一般的です。しかし,患者にはこれらの全症状が現れることもあれば、一部のみの場合もあります。患者は通常、数日から1週間続く不快感を示し、続いて発熱,咽頭炎とリンパ節腫が起こります。疲労は通常、最初の2〜3週に最大となり、熱は通常、午後か夕方早く39.5℃付近でピークとなりますが、40.5℃まで上がることもあります。発熱と倦怠感が優勢の場合(いわゆる腸チフス型)、発症と回復はより緩徐となることがある。咽頭炎は重症で痛みが激しく、滲出性の場合もあり、レンサ球菌の咽頭炎に似ることもあります。

予後と治療
 伝染性単核球症は通常は自己治癒的です。この病気の持続期間は様々です;急性期は約2週間続き、通常、患者の20%は、1週間以内に学校や職場へ復帰でき,50%は2週間以内に復帰できます。その後,患者はもとの元気を回復できるが、疲労の完全な回復には数週間かかることもあります。疲労が数カ月続くのは、症例のわずか1〜2%です。死亡は1%未満で、ほとんどはEBV初感染の合併症(例,脳炎,脾破裂,気道閉塞)が原因です。
 発熱、咽頭炎、倦怠感が和らげば、速やかに体を動かすべきです。脾破裂の恐れがあるため、重い物を持ち上げたり、接触を伴うスポーツは避け、脾腫大がなくても発症後2カ月は避けるべきです。


クリプトスポリジウム    2002年6月15日号 No.339

 欧米など先進国で、上水道を介した集団感染が多発し、注目されている新顔の病原体。

 アメーバ、ゾウリムシと同じ原虫の仲間で、人や牛、イヌ、ネコなどほ乳動物の小腸で増殖し、卵に当たるオーシストという形で便とともに排出されます。

 主な症状は下痢、腹痛、発熱など。健康な人は1、2週間で回復するが、エイズなどで免疫力が極端に低下していると、命にかかわることがあります。

 オーシストは4〜6ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)と原虫の中でも小さく、簡単なろ過装置なら通り抜け、塩素で死滅しないため、水道水に混入すると対策が難しい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 オーシスト:胞子虫類に属する原虫でみられ、雌雄の生殖体が合体して融合体となり、それが皮膜で覆われたもの。
 シスト:原虫が皮膜で覆われ、一時的な自発活動休止様状態のもの。

 マラリア原虫でも非常に複雑な増殖の形態をとりますが、一時期オーシストになることが知られていてマラリア撲滅を困難にしています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 日本では、神奈川県の雑居ビルの簡易水道水が原因で、461人が集団感染したのが最初。その2年後には、埼玉県越生町の水道水に混入して町民の過半数を超える8705人が発症しました。

 感染の多発、拡大防止のため、厚生省は、浄水場の水の透明度を上げるよう盛り込んだ暫定対策指針を急きょ作成し、各都道府県の水源付近の水質調査に乗り出しました。

<健康であれば自然になおる>〜きょうの健康12月号 1997

 クリプトスポリジウムは自然界では4体がオ−シストという硬い殻に包まれて存在しますが腸内に入ると殻内の4体がそれぞれ増殖して感染後一週間程で水様性の下痢を起こします。健康な人ならば免疫により2〜3日で症状は治まり1〜2週間で完全に排除されますが免疫力の低下した人では重症化して命に関わることもあります

<発症しない体を作る>

 集団感染が起きた場合「水は沸かして飲む」等の感染拡大防止も大切ですがむしろ「発症しない体を作る」事がなによりの予防となります。


治療増刊号 1999

 患者や感染動物の糞便には有性生殖で形成されたオーシスト(直径約5μmの短楕円形)が多数排出され、これが感染源になります。排出された時点ですでに感染力を有し、1〜数個の経口摂取でも感染します。

 オーシストは水道水の塩素消毒濃度や病院などで使用される通常の消毒剤濃度では不活化できません。

 診断は糞便検査でオーシストを検出すればよく、術者がオーシストの鏡検像に少し慣れさえすれば簡易迅速蔗糖浮遊法、蔗糖遠心沈殿浮遊法、抗酸染色法、直接蛍光抗体法などで簡単に診断をつけることが出来ます。

 ただし、虫卵検査や原虫検査に一般的に用いられる生鮮薄層塗抹法やホルマリン・エーテル法では検出できません。

<治療は困難>

 免疫機能が正常な患者の場合は、自己の免疫力で原虫の増殖を阻止し、下痢はやがて終息するので脱水症状に対応するだけでよい。

 一方、免疫不全症の患者では1日に数〜10L以上にも及ぶ激しい下痢が慢性的に続き致命的になるので治療は欠かせません。しかし、すでに100種類を越える各種抗原虫剤、抗生物質、抗真菌剤などについて動物実験やin vivo試験、患者への試験投与がなされましたが、確実に有効な薬剤はまだ見つかっていません。

 現時点で期待されるのはパロモマイシンです。国内でもクリプトスポリジウム症患者に与薬して下痢が著明に改善した症例があるりますが、全く効果がみられない症例もあります。

なお、パリモマイシンは国内生産が中止され、入手ができなくなっています。

<なぜ薬剤が効きにくいか>

 1つにはこの原虫の特異な寄生様式が関係するのかも知れません。
イソスポーラなどは腸粘膜上皮細胞の細胞質の中に寄生しますが、クリストスポリジウムは膨化して袋状になった微絨毛の中で分裂・増殖し、細胞質内には侵入しません。すなわち本原虫は細胞内寄生ではあるが細胞質外寄生なのです。

 虫体を包む膨化した微絨毛の膜は、寄生による修飾・変性を受けて養分や薬物を吸収する能力を失っているのかもしれません。

 第2に、クリプトスポリジウムには遺伝的に異なる種内変異株が存在します。株によって抗葉酸剤に対する抵抗性が異なるとの報告があります。

 第3に、感染部位が腸管だけにとどまっているか、胆嚢、胆管などに拡がっているかによっても薬効は異なると思われます。薬剤が腸管から吸収されるものでなければ胆嚢・胆管などに寄生する虫体には到達しません。

 第4に、下痢の程度によっても薬効は異なると思われます。1日に10L以上にも及ぶ下痢では薬剤の腸内滞留時間も短くなるし、希釈されてしまう恐れがあります。


パニック・ディスオーダー

出典:薬局 12.1996

 パニック・ディスオーダー(恐慌性障害)は、突然の不安発作で始まる精神疾患

 不安発作とは、激しい動悸や息苦しさ、めまいやしびれ感などの身体症状とともに現われる不安を中核とする発作

 あまりに突然に身体症状が現われるために、身体症状に対する不安が死ぬかと思うほどの強い不安にまで発展します。患者はしばしば救急車などで病院に駆けこみます。

 不安発作は、激しい動悸や息苦しさといった「死」を連想させる身体症状の形で患者を襲うので、病院に駆けつけた患者はまさしく「パニック」状態になります。

<病因仮説>

 分離不安仮説。生物学的な仮説は多く、○ノルアドレナリン-青斑核仮説、○セロトニン仮説、▲GABA-ベンゾジアゼピン受容体仮説、代謝異常仮説、神経解剖学的仮説。

 ○印が有力、▲は全般性不安障害と呼ばれる他の不安障害(かつての不安神経症)の仮説として有力。

<治療法>

 ソラナックスを中心としたBZ系薬物が有効。

 また、うつ状態を合併しているに場合に限らず、抗うつ薬が有効であるとの報告が散見されている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 神経性障害の薬物療法

恐怖性不安障害

 不安の対照がはっきりしている。

治療薬:抗不安剤(ソラナックス錠)等、広場や社会に対する恐怖そのものが抑えきれない場合、“場になれる”ための行動療法も必要となります。


強迫性障害

何か(鍵のかけ忘れなど)にとらわれて、その不安をうち消すために同じ行為を繰り返し、日常生活に使用を来す。

治療薬:抗うつ薬(アナフラニール等)、また抗不安剤で一般的な不安を抑える。最近ではSSRIも使用されます。

身体表現性障害
心気障害


何らかの病気にかかっているのではと強い不安を抱く。
執拗に不安を訴え続ける。

治療薬:抗不安剤

<ポイント>

*不安・焦燥(あせり)

 自己コントロール喪失感

 過換気症候群、不安発作、パニック発作、じっとしておれぬ

 治療薬:ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)

*抑うつ状態

 憂鬱・欲動低下、昏迷

 食べられない、眠れない、死にたい

 治療薬:アナフラニール(塩酸クロミプラミン)点滴、入眠させ休ませる。

*躁状態

 多弁、多動、易怒的(精神運動性興奮)
 欲動亢進、言動のまとまりを欠く

 治療薬:ヒルナミン(マレイン酸レボメプロマジン)注、セレネース(ハロペリドール)、アキネトン(塩酸ビペリデン)

*幻覚妄想状態

 漠たる不安、不気味、錯乱、昏迷

 急性精神病、精神分裂病、中毒性精神病

 治療薬:ジアゼパム、アナフラニール等

出典:OHPニュース 2000.12

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ADHD

attention deficit/hyperactivity disorder

注意欠陥多動障害

 注意力散漫と多動が共存するもの、注意力散漫が目立つもの、多動性が目立つものという3つの亜型があります。

 ・落ち着きがなく、気が散りやすく、静かに遊んだり、勉強をすることができない。
 ・おしゃべりが多く、まだ質問が終らないうちに出しぬけに答えることが多い。
 ・カッとなりやすく友達ができない。
 ・不器用で字のバランスがとれず、体操も不得手
 ・物忘れが多く、学校での忘れ物は頻回

 注意欠陥多動障害の小児は,しばしば学習障害となるので,教育関係者から注目されています。患児が学習する環境はできるだけ静かで、周辺からの刺激が多くないことが望ましい。

 薬物療法が効を奏することがあり,メチルフェニデートmethylphenidate(リタリン錠)が特効的

 軽症例は長じるに従い自然治癒するが,成人になって反社会的行動の多くみられるものやアルコール中毒者になるものもあります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ADHDは、不注意(注意の持続困難、転導性)、多動(過動)、衝動性の3徴候によって特徴づけられる行動障害で、小児期に発症し、その多くは青年期、成人期にまで持ち越すといわれています。
 小学校低学年くらいまでの子供、特に男児は多かれ少なかれ落ち着きがないないものですが、それが一定の閾値を超えて広い意味での社会的不適応の原因となる場合に、所定の診断手続きを経てADHDと診断されます。
 ADHDは基本的に生物学的背景を持った発達障害と考えられています。
 ADHDの診断は、国際診断基準(DSM-IV)ないしICD-10に基づいて行われていますが、これらの基準自体何回もの歴史的変遷を経ていて、いまだに多くの問題を抱えています。例えば、診断基準にあげられている症状をそのまま思春期、成人や女性のADHDに当てはめることは困難です。また7歳以前の発症という条件についても科学的根拠に乏しく、それ以降に気づかれるADHDも少数存在します。
 除外診断として広汎性発達障害があげられており、両者の併存は認められていませんが、高機能の広汎性発達障害とりわけアスペルガー症候群(asperger's syndrome;小児自閉症の1種)ではしばしばADHDと区別困難な行動特徴を示し、併存を認めるか更なる検討が必要です。
 ADHD児は経過の中で様々な他の併存障害を持ち、共通の背景を持つものに学習障害があり、ADHDに起因する作業記録の障害が想定されています。社会心理的要因との相互作用の中で形成されるものとして、反抗挑戦性障害、行為障害、不安障害、気分障害などがあります。これらは、陰性体験の積み重ねから来る自尊感情の低下、自己不全感から悪循環的に展開して行くものです。

<治療上の問題>

 ADHDの治療の目標は自尊感情の低下、自己不全感から、情緒不安定や問題行動などの不適応症状、さらに行為障害などの併存障害へと展開して行く悪循環を断ち切ることで、より積極的には自己有能感を高めてADHDの肯定的な面を生かせるように援助することです。
 そのためには陰性/否定体験を減らし、陰性/肯定体験を増やす必要があります。
 ADHDの治療の大きな柱は、社会心理的治療と薬物治療です。 社会心理的治療〜家族がADHD児とどうやってつきあってゆくかを指導するペアレントトレーニングや、学校でADHD児が集団の中で友達とどう折り合い、どう学習に取り組むかに関わる教育的なアプローチです。
 薬物治療の中心はメチルフェニデートをはじめとする中枢刺激剤です。日本では短時間作用型のリタリンのみです。(保険適応外)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ADHDの原因についてははっきり分かっていませんが、出産前、周産期、出生後の何らかの要因で脳障害が生じ、脳の抑制や制御をつかさどる部分がうまく動かない状態から起こると考えられています。覚醒、動機付け、注意に関与する神経ネットワークに存在するドパミンなどの神経伝達物質のアンバランスや人間の行動を制御するといわれている脳の前頭野の機能異常などが一般的にはそのメカニズムとして考えられています。
 “本人のわがまま”や“やる気のなさ”とか親のしつけの悪さから生じているわけではないことは確かであり、脳の未熟さから来る医学的原因によるものです。
 ADHDでは脳の行動や思考、注意力や制御をつかさどる部分の焦点がうまく合わせられないと考えられていて、中枢性刺激薬は脳のその部分に動き、注意を集中させ、覚醒水準を高め、好ましくない反応を制御し、不注意、多動、衝動性などの障害の基本症状を軽減します。
 薬物の効果は約1/3には劇的な効果、1/3には軽度の効果、残りの1/3には効果がないといわれています。

    出典治療 2002.12 薬局 2002.12等


プリオン   

関連項目:狂牛病クロイツフェルト・ヤコブ病

出典:JJSHP 1996.12

 狂牛病などの海綿性脳症を起こす病原体は、プリオンという言葉は、1982年にプレスナーという人が、それまで知られていた羊のスクレイピーの病原体を他のウイルスと区別するために、名付けたものです。それまでは、スクレイピーはスローウイルスとかスクレイピーウイルスとか言われていました。

 普通、ウイルスといった場合には、その粒子の中に核酸、すなわちDNAまたはRNAを含んでいるものがいわゆるウイルスと呼ばれているものです。

 ところがプリオンの中には核酸がなく、蛋白質だけで病原性を示すことから、プリスナーは蛋白質の病原因子という意味で、プリオンと命名しました。
 
 プリオンとは、プロテイン(蛋白質)の“on”(因子)ということ。

 プリオン病を感染性海綿性脳症、Transmissible Spongiform Encephalopathy(TSE)とも呼んでいます。

 プリオンとは、蛋白質性感染因子:proteinaceous infection partcleのことでプリオン蛋白遺伝子が産生する糖蛋白です。プリオン蛋白遺伝子は第20番染色体に位置しており、神経シナプスの間での伝達の調節小脳の神経細胞の維持、睡眠調節やサーカディアンリズムの調節などが機能として考えられています。

 このプリオンがどうして蛋白だけで増殖性および感染性を持つのかということですが、これはそれに似た蛋白質が正常な細胞で既に発現しています。特に脳の細胞に多いわけですが、これを正常な細胞性プリオンと呼んでいます。

 この細胞性プリオンに感染力のある感染性プリオンが侵入しますと、その蛋白の三次構造が感染性プリオンのように形を変えます。そうしますとアミノ酸の配列、すなわち一次構造は同じでも、高次構造、つまり二次構造、三次構造が感染性を持った蛋白の粒子に変化し、見かけ上どんどんと感染性のプリオンが増殖するという形になります。その結果、プリオンはまた新しい細胞に感染して、その細胞が発現している細胞性プリオンを感染性を持った蛋白質に変えて次々と広がっていくというのがプリオン病の特徴です。

 正常プリオン蛋白PrP cはαヘリックス構造を主体としていますが、発症例ではβシート構造の異常プリオンPrP scが増加しています。PrP cの立体構造が変化し感染性のPrP scに変化することによって正常な機能が失われTSEが発症すると考えられています。

 プリオン病の場合は、最初スクレイピーウイルスとして羊や山羊で最初に発見されています。スクレイピーウイルスに感染した羊は、長い年月を経て中枢神経系が侵されるようになります。(スローウイルス)。

関連項目:狂牛病クロイツフェルト・ヤコブ病

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  狂牛病関連緊急トピックス    2001年10月15日

*異常プリオンの不活化方法

1.高圧蒸気滅菌、化学的方法(耐熱性のもの)

・水酸化ナトリウム(1モル濃度121℃30分間)で処理後、水で洗浄し、通 常滅菌。
・水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度2%)で1時間処理後、121℃1時間の高圧蒸気滅菌、洗浄、通常滅菌。
・水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウム溶液で1時間の処理後、水洗い、121℃又は134℃1時間高圧蒸気滅菌後、通常滅菌。
・水酸化ナトリウム(大気圧下、10分間煮沸)処理後、洗浄、水洗い、通常滅菌。
・次亜塩素酸ナトリウム(こちらを優先)又は水酸化ナトリウム(室温下1時間)処理後、洗浄、水洗い、通常滅菌。
・134℃、18分間の高圧蒸気滅菌(脳組織が表面に焦げ付いて完全には取り除くことができず、感染性が高い状態のもの)

2.化学的方法(非耐熱性のもの)

・水酸化ナトリウム(2モル濃度)又は次亜塩素酸ナトリウム原液をかけて1時間放置後、水洗い。

3.高圧蒸気殺菌、化学的方法(乾燥したもの)

・121℃1時間高圧蒸気滅菌(水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムに抵抗性の小さい乾燥物)
・134℃、1時間の高圧蒸気滅菌(大きな乾燥したもの及びその他の大きさの水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムに抵抗性のないもの)

出典:厚生労働省医薬局     食品保健部監視安全課   


牛乳カゼインとアレルギー

 牛乳カゼインにアレルギーを持つ患児(2歳1ヵ月)がソーセージを一口食べて嘔吐した 症例と強い牛乳アレルギーを呈する患児(2歳6ヵ月)がスライスハムを食べて咳込みと 蕁麻疹を発現した症例が報告されています。

 これはカゼインが牛乳由来であることに気づかなかったためです。

 これまでハムを食べてもアレルギー症状を示したことはありませんでした。 今回たまたま食べたスライスハムにはカゼインを原料とする蛋白加水分解物が添加されて いたためアレルギー症状を呈してしまったと思われます。

 ハムやウインナーのほとんどの製品には、通常、小麦や大豆等からの植物性蛋白質または牛スジ、鳥ガラ、牛乳などの動物性蛋白が添加されていますが、成分表示としては「蛋白加水分解物」とだけ記載すれば可とされています。

出典:大阪府薬雑誌 1999.9 P106

カゼイン

 カゼインはリポ蛋白の一種で、乳汁の主成分であり、牛乳中3%、人乳中0.9%の濃度が含まれており、牛乳の総蛋白質の80%を占めています。

 タンニン酸アルブミン以外にも耐性乳酸菌製剤(ラックB、エントモール等、ビオフェルミンでは混入無し)でアナフィラキシー反応の報告がされています。

<医薬品・医療用具等安全性情報159号>

◎ カゼイン又はその塩類含有製剤と牛乳アレルギーについて

 メイアクト錠、小児用細粒

 メイアクト錠及び小児用細粒についてはカゼインナトリウムを添加物として用い始めた後、牛乳に対しアレルギーのある患者が小児用細粒を服用してアナフィラキシー様症状等の過敏症状を発現した症例が報告されたため、「使用上の注意」を改訂し、本剤服用にあたり、牛乳アレルギーの有無を確認し、牛乳によるアナフィラキシー等の過敏症のある患者には与薬しないよう注意喚起を行うこととした。また、本剤以外の医薬品に対しても添加物としてカゼイン又はその塩類を含有するものについては、同様の注意を記載することとした。

*当院採用で牛乳アレルギー患者に禁忌の薬品

 タンナルビン、エントモール、ラックB
 エンシュアリキッド、クリニミール


高張Na-エピネフリン法

HSE局注法

 エピネフリンの血管収縮作用と高張Na液による出血点周囲組織の膨化による圧迫止血効果により止血させる方法。

溶液は必要時に作成できます。

HSE(1)液:3.7%(または5%NaCl20ml+エピネフリン1A)
HSE(2)液:7.5%(または10%NaCl20ml+エピネフリン1A)の2種類を使用。
NaClの濃度により組織の膨化程度を調節でき、動脈性出血の場合はHSE(2)液を使用した方がよい。

 エタノールに比べて、組織侵襲が軽度であることから、局注量が多くなっても、穿孔の心配が少なく、初心者が行っても安全な点は利点です。ただし、高血圧や重篤な心疾患がある症例では局注量に注意する必要があります。

 実際には出血点周囲に3〜4ヵ所にそれぞれ1.0〜2.0ml程度を粘膜に膨化させるように局注します。
止血処置後24〜48時間後に再度内視鏡検査を行い、露出出血管が残存している場合は再出血予防のために局注を追加した方がよいと思われます。



経皮的エタノール注入療法

PEIT:percutaneous ethanol injection therapy

     出典:JJSHP 1998.1

 肝細胞癌の経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy:PEIT)に用います。手技は診療報酬で点数化されていますが、用いる無水エタノール注は医薬品として承認を受けていません。

 1982年に千葉大学で始めて開発された臨床応用された方法で、超音波で腫瘍を見ながら腹壁より腫瘍内に針生を刺し、エタノールを注入することにより、腫瘍組織を選択的に壊死させる治療法です。

 コントロール不能な腹水症例、硬度黄疸症、著明な出血傾向のある症例など重篤な肝不全を合併している症例は除外しています。

<用法・用量>

 1腫瘍に対し、1回〜6mlを2〜6回程度注入。腫瘍径より総エタノール注入量を産出する方法も考案されています。

     エタノール注入量:3/4×π(r+0.5)3乗mL  r:腫瘍の半径

<有効性>

直径3cm以下で3個以内(2p以下で2個以内程度が:望ましい)

抗腫瘍効果、壊死効果は70〜97%と高い。再発率も高い。

再発率〜1年;15〜32%、3年;50〜63%、5年;76〜88%

 しかしこの高頻度は、PEIT自体の問題でなく、PEIT後の肝内非治療部再発と、腫瘍径3cm以下の肝細胞に対する切除術後の残肝再発の出現率と差がありません。肝細胞自体が持つ性質によるものと考えられています。

<副作用>

 PEITは、肝切除と比較して患者に対する侵襲が少ないのが特徴です。頻度が高い副作用としては、発熱(49.2%)と疼痛(11.7%)で一過性と報告されています。

・重篤な副作用には、肝梗塞、腹腔内出血が報告されています。

・症例報告として報告がある副作用

 一過性発熱、疼痛、嘔気・嘔吐、下痢、酔感、血圧上昇、血圧低下、倦怠感、呼吸苦、咳嗽、糖尿病悪化、肝梗塞、肝静脈閉塞、DIC、終結性十二指腸潰瘍、門脈血栓、肝膿胞、胸膜炎、血性胆汁、胸水、腹腔内出血、血胸、黄疸、GPT・GOT上昇、HUS、腫瘍播種、胆管炎

<作用機序>

 腫瘍細胞内でのエタノールの拡散により細胞質は即座に脱水し、その結果、凝固壊死が起こり繊維反応が起こります。エタノールが血行へ侵入し、内皮細胞壊死および血小板凝集が起こり、その結果細血管の塞栓が起こり腫瘍組織の虚血を招きます。

<課題>

・PEITは手技上、体外超音波を用いるため体型や腫瘍の位置などによる超音波の死角が存在し、全ての腫瘍に対して治療を行うことができません。

・エタノールを注入した直後では、病変部のアルコール蒸散のため高エコーレベルを呈し、それより深部の病変の観察ができません。

・根治性の面から考えても手術療法での核手術異常の効果は期待できません。

・PEITによる癌細胞の穿刺経路への播種の問題(needle tract seeding)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

二次性副甲状腺機能亢進症とPEIT

出典:医薬ジャーナル 2001.1

 副甲状腺に対するエタノール注入療法(PEIT)は、1980年代にイタリアで外科手術の代替療法として始められました。

 その後、日本を中心に二次性副甲状腺機能亢進症に対してのPEITが検討され、その有効性とリスクが明らかにされてきました。現在、副甲状腺PEITは二次性副甲状腺機能亢進症を中心に治療法の選択肢の1つとして定着しつつあります。

 しかし、副甲状腺でのPEITは、腹部領域で日常的に施行されている肝臓の場合とは全く異なるリスク:反回神経麻痺合併が発生することがあります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

PAIT:percutaneous asetoacetic asidl injection therapy

経皮的酢酸注入療法


これもPEITと同じく小型肝癌に対する治療法で、PEIT(上記)よりも優れているとする報告もあります。 (医薬ジャーナル 1999.6)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

RFA
経皮的ラジオ波焼灼療法

 病変に挿入した電極からラジオ放送の周波数に近い高周波の電磁波を周辺組織に流すことにより、イオンの変動が摩擦熱は発生し、癌を壊死させる新しい局所療法

 1999年に導入され、2004年に保険適用となりました。

 開腹の必要が無く、入院期間も短縮、残存肝機能の維持率が高いのが特徴

 それまでのマイクロ波凝固療法(PMCT)に比べ、1回の治療で獲得できる壊死範囲が大きいことから、小型肝細胞癌に対する経皮的局所治療の主流と成りつつあります。


  出典:メディカルトリビューン 2005.12.22



水中毒

出典:薬局 1997.1

希釈症候群。

体内の水が他の溶質とりわけNaに比して著しく増加した病態。

 心因性多飲症、ピトレシン投与後、多飲を伴う高温作業またはADH不適合症候群(SIADH)で発現します。

 強度の低Na血症を認め、また皮膚は湿潤、血圧は上昇、脈拍は緊張良好。 神経、筋の異常を認め、筋の痙攣、傾眠または昏睡、全身痙攣などの症状 非可逆的中枢障害を起こすことがあります。

 治療としては、水分の制限、高張食塩水投与、ラシックスとの併用。

 つまり「水中毒」とは体内の水分に関する出納量調整が何らかの要因で崩れ、入る量に比べて排出量が少なく貯留し、生体内成分を希釈化しますが、その原因については心因性多飲症からも明らかなように未だ明確にされていません。

 「水中毒」とSIADHとは多くの点で共通する内容を持ち合わせており、明確な区分をすることは難しいのですが、多飲により低Na血症が「重篤化」した状態を「水中毒」と考えることができます

 ADHの影響が大きければ、軽度の多飲でも水中毒に発展し、もし多飲が重度であれば、軽いADHの不均衡分泌でも水中毒は起こってきます。前者が古典的なSIADHであり、後者が精神分裂者の状態では?」とされています。

 しかし精神分裂病者の全てが「水中毒」に移行するわけではないという「事実は」、脳の脆弱性そのものに個人差の違いがあることを意味していると思われます。


特殊状況での予防接種

出典:JJSHP 1998.No5

1.過敏症反応 過去にアナフィラキシーなどの反応を呈したことが明らかなものは不適です。

 卵アレルギーがあるものは、麻疹、おたふくかぜ、黄熱、インフルエンザなどの予防接種は要注意となります。前回の予防接種で2日以内に発熱のみられた者、または全身性発疹等アレルギーを疑う症状を呈した者も要注意です。

2.妊娠 リスクと利益を十分検討して決定すべきです。生ワクチンは原則として避けますが、黄熱、ポリオの流行地に滞在する場合など、やむを得ない場合は、妊娠3ヶ月以内に接種します。また風疹ワクチンの接種後2ヶ月間は避妊するようにします。不活化ワクチンを含め全体的に安全性が確認されていない者が多く、妊娠中の予防接種は極力避けるように努力すべきです。

3.授乳 生ワクチン、不活化ワクチンともに授乳中の母体及び乳児には易教を及ぼさないとされます。生ワクチンは母体中で増殖するが、乳汁に分泌されないものがほとんどです。

4.免疫不全状態 白血病、リンパ腫、進行した悪性腫瘍、あるいはステロイド、抗癌剤、放射線治療を受けている者、HIV感染者などでは、生ワクチンは体内で過剰な増殖をし、問題を生ずる可能性があります。

 場合により、麻疹、風疹、黄熱などの接種を行うこともありますが、基本的には、本人のみならず、同胞や家族への生ワクチンも避けます。なかでも経口ポリオ、BCGなどの生ワクチンは危険が高い。ただし、ワクチンの効果が十分なことも予想され、接種後に抗体価を測定できれば望ましいのですが、国内ではその態勢が十分ではありません。

 無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学