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1996年6月1日号  200

狂牛病とは?

牛を原料とする医薬品の安全性     関連項目:異常プリオンの処理方法

 

 狂牛病は牛海綿状脳症(Boviner spongiform en-cephalopathy:BSE)という病名が示すとおり、牛の脳がスポンジ状に穴があいたような状態となり運動神経の麻痺などから異常行動を起こして死亡する病気で、1986年に英国で初めて報告されています。

 牛由来の医薬品の安全性問題については、現在厚生省で実体調査が行われており、調査結果の素早い公表が待たれているところです。

{参考文献}大阪府薬雑誌 1996.5

 

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 狂牛病と同様の症状を呈するものに羊のスクレイピー、人ではクールー病やクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー症候群(GSS)などがあります。これらは感染から発症までの期間が1年以上場合によっては10年くらいと長いことから従来はスローウイルス感染症と呼ばれてきました。しかし研究が進むにつれて、発症の原因となっているのがウイルスではなくDNAもRNAも持たない感染性蛋白質「プリオン」(PrP)であるとの見方が有力になってきています。

 プリオン蛋白質は元々人や牛などの体内に存在しているもので、正常なものはそれ自体は病原性も持っていません。しかし一旦異常型のプリオンが体内に入り込むと正常型のものを次々と異常型に変えていくと考えられています。

 プリオン蛋白質は塩素や、ホルマリン、煮沸、紫外線、弱酸などによる消毒には強い抵抗性を示し、高圧蒸気滅菌で、次亜塩素酸Naなどでも完全に不活化できないとの報告もあります。

 動物種の差から牛や羊から人への感染は起こらないというのがこれまでの実験から得られた見解となっていました。

 ところが今年の3月に、英政府が”ヤコブ病(CJD)でなくなった患者の中に狂牛病の牛から感染した可能性が否定できない”との発表を行ったことから大騒ぎとなりました。

 今のところ、英国と欧米の専門家の間でも狂牛病とヤコブ病(CJD)に因果関係があるのかどうか意見が分かれているところで、はっきりとしたことが明らかになるまでにはなお数年を要するものと思われます。

 牛由来の医薬品については、以前CJDにおいてヒト成長ホルモン製剤を介して感染した例もあり、厚生省で調査中です。

 狂牛病の99%以上は英国で発生しており、また規制の強化などから狂牛病の発症数は確実に減少してきています。これまで、感染牛の筋肉や牛乳などからは感染性は見い出されていません。

 英国がこれまでに行ってきた処置やCJD発症率が100万人に1人であることを考えるとあまり狂牛病に神経質になる必要はないようです。 

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ヤコブ病

クロイツフェルト・ヤコブ病
CJD:creytzfeld-Jakob Disease

伝達性海面状脳症
TSE:transmissible Spongiform Encephalopathy

TSEは、プリオン病とも呼ばれ動物プリオン病とヒトプリオン病に大別されます。

動物プリオン病

 スクレイピー(ヒツジ):すべてのプリオン病の起源と考えられています。
 BSE(ウシ;狂牛病):ヒツジの飼料から発生
  Bovine spongiform encephalopathy
 その他:ミンク、ネコなど

ヒトプリオン病

 クールー:パプアニューギニアの人食い習慣より発生
 CJD(古典型):クロイツフェルト・ヤコブ病

 新変異型CJD:1996年に英国で初報告、発症年齢が若い、臨床的にPSDが無いことから古典型と区別

* PSD:Periodic Synchronous Discharge 周期性同期生異常波

<<クロイツフェルト・ヤコブ病の特徴>>

* 主に中年以降発症し、進行性痴呆、
ミオクローヌス、PSDを呈する予後不良の脳疾患
* 新変異型CJDは、発症年齢は16歳から39歳と若く、脳の病理組織検査では古典型と異なる上、
 クールー斑に似たアミロイド斑が見られます。
* 新変異型CJDはBSEと同一の病原体と考えられていますが、感染経路は明確になっていません。

<<牛を原料とする医薬品>>

 アプロチニン製剤(トラジール注)、インスリン製剤、含 糖ペプシン、牛血液抽出物(ソルコセリル注)、微線維コ ラーゲン塩酸塩、チトクロー ムC(チトレスト)、トリプシン、トロンビン、肺サーファクタント、バソプレシン(ピトレシン注)、ヒアルロニダーゼ(ヒアレイン点眼)、メイパック、ゼラチン

 フィブリノゲン加第[因子(ベリプラスト、ボルヒール、ティシール)等の使用により、ヒトにTSEを伝播するとの疫学的データはなく、また、本剤に含まれる牛由来アプロチニンは、製造工程でTSE原因物質の除去処理を行っている。しかし、TSE伝播についての理論的な危険性を完全に否定することはできず、また、TSE原因物質がマウス脳内に直接投与されたとき感染が認められたとの報告があるので、頭蓋腔内、脊髄腔内、眼球内への使用では、治療上の有益性を勘案した上で本剤を使用すること。

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2001年10月15日号 324   関連項目 異常プリオンの処理方法

日本産ウシ等原料を使用した医療用医薬品

クラスT(高リスク:脳、神経組織、脊髄、眼等)〜該当なし

クラスU(中リスク:脾臓、リンパ節、腸、胎盤等)〜該当なし

クラスV(低リスク:膵臓、肝臓、肺等)

  サーファクテン(有効成分:肺)

クラスW(リスクなし:骨格筋、骨、心臓、血液、乳等)

 イムノブラダー(乾燥BCG)〜ウシ胆汁由来)
 エスポー、エポジン〜添加物にゼラチン加水分解物
 ノイトロジン〜添加物にゼラチン
 ピシバニール(溶連菌製剤)〜培養液に骨格筋使用
 フェロン〜細胞培養液の培養液の添加剤として初乳飲前仔ウシ血清
トロンビン〜有効成分:血液
 アレルゲンエキス〜牛肉、牛革
 ウロキナーゼ〜添加物にゼラチン
 パロチン錠〜有効成分として耳下腺、顎下腺、顎下腺唾液


 今後、医薬品などの原料の調達先は狂牛病の発生リスクの少ない下記の国に限定されます。

 アルゼンチン、オーストラリア、ボツワナ、ブラジル、チリ、コスタリカ、
 エルサルバドル、ナミビア、ニカラグア、ニュージーランド、パナマ
 パラグアイ、シンガポール、スワジランド、ウルグアイ、カナダ、インド
 コロンビア、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア、パキスタン、アメリカ


口蹄疫

出典:治療 2001.6

 口蹄疫は牛、水牛、めん羊、山羊などの家畜をはじめ、野生動物を含むほとんどの偶蹄類動物が感染する急性のウイルス性伝染病です。

 本症は極めて伝染力が強く、家畜への直接被害に加えて家畜・畜産物の国際流通にも大きな影響を及ぼすことから国際的に最重要家畜伝染病と位置づけられています。

 口蹄疫は口蹄疫ウイルスによって起こる病気で、発病動物は口、舌、蹄部および乳房周辺の皮膚や粘膜に水疱を形成し、これが病名の由来ともなっています。

 口蹄疫による致死率は幼獣では50%を越えることもありますが、成獣では数%程度にすぎません。しかし、発病に伴う発育障害、運動障害あるいは泌乳障害などによって産業動物としての価値が著しく低下し、経済的被害は甚大となります。

 口蹄疫ウイルスは通常の社会生活を行っている限りヒトには感染しません。1970年代までに口蹄疫がヒトに感染したという報告がいくつかありますが、これらはウイルス学的な証明が不十分であり、おそらくコクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどのヒトのウイルス感染症との混同と考えられます。

 口蹄疫ウイルスに対する動物の感受性は予想される曝露ウイルス量と動物種ごとの最少有効感染量によって限定され、ヒトはきわめて感受性が低いとされています。しかし、ウイルスの誤注射あるいは初るを大量に含む発病牛の生乳を飲んだ場合はまれにヒトに感染することも事実です。


NEWS

毒舌薬理学番外編

200回記念エッセイ      

 私は本当に字がへたです。今でも、私より字が汚い人を知りません。で、なんとかしなくては社会に受け入れてもらえないと思いワープロの練習を始めたのです。

 10年以上前のことですが、薬剤部にも発注業務のためにコンピュータ(富士通9450・)が導入され、それにはエポワードというワープロソフトが付属しており、それを使って薬剤ニュースを開始したのです。
 
 当時は、なんと8インチのフロッピーでした。それで150号まで書きました。で150号から183号までが、NECの文豪ミニ、そして現在のマックへと進化してきました。内容はそれほど進化していませんが、マンネリにはなっていないと自負しています。

 ニュースとはnew(新しいこと)の複数(s)。そしてNEWSのNはnorth(北)、Eはeast(東)、Wはwest(西)、Sはsouth(南)を表わしています。つまりニュースとは、東西南北の目新らしい事柄ということです。 

 猫も杓子もインターネットだの、パソコン通信、電子メールなどという時代になってきました。今や情報を集めるのに苦労はいりません。情報はそこ・ここにあふれています。

 学会や勉強会に足繁く通わなくても一通りの最新の医学、薬学情報を手に入れることが可能となりました。インターネットは文字通り、地球上の各地の情報を届けてくれます。

 そして、これは良く考えると私たち医療関係者にとって、非常に恐ろしいことでもあります。情報を知らなかったというだけでも罪に問われるようになったからです。
 
 もし何らか特殊な副作用が発生した患者さんから、訴えられた場合、そんな副作用が起きるとは知らなかったと言えるでしょうか?すでに世界のどこかですでに、その特殊な副作用についての報告がなされているかもしれないのです。

 もはや私たちには知らなかったなどとは言うことすらが出来ないのです。

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