ニューキノロン
5.ニューキノロンの作用機序(DNAトポイソメラ−ゼ)
|
ニューキノロン系抗菌剤
1991年7月1日号 No.90
感染症は早期に的確な治療を行うことが大切で、特に経口抗菌剤が与薬されるような外来的一般感染の場合、起因菌が判明しないうちに第一選択剤を与薬しなければならないのが現状です。
近年ニューキノロン系薬剤が登場し、経口抗菌剤市場でほぼ30%を占めるまでになり。セフェム系薬剤についで安全かつ有効な薬剤であるとされています。
<ニューキノロン系抗菌剤の特徴>
1)抗菌力の著明な増大。
2)他系統の薬剤を含め交差体制がない。
3)緑膿菌に高い抗菌力を有している。
4)グラム陽性菌にも有効
5)マイコプラズマ、クラミジア、好酸菌にも基礎的抗菌力がある。
6)組織移行が改善され、上記道を含む呼吸器感染症に臨床使用可能。
<相互作用>
1.NSAIDs(非ステロイド性消炎剤):痙攣が誘発されやすくなる可能性がある。
2.アルミニウム塩、マグネシウム塩などの金属カチオン。(制酸剤)
:腸管からの吸収が阻害され、併用時の血中濃度は低くなる。
3.テオフィリン:フルマークでは血中濃度を高めることが知られている。しかし他の薬剤ではほとんど問題ないものと考えられている。
<副作用>
頭痛、不眠など中枢神経系に対する副作用が認められるので、本系統薬剤使用に際しては十分な注意が必要です。
{参考文献}大阪府薬雑誌 1991.6
ニューキノロン剤と痙攣
1992年6月15日号 NO.109
ニューキノロン剤は、呼吸器感染症、尿路感染症などをはじめとして多くの診療科で繁用されています。
これらの薬剤の特徴は、経口剤であることによる使用性、幅広い抗菌スペクトルと強力な抗菌力、そして良好な生体性と組織移行性であり、優れた抗菌剤として感染症治療に大きく貢献しています。しかしこれらニューキノロン剤にはいくつかの問題点も見いだされています。
耐性緑膿菌・耐性ブドウ球菌の出現、テオフィリンやカフェインの代謝抑制に基づく毒性発現、NSAIDsとの併用による中枢性痙攣を伴う副作用の発現、Lyell症候群(中毒性表皮壊死症)と皮膚粘膜症候群(Stevens-Johnson症候群)、腎毒性、更に制酸剤、消化性潰瘍治療剤に含まれている金属カチオンとの相互作用での腸管吸収の著しい低下などです。
とくに痙攣を伴う中枢性副作用は重要です。最近ではニューキノロン剤単独でも痙攣が起こったとする報告が何件かなされています。
ニューキノロン剤自体による痙攣誘発はその血中濃度異常上昇による急性中毒症状と考えられる症例が主となっています。患者背景としては腎機能低下、大量与薬あるいは痙攣素因などが挙げられますが、基本的にはニューキノロン剤自体が中枢興奮作用を有することを認識する必要があります。
過去にフルマーク、タリビット、シプロキサン、ロメバクト等紫斑病のほとんどの製剤で痙攣が報告されています。
これらのニューキノロン剤による痙攣の誘発はGABA(γアミノ酪酸)レセプターで、GABAと特異的に結合を阻害することによると考えられています。
(注)GABAは大部分能髄液中に存在する生体物質で、脳でのブドウ糖の分解を促進し、脳の機能を活発にします。その他,GABAはアセチルコリンの生成を増加させて脳機能の促進に関与し、また延髄の血圧中枢に作用して血圧降下作用を現します。
{参考文献}薬局 1992.6 Vol.43
ニューキノロンと低血糖
1992年12月1日号 No.120
===副作用情報 No.117===
ニューキノロン系抗菌剤のフルマーク、ロメバクトを服用中に重篤な低血糖を発現した症例がそれぞれ6例、3例報告されています。報告例はいずれも高齢者で、9例中4例は透析患者でした。
両剤とも腎障害患者ではその血中濃度が異常に上昇する恐れがあり、このような場合には痙攣や低血糖等の重篤な副作用が発現していることが考えられます。
両剤の発売以降の現在(1992年)までの推定使用患者数はそれぞれ約12000万人、約270万人であることから、低血糖の発現はきわめてまれであると考えられますが、これらの使用にあたっては、患者の腎機能に注意し、与薬量を減らしたり、または与薬間隔をあけるなどの対応が必要です。
また、今回報告された低血糖症例がいずれも高齢者であり、高齢者については一般に腎機能が低下している症例が多いことを考慮すると、高齢者への与薬にあたっては通常量では過量となる恐れがありますので、与薬量には十分注意する必要があります。
*
わが国で発売されているニューキノロン系抗菌薬には、フルマーク、ロメバクトの他にもタリビット、シプロキサン、トスキサシン等があります。これらについては低血糖を発現したという国内の報告は現在(1992年)までのところありません。しかしながら、これらの同系統薬剤についても低血糖の発現に注意していく必要があると考えられます。
ニューキノロン系抗菌剤と制酸剤の相互作用
1991年8月15日号 No.93
ニューキノロン系抗菌剤の相互作用につきましては、NSAIDs(非ステロイド性消炎剤)との併用で痙攣、また、テオフィリンとの併用で血中濃度の上昇などがよく知られていますが、最近、金属カチオン含有の制酸剤・消化性潰瘍用剤との併用により、ニューキノロン剤の吸収がしく低下し十分な治療効果が得られないことが報告されています。
<ニューキノロン剤の吸収を阻害する薬剤>
〜アルミニウム、マグネシウム含有薬剤
酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アドソルビン、アルミゲル、マーロックス、ビット散、アルサルミン
コランチル、硫酸マグネシウム等
その他:乳酸カルシウム、フェロミア、等の金属カチオン含有製剤も同様にニューキノロン剤の吸収を阻害します。
<対策>
1)金属カチオンを含まない消化性潰瘍剤に切替える。
ニューキノロン剤と併用可能な消化性潰瘍剤:マーズレンS、セルベックス、アロカ、ゲファニール、H2遮断剤等
2)ニューキノロン剤と制酸剤をどうしても併用する必要がある場合は服用時間を調節する。
ニューキノロン剤を食後すぐ、制酸剤を食後2時間とする。
レスピラトリーキノロン
respiratory quinolone
ニューキノロン系抗菌剤の中で、市中肺炎の主要起炎菌(特に肺炎球菌)に優れた抗菌活性を持ち、肺組織への移行性が良いものをレスピラトリーキノロン(respiratory
quinolone:呼吸器キノロン)といいます。
現在、トスフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフォロキサシン、レボフロキサシン(高用量)があります。
出典:mediceo journal 2006.3
メインページへ