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医薬品による抑うつ

1992年9月1日号 No.114

      厚生省医薬品副作用情報 No.115

 薬剤の副作用として抑うつ状態(Drug induced-depression)が惹起されることがあります。重篤な場合には自殺にまで結びつくことがあり、臨床的に注意すべき問題の一つとなっています。

 その病態の特徴として、抑うつ気分や悲哀感よりも、意欲の減退やエネルギーの喪失といった精神運動抑制症状が前景にたつことが多くなっています。

 早期発見、早期治療のために最も大切なことは抑うつ症状の原因として薬剤を思い浮かべることで、被疑薬の中断ないし中止を行なって観察する必要があります。

 通常、服薬の中止により回復しますが、ときに抗うつ剤の与薬を必要とします。

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[Drug induced-depressionを起こす主な薬剤]

*ホルモン剤:使用30〜60日後に躁または抑うつなどの気分の変化が見られることがあります。

*シメチジン:精神症状の副作用として最も多いのはせん妄ですが、抑うつを呈した症例もあります。

*抗パーキンソン薬:Lドパ製剤はきわめて多くの精神症状を惹起させます。パーキンソン病そのものが抑うつを呈する頻度が高く鑑別が難しい。

*レセルピン:5ヵ月程度の服用で10〜20%の人現れます。うつ病の既往のある人に発症しやすい。(レセルピンは現在あまり使用されていません。)

*その他〜インターフェロン、カルシウム拮抗剤等

<治療>

 原則として原因薬剤の中止ないし、減量。薬剤による精神障害は比較的短時間に消失します。重篤な場合は三(四)環系抗うつ剤を使用します。


Drug induced-depressionの特徴

・薬剤を服用後間もなく発現する急性型と長期連用中に発現する慢性発症型がある。

・服用量が多く、服用期間が長い程高頻度に発現するのが一般的だが、そうでない場合もある。

・同じ薬剤でも患者の年齢、性、基礎疾患、併用薬剤などにより症状発現の様式が異なる場合が多い。

<症状>

 活動性減退、精神運動性抑制、不活発、エネルギーの喪失等
その他:焦燥、不安、倦怠、不眠、身体不調、自殺念慮、自殺企画等

関連項目 鬱(薬剤による“うつ”)


STD

sexually transmitted diseases

性行為感染症

主なSTD

*尿道炎(80%が淋菌かクラミジア)

 排尿時に痛みが走る、膿が出る 淋菌性 淋菌(細菌)、直接接触による感染

 早期診断による抗生物質の服用

*非淋菌性 クラミジア〜大腸菌

 繰り返し引き起こすこと有り

*尖圭コンジローム〜ウイルス性疾患

 包皮の内側や亀頭の根元、陰茎などに、小さなイボ状のツブツブができる。 性交渉でも感染

 早期診断・早期治療が必要(特殊焼却治療)

*梅毒

 第1期は陰茎に潰瘍ができたり、リンパ腺が腫れる
 第2期は全身に発疹、
 第3期はゴム腫という腫瘍ができ、
 第4期は脳や神経が侵される。 梅毒スピロヘータ

 性交渉で感染 早期診断による抗生物質

*トリコモナス〜 トリコモナス鞭毛虫

 排尿時に痛みが走ったり膿が出る。かゆみも強く感じる。男女間でくり返すピンポン感染あり

 男女ともに治療が必要で、抗トリコモナス剤を投与すれは1〜2週間で完治

*単純ヘルペス

 2型ウイルス 病巣部からの直接感染、オーラルセックスによる感染も有り

 抗ヘルペスウイルス剤の投与や軟膏塗布

*エイズ

 潜伏期間が長く、発見しにくい

 発症すると微熱が続き、リンパ腺が腫れる HIVウイルス 血液を介して感染する。
 傷があれば感染率はさらにアップ
 発症したら病院において入院治療を行う

*毛じらみ〜ビゼンダニ

 疥癬 陰毛部に強烈なかゆみが走る。かいてもかゆみが止まらない

*シラミ

 性交渉などで感染
 早期治療。軟膏やパウダー塗布


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胆汁酸の新たな評価

2004年7月15日号 No.387
 

 胆汁酸は、小腸と肝で脂質やステロールの排出、吸収、輸送を促進する生理的な界面活性剤です。

 近年の研究により、胆汁酸は核内受容体FXD:farnesoid X receptorを活性化して、胆汁酸やコレステロールの恒常性維持に重要な多くの代謝経路を制御する「シグナル分子」の顔を持つことが明らかとなってきました。

「胆汁酸シグナル」は糖新生律速酵素の発現を抑制することが示されています。

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 胆汁は、胆汁酸、電解質、ビリルビン、コレステレロール、リン脂質からなる等張浸透圧性の溶解物として、肝で持続的に生成され胆嚢で濃縮された後、摂食刺激に応じて十二指腸内へ分泌されます。

 胆汁に含まれる胆汁酸は両親媒性で界面活性作用を持つため、消化液中の脂肪を乳化させ脂肪粒子の表面積を増やすことによって、リパーゼを作用させ易くする働きを持っています。

 胆汁酸は大部分は回腸で能動的に再吸収され、腸肝循環により門脈を経て肝に戻ります。この際胆汁酸は肝細胞での胆汁酸の排出を促進させ、新たな胆汁酸の生成を抑制することで、肝内での胆汁酸濃度一定に保っています。

 胆汁酸は肝細胞でコレステロールから数段階の反応により生成され、臨床の場でコレスチラミンが高コレステロール血症の治療に使われていますが、これは成分中の陰イオン樹脂に食後分泌される胆汁酸を吸着させ、体外へ排出させることで体内の胆汁酸の総量を減らすことと、代償として肝でコレステロールの胆汁酸への変換が促され、結果的に血中コレステロールを下げるためです。

 このように胆汁酸は小腸と肝で、脂質やステロールの排出、吸収、輸送を制御する生理的な界面活性剤であると位置づけられていました。ところが近年の研究により胆汁酸の受容体が発見されると、胆汁酸は自身の合成やコレステロールの恒常性維持に重要な多くの代謝経路や遺伝子発現レベルで制御する「シグナル分子」でもあることが、次第に明らかとなってきました。

<胆汁酸受容体と胆汁酸代謝>

 最近、核内受容体型転写因子FXR(Farnesold X receptor)が胆汁酸の受容体であることが分かりました。そしてFXRが胆汁酸の恒常性維持のマスターレギュレーターであり、生体内でFXRが胆汁酸のセンサーとして働いていることが証明されています。

 また、胆汁酸が糖代謝系に関与することも判明し、胆汁酸、あるいは胆汁酸誘導体が糖尿病治療薬として機能する可能性も考えられています。

 現在は胆汁酸製剤はケノデオキシコール酸よりもウルソデオキシコール酸(ウルソ錠)の方が広く用いられていますが、ケノデオキシコール酸の方がFXRの
リガンド(受容体結合物質)としての機能が強いことが示されています。その意味でケノデオキシコール酸は従来の胆石溶解剤というよりもFXRのアゴニストとして再評価されてよいでしょう。

 その他にも、胆汁酸が血圧制御に重要なアンジオテンシノーゲン遺伝子を負に制御したり、キニンの前駆体であるキニノーゲン遺伝子をFXRを介して正に制御することも報告されており、遺伝子レベルで血圧調節に関わっている可能性が高いと考えられています。

 このように胆汁酸は胆汁酸やコレステロールの恒常性維持だけでなく、糖代謝や血圧調節のように様々な場で恒常性維持に寄与している「脂溶性ホルモン」と呼ぶべきかもしれません。

{参考文献}ファルマシア 2004.7


医学・薬学用語解説(I) Ischemic penumbra はこちらです。


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