無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学  

 

読み込み中

 

 

     しばらくお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 


 

p1

SNRI

出典:医薬ジャーナル 2000.2

 SNRI:セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤はセロトニン(5-HT)に加えてノルアドレナリン(NA)の再取り込みも阻害し、両モノアミン濃度をバランス良く増加させる。この点でSSRIと異なっています。

 また、アセチルコチン受容体、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体などの各種受容体を遮断しないことから、三、四環系抗うつ薬などで問題となっている副作用が減少しています。

 さらに反復投与によって5-HT受容体やアドレナリンβ受容体のダウンレギュレーションは起こりませんが、縫線核のn5-HT 1A受容体が脱感作することが明らかにとなっています。

 現在開発されている抗うつ薬は、モノアミン仮説に基づいたものですが、その作用機序を考える上で単純に説明できない以下のような矛盾点を抱えています。
(トレドミン錠 2000年9月発売)

 抗うつ薬のモノアミン再取り込み阻害は、薬剤が目的のトランスポーターに到達すればすぐに生じるものです。(トランスポーター:神経終末に存在する取り込み部位)

 実際に抗うつ薬を末梢に与薬すると、その30分後にモノアミン濃度は上昇します。しかし、臨床的な抗うつ効果は服用後すぐには現れず、効果発現までに2〜4週間の服用が必要です。したがって、抗うつ薬を反復与薬しているうちに生じて来る何らかの適応変化が抗うつ薬の効果発現に重要と考えられます。


*5-HT受容体やアドレナリンβ受容体のダウンレギュレーション

 抗うつ薬を反復与薬すると脳内の5-HT受容体とβ受容体の数が減少することが報告され、これが臨床的な抗うつ効果発現時期と時間的に一致することから、これらの受容体のダウンレギュレーションが効果発現に関与しているのではないかと考えられました。

 しかし、うつ病の有効な治療手段の1つである電撃療法(ECT)では5-HT2受容体はむしろ増加するし、近年開発されたSNRIやSSRIは、これら受容体数に影響しないという報告が多く、したがって少なくともSNRIやSSRIの奏効機序をこれらの受容体のダウンレギュレーションで説明することはできません。

 近年では、受容体の刺激以降のG蛋白、セカンドメッセンジャー系、遺伝子発現などに関する抗うつ薬反復与薬後の適応変化がさかんに研究されています。


*縫線核5-HT 1A受容体の脱感作

 抗うつ薬の反復投与でポストシナプス側の研究の中で、縫線核(5-HT神経系の起始核)の5-HT細胞に存在する5-HT 1A受容体がうつ病との関連で話題を集めています。

 縫線核での5-HT 1A受容体が5-HTにより活性化すると、細胞の発火活動が抑制され、神経終末からの5-HT放出が減少します。

 SSRIを急性与薬したときの5-HT神経投射先(大脳皮質や海馬など)での5-HTの上昇率は、縫線核での5-HT濃度の上昇に比べて低いことが知られています。これはSSRIによって増加した5-HTが縫線核5-HT 1A受容体を活性化し、神経終末からの5-HT放出にブレーキがかかるためと解釈されています。

 実際に5-HT 1A受容体アンタゴニストを併用し、5-HT 1A受容体の働きを遮断すると、SSRIの急性与薬でも神経終末からの5-HT放出は増大します。またSSRI単独でも2〜4週間の反復与薬をすると縫線核5-HT 1A受容体が脱感作し、投射先での5-HT濃度が上昇してきます。

 この縫線核5-HT 1A受容体が脱感作する時期と臨床効果発現時期が一致するため、SSRIの効果発現が遅い理由を縫線核5-HT 1A受容体の脱感作に時間を要することで説明しようとする働きが欧米を中心に始まっています。

 従って、投与初期から縫線核5-HT 1A受容体の機能を遮断すれば速効性が期待できるのではという考えから、SSRIと5-HT 1A受容体アンタゴニストの併用が試みられています。

 抗うつ効果を発揮するためには、シナプス後膜に存在する5-HT 1A受容体の活性化が重要と言われていますが、5-HT 1Aアンタゴニストは用量が高まるとシナプス後膜の5-HT 1A受容体も遮断されてしまいます。現在臨床で使用できる5-HT 1A受容体アンタゴニストはピンドロールで、これはβ遮断剤でもあります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

モノアミン仮説

三環系抗うつ剤の発見から、うつ病はモノアミンが欠乏しているせいであるという仮説が
生まれました。

モノアミンの中でも、セロトニン系とノルアドレナリン系が注目されてきましたが、一方でドパミン系も前記2つのモノアミンと系密接な関係があります。

三環系抗うつ剤が脳内モノアミンの細胞内再取り込みを遮断し、細胞間隙のモノアミンが増加する作用があることからうつ病ではモノアミン機能が低下し、躁病では過剰になっているのではないかと考えられます。

しかし、抗うつ薬がその作用を発揮するまで数週間もかかるというのが謎なのです。

受容体仮説

 三環系抗うつ剤をずっと使用していると、脳の中ではモノアミン受容体結合数が減ってくる(ダウンレギュレーション)ことが分かっています。
 うつ病では後シナプス受容体が過敏に成っている、または受容体対数が増えているために、普通では前シナプスからのモノアミン放出が抑制されているのに、ストレスなどでモノアミンが放出されると、受容体を介した情報伝達が過剰になって発病するという仮説です。

(動物実験でこの説の正しさが証明されないため確認されないため仮説のままです。)

  出典:薬事 2005.7

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

SDA
セロトニン-ドパミン-アンタゴニスト

背側縫線核の5HT2A受容体にSDAが作用すると、黒質線状体でセロトニンに抑制されていたドパミンが開放されるためといわれています。また陽性症状に効果を示すだけでなく陰性症状や認知機能障害にも有効です。

SDAを最大限に生かすためには容量設定が重要で、抗精神病薬の多剤併用や至適用量を超えてしまうとその特徴が失われ錐体外路症状(EPS)の発現頻度が高くなるため注意が必要です。

MARTA
multi-acting receptor tageted antipsychotics

オランザピン、クロザピン、クエチアピン

 SDAと同様にドパミンD2受容体よりもセロトニン5HT2受容体に親和性が高いのが特徴ですが、ヒスタミンH1受容体、ムスカリン受容体、アドレナリンα1受容体など多岐にわたって親和性を示します。

 また脳への選択性があり、錐体外路と関係のあるA9領域よりも精神病症状と関係のあるA10領域に選択的に作用するため、治療不耐性統合失調症に有効と考えられています。

 陰性症状、認知機能障害の改善に関して、前頭前野での5HT2A受容体遮断作用によるドパミン賦活だけでなく、5HT2C受容体遮断作用によるドパミンやノルアドレナリン量の増加も有り、またNMDA受容体に作用してグルタミン酸神経伝達を賦活していることも考えられています。

 副作用として体重増加や糖尿病の誘起があり、肥満体系や服用開始後の急激な体重増加ある場合、そして糖尿病や高脂血症の家族歴がある場合などには定期的な血糖値の測定が必要です。

 現在、MARTAは糖尿病あるいは糖尿病の既往歴がある患者には禁忌になっています。


p2

ファミュラリー
formulary

同様の薬効を示すブランド名、またはジェネリック

例えば、タガメット錠とガスター錠

 医師が処方箋に書かれたとおり(dispensed as written)と指示した場合は、ファーミュラリやジェネリックの処方は不可

 


p3

ブリッジング試験

bridging sutudy

 ある新地域(国)で新薬の承認申請をする場合、その薬品が、すでに外国で臨床試験がなされており、そのデータが承認申請資料として、自国の住民集団(民族)に外挿することが可能か否かを確認するために実施する臨床試験。

 新薬の承認申請時に必要な全てのデータを臨床データパッケージというが、国際的に自国を含むいかなる国のデータでも、全て新薬を承認する国の規制当局が、データの特性と質について、自国の規制用件を見たしていると判断すれば、それは完全な臨床データパッケージとみなされます。しかし、その中の外国臨床データについては、自国の民族に外挿可能かどうかを検証しなければなりません。

 1998年にICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)で、外国臨床試験データ受け入れの際の民族的要求に関するICH-E5というガイドラインが合意に達しました。

 ブリッジング試験は完全な臨床データパッケージとともに、この中に規定されており、この2つがICH-E5ガイドラインの骨子となっています。これには、臨床試験の国際的な重複を最小限にして、患者へ有用な新薬を速やかに提供するとい意図があります。

 わが国のブリッジング試験は、医薬品機構の治験指導部が相談に対応しています。例えば、外国の第3相試験データを日本人に外挿するためには、日本の第2相後期の用量反応試験データが必要となり、そのためには、人種や民族的な差異を外国の臨床試験データと比較可能なデザインの第2相後期試験を組む必要があります。

出典:JJSHP 2000.3


p4

トリアージ

出典:JJSHP 2000.2

フランス語で「えり分ける、分類する」という意味。

 医療では地震などの災害で、傷病者が同時に発生した救急医療の現場などで傷病者の重傷度に応じて、各病院の設備を考慮しながら搬送先を決定したり、災害で多数の傷病者が同時に救命外来を受診したときに、バイタルサインや臨床的な重症度などから治療順位を決めることをいいます。

 また、救命外来で治療の緊急度により優先順位を決めることもトリアージの一種です。この目的は災害時など多数の傷病者が一度に発生する特殊な状況で、現存する限られた医療資源を最大限に活用して、救援可能な傷病者を確実に救い、可能な限り多数の傷病者を治療するためにとられた方法です。

 傷病の緊急性・重症度に応じ、傷病者の識別に用いられるものがトリアージタックで、通常は4つに分類されます。

1.最優先治療群(重症群:赤色)直ちに処置を行なえば、救命が可能なもの
2.非緊急治療群(中等症群:黄色)多少治療の時間が遅れても、生命に危険が無く、基本的にはバイタルサインが安定しているもの
3.軽処置群(軽傷群:緑)上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としないもの
4.不処置群(死亡群:黒)既に死亡しているもの又は明らかに即死状態


但し、災害規模によりトリアージの運用は変更されます。


p5

PTCA

経皮経管冠動脈形成術

P:percutaneous 経皮的 T:transluminal 経血管的 C:coronary 冠動脈 A:angioplasty 血管形成術

PCI

P:percutaneous 経皮的 C:coronary 冠動脈 I:intervention 介在

 経皮的冠動脈形成術は、冠動脈を拡張することで心筋の酸素需要に対して十分な血流を確保でき、かつ冠動脈バイパス手術よりも低侵襲であることから、虚血性心疾患患者に対して積極的に行われています。

 従来、バルーンのみで冠動脈を拡張するする手技POBA(plane old baloon angioplasty)が行われてきました。しかし、POBAには、1.冠動脈の石灰化が強く、拡張困難な症例がある。2.冠動脈解離、急性冠閉塞などの合併症が2〜5%の症例に発症する。3.30〜40%の症例に再狭窄が起こる。などの問題点が以前から指摘されてきました。

 近年、これらの問題点を解決する目的で様々な新器具(new device)が開発されています。

代表的なnew device

1)冠動脈ステント

 金属製の筒を冠動脈に留置し、血管壁を内側から保持する方法

 最近Sirolimusなどの薬剤をコーティングさせたステントが、ステント内再狭窄を劇的に減少させるとして注目されています。
 

DES:薬剤溶出ステント

2004年8月に、日本初の薬剤溶出性ステント、シロリスム溶出ステントの保険適用が認められました。

シロスタゾールやトラニラストが薬剤候補に

シロスタゾールは、抗血小板作用や血管拡張作用にほかに、肝細胞増殖因子(HGF)の産生刺激作用を会した血管内皮細胞の機能回復や増殖促進作用も確認されています。

経皮的インターベンション(PCI)後の再狭窄予防にシロスタゾールの内服が有効との報告があることから、ステントにも使用することが検討されています。

        出典:メディカルトリビューン 2005.4.14


2)DCA:directional coronary atherectomy

 カテーテルを用いて冠動脈のアテロームを直接切除する方法

3)ロータブレーター

 先端にダイアモンドでコーティングされた卵円形の金属球を高速回転させ、動脈硬化組織を粉砕除去する方法。

4)冠動脈バイパス手術(CABG)


 出典:Medicament News 2003.1.5


p6

ファーマシューティカルケア

患者のQOL向上という確実な目的のために薬剤師が責任を持って薬物療法を提供すること。

出典:JJSHP 1999.12

 数年前アメリカで提唱され、現在は世界中の薬剤業務の実践の中に取り入れられつつある。

 定義:患者のQOLを改善する明らかな結果をもたらすために責任を持って薬剤治療を提供すること。

 ファーマシューティカルケアとは患者のことを思いやる、気遣うこと。

 その基本的前提となるのは、患者が薬剤師からその知識・技術を始め、最良の薬物治療のための様々な恩恵を受けられるという点にあります。

「ケア」という言葉が鍵で、真に患者の健康を気遣うことが薬剤活動全ての動機

 ファーマシューティカルケアは患者を中心におき、薬剤師は医師・看護婦、他の医療従事者と協力して患者の医療ニーズに応える任務を担っており、その中に薬剤の提供、薬物治療の開始・モニタリングで医師をサポートすることが含まれます。

 そのための時間を生み出すには:テクニシャン、自動調剤機の導入が必要?!

プレアボイド

Pharmaceutical Report about Early monitor or AVOID of adverse reaction or drug interaction

 病、診薬剤師が臨床現場で薬学管理を実践し、その結果、安全で有効な薬物療法への貢献の証となるもの。

 薬物療法に関連する患者不利益を回避するために薬剤師が行ったファーマシューティカル・ケア(上記)の実例報告

 回避した不利益の内容は、副作用はもとより、相互作用、重複投与、禁忌症、慎重投与、服薬ノンコンプライアンスなど多岐にわたっています。

出典:薬事 1999.11等


p7

ユニバーサル・プリコーション(プリコーション)

スタンダード・プレコーション

出典:JJSHP 1999.11、医薬ジャーナル 2000.10

universal precautionとは、普遍的予防策とも呼ばれ、主にHIVの流行を背景とし、米国で必要性が認識された血液・体液の感染症防止対策です。

 具体的には、HIVやHBVなどの血中病原体の存在をすべての患者について予め認知することは不可能であるという点から、「推定される感染病態に関らず、すべての人々の血液や体液は感染性があるものとして取り扱うべきである」とする感染防止対策の概念です。

 これにより患者の血液や体液に暴露する危険を最小限にし、患者-患者間のみならず、患者-医療従事者間の感染防止を狙いとしています。また最近では、VREなど糞便を介した接触感染や結核などの広がりに対して、ユニバーサル・プリコーションを統合したスタンダード・プレコーションが提唱されています。

 後者は、血液を含むかどうかに関らず、接触感染、空気感染、飛抹感染などすべてに対応する感染防止策です。

スタンダード・プレコーション:標準予防策

 ユニバーサル・プレコーションでは、すべての患者の血液及び精液や膣分泌物などの体液は感性性ありとみなして取り扱いますが、スタンダード・プレコーションでは、尿や便などの患者の排泄物なども対象として加え、手袋着用よりも手洗いの重視を提唱したものです。

 感染の有無に関わらず、すべての患者にこれらの予防策を適用すべきだとされています。

スタンダード・プレコーションはすべての感染症に効果があるわけではないので、疾患によっては、空気予防策、飛沫予防策、接触予防策を追加する場合が必要となります。


p8

TSE

伝達性海面状脳症

 フィブリノゲン加第[因子(ベリプラスト、ボルヒール、ティシール)の使用により、ヒトにTSEを伝播するとの疫学的データはなく、また、本剤に含まれる牛由来アプロチニンは、製造工程でTSE原因物質の除去処理を行っています。

 しかし、TSE伝播についての理論的な危険性を完全に否定することはできず、また、TSE原因物質がマウス脳内に直接投与されたとき感染が認められたとの報告がありますで、頭蓋腔内、脊髄腔内、眼球内への使用では、治療上の有益性を勘案した上で本剤を使用することとされています。。


p9

エイコサノイド    関連項目 PUFAもご覧下さい。

 狭義にはプロスタグランジン(PG)、トロンボキサン、ロイコトリエンなどのいわゆるアラキドン酸カスケード代謝産物を指す言葉。

 広義には前記物質と関連する生理活性脂質を含めた総称として使われます。

  エイコサというのはラテン語で20個という意味で、炭素数20のアラキドン酸の正式名エイコサテトラエン酸が名称の由来となっています。

 エイコサノイドは化学的には脂質で、ヒスタミンのように合成されて予め細胞内に貯蔵されているのではなく、刺激に反応して原料のアラキドン酸が遊離され、直ちに生成・遊離されます。

 エイコサノイドの特徴は、膜のリン脂質が刺激によって切り出され、各酵素によって生理活性のある形に変換された場所(局所)で作用し、速やかに代謝されて不活性化されるところにあります。

 このことから、循環ホルモンに対応して局所ホルモンと考えることもできます。

 アラキドン酸からPG類を産生する最初のステップは、シクロオキシゲナーゼ(COX)によって行われます。この酵素にはCOX1とCOX2の2種類があり、最近では副作用の少ない抗炎症剤として、また抗癌剤としてのCOX2選択的阻害薬の開発が期待されています。

 エイコサノイドの作用は、大部分が細胞膜のG蛋白共役型の受容体を介して行われます。

 現在までに多くの受容体がクローニングされ、次々に新しいエイコサノイドが報告されるとともに、病態との関連も解明されつつあります。  

    関連項目 PUFAもご覧下さい。


p10

イノダイレーター

出典:JJSHP 1999.7・8

inodilator:強心作用と血管拡張作用を有する薬剤

 心拍出量を増加し、一方肺動脈楔入圧を低下させ血行動態を効率よく改善するので急性心不全治療薬として優れています。


塩酸コルホシン・ダロパート

シソ科の植物から開発された水溶性誘導体

アデニル酸シクラーゼの活性を直接高めることにより強心作用と血管拡張作用の両方を発揮します。

アデニル酸シクラーゼの活性が亢進すると細胞内サイクリックAMPの産生が促進されます。

増加したサイクリックAMPにより活性化されたプロテインキナーゼAは種々の蛋白をリン酸化し効果を発揮します。

 例えば心筋細胞膜スローCaチャンネルのリン酸化により細胞内へカルシウム流入を増加される一方、ミオシン軽鎖のリン酸化により心筋収縮蛋白のカルシウム感受性低下するが、総和として収縮力増強(陽性変力作用)が現れます。

 また筋小胞体のフォスフォランバンをリン酸化することにより細胞質から筋小胞体へのカルシウム取り込みを促進し筋弛緩作用も増強されます。

 また細胞内カルシウム流入の増加は陽性変力作用のみでなく陽性変時作用も引き起こし頻脈作用を発揮することになります。

 末梢血管平滑筋に対してはミオシン軽鎖のリン酸化により血管拡張作用を発揮します。

 サイクリックAMPを増加させ強心作用を発揮する薬剤としては今までにβ遮断剤とファスフォジエステラーゼ阻害剤がありました。前者は心筋β1受容体を介してアデニル酸シクラーゼ活性を増強し、後者はサイクリックAMPの分解酵素であるファスフォジエステラーゼ活性を阻害することによりサイクリックAMPを増加させるものでした。

 塩酸コルホシン・ダロパートはこれらと異なりアデニル酸シクラーゼ活性を直接高める点で全く新しい薬剤です。


p11

強化インスリン療法

intensive insulin therapy

出典:JJSHP 1999.7・8等

 単にインスリン頻回注射療法のことでなく、血糖応答反応の正常化を目指し管理を強化していく療法のこと。
 具体的には追加分泌として毎食前に速効型、基礎分泌として、眠前、朝食前に中間型を用いる方法などがあります。

 従来の中間型インスリン朝1回あるいは朝夕2回のインスリン療法に対し、より生理的な血糖制御を行うために、インスリンの基礎量と追加量とを補充するインスリン皮下持続注入療法(CSII)、またはインスリン頻回注射療法に血糖自己測定を組み合わせ、きめこまやかなインスリンの用量を調整することにより長期にわたる厳格な血糖制御を試みようとする方法です。

強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールは、糖尿病性細小血管合併症の発症・進展を阻止することが明らかにされています。

 NIDDMでの強化インスリン療法は重症者の治療と考えられますが、インスリン注射療法を一生涯継続しないで済むように、膵β細胞を温存し内因性インスリン分泌を回復させる積極的治療法として考え方は変化しています。

 本法はインスリンペンと血糖自己測定により外来診療で導入することも簡易になりましたが、NIDDM患者へのインスリン導入には動機付けを十分に行う必要があります。

 


p12

グルコサミン

出典:三星堂 Q&A

 グルコサミンは関節性骨グルコサミン(GAG:注1)の基礎成分で、米国で話題になっています。


本食品は変形関節症の治療に有効であるかも知れない。

 プロテオグリカン(ムコ多糖質)は酸性糖を含む二糖類の繰り返し構造からなる多糖類GAGを主成分として含む蛋白質です。

 プロテオグリカンは細胞外マトリックスの主要成分で、細胞外液を含みゼリー状となって細胞間隙や間接腔に存在します。軟骨や腱、皮膚を滑らかにする分泌液中にも含まれており、細胞の保護および結合組織の細胞間隙のセメントの役目をしています。

 グルコサミンは、軟骨細胞を刺激してグリコサミノグリカン及びプロテオグリカンの合成を促すと言われています。

 動物モデルでは、経口硫酸グルコサミンは、炎症、構造的関節炎、免疫反応性関節炎に対して有用な作用を及ぼすが、インドメタシンの作用よりも弱いとされています。

 製品としては、グルコサミン単独、あるいは関節の粘性を維持し、軟骨修復機構を刺激し、軟骨を破壊する酵素を阻害すると報告されているGAGであるコンドロイチン硫酸が配合されているものもあります。

 いずれも米国では疾患の診断、治療または予防に用いないという表示が必要な栄養補助食品として販売されています。


グルコサミン・コンドロイチン含有栄養補助剤

アクティオ グルコサミン:アサヒビール
フレックスパワー:ロート
ラクステップ:日水製薬
骨節ら〜く:ksと宇翠松堂
フシラークM:マンナンフーズ
歩行革命V:健民社
コラーゲンマトリックス:三井物産1999年


p13

アンテドラッグ

出典:三星堂Q&A

 ステロイド外用剤は一般的に薬効の強いものほど局所的、全身的副作用が強い性質があり、全身的副作用を軽減する目的でアンテドラッグが開発されました。

外用薬のアンテドラッグとは、1982年に提唱された概念で
「科学的修飾により投与部位では活性を有し、循環系に入ると速やかに代謝されて不活化する物質」

生体内で代謝されて活性を示すプロドラッグに対比した概念です。

アンテドラッグの性質を有する国産第1号として酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(HBP)が登場しました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ソフトドラッグ

医薬品の不活性代謝物の中から。薬理作用を示すための必須構造式を持つものを選択し、再び薬理活性を甦らせるための分子修飾を施したものです。

代謝物の水酸基やカルボン酸がエステル修飾に利用され、薬効を発現した後に、生体内で必ず不活性になります。

例としては、メトプロロールの代謝物からデザインされたエスモロール(手術中の抗不整脈剤)、さらに心臓選択性を持たせたランジオロールがあります。これらの化合物は、エステラーゼによる加水分解を受けて半減期数分で消失します。


p14

ハンタウイルス

出典:JJSHP 1999.6

 RNAウイルスの一種で、腎症候性出血熱を引き起こすいくつかの原因ウイルスの中で最初に発見されたハンタウイルスに由来して命名されました。

 ハンタウイルスによる感染症は重症例が多く、東アジア、東欧、北欧、旧ソビエト、北米などに存在します。

 近年、新しいハンタウイルスが見つかり、これがハンタウイルス肺症候群を引き起こすことが報告されました。

 ハンタウイルス肺症候群は発熱、全身の筋肉痛で始まり、重篤な呼吸不全及びショックを呈します。
ほとんどの場合、成人型呼吸促迫症候群(ARDS)に似た肺水腫像を認め、予後は不良で死亡率52%とされ発症後1〜33日で死亡するといわれています。

 感染経路は感染は齧歯類(げっしるい:deer miceなど)の唾液、尿、便の飛沫物の吸入あるいは直接噛まれることで、人から人への感染はありません。潜伏期は4〜30日

日本での報告はまだありません。


クリック → 無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学 もご覧下さい。