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1997年3月1日号  217

NSAIDsの体温下降ショック

ボルタレン坐薬の適正使用

   薬物ショックとは、薬物の投与後短時間内に発生する循環不全(血圧降下)に伴う臓器組織の低酸素状態とされており、
 1.IgE抗体を介する抗原抗体反応によって生じる即時型アナフィラキシーショックと、
 2.薬剤の持つ固有の作用(解熱等)が強く発現した結果生じるショックとがあります。
 NSAIDsは解熱作用を有しており、警告で注意を喚起しているのは、2.のショックです。
 ボルタレンを幼児、小児、高齢者、消耗性疾患(癌や慢性感染性疾患のように全身の強い消耗を伴う慢性疾患)の患者に投与した場合、幼児、小児は体温調節中枢が未熟であり、また高齢者、消耗性疾患の患者は、恒常性維持能が低下していることから、結果的に過量投与の状態となることがあり、過度の体温下降、血圧低下によるショック症状発現の可能性があります。

 これらの患者では可能な限り少量から開始し、患者の状態に十分注意することが必要です。

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<症状>
 通常、投与後30分から数時間の間に、四肢冷感、嘔吐、顔面蒼白、虚脱、意識混濁、呼吸困難
チアノーゼ、尿量減少等、過度の体温下降、血圧低下、急性循環不全
<処置>
 酸素吸入や低体温に対して保温(電気毛布等)を行い、必要に応じて、輸液、カテコールアミン、ドパミン等

<重大な副作用追加>

 無菌性髄膜炎(項部硬直、発熱、頭痛、悪心、嘔吐、あるいは意識混濁:特にSLE又はMCTD等の患者では注意)

薬剤性無菌性髄膜炎

 髄膜炎のうち、髄液培養で細菌、真菌が検出されないものをいい、その多くはウイルスによって発症するウイルス性髄膜炎であるが、ウイルス以外の原因の一つに薬剤があげられる。

 症状としては、発熱、頭痛、嘔吐、項部硬直、ケルニッヒ徴候等の髄膜炎刺激症状
予後は比較的良好。殆どが原因薬剤の中止により速やかに回復。
 
 発症機序は確立されていないが、免疫学的機序による過敏反応等が考えられている。
SLE、MCTD等の膠原病に伴う神経症状と鑑別診断が困難
               
ボルタレン坐薬の適応症

1.慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、後陣痛の鎮痛・消炎
2.手術後、外傷抜歯後の鎮痛・消炎
3.他の解熱剤では効果が期待できないか、あるいは、他の解熱剤の使用が不可能な場合の急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の緊急解熱


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<用語辞典>

パスツリゼーション
pasteurization
低温殺菌法


 62℃で30分間加熱処理する消毒法
 もともとはパスツールがブドウ酒の変敗を防ぐために考案した方法
 現在では牛乳の殺菌に用いられています。

 牛乳を汚染する可能性のある主な病原菌は結核菌、サルモネラ、ブルセラ、レンサ球菌などで、いずれも芽胞を有しないためこの方法で殺菌することができ、ビタミンなどの破壊も少ないので広く利用されてきました。

 牛乳中の総細菌の約97%がこの方法で死滅するとのことです。しかし、最近は牛乳の殺菌法として130℃3秒間処理を行う高温殺菌法の方が主流になっています。

* アルブミナー(アベンティス ベーリング)は米国で採血した血液をパスツリゼーション(液状加熱 60℃ 10時間)しており、りウイルス感染の危険性を排除している。

       出典:南山堂、医学大事典 1998年版等


ブリンクマンインデックス  → ブラックマン・インデックス

 喫煙しているタバコので本数×年数で肺癌の危険性を予測する方法。

この指標>600 というのは、例えばタバコ20本を30年喫煙している場合(20×30=600)

ブラックマン(肺が真っ黒)インデックスともじられる。

 肺門部にみられる肺癌は喫煙者に多く、自覚症を伴うことがしばしばあります。レントゲン検査で発見できる程度に進行した場合にはしばしば手遅れの状態にになってしまいます。

 このブラリンクマンインデックスにより肺癌出現の可能性を推測することが出来ます。その他、40歳以上の場合には痰の細胞診により早期発見が可能になります。

    出典:薬局 2003.3


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ウィメンズヘルス

2004年7月1日号 No.386

 Women's Health(ウィメンズヘルス)とは、女性の健康を医学・医療のだけでなく、経済、政治、文化なども含めて包括的に考えることです。国内外の動きが重なり、現在、女性外来、性差医療のうねりが始まっています。

 生涯を通して捉えること、生物医学的性差、社会性文化的性差(ジェンダー)に留意して、平等、公平にすることが求められています。

 治療 2004.6 & 薬局 2004.6

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 健康とはWHOにより、「肉体的、精神的、社会的に完全な健康状態(well-being)のことで、単に病気または疾病に陥っていないことではない」と定義され、さらに近年は、spiritual(精神)という因子が加わろうとしています。

 この健康の概念に女性という因子を加えたものが、女性の健康=ウイメンズヘルスで、さらに男性との性差、相互作用の因子を加えたものが、性差に敏感な健康=ジェンダーセンシティブヘルスです。世界の潮流は「女性の健康」から「性差に敏感な健康」に移行しつつあります。

 女性固有の特徴やそのニーズに対応して、全ての器官に対して全体的な評価をすることがウイメンズヘルスで、過去においては多くの場合、生殖器と乳房だけを対象としたいわゆるビキニ像の考え方が主流でした。

/ Sex  と Gender  \
\ (生物学的性)(社会文化的性)/

 生物学的性とは単に生物としての男性と女性の違いで、遺伝的因子とホルモンが生物学的な発達をもたらしていきます。Genderはその人が住む社会で割り振りされた価値観や役割によって依存しています。

 性差によって与えられた価値観、役割、利益、そして機会(チャンス)はその人の健康状態を決定する上で大切でこれらが生物学的器官の質や機能に影響を与えます。

 実際には多くの場合、その人の特徴が生物学的背景によるものなのか、それともその人が育った社会的、文化的背景によるものかを区別することは必ずしも容易ではありません。

<女性外来の現状と問題点>

 最近、女性外来が新たなサービスのスタイルとして注目されています。しかし、イメージばかりが先行して医療現場で混乱があるのも事実です。

※ 女性専用外来のメリット

・女性の医師に診てもらえる。(注1下記)
・時間をかけて診てもらえる。
・全身的に診てもらえる。
・どの科に行けばよいのか分からないときにアクセスしやすい。
・主訴はあるが、病気かどうか分からないときに受診しやすい。
・性差を考慮した診療が受けられる。

※ デメリット

・正規基準がないため「女性専用外来」とは名ばかりの所もある。
・一般病院併設のばあい、診察日が少ない。
・必ずしも医師が専門ではない。
・専門医(注2)との連携が医療機関によって差がある。
・新しい領域であり、女性外来で関わる医師の教育が統計的でない。
・この分野での研究が進み難い。
・領域を越えた医療連携が薄い。

(注1)女性医師が担当すべきだという意見には賛否両論あり、提供できる十分な医療レベルが確保されていることを優先すべき

(注2)女性外来を担当する医師の専門性は様々ですが、国公立病院では複合型が多い。
    全体を通して内科医師が多い。


医学・薬学用語解説(H)   ホメオパシーhomeopathy はこちらです。

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