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1995年11月15日号 188

風邪の流行と季節

 

    なぜ風邪は冬に流行するのか?

 風邪の原因ウイルスが短期間に検出され、パソコンによる気象と感染症の発生の相関関係が解析されるようになって、風邪の流行と気象との関係が科学的に解明されるようになってきました。
 
 ウイルスによる風邪の流行と季節性は非常に単純な原理、即ちウイルスは水(湿気)が好きか、嫌いか、どちらでもないかによって、夏風邪、冬の風邪、年中流行することができることがわかりました。
    
{参考文献}日本薬剤師会雑誌 11 1995

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 自然環境の気温や湿度はインフルエンザ流行の直接の原因ではありません。しかし流行は気温と湿度の低い冬にみられます。原因ではありませんが、相関関係のあることは確かです。しかしもし気温が低いことが原因であれば、気温が一定以下になれば風邪が一斉に流行するはずですが、現実ではこのようなことはありません。

 ウイルスは気温に拘わらず湿度が低いと不活性化されません。絶対湿度が10g/m3ぐらいだと、ウイルスは、6時間後には5%しか生き残りません。しかし大都会では、人と人の接触の機会が大きいので、風邪が流行する条件となります。日本で、風邪が流行を起こす最低の条件がこの10g/m3であろうと推測されています。

 一方、夏風邪の原因は、手足口病、ヘルパンギーナ等の、エンテロウイルスです。これらによる風邪が夏に流行するのは、インフルエンザと反対に高い気温と高い湿度で不活化されないためと思われます。

 RSウイルスとロタウイルスによる風邪(小児嘔吐下痢症)では、不活化されない気温は10°c、湿度は空気1m3中水蒸気(水)が8g以下です。これらは、冬の初期によくみられ、ついで気温5°c、水が5g以下となると、インフルエンザが流行しはじめます。

 流行の継続期間は潜伏期に比例するので、潜伏期の短い順に流行が終わります。暖かくなると高い温度、高い湿度でも不活化されにくい夏風邪のエンテロウイルス(コクサッキー、エコーウイルス)による風邪の流行がはじまります。これらは気温15°c以上、絶対湿度で水10g以上で流行します。

 インフルエンザに限っていえば、湿度(水)が流行の鍵を握っていると言えるでしょう。季節に関係なく年中流行する風邪は、温帯の日本の気温や湿度で不活化されないウイルス(アデノウイルス)による風邪、簡単にいえば水が好きでも嫌いでもないウイルスよる風邪です。

 

風邪のウイルス

 インフルエンザ、パラミクソ(パラインフルエンザ)、ニューモ(RS)、アデノ、コロナ、エンテロ、ライノ、ヘルペスなど8属、13種類、血清型で分けると230種類以上。乳幼児が1年に数回風邪をひくのも当然です。

 成人でもインフルエンザは型が変わり、ライノウイルスは種類が10以上もあるのでかかってしまう。

 こちらも参考にして下さい風邪の種類と症状 ,インフルエンザと風邪


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インフルエンザの発生と流行

〜絶対湿度と強い関係〜


2009年6月1日号 No.499

 米国の研究によりますと、絶対湿度とインフルエンザウイルスの生存、伝播との間には有意な相関関係があることが判明しました。

 インフルエンザが流行する1月や2月のように絶対湿度が低い時期には、ウイルスの生存期間が延長して感染率が増加するとされています。

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<従来の研究は相対湿度に注目>

 これまで、湿度がインフルエンザの伝播や発生率と関連している可能性が指摘されていました。しかし過去の研究のほとんどは相対湿度に注目したものばかりでした。

 相対湿度は大気中に含まれる水蒸気の重量と飽和空気の重量の比を表しており、温度によって変動します。

 これに対して絶対湿度は、温度とは無関係に大気中の実際の水分量を定量化したものです。2007年の研究では、一般に低温で乾燥しているほど感染が増加することが分かっていました。過去数十年間にわたり、インフルエンザの罹患率に顕著な季節性(温帯地方では冬季にピーク)が認められ理由が追求されてきました。

 可能性として
1.室内で過ごす時間が増えるためウイルスに感染しやすい。
2.日照時間の減少がインフルエンザウイルスに化学的影響を与える。
3.ヒトの免疫反応の変化
4.未知の環境制御の存在
         などが考えられてきました。

 過去に行われた多数の研究では、相対湿度の低下はインフルエンザウイルスの生存に有利に働くことが示されています。しかし今回の研究では、相対湿度はインフルエンザの生存の約36%を説明するに過ぎないことが分かりました。

 絶対湿度を使用してデータを再分析したところ、インフルエンザウイルスの感染と生存の双方への影響が大幅に増加することが明らかになりました。(感染は12%→50%、生存は36%→90%)

 今回の知見から、絶対湿度が環境要因になっていることが示唆されました。

 米国での絶対湿度は夏季のほうが他の季節に比べてはるかに高く、たとえばオレゴン州では典型的な夏の日では、大気中に含有される水蒸気量が雨の多い冬季の2倍になっています。

 「室内でも、屋外でも大気中に含有される水蒸気量が冬季の4倍になることがあり、このため、一般にインフルエンザの発生は絶対湿度の低下がウイルスの生存と感染に大きく味方する冬季に観察される」という説明がなされています。

{参考文献}メディカルトリビューン 2009.5.21
      オレゴン州立大学Jeffrey Shaman etc...

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     インフルエンザと風邪はこちらです。


アデノウイルス

出典:朝日新聞1997、2,7

 アデノウイルスは人間に感染するものだけで40数種類もの型があり、それぞれに番号がつけられている。

・3型:プール熱、喉や目に感染する。
・40、41型:腸に感染して下痢を起こす。
・11型:膀胱炎
・37型:STDとして尿道炎
・5型:増殖力が強く、ネズミなどの細胞を癌化させるため、癌研究の材料として利用されている。またベクターとしても利用。
・7型:世界的には7型はよく見られるが、日本では長い間検出されなかった。ところが95年に75件と急増し、96年は160件を超えそう。96年の2、3月には千葉県内の病院で、7型によると見られる肺炎で乳児2人が死亡。感染経路はまだ分かっていない。「迅速に診断する方法がなく、アデノウイルスが原因と分かったのも死亡後」「日本人には7型の免疫を持つ人が少なく、流行もしやすいと考えられる。乳児や免疫の弱まっている人が感染すると命にかかわることもある」

3型と7型〜どちらも結膜炎や風邪様の症状を起こす。国立予防衛生研究所が、1995年4月から96年2月までに全国から報告のあった7型の感染者86人と、3型の感染者379人の症状を比較したところ、気管支炎、肺炎を起こしたのは3型で11%、7型で14%と大きな差はなかったが、40℃以上の高熱がでたのは3型25%に対し、7型では38%と高い割合を示した。


クループ

croup

急性上気道炎


 クループは急性咽頭気管支炎とも呼ばれ、声帯、声帯下組織に感染し、発赤、浮腫、痙攣をきたし、狭窄症状を起こすこともあります。小児に多く、高齢者ではほとんど見られません。

 小児にみられるクループは喉頭が主として侵され、発熱、嗄声、犬吠様咳嗽、呼吸困難、チアノーゼなどを呈します。

 急性上気道炎は上気道に急性炎症を呈するもので,多くのウイルスやマイコプラズマによる粘膜表層感染とアレルギー性花粉症などが含まれます。なかでも非細菌性咽頭炎は38℃以上の発熱数日、咽頭粘膜の発赤腫脹、リンパ濾胞の発赤腫大に加えて、頚部リンパ節の有痛性腫脹をみます。

 ヘルパンギナは更に高熱で咽頭痛、嚥下痛が強く、口蓋に粘膜疹が現れて、丘疹,水疱,潰瘍をみるに至ります。コクサッキーウイルス感染によるものでは全身症状も強くでます。咽頭結膜熱はプール熱とも呼ばれ、アデノウイルス感染で発熱39℃が5日に及びます。悪寒,頭痛,咽頭痛、せき・痰や鼻汁・鼻閉の他に濾胞性結膜炎の症状を呈する.夏季の水泳プールを媒介として流行する特徴があります。


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 温泉の効果

                 ===IGF-1(インスリン様成長因子)を促進===

2006年11月15日号 No.441

 最近の研究で、酸性温泉水は皮膚の知覚神経を刺激して、皮膚のIGF-1産生を促進することが、明らかにされています。また、皮膚の知覚神経刺激は、求心性に上行し、延髄の迷走神経背側運動核を経由して遠心性に刺激する可能性も示唆されています。

 さらに、迷走神経刺激により胃の知覚神経が活性化され、胃組織中のIGF-1産生が亢進、ストレス性胃粘膜病変形成が抑制されました。

 迷走神経は各種臓器にも分布しており、温泉浴により種々の臓器でIGF-1産生が上昇する可能性が考えられています。

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IGF-1

 IGF-1(インスリン様成長因子)は、アポトーシスを抑制し、細胞の分化増殖作用を持つ重要な成長因子の1つで、骨密度上昇、筋肉細胞の増殖、蛋白同化、糖代謝改善、降圧、炎症抑制、認知機能改善、育毛、免疫機能活性化などの作用を示すことが知られています。

 本年、秋田市で開かれた第59回日本温泉化学大会で、名古屋市立大学大学院生体防御学分野の岡嶋研二教授らのグループが、動物実験とヒト血中IGF-1値の測定から、温泉入浴により多くの臓器でIGF-1値が上昇する可能性があると報告しました。

 これまでに、同グループは知覚刺激により組織IGF-1の産生が亢進することを解明しています。知覚神経刺激は温熱や酸性環境で増強することから、酸性の温泉入浴により全身の皮膚に分布する知覚神経が刺激されIGF-1が亢進し、結果として高血圧や糖尿病、消化性潰瘍、関節リウマチなどに改善効果が期待できます。

 このような機序が、今まで知られている温泉の効果発現に大きく関与している可能性が示されました。

<岩盤浴の効果>

 岩盤浴は赤外線を放出する岩盤に横たわり温熱効果を期待するもので、室温40℃前後、湿度60〜80%の環境で、身体への負担が少なく、血液循環の改善や発汗促進などの作用があります。

 岩盤浴での汗はサウナに比べて伝導率が低下しており、またpHの上昇が抑制されていることから、再吸収が行われている可能性が示唆されています。

 また、岩盤浴での前腕内側と足背部の血流量の変化を検討したところ、前腕内側では5例中4例、足背部では全例で血流量の増加がみられました。

 身体の深部温と表面温度はいずれも増加し、深部温が高い例ではより高い表面温と血流量の増加が認められました。

 また放射特性が生理的に影響を与えている可能性も考えられています。(法政大学工学部物質化学科)



*アトピー性皮膚炎に対する効果

 アトピー性皮膚炎患者に対する温泉・水治療の効果について、263例を軽症、中等症、重症の3群に分けて検討した結果、軽快例は軽症群で80%、中等症群で76%、重症群では59%

 治療期間は軽症例で2〜3ヶ月、中等症で3〜6ヶ月、重症例では半年〜2年でした。(岩手県河南病院の研究報告)

{参考文献}メディカル・トリビューン 2006.10.12


<医学トピックス>    原子力発電災害とヨウ素剤 はこちらです。
 

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