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<<薬物相互作用連用語集>>
相互作用による薬物濃度の変化がどの薬物でも直接的に薬効または毒性の変化と結びつくわけではないことは強調されねばなりません。
薬物動態上の相互作用が臨床的に意義のある薬物はその薬効または毒性が血液中薬物濃度(体内薬物量)と密接に関係し、更に相互作用による血液中薬物濃度変化が重篤な臨床的問題(腎障害など)に結びつくものに限られるのです。
たとえ相互作用により血漿中濃度が2倍に増加しても、その薬物濃度−効果関係が極めて平坦であれば、何ら薬効の変化または新たな毒性の発現として感知され る変化は生しません。ですから、そのような薬物であれば薬物相互作用は全く臨床的に問題とならなのです。(明治薬科大学薬物治療学 越前宏俊M..D.Ph.Dの書かれた記事;JJSHO.200.9より引用.)
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消化管吸収過程での相互作用
出典:JJSHP
2000.5
日常臨床で最も繁用される薬物与薬経路は経口です。従って、複数の薬物が同時期に消化管内の溶液中に高濃度で共存する機会は多いのです。
薬物の消化管吸収は、ほとんどの場合受動的拡散機構です。ですから同一薬物でも非イオン型の方がイオン型よりも一般に吸収が良好で、消化管内薬物のイオン化率は薬物固有のpKaとその薬物が溶解している消化液のpHにより支配されます。
弱酸薬のアスピリンなどでは制酸剤などの併用により胃内のpHが上昇するとイオン型が増加するため、吸収速度が低下することがあります。また、消化管運動の変化を介する吸収の相互作用も知られています。メトクロプラミド(プリンペラン)は消化管蠕動を亢進させ、胃内滞留時間を短縮する薬理作用を持ちます。従って、小腸が主要な吸収部胃であるアセトアミノフェンなどの薬物の吸収速度はこの薬物を併用すると促進されます。
一方モルヒネなどの腸管蠕動運動を抑制する麻薬系鎮痛薬は抗不整脈メキシレン(メキシチール)の吸収を障害し作用の減弱を生じたとする報告があります。しかしこれらの相互作用の吸収過程への影響は吸収速度の低下または増大であり、絶対的な吸収量の変化は少ないため大きな臨床的影響を引き起こすことはほとんどありません。
一方、消化管内で異種薬物間の物理化学的性状により薬物間の結合・複合体形成・吸着などの機序により薬物吸収過程に障害を生じることがあります。
たとえば、水酸化アルミニウムなどの制酸剤をいくつかのニューキノロン系と併用すると消化管内で両薬物がキレートを形成し、後者の消化管吸収が阻害されます。このような例ではニューキノロンの抗菌作用が全く発揮されないことになり重大な臨床的影響が生じる可能性があります。
この場合相互作用は 関係する両薬物が同時期に消化管内に高濃度存在することが原因ですので、両薬剤の与薬間隔をあけることで相互作用の発現を回避できます。
また、相互作用発現の程度は薬物により異なるので、患者の服用する「ニューキノロン薬物固有のデータに基づいて相互作用の意義を考慮した上で医師に警告を発しなければなりません。
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併用禁忌・併用注意の考え方
2010年9月15日号 No.529
ただし、医師がその併用が患者にとってメリットがあるとエビデンスに基づいて判断し、患者に対して併用禁忌である旨やそれにもかかわらず併用する場合のリスクとメリットをきちんと説明し、患者も併用することを希望した場合は、例外的に併用が可能になるケースがあります。
{参考文献}薬局 2010.7
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<併用禁忌の例外的使用>
併用禁忌の薬剤同士を例外的に使用する場合には、説明文書の交付、患者からの同意書の取得、十分なカルテ記載などしかるべき手続きを踏む必要があります。
<原則禁忌>
原則併用禁忌は、特段の理由がない限り併用してはならないが、どうしても必要なケースでは、適切な対処やモニターのもとで使用するのなら医薬品の不適切使用にはあたりません。
<併用注意>
併用注意は、必ずしも併用しないことを薦めるものではありません。もちろん、併用してよいと保障するものでもありません。あくまで、「臨床上注意を要する」として、注意を喚起しているにすぎません。したがって、併用注意の組み合わせが処方された場合、薬剤師はその併用が適切か否かをケースバイケースで判断する必要があります。
併用注意薬剤の併用に関しては、その適否を判断するための情報は、大きく2つに分けることができます。
1つは、その組み合わせが一般的にどの程度のリスクを含んでいるかということと。もう1つは、眼前の患者の治療に、そのリスクを評価するために必要な情報です。
* 一般的リスク判断
併用禁忌、併用注意という記載は、必ずしも科学的根拠に基づいて設定されているわけではありません。
日本や海外の添付文書やさまざまな成書、データベース等で相互作用のリスク分類が試みられています。このため。相互作用の一般的リスクを判断するには、医薬品添付文書の記載のみにたよることなく、まずこうした複数の3次資料を利用し、総合的にリスクを判断する必要があります。
*個々の患者でのリスク判断
前述の相互作用リスクはあくまで平均的なリスクで、実際には相互作用の程度は十人十色です。文献に記載されているリスクをそのまま眼前の患者のリスクと考えることは危険です。
相互作用の大小に個人差をもたらす要因はさまざまで、また同じ程度の相互作用であっても治療上許容できるか否かは異なります。
・患者の年齢、病態、生理遺伝的条件
たとえば、先天性QT延長症候群(LQTS)の患者では、併用禁忌でなくとも、QT延長が報告されている薬剤を複数併用することは控えるべきです。逆にCYP2D6の酵素活性を持たない患者であれば、CYP2D6の疎外を介した相互作用は生じないと考えられます。
果物ジュースとOATP
医薬品と相互作用を起こすため注意が必要な食品の代表として、グレープフルーツジュースがあります。様々な医薬品でグレープグレープジュースととの併用により血中濃度が上昇することが知られています。
小腸上皮細胞にはチロクロムP450(CYP)が発現していて、基質薬物を代謝することで薬物の消化管吸収を阻害しています。グレープフルーツジュースはCYP3A4を阻害し、CYP3A4基質薬物の血中濃度を上昇させます。
一方、小腸上皮細胞には、基質薬物を消化管管腔から細胞内へ取り込む働きをするトランスポーターも存在します。小腸上皮細胞に発現する取り込みトランスポーターとしてOATP(organic anion-transporting polypeputide)があります。
OATPは有機アニオンを基質とする取り込みトランスポーターです。グレープフルーツジュース、オレンジジュース、アップルジュースはOATPを介した基質薬物の細胞内への取り込みを阻害することが報告されています。
◎ アレグラ錠と果物ジュースの相互作用
アレグラ錠を水で服用した場合と比較して血中濃度は、グレープフルーツジュースでは67%、オレンジジュースでは72%、アップルジュースでは77%低下しました。(添付文書には未記載)
現在のところ、実際に報告された症例はありませんが、果物ジュースに含まれる成分の含量は品種、季節、産地などによって異なるため、摂取するジュースによって阻害の程度が異なると考えられ、今後このような症例が報告されるかもしれません。
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