読み込み中

 

しばらくお待ち下さい。

     

無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学 

 

 


 

メインページへ

乳汁漏出症(薬剤による)

1989年9月15日号 No.51    薬剤Q&A

 消化性潰瘍の治療を受けたり、向精神薬を服用している婦人では、しばしば乳汁漏出が認められたり、同時に月経異常を伴うことがあります。これは服用した薬剤が副次的に視床下部から下垂体系に作用してプロラクチン(PRL)の分泌を促進するためで、ほとんどの例は薬剤を中止すると軽快します。

男性でも乳房が張るなど症状が現れることがあります。

プロラクチン分泌を促進する薬剤

血圧降下剤:レセルピン、アルドメット

向精神剤:コントミン(ウインタミン)、メレリル、セレネース

三環系抗うつ剤:トフラニール

消化器用剤:ドグマチール、プリンペラン

ホルモン剤:エストロゲン、ピル(ドオルトン)

など



RCA
Root Cause Analysis
根本原因分析

医療事故防止

 従来の事故防止対策では、事故の当事者と事故の直接原因に目が向けられことが多かった。しかし、医療事故は医療従事者の能力不足のみならず、患者や医療情報へのアクセスや病院のマネージメントの問題(標準化、コミュニケーション、監督、人員数など)に起因していることが、最近の事故に関する研究から明らかにされている。
すなわち、病院の構造的欠陥が医療事故の根本的原因、真に機能する事故予防システムを確立するためには、事故の根本的な原因を把握する必要があり、これをRoot Cause Analysisと呼ぶ。

 薬剤事故の予防対策に求められることは、組織全体として取り組むこと、副作用のみならず、事故に関する情報の収集システムを構築すること、得られた情報を院内の改善アクションに繋がるようなRoot Cause Analysisを行うことである。

今、医療機関にもとめられているもの。

・危機管理、組織の改善
・リスクマネージメント部門の設立
・エラーを誘発させないシステム、エラーを検出して訂正できるシステム


交叉反応性抗原

出典:ファルマシア 2000.3

 即時型アレルギー反応は、IgE抗体による抗原分子の認識というキーステップに続く、一連の化学反応の結果です。ある抗原分子には、それに特異的な抗体が結合します。しかし抗体は、抗原分子全体を認識しているのではありません。

 抗体の可変領域は、抗原分子表面の限られた構造部位を認識して結合します。抗原-抗体反応の特異性を決定するこの局所構造は、エピトープと呼ばれます。

 ここで、2つの異なる抗原分子が、共通なエピトープを有すると仮定します。すると、抗体が両者を区別できない可能性が出現します。この現象が、交叉反応の基本的な原理となります。

 多くの植物細胞あるいは動物細胞に共通して含まれ、幅広い交叉反応性の原因となるようなアレルゲンは、パンアレルゲンと呼ばれます。現在のところ、進化の過程で保存されてきた酵素や結合性蛋白質が、パンアレルゲンになるのではないかと推測されています。

 酵素や結合性蛋白質の機能発現に重要な構造部位は、突然変異による変化を受けることなく、種の枠を越えて保存されている可能性が高く、このような構造部位がIgE抗体のエピトープとなった場合に、幅広い交叉反応性が出現するというわけです。

 代表的なパンアレルゲンとして、プロフィリンという蛋白質が挙げられます。プロフィリンは、真核生物が共通に持つアクチン結合性の蛋白質です。花粉症の患者が様々な果物、野菜に対して交叉反応性を示す1つは、プロフィリンが共通アレルゲンとして作用していることです。

 一方、カルシウムを結合する性質を有する蛋白質群も、進化の過程で保存されてきた部分結合を持っており、パンアレルゲンとなることが明らかにされています。


T細胞の分類(サイトカインによるCD4)

出典:医薬ジャーナル 2000.2

 Th0細胞はnaive T細胞であり、抗原刺激によって、Th1,Th2細胞に分化します。その産生するサイトカインは、両者に共通するIL-2,IFN-α,IL-4ですが、それがTh1,Th2細胞に分化すると異なったサイトカインを産生するようになります。

 T細胞はその免疫反応によって生体防御に働くが、同時に組織障害性にも働き、生体防御の面についてみれば、Th2細胞は遅延型過敏反応で代表される細胞免疫反応によって、またTh1細胞は特異抗体を産生し、液性免疫反応によって生体防御作用を発揮します。

 T細胞による組織障害ではTh2細胞はアレルギー疾患、全身性自己免疫疾患の病態を惹起します。T細胞による組織障害ではTh2細胞は移植片拒絶、臓器特異的自己免疫の病態、Th1細胞はアレルギー疾患、全身性自己免疫疾患の病態を惹起します。

 RA(慢性間接リウマチ)の滑膜炎、血管炎症候群では、Th1細胞の反応が亢進しており、Th1サイトカインの過剰産生があること、自己抗体の過剰産生がみられるSLE(全身性エリテマトーデス)では、IL-10産生亢進がありますが、IL-12,IL-2の産生は低下しているという事実はそのことを指示するものです。

 このT細胞サブセットの考え方のもう1つの特徴は、2つのT細胞サブセットが産生するサイトカインによってその分化を促進的にも抑制的にも働くことが明らかにされたことです。


ES細胞

朝日新聞 2000年5月19日

ヒトの胚性幹細胞

<ES細胞を使ってパーキンソン病などの治療>

 パーキンソン病は、神経細胞が変性して抜け落ち、神経伝達物質のドーパミンが不足し、振るえたり、筋肉がこわばったりする病気です。

 ES細胞を神経細胞に変身させて、失われた働きを補うという試みがなされています。

 ES細胞は、あらゆる臓器や組織を作る細胞になる能力を秘めているとされています。そのため「万能細胞」と形容され、もし自由にコントロールできれば、組織、臓器を再生できるかも知れません。

 その一方、ES細胞は分からないことばかりで、どういう性質を持っているのかなどの正体を突き止める研究は、応用への取り組みに比べて圧倒的に少ないとのことです。

 受精卵の分割がある程度進むと、胎児に育つ「内部細胞塊」と胎児を支える胎盤になる「栄養外胚葉」に分かれます。この段階で内部塊の細胞を取り出し、特定の条件で培養したものが、ES細胞です。

 自然のままなら、臓器や組織を作る細胞になるのに、ES細胞は変わらず自己増殖を続けるのは何故かを追求したところ、ネズミのES細胞が自己増殖を続けているときだけ働く遺伝子が見つかりました。この遺伝子の働きを抑え、蛋白質を作らなくさせると、自己増殖を止めて栄養外胚葉の細胞になりました。働きを普通の1.5倍以上に高めてみると、今度は胎児の体を作る細胞になりました。

 「不足しても過剰でもだめ。」この遺伝子の働き方の微妙な調節が、変身の秘密と思われます。
 この遺伝子は、自然な発生のある段階で、わずかな間は働いて、細胞が変わらないようにストップをかけます。大部分の細胞ではすぐに働きが消えてしまい、いろんな臓器や組織になっていきます。ところが、生殖細胞を含む始原生殖細胞など、わずかな細胞では働きが続いていくのです。

 始原細胞とES細胞の共通性が多く見られるとのことです。

胚性生殖細胞(EG細胞)

 動物のEG細胞から精子や卵を作れるのではないか?
 実現すれば畜産など、応用範囲は広がのかもしれません。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

イーエスサイボウ
ES cell
同義語:胚幹細胞embryonic stem cell

 胚幹細胞とも呼び,胚盤胞blastocystの内部細胞塊より樹立された未分化な株化細胞。

 胚盤胞表面の栄養外胚葉細胞を免疫外科的に融解すると,内部細胞塊だけが分離される.これを未分化な状態で継代し,樹立された細胞株がES細胞である.理論的にはすべての哺乳動物から樹立可能であるがマウス以外では成功していない.ES細胞を初期胚に注入しキメラマウスchimera mouseを作製すると,生殖細胞を含むすべての細胞に分化する.これを全能性あるいは多分化能と呼ぶ.この全能性を保持した状態でin vitroで培養できることがES細胞の最大の特徴である.全能性を保つには未分化状態を維持することが重要であり,分化すると生殖系列に寄与しない.生殖系列のキメラマウスを交配すると,ES細胞由来の子孫をつくり出すことができるため,遺伝子ターゲッティング(→ターゲッティング)などによりあらかじめ特定の遺伝子を操作しておけば,任意のノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを作製することができる.


キメラ

 2個以上の遺伝的に異なる個体に由来する組織,細胞,核,染色体,遺伝子などを含む複合個体を意味する.その語源はギリシャ神話に登場する頭がライオンで体がヤギ,尾がヘビである動物「キメラ」に由来するモザイクも同様の現象を意味することばとして使用されるが,モザイク個体は1つの受精卵に由来し,キメラは2つ以上の受精卵による複合個体である点で両者は区別される.現在では哺乳類の胚を用い,キメラ動物を作製することが可能となっている.

【キメラ】ギリシア神話に出てくる、ライオンの頭、ヤギの体、ヘビの尾をもつ怪物。生物学では、遺伝的に異なる二つ以上の個体の細胞が混ざった動物のことをさす。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
キメラ抗体

 抗体での治療は、古くは血清療法に始まり、その後、免疫グロブリン製剤が多用されるようになりました。1975年にハイブリドーマ(融合細胞)技術の導入により、ターゲットに対する特異性が高い均一な抗体(モノクローナル抗)が大量に得られるようになりました。

 しかし、ヒトへの抗原性により治療薬への応用は限られていました。

 1980年代に入り遺伝子工学的手法が発展したことにより、ヒト/マウス キメラ抗体、ヒト化抗体が作られるようになり、マウス抗体のヒトへの抗原性が低減されました。現在、抗体のターゲットとなる遺伝子が続々と解明され、抗体医薬はバイオ医薬品開発の1/3を占めるとも言われています。

 マウスモノクローナル抗体の定常領域をヒトに置き換えたものがヒト/マウス キメラ抗体で、超可変領域(CDR)周辺のみを残して可変領域をヒトに置き換えたものがヒト化抗体です。

 それらの抗体は語尾にmab(monoclonal anti-body)が付けられています。

 出典:日本病院薬剤師会雑誌 2002.4等

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆米で複合生物「キメラ」の特許申請

 米国の細胞生物学者が、体の一部は人間で一部は動物という複合生物「キメラ」を作る方法に関する特許を申請したと報じた。同紙によると、この学者は人間と動物のキメラは生命倫理に反すると考えている。それでも申請に踏み切ったのは、特許をおさえることで、他の研究者がキメラづくりに乗り出すのを封じるためだ。たとえ特許が認められない場合も、裁判所に訴えて論争を起こせば、生命の操作の商業化に歯止めがかけられると期待しているという。

 特許を申請したのは、ニューヨーク医科大のスチュアート・ニューマン博士。米国では人間に関する特許は取れないが、がん遺伝子を組み込んだマウスなど、人体を構成する要素をわずかに入れた動物に関する特許はすでに認められている。博士が恐れているのは、研究の進歩とともに許容範囲がなし崩しに広がり、人間の細胞、組織、器官を持つような複合動物までが特許の対象になることだという。

 博士が申請した特許は、人間の胚とサルの胚を混ぜたうえ、人間かサルの代理母の子宮に移して育てる技術に関するもの。人間とサルのキメラを作り出すのは極めて難しいとみられるが、羊とヤギ、ニワトリとウズラなどの異種間キメラが誕生した例もあり、不可能と決めつけることはできないという。

 
(1999年4月2日20:44)


ヒョウモンダコ

学名:Hapalochlaena maculosa

出典:1998年11月 6日、日本中毒情報センター

 大阪湾で毒をもつヒョウモンダコが生息していることが、確認されました。


(平成10年11月6日付け 朝日新聞朝刊)

 ヒョウモンダコは体長10cm程度の小型の美しいタコで、熱帯、亜熱帯のサンゴ礁の海に広く分布しています。
 通常は、褐色の帯状の模様を持っていますが、興奮すると青く光る斑紋が浮きでるため、その美しさに引かれて手をだし、かまれることがある。

 過去にはオーストラリアやニュージーランドでの死亡例が報告されているが、最近の記録では事故件数も少なく、死亡もまれであると記載されている。

--------------------------------------------------------------------------------

[毒成分と作用]

 主な毒成分はテトロドトキシンで、神経毒である。
(過去にはマクロトキシン(Maculotoxin)と呼ばれたこともある)

 神経筋遮断作用により、呼吸麻痺によって死亡する。

 後部唾液腺には、ヒスタミンやセロトニンなども含有される。


--------------------------------------------------------------------------------

[症状]

 かまれた痛みを感じない場合も少なくなく、出血などの傷と症状の発現で気付く場合もある。かまれても必ずしも毒が注入されるとは限らず、症状が発現しない場合もある。(5 mm以上深くかまれると、毒が注入される率が高くなる。)

 かまれると、数分後から唇、顔や首のしびれを感じ、めまい、言語障害や嚥下困難が生じる。

 目のかすみや散瞳など視力障害も報告されている。

 続いて急激に脱力感や嘔吐、呼吸困難が発現する。

 重症の場合には15分程度で呼吸麻痺が進行し、90分以内に呼吸麻痺により死亡する。(解剖所見で、胸膜うっ血が死因とされている。)

 24時間生存すれば、予後はよいと言われる。

 じんましんなどのアレルギー症状も報告されている。

--------------------------------------------------------------------------------

[処置]

 応急手当

 青いリングのついたタコにかまれた場合、患者が水にいる場合にはすぐに引き上げる。
呼吸管理が必要なので、すぐに病院に運ぶ。

毒を絞りだし、流水であらうことは効果があるが、毒を吸引することは非常に危険なので、医師が看護婦がそばにいる場合に行う。

吐物を気管につめて窒息を起しやすいので注意。(救急隊や医師の指示に従う)

 治療
 
 かまれた場合には、症状がなくても6時間は入院させて観察する。
(現実には、病院搬入時にすでに症状が出ている場合がほとんどである。)
6時間経過観察後、症状の発現がない場合には、退院させてよい。

 解毒剤、拮抗剤はない。

 通常、患者は呼吸不全を来たしている場合が多いので、気管内挿管し、人工呼吸を行うなど、呼吸管理を十分に行う。呼吸循環管理が主である。


Churg-Strauss症候群

チャウグ・シュトラウス症候群

アレルギー性肉芽腫性血管炎

 ChurgとStraussによって報告された比較的まれな原因不明の全身性血管炎で、アレルギー性肉芽腫性血管炎とも呼ばれます。気管支喘息の既往、末梢血と組織中の好酸球の増加、壊死性血管炎に基づくと考えられる多臓器症状を主徴とする疾患です。

 本症候群は、1980年代から日本でも症例報告が年々増加し、その存在が認識されるようになった疾患ですが、血管炎全体の1.3%を占めるにすぎません。また、本症候群の多くの症例で重症の喘息が先行しますが、気管支喘息患者全体では約50000人に1人発症すると考えられています。発症年齢は20〜40歳が多く、男女差はほとんどないとされています。

 本症候群は、組織学的には中小動脈や細静脈の壊死性血管炎で、血管壁内や血管周囲に壊死性の肉芽腫が認められ、組織への好酸球浸潤が著明です。臨床的には、通常、難治性の気管支喘息や他のアレルギー性疾患発症数ヶ月から数年後に出現します。

 血管炎に伴う臓器病変として、多発性単神経炎、皮下結節、紫斑、消化管出血、狭心症、心不全、間質性肺炎、関節炎などや発熱、体重減少などの全身症状が見られます。検査所見では、著明な白血球増多と好酸球増多、および血清IgEの上昇がほとんど全例に認められます。

<治療>

 副腎皮質ステロイドの大量療法を初期に開始すれば有効なことが多いのですが、多発性単神経炎などによる日常動作障害を残す例もあります。難治例では、免疫抑制剤を併用します。


* ベコタイド、フルタイド、アルデシン吸入の重要な基本的注意より

 本剤を含む吸入ステロイド剤使用後に、潜在していた基礎疾患であるChurg-Strauss症候群にみられる好酸球増多症がまれに現れることがある。この症状は通常、全身性ステロイド剤の減量並びに離脱に伴って発現しており、本剤との直接的な因果関係は確立されていない。


 本剤の使用期間中は、好酸球数の推移や、他のChurg-Strauss症候群症状(しびれ、発熱、関節痛、肺の浸潤等の血管炎症状等)に注意すること。

 Churg-Strauss症候群は、気管支喘息の既往、末梢血と組織中の好酸球の増加、壊死性血管炎に基づくと考えられる多臓器症状を主徴とする疾患である。


<ベコタイド、フルタイド>

 本剤を含む吸入ステロイド剤投与後に、潜在していた基礎疾患であるChurg-Strauss症候群にみられる好酸球増多症がまれに現れることがある。この症状は通常、全身性ステロイド剤の減量並びに離脱に伴って発現しており、本剤との直接的な因果関係は確立されていない。


 本剤の投与期間中は、好酸球数の推移や、他のChurg-Strauss症候群症状(しびれ、発熱、関節痛、肺の浸潤等の血管炎症状等)に注意すること。


<オノン、キプレス>

 本剤を含めロイコトリエン拮抗剤使用時にChurg-Strauss症候群様の血管炎を生じたとの報告がある。これらの症状は、おおむね経口ステロイド剤の減量・中止時に生じている。本剤使用時は、好酸球数、血管炎症状(しびれ、発熱、関節痛、肺の浸潤等)などの推移に注意すること。

<アコレート錠>

 本剤を含めロイコトリエン拮抗剤使用時に、紫斑、肺症状の悪化(肺の浸潤等)、心臓合併症(心筋炎等)、ニューロパシー等のChurg-Strauss症候群様の血管炎が生じたとの報告がある。


柴朴湯とパーキンソン病

出典:治療 2000.2

柴朴湯:喘息の体質改善や不安神経症に用いられている。

柴朴湯がL-dopaの副作用の改善や内服薬の減量を主目的としてパーキンソン病治療薬との併用が試みられている。

柴朴湯の効果の機序
1)消化管吸収能改善によるL-dopaの血中濃度の安定
2)厚朴による骨格筋緊張の中枢性ドパミン作動性調節等が推察される。


フレー症候群

月刊薬事 1998.11

 フレー症候群は局所の発汗と咀嚼時の紅潮が特徴的なまれな疾患であり、耳下腺の外科的処置の後遺症として知られています。

 このメカニズムとして、耳の神経節から副交感神経節後神経線維の異常な再生によると考えられています。

 治療法として、外科的処置、局所的な抗コリン薬および全身的な抗コリン薬、局所的なボツリヌス毒素の注射があります。最も一般的な治療は、局所的な抗コリン薬とグリコピロール酸もしくはジフェマニル硫酸メチルで、50〜80%の患者が完全あるいは部分的に症状を抑えられます。

 シスプラチンを基本とした化学療法で両側性のフレー症候群が発生


ギテルマン症候群

バーター症候群

治療 増刊号 1999.1

高血圧誘発因子
単一遺伝子の異常
バーター症候群とその類縁疾患

 家族性の脱水・低K血症、低Cl血症。代謝性アルカローシスをとる病態としてバーター症候群、さらに低Ca尿症・低Mg血症を来すギテルマン症候群があります。

 フロセミド感受性はNa+、-K+-2Cl-共輸送体(NKCC)はヘンレの上行脚でのNaCl吸収に関与しています。また管腔側にあるK+チャンネルや血管側のCl-およびNa+チャンネルと協調してNKCCは機能を発揮します。

 バーター症候群は、管腔側にあるNa+再吸収型のNKCC2の変異による機能低下や、K+チャンネルであるROMK1やCl-チャンネルであるCLCNKBの遺伝子で変異で生じます。一方サイアザイド感受性はNa+-Cl-共輸送体(TSC)はNKCCのスーパーファミリーの一員であすが、この遺伝子の変異により生じるのがギテルマン症候群です。


ラブソン・メンデンホール症候群

妖精症:leprechaunism

インスリン受容体異常症A型・B型、脂肪萎縮性糖尿病

 インスリン受容体異常症は、1976年にKahnらによって「インスリン抵抗性と黒色表皮腫を特徴とする症候群」と定義された疾患でわが国では100例未満の、極めてまれな疾患

病因的には

A型:インスリン受容体の遺伝子変異によりインスリン受容体が減少したり、インスリン受容体機能(インスリン結合やチロシンキナーゼ活性)が低下する。
B型:後天的に産生されたインスリン受容体抗体によりインスリン作用に支障を来す。
に分類される。

妖精症:高度なインスリン抵抗性と特徴的な臨床徴候を示し、その原因がインスリン受容体遺伝子の変異によることが示されている。(アイルランドの伝説に出てくる小さい妖精に外見が似ている。体重増加不良、特徴的顔貌、外陰部肥大、多毛、糖質代謝異常、35%は両親の近親相婚)


食物繊維と薬物の相互作用
 

 食物繊維とは、「消化酵素で消化されない食品中の多糖体」と定義されています。食品中の食物繊維を大きく分けると、水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維とに分けることができます。(食物繊維の作用は一義的には腸管腔内での作用で、ヒトの体内での変化は二次的なものといえます。 )

 食物繊維を取ると脂肪や糖の吸収を遅らせるあるいは減らすことが知られており、これを応用して高脂血症や糖尿病の治療に食物繊維が使われています。しかし、これは逆に食物繊維が薬の吸収や血中濃度に影響を与える恐れがあると思われます。
 
 
<線維の分類 線維の種類 期待される効果>

1.水溶性食物繊維〜 ペクチン質、粘質物、海藻多糖類、化学修飾多糖類等

   *食後の血糖降下作用、血中コレステロール降下作用

2.水不溶性多糖類〜 セルロース、ヘミセルロース、水不溶性ペクチン質リグニン、キチン等

   *長期的血糖コントロールには十分な効果、便秘の治療

 
 食物繊維の種類によって、その効果に差が見られるのは、食物繊維の持つ粘度と水分を取り込み膨潤する性質(保水性)の高さによるとされています。その上で、更にイオン交換の性質を有していれば、より効果があるとされています。
 
 高粘度の食物繊維は、食べた食物と食物繊維の混ざりがよく、胃からの排出が遅延するとともに小腸上部からの栄養素の吸収も遅延します。その結果、食後の血糖上昇が抑制されるとされています。これ以外に小腸粘膜表面に存在する水の層(Unstirred water layer)を、更に厚くしたり、食物繊維の存在によって栄養素が多少希釈され、吸収が遅延する作用も考えられます。
 
 食物繊維は食後の血糖値上昇抑制作用以外に、血中コレステロール降下作用も兼ね備えています。これは食物繊維の使用により、結果的に引き起こされるコレステロールの体外への排出促進作用によるものです。食物繊維、特に可溶性の食物繊維を食物とともに摂取すると、食物中の一部の脂肪とともに、小腸内に排泄されたコレステロール溶存胆汁酸を吸着し、糞便と共に体外へ排出すると考えられています。
 
 一方、食物繊維として特に効果が優れている可溶性食物繊維は、効果のみならずその好ましからざる作用にも注意しなければならなりません。
 
 可溶性線維は、胆汁酸の体外への排出を促進する作用があるため、小腸からの脂肪の吸収、脂溶性ビタミンの吸収も阻害されることが十分に推測されます。この他、吸着やイオン交換作用により他の重金属、ミネラルの吸収にも影響することが考えられる等の報告がされています。
 
(以上、食物繊維の吸収阻害、吸着、イオン交換等の作用を考えた場合、内服する薬剤との併用がされた場合、食物と同様影響されるであろうことは十分に推定できます。 )
 
 腸管内で胆汁酸と結合し、コレステロールの糞便中排泄を増大させるとされる陰イオン交換樹脂製剤であるコレスチラミンの添付文書では、「脂溶性ビタミン(A,D,E,K)及び葉酸塩の吸収阻害が起こる可能性があるので、長期投与の際にはこれらの補給を考慮すること」の記載がされており、食物からのこれらの吸収阻害は、これらを薬物として投与した場合も同様に影響されることが推測されます。
 
 また、コレスチラミンの相互作用として、「フェニルブタゾン、ワルファリン、クロロチアジド等の酸性薬物、また、テトラサイクリン、フェノバルビタール、甲状腺及びチロキシン製剤、ジギタリスのような薬物が同時に経口投与された場合、それらの吸収を遅延あるいは減少させる可能性があります。他の薬物の吸収阻害を避けるために、本剤投与前1時間若しくは投与後4〜6時間以上、又は可能な限り間隔をあけて慎重に投与すること」等の記載がされており、特に可溶性の食物繊維の場合、同様の注意が必要であると考えられます。
 
 従って、摂取中の食物繊維が水可溶性か・水不溶性かを確認し、水可溶性の食物繊維を摂取中であれば、薬物服用時間と食物繊維の摂取時間の調整が必要です。
 
出典:クラヤ三星堂新報 2000.8.4(No.13) 

 

無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学もご覧下さい。