Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第926夜

プレジデントは本当に県民性が好き



 久しぶりにやってるなー、と思ったが、自分の文章を掘り返してみたら、前にプレジデントが県民性を取り上げたのは 2 年ちょっと、さらに 2 年弱なので、どうも 2 年に一回やらないと気が済まないらしい。今回も、監修はナンバーワン戦略研究所
「相手の出身地別『咄嗟に使える鉄板ネタ』辞典」。場が気まずくなったら、相手の出身地に応じて、話題を切り替えろ、という話。

 最初に方言がらみのところを取り上げる。一カ所しかないが、茨城である。「地雷ネタ・タブー」として、「茨城弁を気にしている人もいるので方言の話は避ける」と述べている。これの妥当性について確認してみる。
 に「NHK 全国県民意識調査」の結果をいるのだが、それによれば茨城は「自分の方言が好きではなく、方言が出ることは恥ずかしいと考えている」県である。1978 年の調査でも、1996 年の調査でもそういう結果が出ている。細かく言えば、1996 年には 1978 年に比べて「方言が好きでない」という回答の率が増えて、全都道府県を並べたときの順位が 35 位から 45 位に大幅ダウンしている。あれから 20 年弱経ってるんだが、今はどうなんだろう。
 で、茨城では方言の話題は避けた方がいい、というのは正しいとしても、別にそんなの茨城に限った話ではない。
 ちなみに、そういう傾向をもっている県は、ほかに栃木、福井、和歌山がある (1996 年調査)。

 誰が悪いのか、突っ込みどころ満載である。
 まず、「○○と△△は仲が悪いので触れてはいけない」の多いこと。47 都道府県のうち、他県相手や、県内の地域相互など、23 カ所、ほぼ半数でそう書かれている。日本人はそんなに仲が悪いのか。
「県西部と県東部は仲が悪いので互いをほめるのは禁物 (青森)」とある。これは「津軽の人に向かって南部をほめてはいかん」ということだろうと思うが、それ「互いをほめる」って表現で正しいのか?
「正直な人が多いだけにささいなウソも後で致命傷になる (三重)」とかいうのはわかるが、「『東京は住むところじゃありませんね』というのは嫌われる (東京)」…当たり前だ。誰だって怒る。内心思ってる人だって、よその人に言われたら気を悪くするぞ。プレジデントの読者はそんなことを言われないとわからないほど、コミュ障が多いのか?
 選挙ネタがタブーになっているのは、秋田・徳島・和歌山。「選挙好きが多い」という表現の真意がよくわからんが、普通、相当に仲良くならない限り選挙と宗教の話はタブー、というのはビジネストークの基本の筈だ。

「いまだに武田信玄ファンは多い (山梨)」「相変わらず西郷隆盛ファンは多い (鹿児島)」と、ご当地の英雄を軽んじる姿勢もひっかっかる。その癖、高知で坂本龍馬に触れていない。昔、歴史上の英雄の話がメインで「ちょんまげ雑誌」と呼ばれた雑誌とは思えない。

 やばい話題がお勧めになっている。怪我する人を減らさなければならない、という使命感のもとに大書する。
・弘前ではねぷた、と言っているが、人身事故があって今年は中止になっている。
・宮崎ではシーガイア、と言っているが、大型プールのオーシャンドームは解体が決まった。

 この二つは、今年に限っては大やけどする鉄板なので要注意である。俺はどっちも地元だからたまたま知ってるが、ほかにもあるんじゃないかって気がするなぁ。
 にしても、この 2 件はどちらも 8 月上旬に起こったことである。この 8/25 発売のプレジデントの校了はいつだったんだろう。

 秋田についてフォローしておくと、白神山地は県北西部にある。全県民がそれについて詳しいわけではない。青森のものだと思ってる節もある。すべる覚悟はした方がいい。
 学力テストが上位であることについても、小中学校で話を止めず、高等教育にまで触れてしまうと逆効果である。
 おだてに弱いのかどうかは知らない。少なくとも実感はない。

 ここで目にした雑学列挙。
・富山の公立高校にはプールがない
・長野の小学校でランドセルを使うところは少ない
・高知の座興「はし拳 (隠し持った箸の合計本数を当てる遊び。負けると一杯)」「べく杯 (底に穴が開いているなど、飲み干せないと置けない杯を独楽で指定して酒を飲みあう)」「菊の花 (人数分の盃に刺身のツマの菊の花を隠しておき、順番に盃を開ける。菊の花を引いた人は、それまでの開いている杯全部に酒を注いで飲まなければならない)」…土佐怖い。

 というわけで、何かと言うと金にかこつける傾向は相変わらずだし、ちょっとプレジデントは「鈍」しているような気がする。「貧」してるかどうかは知らないけど。




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