Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第60夜
NHK 全国県民意識調査より(4)
「この土地の言葉が好きですか」という質問に対する「はい」の率が高い順に並べた
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ときの順位が急上昇した府県を見てみよう。
大阪 | 12 |
広島 | 11 |
青森 | 9 |
山形 | 9 |
神奈川 | 9 |
長崎 | 9 |
岩手 | 8 |
高知 | 8 |
石川 | 7 |
奈良 | 7 |
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「嫌い」から離脱もしくは「好き」に加盟したグループが目立つ。神奈川は、「『はい』
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と答えた人が少ない」という判定の信頼度が低下、という形で「好き」に移行しつつあ
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ることが確認できる(注)。
逆に、順位低下の5傑。
東京 | 18 |
山口 | 14 |
新潟 | 11 |
茨城 | 9 |
山梨 | 9 |
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新潟が入っているのが気になる。71.6%→68.2% と、確かに 3% 弱の方言に対する支持率
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の低下があるとは言え、これでこんなに順位を落とすのは何故か。
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これは、前回の一覧を見てもらえばわかるように、支持率の最高値が 74.9% から 83.0%
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と 8% も増加しているからである。上位グループで順位を上げた道県のほとんどは、支持
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率が 5% 前後も増加しているため、この波に乗れないと、相変わらず支持率は高いのに
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順位が落ちてしまうことになる。したがって、順位の上下は参考程度にとどめておく必要が
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あるかもしれない。
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で、前にこのコーナーを騒がした東北・九州の田舎者連合の中で、その波に乗れずに
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順位を下げた県を見てみる。
| 順位低下 | 「はい」の率の増減 |
宮崎 | 3 | +1.4 |
佐賀 | 7 | +0.2 |
鹿児島 | 5 | -0.6 |
宮城 | 6 | -1.2 |
熊本 | 6 | -1.4 |
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仙台が政令指定都市になったばかりで都市化進行中の宮城は別として、どうも、九州の
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一角が崩れてきているようである。確かに、支持率の変動は、誤差と言ってもいいような
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微々たるものであるが、長崎と沖縄が 7〜8% も支持を増やしたのとは対照的だ。
次の質問は「標準語が話せなかったり、地方訛りが出るのは恥ずかしいことだと思いま
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すか」である。
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なお、昨年の調査では、質問の表現が「地方訛りが出るのは恥ずかしいことだと思いま
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すか」に変わっているので、注意が必要である。
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まずは、グループ間の異動。
「恥ずかしい」から脱出 | 沖縄、宮崎、熊本、高知、香川 |
「恥ずかしい」に転落 | 岡山、岐阜、石川、群馬、宮城 |
「恥ずかしくない」から脱落 | 北海道、兵庫 |
「恥ずかしくない」に加盟 | 奈良、千葉、埼玉 |
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動向の気になる、田舎者連合九州支部だが。
| 78 年 | 97 年 | 増減 |
佐賀 | 19.2 | 16.5 | -2.7 |
熊本 | 18.6 | 15.5 | -3.1 |
宮崎 | 20.2 | 14.6 | -5.6 |
鹿児島 | 25.1 | 16.5 | -8.6 |
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どこも、「恥ずかしいと思う」の率が低下している。宮崎・熊本などは「恥ずかしい」
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グループから脱出しているのである。ひょっとしたら、「好きだけど恥ずかしい」という
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コンプレックスを捨てつつあるのかもしれない。
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さて、田舎者連合東北支部。
| 78 年 | 97 年 | 増減 |
宮城 | 13.8 | 18.0 | +4.2 |
岩手 | 19.2 | 20.7 | +1.5 |
秋田 | 23.2 | 24.1 | +0.9 |
青森 | 22.2 | 22.8 | +0.6 |
山形 | 22.6 | 18.2 | -4.4 |
福島 | 25.1 | 18.5 | -6.6 |
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宮城が「恥ずかしいと思う」グループに転落した。これは、都市化の逆の影響だろうか。
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他は南北に分裂した形。秋田・青森は相変わらずである。
78 年調査と 97 年調査とで、この二つの質問に対する「はい」の率の増減を手がかり
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に4つのグループに分けてみたいと思う。
A.「方言が好き」が減り、「方言が恥ずかしい」が増えた
茨城、栃木、山梨、新潟、宮城、群馬、山口
方言を肯定できないグループである。
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新潟と宮城は、「方言が好き」グループに入っているとはいえ、今後の動向は予断を許
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さない。
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茨城・栃木・山梨のポジションは磐石か。
B.「好き」が減り、「恥ずかしい」が減った
鹿児島、熊本、愛媛、滋賀、長野、三重、埼玉、千葉、東京
やはり、鹿児島と熊本がいるのが気になる。
C.「好き」が増え、「恥ずかしい」が増えた
福井、秋田、青森、石川、岩手、岐阜、大分、北海道
「好きだけど恥ずかしい」グループである。九州がほとんど見当たらないところを見る
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と、やはり九州はコンプレックスから脱却しつつあると考えていいだろう。
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北東北3県は、「好き」も「恥ずかしい」も多い、典型的なコンプレックスグループで
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ある。これも磐石か。
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福井と岐阜は、「方言が嫌い」グループなので、a. への移籍も考えられる。
D.「好き」が増え、「恥ずかしい」が減った
和歌山、福島、富山、山形、島根、徳島、佐賀、岡山、広島、宮崎、愛知、香川、
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鳥取、沖縄、静岡、高知、長崎、福岡、兵庫、奈良、京都、大阪、神奈川
自信満々グループ。特に、京都・大阪は自身たっぷりである。
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和歌山・岡山は、「嫌い・恥ずかしい」グループなので、a.への移籍もありうる。
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奈良・神奈川は、「嫌い・恥ずかしくない」グループなので、b.への移籍はあり得ない
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ことではないが、双方共、「方言が好き」率の急増は注目するべきか。
なんと、もう1回続く。
注:「『はい』と答えた人が少ない」という仮定の信頼度が 99% から 95% に下がった。
《参考》
「NHK 全国県民意識調査より(1)」へ
「NHK 全国県民意識調査より(2)」へ
「NHK 全国県民意識調査より(3)」へ
「NHK 全国県民意識調査より(5)」へ
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