さて、もうちょっとデータをいじくってみることにする。
方言に対する感情と、住んでいる土地との間に関係がある、ということがわかったので、ダイレクトに「あなたは (その土地の名前) というところが好きですか」という問とクロス集計してみる。
A.住んでいる土地も方言も嫌い
*1
埼玉、千葉、愛知、福井
B.住んでいる土地は好きだが、方言は嫌い
和歌山、香川
C.住んでいる土地は嫌いだが、方言は好き
東京
D.住んでいる土地も方言も好き
北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟、長野、山口、愛媛、長崎、宮崎、熊本、鹿児島、沖縄
特徴的なのは C 群だろう。
「住んでいる土地が好き」という解答が少ない地域を上げると、
埼玉:67.5% |
千葉:72.6% |
東京:73.7% |
大阪:74.0% |
愛知:75.0% |
福井:75.6% |
山梨:77.7% |
茨城:78.1% |
岐阜:78.1% |
となる。東京近辺は圧倒的に人気薄である。ここにはないが神奈川も 37 位と奮わない。大阪・愛知・茨城と、大都市とその周辺が並ぶ。
*2
この中で、山梨と大阪が方言の好き嫌いで中間に来て、残る 4 県が A 群にある、ということは、
東京だけが特異だ、ということである。実際、他の集計結果でも、どうしても東京だけが孤立する傾向を見せる。
「標準語=東京弁」という信仰にのって圧倒的な有意を誇るだけに、他の項目の結果がダイレクトに反映する、ということではないか。
面白そうな項目がある。「流行遅れの物を着たとしても気にならない方ですか」という質問だ。なんとなく関係がありそうな気がしたのでちょっとやってみた。
A.流行遅れが気になる-方言が嫌い
栃木、埼玉、奈良
B.流行遅れが気にならない-方言が嫌い
岡山、広島、香川
C.流行遅れが気になる-方言が好き
東京
D.流行遅れが気にならない-方言が好き
北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟、長野、山口、愛媛、熊本、宮崎、沖縄
B 群で、これまであまり見かけなかった岡山と広島が入ってくる。このグループは、流行云々と方言とはあんまり関係ない、と考えているのだろう。
C 群を見ると、やはり東京が孤立している。
D 群は、
常連である。
A.流行遅れが気になる-方言が恥ずかしい
山梨
B.流行遅れが気にならない-方言が恥ずかしくない
北海道
C.流行遅れが気になる-方言が恥ずかしくない
東京
D.流行遅れが気にならない-方言が恥ずかしい
青森、岩手、秋田、山形、福島、香川、熊本、宮崎、沖縄
この辺になってくると、どうやらあんまり関係なさそうだ。D 群の東北・九州連合に香川が入ってくるのが目新しいくらいか。
集計結果をいくつか重ねると、なんとなくグループが見えてくる。
まず、最初に言ったとおり、
東京の孤立は決まりだ。
それと、東北・九州の
田舎者連合。
青森・岩手・秋田・山形・福島・熊本・宮崎・沖縄の 8 県は、もう見事なまでの同一歩調である。「
方言は好きだけど、それが出てしまうのは恥ずかしい。住んでる場所は好き。流行なんて関係ない」この 4 点でがっちりと結ばれている。
ここには書いていないが、グラフをプロットしてみると、
和歌山・香川が「
その土地は好きだが、方言は嫌いで恥ずかしい」という点で一致、「
その土地も方言も嫌い。でも方言は恥ずかしいとも恥ずかしくないとも思わない」という点で
愛知・千葉・埼玉がグループを組み、それぞれ似たような場所に集まってくる。
意外に静かだったのが、
京都と大阪。どちらも、標準語に匹敵するパワーをもった方言であり、パワーを持った地域であるのに、あまりクロス集計に登場しない。
というのも、大阪は、方言が好きかどうかの質問で、京都は、住んでいる土地が好きかどうかの質問で、真ん中くらいの順位になってしまって、どっちつかずだったからだ。
兵庫も土地の好き嫌いがはっきりしなかった。不思議なもんである。
大都市なら同じか、っていうとそうではなくて、政令指定都市で考えれば、
北海道・宮城・福岡はどっちかというと田舎者連合に与しがちである。
東京は孤立、
神奈川は東京を意識しすぎ、
愛知は郷土愛を得られず、
関西三都は詰めが甘く、
広島はほとんどの面でどっちつかず-まぁ、いろいろあるものだ。
関連のありそうな項目は他にもあるのだが、今回はここまでとする。
このクロス集計は意外と大変なのだ。
*1:
「方言が嫌い」というのは、正確には「『自分の地域の方言が好き』と答えた人が、他の地域に比べて明らかに少ない」という意味である。長ったらしくなるので、こういう表現に縮めた。他も同様である。(↑)
*2:
その次に福井と岐阜が来るが、他の項目も踏まえた分析では、福井県民の郷土意識は、市町村レベルでは強いが県まではあまりひろがらないこと、岐阜県民は個人主義的な傾向が強いことが述べられている。(↑)