Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第646夜

ALWAYS in Yuzawa



 堀北真希の映画のほうではなく、STARDUST☆REVUE のライブのほう。
 今回のツアーは小規模なのだが、それでも湯沢に来た。
 湯沢にあるコミュニティ局・FM ゆーとぴあの、開局10周年を記念してのイベントである。

 これはすごいことだと思う。
 コミュニティ放送局はサービスエリアが小さい。ということは、主たる収入源である広告を出稿する企業の数も少ないわけで、比較的、経営状態は苦しいところが多い。
 FM ゆーとぴあがどうかは知らないが、そういうところが一流アーティストを呼ぶ、というところがすごい。
 一方、スタレビ側も、よく来たもんだと思うが、FM ゆーとぴあは以前から、彼らがツアーで秋田市に来ると必ずインタビューを取りに来て紹介している。つまり気心の知れた中であるし、そもそもスタレビは、テアトロンというホールで知名度アップに貢献したということでさぬき市から感謝状をもらったりというようなことで割とローカルで意気に感じるということの多いバンドでもある。
 つまりどちらもオープン状態だったとでも言おうか。物事はそういうことで動くのであろうな。

 今回のライブでも特に方言ネタはなかった。
 秋田と言えば「なまはげ」ということで、「悪い子はいねがー」から、メンバーの子供の頃のいたずらについて語ったくらい。
 ベースの柿沼清史が、なまはげは湯沢ではなく男鹿だ、と根本要に突っ込みを入れていた。
 これで思い出すのは、7 年前の“Style”ツアーで、柿沼が「おが (あんまりである)」と「男鹿」をかけた洒落を言い、しかしこの二つは発音が違うため、洒落として成立しているとはいいがたく、滑ってしまった、という事件。事件なのか。
 今後、柿沼さんは男鹿担当ということで。

 ちょっと待て。7 年?
 そんなになるのか、“Style”が出てから。

 地名の入った曲でそこを入れ替えてご当地ソングにしてしまう、というのはスタレビに限らずよくあることだが、今回は「東京ブギウギ」を「湯沢」にしていた。
 スタレビには「銀座ネオンパラダイス」という曲があり、昔はそれを使うこともあった。
 デビュー当時、歌謡曲とジャズの中間の音楽、というようなことがコンセプトだったせいか (“STARDUST”はジャズの名曲から来ている) 歌謡曲を取り上げる事は多い。「天使の誘惑」というレパートリーもある。

 客の年齢層は高い。
 デビューの時期はゴダイゴよりも後なんだが、客の年齢層がゴダイゴよりも高く見えるのは、ゴダイゴがときにプログレっぽいカラーの曲をやったりする一方、スタレビがバラードのバンドと言われたりする、というような違いのせいだろうか。
 それに、昨年 11 月のゴダイゴ同様、地元でなんかコンサートやるらしいよ、というようなことで来た人も多かったようである。したがって、待ち時間の客の会話にはかなり秋田弁が登場する。俺の前に座っていた女性三人組はご近所の話で盛り上がっていた。
 とだけ書いて、具体的な内容を書かないのは、既に忘れてしまっているからである。

 しょうがないので、アルバム タイトルの“ALWAYS”から。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』によれば、「えじらぐ」「ひえひえ」「えっかだ」「えっしぎ」「えっちもかっちも」「とーし」「のっぺし」「のぺとろぐ」「まひまなぐ」「じったり」が「常に」「いつも」という意味だそうである。困ったことにどれも聞いた事がない。
『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』に当たってみると、「じょうたい」がある。これは想像がつくとおり「常態」であろう。
 また、「とろっと」「とろっぺじ」も見つかる。
 前者は、粘性のある液体が垂れる場合、ずっと同じ状態が続くことからの連想している。「とろっぺじ」の方もここに行き着くと考えられている。
 ほかの方言はどうかと思ったが、ウェブで検索すると「いつも方言で話している」というような文章ばっかりがひっかかってどうしようもない。

 一曲目は名曲「トワイライト・アヴェニュー」。
“twilight”は言うまでもなく「夕方の光」「黄昏」のことだが、「たそがれ」は薄暗くて顔がわからず「誰ぞ彼 (あれは誰だ)」と問うような状態から来た。「彼は誰 (かわたれ)」という言葉もある。
 英語の方だが、“twi-”は“two”で“half”のことである。光量が半分、ということ。
「黄昏」「夕方」でググったが、今イチおもしろい表現に突き当たらず。「たそがれ」にすると、山形で撮影した「たそがれ清兵衛」の話がやたらとヒットする。
 と、この調子で全曲、方言に絡めて、と思ったのだが、紙面がつきたのと、その方向にそそられる題名の曲がなかったので、この辺で。

 湯沢文化会館の音響は評判だそうだが、それって二階席がなくてかつ大きいからじゃないかな、とか思った。

 今年は、暖冬暖冬といわれつつ、雪はそこそこ降った。
 その日も、3 月も下旬だというのに吹雪になり湯沢横手道路は 50km/h 制限。
 そこを 80km/h で走っていたら後ろからあおられてしまった。どないやねん。




2002 “Style”についてはこちら
2003 “Heaven”についてはこちら
2005 “AQUA”についてはこちら
2006 “HOT MENU”についてはこちら
2008 “31”についてはこちら




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