“
Style”“
Heaven”に続いて、
STARDUST☆REVUE のコンサートにかこつけた文章である。
ネタばらしもありうるので、これからこの“AQUA”ツアーに参加する方はご注意いただきたい。
今回の会場は、
県児童会館。
市文化会館の 1188 人や
県民会館の 1839 人にくらべて、778 人と小ぶり。でもそのおかげか、番号としては端だったのだが、前に席がなくて足元が楽だった。
地元ネタはあんまり無い。
“AQUA”の中の「蛍」という曲は、根本 要氏が仁別に住んでいたときに旭川の蛍を見て着想を得た曲だ、とかそのくらい。くすぐりとして、
仁別レジャーランドとかあったじゃん、という話があったのだが、だから、そういうネタは一体、どこから仕入れてくるのだ。
あとは即興の川柳もあったが…ちょっとサブ過ぎるので紹介するのはやめておく。
さて、“AQUA.”
ご承知の通り、水のことである。潜水道具がアクアラング、水瓶座がアクエリアス。去年あたりまでポカリスエットの大塚がスポンサーについていたが、今年は無かったな。
秋田には「
あっこ」という形がある。幼児語で、実は俺自身は聞いたことないのだが、青森や岩手の一部でも言うらしい。
梵語の「閼伽 (アカ)
*1」を語源としていて、本来これは仏様に供える水だが、子供にその幼児を言いつけるときに使っていたものがいつのまにか子供が口にする水をさすようになったもの、と『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』には書かれている。
で、注目するべき記述は、ラテン語の“aqua”も「閼伽」から来たものだ、と。うおっ、秋田と“AQUA”がこんなダイレクトにつながっていようとは。
一方、『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』には、「
あっこ」は単独では立項されておらず、「
あまこ」からの変化であろう、ということになっている。「
あまこ」の方は「甘い」から来たのだろう、と。
ちょっと探した範囲では、「水」の俚言形はほとんど見当たらない。
沖縄方面で「
ミジ」になった形がある。
近畿から山陰にかけては、「
ぶ」系の語がある。京都で、「お茶漬け」のことを「
ぶぶづけ」と言うが、この「
ぶ」がお茶で、「水」のことをさす場合もある。「おぶう」あたりで検索すると見つかる。これくらいかなぁ。
秋田でも幼児語しかないところも考えると、あまりに基本的な語彙のため異形が残る余地が無い、ということだろうか。
ま、正直、検索と検討を途中であきらめた、というのもある。関係の無いブログがヒットするからである。なぜか。
それは、日記の一形態であるブログにはカレンダーが載っていることが多いから。「水曜日」の「水」を拾ってくるのである。『
言語』誌の 2 月号で、萩野 綱男氏と田中ゆかり氏が「インターネットは言語研究のツールになるか」というテーマで議論しているが、こういうスクリーニングはものすごく面倒になる可能性がある、ということで田中氏に一票。
東北では、「
うるがす」がやたらにヒットする。「水に浸しておくこと」などという説明があるからだ。これも説明がさまざまで、「水に浮かしておくこと」なんてのも見た。まぁ、洗い桶に茶碗を放り込んだら浮くのは確かだが…。
スタレビのコンサートに話を戻す。
ファンサイトの“
ONE & ONLY”での報告によれば、仙台公演では「
おだづ」が取り上げられた由。
これは、「ふざける」「はしゃぐ」というような意味で、仙台藩の領域、つまり宮城から山形や岩手の南部 (南部藩ではなく南側) にかけて使われる。尤も、ケンカのときの「
おだづなや!」が最も使用頻度が高い、というような話もある。
話が逸れるが、「
おだず」という形式で検索したら、「お
だずねください」というミスタイプが妙に多くてびっくりした。
スタレビのファン層は俺くらい、根本氏の表現を借りれば、昭和の中盤あたりに生まれた人、というあたりで、年寄りでもないが若くもない。その彼らが割と秋田弁を使っているのにちょっと驚いた。もちろん、友人同士ではあるのだろうが、ごく普通に秋田弁で会話がなされているのは意外だった。
で、吹雪の中を駐車場まで歩いていく途中に耳にした、「
リズム感悪くて飛べねがった (ジャンプできなかった)」という、とってもきれいな秋田弁が印象に残っている。この「きれい」は、正統派の、という意味ではなく、本当に音が美しかった。きれい過ぎて俺にはとても再現できない。
壁の全面を使ったライティングの「芸術」も堪能。
俺の前方には車椅子の人がいて、スタンディングになった瞬間、その人からはステージが見えなくなるのだが、係員がささっと走ってきて見える場所に誘導していた。その笑顔と動きにぎこちなさのかけらもない。アーチストって、そのアーチストだけでなりたってるんじゃないんだ、ということを再確認。
*2
根本氏はいつも、メンバー紹介のときに、ステージ上のメンバーに加えて、いわゆる「スタッフ」と、我々観客をコールした後で、“
We are STARDUST☆REVUE”と言う。この“We”は、言語学で言うところの“inclusive
*3”である。端っこに置いてもらえる、ということがとてもうれしい。
今月末、用事があって上京する。
中野サンプラザでの公演がちょうどあるのだが、時間が、その用事と思いっきりぶつかっているのだった。