Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第779夜

PAN PAKA パン



 こないだスーパーに行ったら、「きなこパン」というのが棚にあって、昔懐かしい味が復活、みたいなことを書いてあったのだが、ちょっと記憶にないのだな、俺は。世代が違うのか、食ったことはあるが「きなこパン」という名前で覚えてないのか。どういうものが調べてみた (つまり買わなかった) が、やっぱり食った覚えがない。
 で、あ、と思い出したのが、下記のパン。
   
 秋田のたけや製パンが売っている。見つけたのは 8 月で、写真を撮ったきり忘れていた。最近、見ないところを見ると、あるいはもうラインナップから消えているのかもしれない。
やっこい」は「やわらかい」。「やっけ」というくだけた形もある。

 こないだ、コーヒーですべり、お茶で空振りしたが、今回はパンで行って見たい。なに、ここに実例があるんだから大丈夫さ、と勇躍、ブラウザに「菓子パン AND 方言」のキーワードを投入。
 ねぇよ。

 皆無ではない。
 岩手の二戸にある一野辺製パンでは、「まめばり」という甘納豆入りパンを売っている。これは、ホームページに紹介があるように、「豆ばっかり」という意味。甘納豆入りパンって、旨いのか…?
 敷島製パンの pasco では、「小倉トーストだがね」というのがあるそうだ。どの地域で売ってるかは言う必要もあるまい。

 和歌山県御坊市にあるヤナギヤというベーカリーでは、「あがらドーナツ」というのを作っている。「あがら」は「私達」という意味だそうだ。
 店の名前は「ボナペティ ヤナギヤ」だそうだが、この「ボナペティ」を「楽しいひとときをお過ごし下さい」と説明しているのはいただけない。*1
 山形県高畠町のたいようパンでは、「アシェル」というブランドを展開している。これは「合わせる」。米や雑穀も組み合わせたパンだそうで、「米麦」という漢字も作って気合が入っている。

 山崎製パンの「みちのく発コッペパン」の袋には、「めしあがれ」というような意味の東北弁が書かれているらしい。見たことないけど。
 孫引きになってしまうので、その語をいちいち解説するのは控えておく。見たところ、方言グッズにありがちな、ちゃんと調べたの? って状態のようである。

 商品名はこれが限界。
 ただ、たとえば Wikipedia には「日本の製パン業者」てな一覧があるので、それを全部、チェックしていけばもうちょっと見つかるかもしれない、という気はする。これだと、大きいメーカーしかカバーできないけども。

 諦めかけていたところで見つけたのが、「サンドパン」。ところは新潟。
「バタークリームをはさんだコッペパン」のことで、商品名ではなく、一般名称。そうそう、こういうのを探していたんだよ。
 上越タウンジャーナルの記事が詳しいが、どうしてそういうことになったのかはわからないらしい。
コッペパン」といえば、細長いパンだと思うが、違うものを指す地域がある、ということはかなり前に紹介した。
「メロンパン」のことを「サンライズ」という地域があるらしい。日経電子版の「食べ物新日本奇行」で紹介している。ここから出た本を取り上げたことがあるが、新聞社ゆえ、例によって「リンクするな」というところなのでググってみてください。近畿・中国・四国あたりで、その場合、「メロンパン」は別のパンを指す事になる。
 こういうのが他にもあるんだろうけどなぁ。




*1
“Bon Appetit”は、フランス語で、「召し上がれ」に相当する言葉。直訳すると「よい食欲」。 (
)





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