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  HS病院薬剤部発行                                         薬 剤 ニ ュ ー ス   1994年

9月1日号

NO.159

 

                                                

   ビタミン剤は実質締め出しへ

    ***10月1日(1994年)より、診療報酬が改訂***            

                                        

  現在入院医療のみで実施されていますビタミン剤の与薬制限が、外来でも適応されることになります。薬剤使用の適正化は、10種以上の外来与薬を9割算定とする現行方式をさらに強化するなど、総合的な多剤与薬規制として進められるとみられていましたが、今改訂では再びビタミン剤がタ−ゲットになりました。

 入院医療でビタミン剤を与薬する場合、現在の制度では通常の給食をとっている患者に対してビタミンB群とC製剤は算定されません。10月以降は外来患者に対しても入院と同様、食事ができる状態なら適応症以外の使用は認められないことになります。                                 

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「シリーズHLA」を考えるは、クリック→ こちらです。


ビタミン剤の原則保険適用除外(診療報酬改定)

1992年3月15日号 No.104

 ビタミン剤を入院医療から算定除外するのは、「通常の食事を摂取できる患者にはビタミンは必要ない。」との判断からです。

 対象となるのは、ビタミンB1およびC剤となる見込みで点数表には「給食料を算定している患者に対しては、ビタミン剤を使用した場合の当該ビタミン剤については、別に厚生大臣が定める場合を除き算定しない。」ことが追加されます。


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動かない患者を動かすには

 患者の理解とコミュニケーション(3)

  関連記事患者の理解とコミュニケーション(1) 患者の理解とコミュニケーション(2)  

2005年3月15日号 No.402

(この記事は国立精神・神経センター精神保健研究所心理医学研究部長 小牧 元先生の文章を引用したものです)

 糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病は、自己管理行動が重要であることはいうまでもありません。この自己管理行動は、治療に対する患者さんのモチベーション(注1:下記)によって決まります。

 治療がうまくいっていない=「患者さんが動かない」とすれば、治療に対するモチベーションが現在どの段階にあるのかを把握しておく必要があります。

 モチベーションの5段階モデル

1)熟考前段階〜変わろうとする意図なし。
2)熟考段階〜問題点に気づき、考えているが変えようとはしない。
3)準備段階〜行動を起こそうとするが、それまでの1年間はそうしなかった。
4)行動段階〜問題点を打破するために、行動し経験し、あるいは環境を修正する
5)維持段階〜再発予防と習得したことの強化

 患者さんが現在の治療目標をどう受け取っているのか、モチベーションの段階と治療目標に“ずれ”が少なければ少ないほど、患者も治療者も不必要な落胆をせずにすみます。

 アプローチのポイント

1)患者の“信念”を現時点では真実だと受け入れる。
2)自己コントロールがうまくいっていない原因に対する認識の共有を目指す。(コントロールの悪さを要因を防ぐ)
3)「認知(注2)パターン」への気づき
4)将来への展望
5)家族など周りで治療に協力してくれる人とそのレベルを決める。

 動かない患者さんには、必ず不適切な条件付けが形成されているはずです。それは認知の歪みから生じていて、患者さんの
学習性無力感(注3)の根幹となっています。患者自身の自己管理が一歩前に進めるように援助していくことが大切です。

 動かない患者さんを「動かす」ための対処

1)患者さんが当たり前として使っている言葉の意味を吟味する。(誤った信念が少なくない)
2)お説教をしない。根拠となる証拠について質問する。それにより患者本人が自問自答し、再検討していくことが可能とするようにする。
3)何のせいでそうなったか、見直す。選択の余地はなかったのか検討する。
4)“白か黒か”、“全か無”かといった考え方や破局的見方(絶望)を緩和する。そのためには尺度の利用、連続体としての物事を見る目を養う。
5)物事のプラスとマイナス、メリットとデメリットの側面を検討する。あるいは災い転じて福となるといった過去の行動、経験を将来の行動に生かせる視点を育てる。
6)教条的に患者さんに禁止を課していないか(「甘いものを食べるな」などという禁止を課せば課すほど、その掟を破りたくなる。

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注1)モチベーション

 やる気、動機付け〜それまでに条件付けられてきた不適正な習慣をあらためてゆくには(運動や食事行動も含む)、治療するためには患者自身の意識的な大きなエネルギーを必要とします。

 しっかりしたモチベーションがないと動くことできません。

注2)認知:物事の捉え方や受け取り方

注3)学習性無力感

 自分が対処しても不可能な事態に直面したときに、やっても無駄だというあきらめ=認知が、一種の条件付けとして本人の中に成立していると考えられます。

 やっても無駄だというあきらめは、患者さん自身が過去の治療関係の中で繰り返し経験し、確信してきたものです。それは社会的学習として学習性無力感だと考えられるのです。


    {参考文献} 日本薬剤師会雑誌 2004.3         


医薬トピックス(2)

    スポーツは果たして身体に良いか〜スポーツ有害説(前編)は
こちらです。


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ブリーフセラピーとは

2006年9月15日号 N0.437

 ブリーフセラピーは、症状、問題を維持しているパターンや問題の例外に焦点を絞り、そこに介入していきます。介入は、患者が持っている資源を生かして最小限の力で変化が生じるように行います。

 ブリーフセラピーは1966年米国のMRI(mental research institute)で体系化された問題解決の手法
 brief:手短な, 簡潔なという意味でが、実は幅の広い問題解消と変化についての方法です。

 ブリーフセラピーの代表的アプローチに、BFTC:brief family therapy cebrerモデル(解決志向モデル)とMRIモデル(問題志向モデル)があります。両者は表裏の関係にあり、両者を組み合わせた自在なアプローチが薦められます。

<BFTCモデル>

1.変化は常に起こっており、必然である。
2.変化は多様な理由・方向から生まれるものである。
3.わずか変化が大きな変化につながる。
4.患者は自ら問題を解決するための資源を持っている。

 BFCTモデルでは、問題が起こるべき場面で起こらなかったり軽減したりする状況(例外)を糸口にして「小さな解決」を積み重ねて解決を構成していきます。

<MRI技法>

 問題に対する患者の解決努力がかえって問題を維持してしまうという悪循環を断ち切ることに焦点を当てる。

1.do different(今までと違うことを試みてもらう)が基本的な技法となります。
2.フレームとリフレーミング
 フレーム:悪循環を生み出す枠組み、 リフレーミング:フレームを離れて、別の認識の枠組みを構成する手法
3.パラドックス(患者がこれまで行ってきた問題への対処行動を180度転換するように提案すること)
4.コミュニケーションルートの変更

(例)患者が気に入っている看護師に頼んで「もう少し薬を続けると良くなると、先生が言っていたよ」と話してもらう。
5.言語より非言語の介入

 (例)服薬アドヒアランスが悪い患者にいろいろ説得するのではなく、ピルケースを買って薬をセットするように家族に提案する。

<ブリーフセラピーの特徴>

 悪者を作らず、必要最小限の介入で、患者の持っている資源を探して活用し、問題の解決を構成する。
 患者は病気にかかることで自己効力感が減衰しており、医学的問題を確認するための細かい質問を次々と浴びせられると疲れも倍加しやすいことから、ブリーフセラピーを導入するブリーフセラピーは戦略的で質問や介入を多用し患者との「関係性」を重視 、ナラティブアプローチとも共通点が多い。


 ブリーフセラピーでのテクニック


※ コンプリメント〜患者の行ってきた行動・意図に対して経過を示して肯定的に評価すること。
 これまで周囲から非難されたり、自分自身を責めることが多かった患者にコンプリメントすることは、それ自体が問題に対する対処行動への「例外」になり、介入としての役割も果たします。

 患者が「何気なくやっていること」を言葉だけでなく表情やジェスチャーを加えてコンプリメントするのが有効です。  やる気のない患者に対しては、受診したことをコンプリメントして関係を作り、患者の語る「問題らしきもの」に注意してインタビューを続けます。

 文句ばかり言う患者に対してはソリューショントーク(問題がない状態に対する会話)や観察過程(問題とされる状況が、いつ、どのように時に、どのような頻度で生じるのか患者が調べてくる)を出して、問題を解決するのではなく、まず問題の見方を変えるという援助をします。

※ 有名なミラクルクエスチョン「今夜寝ている間に奇跡が起こって、全ての問題が解決したら、朝起きてどんなことからそれに気づきますか?」

 解決のイメージを具体する狙いも含んでいます。

※ スケーリングクエスチョン:問題の状況を具体的に数値化することで変化を顕在化します。

・まったく例外が導き出せない場合には、「そのつらい状況の中でどのように対処してきたのですか」「どうして状況がさらに悪くならないようにしているのですか」と質問(コーピングクエスチョン)して、患者の肯定的な力に関心を向けそれを引き出すようにします。

one downポジション:患者より一段下の立場をとってこちらが困っていることをみせる。

 {参考文献}クリニカルプラクティス 2006.8
     御殿場病院薬剤管理室 村山 隆之 
 


<NST関連用語解説> Pulmonary cachexia:呼吸器悪液質はこちらです。


<医学・薬学用語辞典>

子癇
しかん

 子癇は妊娠中毒症によって起こった痙攣発作をいい、病因は脳血管収縮と脳浮腫と考えられています。

前駆症状として頭痛、視力障害や消化器症状が認められており、予知の重要なサインです。

 痙攣発作の発生した時期により、妊娠子癇antepartum eclampsia,分娩子癇intrapartum eclampsia,産褥子癇puerperal eclampsiaと呼びます。

 なお痙攣発作の発生した時期がまたがった場合、例えば分娩期と産褥期とに発作がみられた場合は、分娩・産褥子癇とします。

 本症は,全身筋肉の強直性痙攣、ついで間代性痙攣が短時間の間欠で反復します。多くは,昏睡,失神を伴い、覚醒後は痙攣発作についての記憶が乏しくなります。

 原則として待期療法が行われ、これが効果がみられないときや、ほかの合併症があり、分娩を急がねばならないときには急速遂娩法を行います。つまり、安静を基本とし刺激を避け、開口器を用いて咬傷を防ぎ、気道と血管の確保を行い、鎮静鎮痛薬として、フェノバルビタール,ジアゼパム,硫酸マグネシウムなどが用いられます。子癇発作のみられた母親の予後は不良であることが多い。

     治療 2002.3増刊号等


<<用語解説>>

嵌頓(かんとん) 

へルニア嵌頓

腸や子宮など腹部内臓諸臓器が腹壁の病的な間隙から脱出したまま元の位置に復帰できない状態。

メテナリン注の副作用で胎盤嵌頓(1994年9月1日号に掲載)


ボーラス
bolus

 比較的大量の物質(薬物)を一度に使用するための製剤、巨丸(薬)あるいは塊

 静脈内ボーラス(ボーラスインジェクションbolus injection)

 薬物の迅速な作用を期待して,静脈内に比較的大量の薬物(または検査試薬)を使用すること。

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 放射線治療で、照射野における人体の厚みが異なる場合、均一な散乱体を得るために、照射野皮膚面に置かれるもの

 普通米粒と小麦粉を半々に混じたものを袋に入れて用います。(bolus‐bag)

 ボーラスは組織等価物質で、最大線量点を皮膚表面に近く移動させるために皮膚面に置いて照射されます。

 

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