CSFの種類と臨床での応用
1991年10月15日号 No.95
CSFとはコロニー刺激因子(colony
stimulating facter)のことで、骨髄細胞を一定の条件で培養した時に、そのコロニー形成を促進する物質として発見された造血因子の一つです。
CSFは骨髄中の各種血球の前駆細胞に働いて顆粒球やマクロファージなどへの分化誘導及び増殖を促し、また、産生された血球の末梢血への流出を促進します。さらに、分化誘導各種血球の機能を高める働きもあります。 その臨床応用として最も期待されている分野は、制癌療法での顆粒球減少症、骨髄移植、AIDSなどへの適用です。 |
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<種類>
M−CSF:マクロファージ・コロニー刺激因子
G−CSF:顆粒球・コロニー刺激因子
GM−CSF:顆粒球−マクロファージ・刺激因子
これら3者の比較では、総白血球数増加に対しては差はなく、分画分布での差が認められています。
すなわち、M−CSFは単球産生を刺激するだけでなくG−CSFやGM−CSFの産生を促します。
GM−CSFは、顆粒球・マクロファージの産生を促進すると共に赤芽球、好酸球、巨核球などの多くの系統の血球産生を促進する可能性があり、より上位の細胞に対する刺激が期待されています。
現在までに、M−CSFは婦人科領域の癌患者や骨髄移植患者へ、G−CSFは肺癌や悪性リンパ腫患者などの化学療法や放射線療法の顆粒球減少や好中球減少に、また、GM−CSFはAIDSや再生不良性貧血、MDS(骨髄異形症候群)などの患者に対しての使用が試みられています。
<副作用>
G−CSFでは副作用はほとんど発現せず、M−CSFでも発熱程度と言われています。しかし、GM−CSFでは、悪寒、発熱、筋肉痛、血圧低下、全身倦怠感などが報告されています。
<血液細胞の分化と刺激因子>
EPO
↓
*赤芽球前駆細胞---------→赤血球
*顆粒球マクロファージ系前駆細胞
|
GM−CSF→| G−CSF
| ↓
|--------好中球
M−CSF→|
↓
単球---マクロファージ
Eo-CSF(IL-5)
↓
*好酸球系前駆細胞------------→好酸球
Baso-CSF(IL-4)
↓
*好塩基球系前駆細胞----------好塩基球
Meg-CSF TPO
↓ ↓
*巨核球系前駆細胞--------------巨核球-----------血小板
エンパワーメント
患者の理解とコミュニケーション(2) 患者の理解とコミュニケーション(1)はこちらです。
2005年2月1日号 No.399
エンパワーメントとは、「すべての人間の潜在能力を信じ、その発揮を可能にするような人間尊重の平等で公平な社会を実現しようとする価値」として発展した概念です。
その背景には、差別・貧困・無気力などの問題があり、「社会的に差別、搾取され、自らコントロールする力を失われた人々が、そのコントロールを取り戻すプロセスが、エンパワーメントと定義されています。
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医療領域では、1980年代後半から看護婦のエンパワーメントとして導入され、医師に対して従属的な立場に置かれていた看護婦の自立性を高める活動を象徴する言葉として用いられ始めました。この問題は看護婦に限られるものではなく、医師以外の全ての医療従事者にとって重要なテーマです。ある意味で、権威に過剰に圧迫されてきた多くの医師に対してでもそれは言えます。
医療現場での医師の権威は過去に比べて大きく変容しているとは言え、医師の態度や発現の持つ正負の影響は未だに大きなものであることは言うまでもありません。
「医師に対する遠慮」を医療に関わる様々な職種の人々、そして患者自身が強く意識している状況は望ましい姿ではありません。医療に対する消費者意識の高まりと共に、先進的な医療消費者がEBMを患者主体の枠組みで再構成していく可能性があります。
エンパワー:empowerの原義は権力を与えることです。現在ではエンパワーメントの対象は患者であり、治療方針の決定に患者が参画するということから、患者の能力を引き出して、識者にする努力が必要となってきます。
患者が判断力を持って自己管理に当たることができるようにするには、心理的軌跡を十分に理解しなくてはなりません。エンパワーメントするための基本は心理的アプローチにあり、患者が参加できるようにする療養指導は人間関係を築くことです。患者の思惑に流されると、本物のエンパワーメントはできません。
<エンパワーメントによる診療風景の変化>
伝統的方法 エンパワメント後
受診 受け身、風評 積極的、相談
ストレスを感じる 医者は友達
主訴 抽象的 具体的
治療 結果が大事 プロセスが大事
医者まかせ 治療の選択
医療側 同情 対等
子供扱い どう説明するか
患者のコンプライアンス(治療環境への適応と順守)を向上させることは、医療側の患者に対するコンプライアンスの改革に他なりません。
エンパワーメントが成功すると、患者のありのままの姿が伝わってきます。それが、迅速で適切な治療法の選択、問題解決への患者を含むチームワーク、治療の選択とその転帰情報の共有を促進することになります。
治療計画が難渋するときでは、患者の生活情報が不足し、心理が反映されていないことが多いのです。患者の心が分かってくると、これまで見えなかった生活が見えてきます。
{参考文献}日本薬剤師会雑誌 2002.1 クリニカルプラクティス 2005.1
シリーズ医学・薬学用語解説(U)
UCP:Uncoupling
proteinはこちらです。
虚偽性障害
ミュンヒハウゼン症候群
病気という方法でしか自分を表現できない人
患者の意図的な操作によって精神、身体症状を生む疾患。
症状の出現が主として患者の精神内界の必要性によって生じるもので、置かれた状況との関連ではっきりと了解されないという点で詐病と区別されています。
ミュンヒハウゼン=ほら吹き男爵に因んで名付けられた。
急性の身体症状を訴え、病院を訪れ応急処置受ける。作為的な身体症状であることが分かっても決してそれを認めず、新たな身体症状を作り次の病院を訪れる。
患者は医学的知識が豊富で、薬物を服用したり、自らに身体を傷つけたりして身体症状を作り出している。苦痛を伴う検査や処置、手術などをいやがらずに受け、強い薬を希望する携行が見られる。詐病と違い、環境状況から現実的な利益や責任回避の目的があることが推察されるが、なぜそうするのか目的が明らかではない。その背後に重篤な人格障害があると考えられている。
出典:OHPニュース No.2 1999 (南山堂医学大事典 より孫引き)