先週、寒くなると冷たくなる体のパーツの話をしたので、今回はあったかいもの。体ではない。
まずは手袋。
これを「
はく」と言うのかどうかについてはあちこちで話題になっている。靴下を履くのも手袋を「
はく」のも、動作は概ね同じじゃん、という話は
前にもした。
で、ふと気になったのは、逆の動作はなんと言うのだ、ということ。
「脱ぐ」かなぁ。いや、この場合は標準語のことは頭に無くて、俺や、周囲の人々が何と言うだろうか、ということをあれこれ想像 (言語学で言う「内省」) しているのだが。
「とる」のような気もする。でも、これの反対語って「する」だよなぁ。
大体、それを口にするだろうか。
「寒いから手袋を着用しなさい」と言うことはあっても、「暑いから手袋の使用をやめなさい」って言うことはないような気がするんだよなぁ。
ネットで見つかったのは「
ぼっこ手袋」。いわゆる「ミトン」。北海道だからと言ってマトンではない。
「棒っこ」だという説が多いようだが、あれは「棒」だろうか。大いに疑問。「坊っこ」で子供のことだったりしない?
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』によれば「
てかえし」「
てきゃし」の語がある由。
これの語源もはっきりしないが、昔は動物の皮で作ったことから「手皮」だとか、それをひっくり返して (毛のある方を内側にする) 使うことから「返す」なのだ、とか書かれている。
で、気づいたのだが、このミトンが本来の「手袋」なのだ。現在の我々が使っている五本指のやつは「袋」ではないではないか。
「
ぼっこ手袋」が北海道で生まれた表現なのであれば、開拓当時すでに五本別の「手袋」はあったと考えられ、4+1 の形に改めて「
ぼっこ手袋」という形を与えたのでないか、という想像がつく。
次、帽子。
『秋田のことば』に「
ぼっち」という語がある。「帽子」の変化したものだろうが、「帽子」ってそんなに古い単語か?
でも、よく考えてみたら「烏帽子」ってのもあるわけで、古い単語なんだろうな。ちなみに「烏帽子」は「カラスのような色をした帽子」。
これも不思議なのだが、フランス語の“chapeau”の変形も多い。「
しゃっぽん」「
しゃっぷ」があるが、ネットでも多数。なんでフランス語なんだろうね。
面白いのは「
ぼんこ」。毛糸の帽子の先っちょについてる丸い奴。
どうも、広くは「丸いもの」を指すらしい。新潟には猫背の人を指す「
せぼんこ」という表現がある。
で、なんで「ぼん」が丸いのか、というのはちとわからず。ウィスキーボンボンを思い出した人もいるかもしれないが、これはおそらく (また) フランス語の“bonbon”で意味はキャンディー。いくらなんでもこれだとは思えない。
「梵天
(ぼんてん)」という説があった。確かに、
大辞林を引くと「漁具につける浮標。延縄(はえなわ)や流し網などにつけるガラス球の類」という説明もある。
「雪洞
(ぼんぼり)」なんてのも思い出したりするんだけどね。
三つ目、夏を除けばぬくもりと心地よさの代名詞のようなもの。布団。
これを「着る」ところがある、という話は
前にした。
また、「
引く」のか「敷く」のかという
話もした。「
引く」が正しいと思っている人もいるようである。確かに、そういう動作ではある。
茨城辺りでは「
すく」と言うらしい。
中国地方には、布団から「
あずる」という表現がある。布団を蹴飛ばすなど寝相が悪いため、布団から出てしまうこと、だそうだ。「はみ出す」「ずれる」というのがもともとの意味らしい。布団を蹴飛ばすだけだったら、秋田でも「
ふんざらう」というのがある。
面白いのは、「
ふとんまき」。沖縄の表現で、「頭まで布団をかぶって寝たため、唇が布団にすれて荒れる、ひどいときには出血すること」だそうである。「
ふとんまけ」という形であればわかりやすい。
寒さではこっちの方が負けてないはずだが、単語は勿論、そういう症状自体を耳にしたことが無い。
あかばしというフォークシンガーに「ふとんまき」というアルバムがある由。
下旬になってもまだ雪は積もっていない。昨今はもうそういう感じなんだが、二年前の豪雪の時も正月明けから急にドカっときた。さて、今年――っていうと「正しい日本語」の人に怒られる、今年から来年にかけての冬、どういう冬になるのだろうか。