こないだ「元祖! でぶや」が秋田に来ていた。「来ていた」と言っても、撮影を見たわけじゃないが。
これは
テレビ東京の番組である。秋田にはテレビ東京のネット局がないので、ご多分に漏れず土曜の午後という微妙な時間に放送される。普段はあまり見ないし、見るとしても床屋に行ったときくらいなのだが、今回は
超神ネイガーがゲストということでわざわざ予約録画して見た。
舞台は秋田駅の近くにある (ときどき「秋田駅前」という紹介を見るが、あそこを駅前と言うのはちょっと無理だと思う)
秋田市民市場。買い物をして出てきた一行を襲う
だじゃく組合行動班長ゴンボホリーとホジーネたち。助けに現れるネイガー。
で、前述の事情でテレビ東京の番組がどこの局で放送されるかは番組によって違うのだが、これは
秋田朝日放送でやっていた (たとえば「開運! なんでも鑑定団」は
秋田テレビ、「出没! アド街ック天国」は
秋田放送*1)。
ご案内の通り、「超神ネイガー VS ホジナシ怪人~海を、山を、秋田を守れ!~」という
番組が目下放送中。製作・放送は秋田放送なのだが、「でぶや」中ではネイガーをその番組の映像を使って紹介していた。各放送局の英断に拍手。
これで終わっちゃいかん。
方言の話。
とは言いつつ、あんまり明確に、これだ、というのは見つからなかった。秋田側の出演者達が、なんだか共通語っぽい話し方をしているからである。まぁ、アクセント、イントネーションはさすがに標準語式と言うわけにはいかなかったが、ちょっと拾えるほどのトピックがなかった。
それでも無理やり探せば、「嘘」を「
うそ」と言っていたことくらいか。
あと、東貴博が「
がっこ」と言っていた。秋田の食い物にはかなり詳しいとの事だったが、アクセントまでは入ってなかったらしい。「
がっこ」である。「がっ
こ」では「学校」と受け取られる可能性がある。
さて、ここからは秋田を離れる。
まずは、その「漬物」の俚諺形について。
そもそも「
がっこ」って。
「雅香」とする説もあるようだが、これはプライド込みの民間語源、「佳字」みたいなもん。『
秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』では、「こうこ」である「香々」だとしている。
これは、今は「こう」と読み書きする「香」が「かう」だったことに起源がある。「こうこ」から「がっこ」への変化には無理が感じられるが、元は「こ」ではなく「か」だったのである。
*2
また『
地方別方言語源辞典 (真田信治・友定賢治編、東京堂出版)』では、「香」に東北特有の指小辞「
こ」がついたもの、という説も紹介している。
さて、ほかの地域。
「ほべりぐ」に
アンケート結果があるが、残念ながら、「
おごご」「
こんこ」など、「こうこ」の変形がほとんどである。
「
くもじ」の形も見つかるが、これの元は女房言葉である。
Wikipedia によれば、「く」は「茎」らしい。「もじ」は「文字」である。
前にも書いたが、「~の字で始まるあれ」という言い方。
尤も「
くもじ」は、「酒」だったり「苦労」だったりするらしい。
飛騨には「
煮くもじ」という料理があるそうだ。読んで字の如し、漬物の煮物らしいのだが、どんな味だろう。
ついでだから飛騨の料理にそれると、「漬物ステーキ」というのがある由。レシピはあちこちに転がってるが、確かに旨そうだ。
「
おはづけ」は、野沢菜の葉の漬物らしい。
徳島には「
おねば」という言葉がある。「大根葉」である。これを漬けたものが「おくもじ」なのだそうだ。
そういえば、「
がっこ」で大根の沢庵だけを指す場合もある。主要なもので漬物全体を代表する、という言い方はひょっとしたら一般的なものだろうか。
「でぶや」では、
キンダケという言葉も登場した。あっさり出てきたのでビックリした。いまや希少種、高級品だというのに。
キンダケは
前も紹介した。そのときにググった結果は「数十件」と書いているのだが、今は「二百数十件」に増えている。
とんぶり。
これも
前に「ホウキグサの実」とあっさり書いてるが、今回、改めて調べてみて「ホウキギ」という言い方もあることを知った。源氏物語の「箒木」じゃないか。
調べた範囲では、やっぱりこれを食うのは秋田だけらしい。
ただ、ホウキギそのものについては、高知で「
ネンドウ」と言う由。じっくり調べればほかの語形も見つかるかもしれない。
「コキア」というのは学名“Kochia scoparia”
*3からきたもの。「ニワクサ」はよくわからんが、どこにでもある草ってことなんだろうか。「ベルベデーレ」は不明。これだけググると宮殿とかヒットするんだけど、なんだろうね。
「
とんぶり」そのものについては、前掲の『秋田のことば』は、食べたときの「プチプチ感」を「
とぷり」と表現したもの、としている。
出てきたのは、たら汁、きりたんぽ (鍋も焼いたのも) 、だまこ鍋、ハタハタ (男鹿の!) など横綱級の秋田料理だったが、三梨牛とかフランス鴨とか、実は色々とある。
横手焼きそばも結構、有名になったみたいだし、こういうのを言い始めるときりがないのだが。
ここのところ、「どこそこの食堂が昔やっていた料理を復刻」とかいう話を聞くことがある。それも含め、食もやはりバラエティが重要なのだと思う。
農薬の問題がどう解決するのかわからないけど、ひょっとして食というのは大量生産・大量流通させてはいけないものなのだったのかもしれない。