今年は台風が何度も来たんで、秋口になってからはあんまり自転車に乗ってない。
熊も激しく出没しているようなので鈴を買ったのだが、使う機会がなかった。
いつもだと、この時期はキノコ狩りの連中と一緒になるのだが、彼らはすっかり目が血走っており、車に乗っている間も余裕がない。ここが山道だってことわかってる? というスピードで走っている。もうちょっとゆったり構えようぜ。
さて、そのキノコ。
前に山菜がらみで書いたような気がするが、ああいうのも俚言の宝庫である。あるものを、この地域では食べるが、別の地域では食べない、ということもあったりする位で、非常に地域性の高いものだ。
さらに、キノコや山菜が生える場所は子供にも教えるな、なんて言い方もするくらいで、おそろしく閉鎖性が高い。まぁ、これは食い物のことで、昔なら、取れる量がダイレクトに生死に関わっただろうし、時代が下がれば商品価値もぐっと上がり、やっぱり目が血走る仕儀になるわけで、やむをえないところではあろう。
「
キンダケ」というキノコがある。俺の記憶では指の先くらいの大きさしかないのだが、親指くらいでカサが開いてないのが一番おいしいのだそうだ。
ネットで検索して見るとわかるが、ヒットする数十件のほとんどが秋田関連。標準的には「キシメジ」と言うらしい。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』を繰って見る。だが、ないんだなぁ。
ここの文章を書くとき、この本を参考にすることが多いが、え? というような単語が載ってなくてびっくりすることがある。たとえば「
おばんです」がない。
唯一載っていたキノコが、「
キノミミ」。サルノコシカケのことだそうな。これはわかりやすい。
スギヒラタケが話題になっているな、そういえば。スーパーにいくと、水煮が袋詰になって売られている。ごくふつうのキノコ。これを「毒キノコ」って書くのやめようよ>Web 上の諸氏
キンダケはもはや希少価値。
松林に生えるキノコなのだが、まず、開発によって松林そのものが減っている。
さらに、現在、日本海側の松林で燎原の火のごとく広がっている「松食い虫」。海沿いの国道 7 号線を車で走ってみるとわかるが、すっかり枯れてしまって真っ赤である。これ、もはや「死闘」であるらしい。
キンダケについては、「シモコシ」という呼び方もあるそうだ。「霜降」と書くそうな。
これで検索するとヒットする範囲はガバっと広がる。つまり、このキノコそのものは全国で食べられている。
が、絶滅危惧種としてリストアップされているところ (
愛媛)もあったりして、先行き不透明の模様。
「
キンダケ」と違って、こっちは両方の名前が並んでいる。「シモコシ」と「キシメジ」の違い、なんて文章があったりして、「キシメジ」は苦い、という話もある。してみると、我々が「
キンダケ」と読んでいるのは「シモコシ」か?
尤も、俺もはっきりした記憶を持っているわけではない。確かにご幼少の砌、
キンダケご飯を食った、という記憶はあるのだが、それがどういう味で、例えばシイタケとどう違うか、なんてのは全く記憶にない。妹は、家族で松林を渉猟したことを覚えているそうだが、俺は全く覚えてない。食い物なんかどうでもいい、という性格はその頃からあったのかもしれないなぁ。
突然、妹が出てきたのは、妹夫婦が遊びに来てたからで、メイン ディッシュは「きりたんぽ」であった。
肉は当然、比内鶏――いや、比内地鶏。
知らない人も多いと思うが、比内鶏って天然記念物である。したがって、食べられない。
*1
比内鶏とロードアイランド種という青い目のニワトリを掛け合わせたのが比内地鶏で、我々が「比内鶏」と言って食べているのはこっちである。
「きりたんぽ」そのものの発祥は、マタギの保存食だった、なんて説
*2もあるくらいで、山の方。今の大館市付近である。したがってスープも鶏ガラなわけだが、海沿いの能代のほうでは、「
キンダケ」で出しを取る。
と、うまい具合に話がまとまる。