食い物の話、というのは実は難しい。
というのは、ご当地料理の話を始めるといくらでも出てくるのだけれども、ここは料理教室ではないから、そっち方面に展開するわけにはいかないからだ。その気になれば、郷土料理は売るほどあるし、山菜などの名前もあるのだが。
だから、
・鰰 (ハタハタ) の卵のことを「ぶりこ」と言って秋田衆が珍重する
・昔、鰰が大量に取れた頃には「ぶりこ」だけ残して捨てた
・取れすぎるため、木箱の方が、中に入っている鰰より高かった
・猫も食べないくらいありふれた魚、ということで「猫またぎ *1」などとよばれた
・近年はほとんど取れなくなったので、一時的に漁をやめ、1995 年から再開した
・それでも浜値で 1 匹 \1,000 くらいついたりすることがある
というような話を延々するつもりはない。
それにしても、
何故「ぶりこ」なのだろうか。「ぶり」の子どもでもないのに。
*2
「
だだみ」というのは、鱈の白子である。新鮮なものであれば刺し身で食べるが、「
塩汁 (しょっつる)」などの鍋料理に入れることも多い。内臓なので、見た目での好き嫌いはあるようだ。
「
かすべ」。平たく言えば、「えいひれ」を醤油で煮込んだもの。骨もなにもとらずにぶちこむのだが、長時間コトコトと煮るので、大変に柔らかい。7 月に秋田市
土崎で行われる湊祭りには欠かせない料理である。
「
とんぶり」は、ほうき草の実である。黒い粒なので「畑のキャビア」などというキャッチフレーズがついていたりする。粘り気があり、長芋をすり下ろしたのとまぜて、醤油をかけると旨い。「山かけ」の芋のかわりにいれることもある。
…やっぱり、
食い物自慢になっている。
言葉の話に軌道修正しよう。
「飯」のことを「
まま」というのは有名な話であろう。秋田に限ったことでもないし。
「
がっこ」は「漬物」のことだが、場合によっては「沢庵」だけを指すこともある。だから、飲み屋で「
がっこけれ」と言った場合、漬物盛り合わせが来るか、沢庵だけになるかは運次第である。普通は前者だろうが。
大根を薫製にしてから漬け込んだ「
いぶりがっこ」というのもある。これは大変に旨いのだが、24 時間体制での火の番を強いられるので作るのが大変…
また逸れてしまった。
一汁一菜を揃えるならば、味噌汁のことにも触れなくてはなるまい。
「
おづげっこ」という。
「っこ」は、「指小辞」というやつで、小さいものや親愛の情を持った物を表現するときにつく。「お」は丁寧語の「お」だから、本体は「づけ」である。
「
『づけ』が本体ぃ?」と思った人もあるかもしれない。
では、
問題。
「おみおつけ」を漢字で書くとどうなるでしょう (正解は
下)。
最後は「
ぼだっこ」。
「塩鮭の切り身」である。生きて泳いでる奴とか、サーモンステーキ、ハム、鮭フレークなどは「
ぼだっこ」とは言わない。
あくまで「塩鮭の切り身」だけを指す。
非常に守備範囲の狭い単語だが、これは食習慣のせいもあるのだろう。今でもきちんと生きている。
ついでだが、
「シャケ」は東京方言である。
軌道修正しながらの話は難しい。
人間の体の中で最もエネルギーを消費するのは脳だそうだ。
従って、頭脳労働の後は腹が減る。
冷蔵庫でもあさってみるとするか。
注1:
「猫またぎ」と呼ばれる魚は、地域によって違うそうだ。(↑)
注2:
食べたときに卵が割れて「プリプリ」「ブリプリ」という音がするからだそうだ。(970223 加筆)(↑)
正解:「御御御つけ」。お疑いの向きは、辞書をどうぞ。(↑)